ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

間葉系幹細胞の新たな機能 脳の神経細胞損傷を抑制=昭和大学ら日米研究チーム

2008年09月28日 | 再生医療
 さまざまな組織の細胞になる「間葉系幹細胞」が、脳梗塞(こうそく)などによる脳の神経細胞の損傷を抑えることを、昭和大など日米の研究チームがマウス実験で突き止めた。再生医療の切り札とされる幹細胞が持つ新たな機能が分かったことで、アルツハイマー病やパーキンソン病など神経難病の進行を抑える治療法の開発につながる可能性がある。

 研究チームは脳梗塞を起こしたマウス12匹のうち6匹の脳に、発症の翌日、ヒトの骨髄から培養した間葉系幹細胞を注射し、注射しなかった残りと比べた。

 注射から3日後に、記憶をつかさどる海馬の神経細胞を調べると、注射したマウスは死んだ神経細胞の量が注射しなかったマウスに比べ約8割少なかった。また、注射したマウスは、細胞の損傷をもたらす炎症や免疫に関連する遺伝子の働きが抑制されていた。

 脳梗塞では、最初に発症した患部から、徐々に神経細胞の損傷が広がり、症状が進行していく。幹細胞は細胞の損傷の拡大を抑えているとみられる。

 大滝博和・昭和大助教(神経学)は「幹細胞が脳に入ると、脳内の細胞や遺伝子の働きが炎症を抑える方向に切り替わるようだ。幹細胞は自らがさまざまな細胞に分化するだけでなく、生体の機能を制御する能力も持つと考えられる」と話す。15日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表した。【永山悦子】

[毎日新聞 2008年09月28日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080928ddm016100016000c.html

ES細胞から大量の赤血球を生成、輸血用血液も可能か=アドバンスド・セル・テクノロジー社(米国)

2008年08月21日 | 再生医療
【8月21日 ワシントンD.C.発 AFP】米マサチューセッツ(Massachusetts)州ウスター(Worcester)を拠点とする米企業、Advanced Cell Technology(ACT)の研究員らが専門誌「Blood」(電子版)で、ヒトの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から大量の赤血球を生成することに成功したと発表した。今回の成功で、輸血用の血液を無限に供給できる可能性が出てきた。

 ACTのRobert Lanza氏は「血液の供給に制限があることは、大量の失血をしている患者にとって生命を落としてしまうことにつながりかねない」とした上で、「ES細胞は、治療に必要な赤血球を供給する細胞を無限に増殖させることができる新たな細胞源の役割を果たす」と語った。

 同氏は「われわれは現在、6ウェルプレートの培地1つで培養したES細胞から、10-1000億の赤血球を生成することができる」と述べるとともに、「幹細胞株を『Oマイナス』の血液型に合わせれば、どの血液型にも合致する『万能供血者』の血液を生成することができるだろう」と強調した。O型の血液は、どの血液型の人にも輸血することが可能な唯一の万能血液型だとされている。(c)AFP

[AFP BB News 2008年08月21日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2508996/3245547

iPS、2遺伝子導入で作成、マウス神経幹細胞から-安全性向上に前進=マックスプランク研究所

2008年06月30日 | 再生医療
 成体マウスの脳から採取した神経幹細胞に2種類の遺伝子を導入するだけで、増殖能力が高く、身体のあらゆる細胞に変わる新万能細胞「人工多能性幹(iPS)細胞」を生み出すことができたと、ドイツのマックスプランク研究所などの研究チームが30日、英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
 神経幹細胞は、自ら増殖するとともに、さまざまな神経細胞に変わる細胞。世界で初めてiPS細胞を作った山中伸弥京都大教授らは昨年12月、こうした特殊な性質がなく、マウスやヒトの皮膚から簡単に採取できる線維芽(せんいが)細胞に3種類の遺伝子を導入する方法でiPS細胞を作成したと発表している。
 遺伝子を導入するのに発がん可能性があるレトロウイルスを使う点は変わらず、今回の方法自体は再生医療応用に向けた実用性が高いとは言えない。しかし、今後導入する遺伝子を1種類でも薬剤に置き換え、レトロウイルスに伴う発がんリスクを下げる上で、遺伝子の種類を減らすことには意義があるという。
 研究チームが神経幹細胞に導入した遺伝子は、遺伝子群全体の司令塔役Oct4と、多様な分化能力を担うKlf4。神経幹細胞はもともと、山中教授らが導入した3種類目の遺伝子Sox2の働きが高く、改めて導入する必要がなかった。

[時事ドットコム 2008年06月30日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008063000007

じゃまな脂肪で再生医療 幹細胞実験、動物で成功=大阪大学、国立がんセンター研究所

2008年06月23日 | 再生医療
 おなかの脂肪から、様々な細胞になりうる幹細胞を取り出して心筋梗塞(こうそく)や肝臓病を治療することに、大阪大や国立がんセンター研究所のグループが動物実験で成功した。脂肪は採取しやすく移植時の拒絶反応も避けられる。厄介者扱いされがちな脂肪だが、再生医療に利用しようと研究が広がっている。

 大阪大未来医療センターの松山晃文・准教授らは、脂肪の中から心筋や肝臓、膵臓(すいぞう)の細胞に効率よく成長する幹細胞を見つけた。この細胞を、特殊な薬剤で心筋のもとになる心筋芽細胞に変化させ、心筋梗塞のラットに移植した。治療しないと心臓の収縮率は30%に落ちたが、移植すると60%まで回復して4カ月維持した。

 この幹細胞から肝細胞の塊をつくり、慢性肝炎のマウスに移植すると、肝機能が改善した。膵臓のようにインスリンを出す細胞もつくり、糖尿病のマウスに移植すると、3週間にわたり血糖値が下がった。

 同センターの澤芳樹教授は「動物実験を重ね、あらかじめ脂肪から幹細胞をとって将来に備える細胞バンクをつくりたい。テーラーメード型の再生医療が目標」という。

 国立がんセンター研究所の落谷孝広・がん転移研究室長らも、皮下脂肪から肝細胞をつくった。肝臓でしか合成されないたんぱく質を14種類以上検出。肝臓を傷めたマウスに注射すると、上昇した血中のアンモニア濃度が24時間後にほぼ正常に戻った。

 ただ、肝臓は500ほどの機能があり、すべて回復しているかどうかは分からない。メカニズムの解明もこれからだ。落谷さんは「胚(はい)性幹(ES)細胞から肝細胞をつくる効率が低いのに対し、必要な量を採取できる脂肪の利用に期待が集まっている。肝臓切除時に少量移植して機能回復を促す補助的な使い方が考えられ、数年内の臨床試験をめざしたい」と話している。(佐藤久恵)

[朝日新聞 2008年06月23日]
http://www.asahi.com/science/update/0623/OSK200806230036.html

心筋成長促すタンパク質発見、心筋再生治療へ道=千葉大学

2008年06月05日 | 再生医療
 心臓の形成に必要な上、万能細胞が心臓の筋肉「心筋」に分化するのを促すタンパク質を発見したと、千葉大のグループが四日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。さまざまな臓器などに分化できる万能細胞の一種「ES細胞」に、このタンパク質「IGFBP―4」をかけると、ES細胞が心筋になることを確認した。心筋梗塞(こうそく)や心不全の患者の心臓再生治療に役立つ可能性もあるという。

 IGFBP―4を発見したのは、千葉大付属病院(千葉市中央区)の小室一成教授(循環器内科)らのグループ。さまざまな細胞をマウスのES細胞と一緒に培養し、ES細胞を心筋にする細胞を選抜。この細胞が分泌していたのがIGFBP―4で、ES細胞が心筋になる確率を約二十倍に高めた。カエルの胎児でIGFBP―4を抑制すると心臓ができないことも分かり、心臓の形成に欠かせないことが示された。

 今後、ES細胞や「iPS細胞」(新型万能細胞)から効率的に心筋を作り出して心臓に移植する方法や、心筋梗塞や心不全になった心臓に直接IGFBP―4を注入して心筋を再生治療する方法の確立を目指す。重症な心不全の治療法は現在心臓移植しかないが、国内での実施例は少ない。小室教授は「今まで治療が難しかった重症な患者さんたちの治療に役立てたい」と話した。

 IGFBP―4は「Wnt」という心臓の発生を制御するタンパク質の作用を阻害していたことも判明。Wntはがんなどさまざまな病気に関係しており、IGFBP―4を使ってがんの肥大化を抑制するなどの応用も考えられるという。

[ちばとぴ=千葉日報ウェブ 2008年06月05日]
http://www.chibanippo.co.jp/news/chiba/society_kiji.php?i=nesp1212633734



【「万能細胞から心筋」効率上げるたんぱく質 千葉大発見】

 さまざまな細胞や組織になりうる万能細胞の一つ、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から心筋の細胞をつくる効率を最大20倍に高めるたんぱく質を、千葉大学医学部の小室一成教授らの研究グループがマウス実験で見つけた。心臓病の再生医療の開発につながる。新型の万能細胞である人工多能性幹細胞(iPS細胞)でも試す。英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。

 研究グループは、骨髄系の細胞を培養した液を使うと万能細胞から心筋細胞への分化が促されることに着目した。この培養液中にある「IGFBP―4」というたんぱくが心筋をつくる効率を上げる働きがあることをつかんだ。ES細胞から心筋細胞になるのは、これまではよくて全体の1%程度だが、マウスのES細胞にふりかけて培養したところ、10~20倍もできた。

 再生治療に使うためには、万能細胞を心筋細胞にして移植するか、このたんぱく質を含んだ薬剤を注射し、心臓内にある幹細胞を心筋に変身させる方法が考えられる。(竹石涼子)

[朝日新聞 2008年06月07日]
http://www.asahi.com/science/update/0606/TKY200806060038.html



【IGFBP-4:心筋細胞の分化促す、たんぱく質発見 千葉大院教授ら、マウスで実験】

 心臓の形成に重要な働きをするたんぱく質を、小室一成・千葉大大学院教授らが発見した。幹細胞の培養に使うと、10~20%の高い割合で心筋細胞が発生するという。人にも存在し、重篤な心臓病の新たな治療法につながるか注目される。

 心筋細胞の再生には、人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚(はい)性幹細胞(ES細胞)が注目されている。だが、心筋細胞に分化する割合は1%程度だった。

 研究チームは、心筋細胞への分化を促すたんぱく質が存在すると考えた。マウスで実験した結果、「IGFBP-4」というたんぱく質を幹細胞の培養に使うと、10~20%の割合で心筋細胞が発生することを突き止めた。

 また、孵化(ふか)直後のオタマジャクシで、このたんぱく質の働きを止めると、心臓が小さくなったり消滅することも分かった。

 現在の重症心不全の治療は薬物治療が主流だが、生存率は5年で平均約50%。心臓移植も国内で年間10例前後にとどまる。小室教授は「このたんぱく質を使い、心筋細胞内の幹細胞を刺激し、心筋の再生を可能にしたい」と話す。5日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。【柳澤一男、神足俊輔】

[毎日新聞 2008年06月17日東京朝刊]
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/06/17/20080617ddm016040104000c.html



【タンパク質の心筋細胞分化 20倍の効率で誘導  千葉大が発見】

 多様な細胞になることのできる胚性幹細胞(ES細胞)を、高い確率で心筋細胞に分化させるタンパク質を、千葉大大学院医学研究院の小室一成教授らの研究グループが突き止めた。人工多能性幹細胞(iPS細胞)でも確かめる方針で、心臓再生医療への応用が期待される。英科学誌「ネイチャー」(電子版)に発表した。

 小室教授らは、ホルモン調節作用が知られていた「IGFBP4」と呼ばれるタンパク質が、単独で心筋細胞への分化を強く誘導することを新たに発見した。このタンパク質を培養液に添加すると、通常の約20倍の効率でマウスのES細胞が心筋細胞になった。

 また、このタンパク質の発現を抑えると、ES細胞で心筋細胞が作られず、アフリカツメガエルを使った実験では形成後の心臓が縮小・消失したことから、心臓の正常な形成に不可欠であることもわかった。心筋細胞への分化誘導は、発がんや老化に関係する物質とも密接に関わっているとみられ、がんや骨粗鬆(そしょう)症などにもIGFBP4が関与している可能性が考えられるという。

 iPS細胞は再生医療の切り札として期待されるが臨床応用への課題も多い。小室教授は「今回の成果は、心臓病治療の再生医療にとって大きな意義がある。今後実用化に向けて研究を重ねていきたい」と話している。(黒田悠希)

[msn産経ニュース 2008年06月23日]
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080623/acd0806230831009-n1.htm

遺伝子なしiPS細胞、化学物質で代用…安全性向上に期待=米スクリプス研究所

2008年05月12日 | 再生医療
 さまざまな細胞に変化できる新型万能細胞(iPS細胞)は、これまで3~4個の遺伝子を体細胞に導入する必要があったが、2個の遺伝子と化学物質を体細胞に加えることでも作製できることが、米スクリプス研究所のシェン・ディン准教授らの研究でわかった。

 遺伝子を使わない安全性の高いiPS細胞を作る技術の開発に道を開く成果だ。京都市で始まった国際シンポジウムで11日、発表した。

 iPS細胞を世界で初めて開発した山中伸弥・京都大学教授は当初、「Oct3/4」「Sox2」「Klf4」「c―Myc」とよばれる4遺伝子を用いた。さらに昨年、がん遺伝子である「c―Myc」を使わない3遺伝子でもiPS細胞ができることを示している。

 ディン准教授は、同研究所が持つ数万種類の化学物質の中から、体細胞にiPS細胞のような万能性を持たせることができる物質を探した。その結果、「Oct3/4」「Klf4」の2遺伝子と化学物質の組み合わせで、マウスのiPS細胞を作ることができた。作製に成功する割合も、4遺伝子を使う場合よりも高かったという。

 ディン准教授は発表後、読売新聞の取材に対し、これ以外の組み合わせでもマウスや人のiPS細胞作製に成功していることを明らかにした。これまで必要と考えられてきた「Oct3/4」と「Sox2」も必須ではなく、「近い将来、遺伝子を使わず化学物質だけでiPS細胞を作ることができるだろう」と語った。

[読売新聞 / 2008年05月12日]
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080512-OYT8T00216.htm

ヒツジの体内でサルの細胞作製、移植用臓器「工場」へ一歩

2008年05月12日 | 再生医療
 ヒツジの体内でサルの組織を作り、長期間生着させることに、自治医科大の花園豊教授(再生医学)らのチームが成功した。

 移植医療用の臓器や組織を家畜の体内で作る「動物工場」の実現に近づく成果で、米医学誌に発表した。

 研究チームは、母ヒツジのおなかにいる赤ちゃんに、さまざまな臓器・組織の細胞に変化できるサルの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を、複数の個所へ注入。生まれた子ヒツジを調べたところ、最大で直径20~30センチの組織ができており、サルの神経細胞や軟骨、肝細胞に似た細胞などが含まれていた。

 通常、細胞や組織を異種の動物に移植すると激しい拒絶反応が起こる。研究チームは、免疫機能が未発達な赤ちゃんのヒツジを選んだことで問題を克服した。混合動物(キメラ)を免疫抑制剤を使わず、異種の大型動物間で作ったのは世界で初めて。サルの組織は1年以上も生着しているという。

 ES細胞や新型万能細胞(iPS細胞)は、再生医療の切り札とされている。しかし、現在の技術では、肝臓や膵臓(すいぞう)の細胞を効率良く作り出したり、臓器のような立体構造を作るのは難しい。このため、人のES細胞やiPS細胞を使って、ヒツジやブタなどの体内で人の臓器・組織を作れないか研究が進められている。

 花園教授は「異種の動物間で病気の感染が起こらないようにするのが最大の課題。iPS細胞でも研究を進めたい」と話している。

[読売新聞 / 2008年05月12日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080512-OYT1T00400.htm

心臓の筋肉、血管細胞作成=マウスiPSから=カリフォルニア大学ロスアンゼルス校

2008年05月01日 | 再生医療
 マウスの皮膚細胞への遺伝子導入で新万能細胞「人工多能性幹(iPS)細胞」を作り、心臓を構成する3種類の細胞に分化させたと、米カリフォルニア大ロサンゼルス校のロブ・マクレラン准教授らが1日、米科学誌ステム・セルズの電子版に発表した。今後、ヒトiPS細胞でも実現させ、心筋梗塞(こうそく)などの治療への応用を目指す。
 同准教授らは、マウスiPS細胞を心筋細胞に分化させ、実験器具内で拍動させたほか、血管の内皮細胞と平滑筋細胞に分化させた。
 iPS細胞を世界で初めて作った京都大の山中伸弥教授らは昨年11月、既にヒトiPS細胞から拍動する心筋細胞を生み出したと発表している。各国で研究が進むことで、より効率的で安全性が高い技術の確立が期待される。

[時事ドットコム 2008年05月01日]
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200805/2008050100060&rel=j&g=soc

幹細胞を移植し心筋再生、ブタを使った実験に成功=京都大学

2008年03月14日 | 再生医療
 人の心筋にわずかに含まれる幹細胞を取り出し、心筋梗塞(こうそく)を起こしたブタに移植して心臓の機能の一部を回復させる実験に、京都大の王英正准教授(心筋再生医学)のチームが成功した。名古屋市で開催の日本再生医療学会で14日、発表する。

 チームはマウスで同様の実験をしているが、今回は手法を改良し、人により近い条件で成功させた。臨床応用では患者本人の幹細胞を移植に使うのを想定。王准教授は「最も実用に近く、安全な手法だ」と話している。

 王准教授らは平成17年、心筋組織に高い能力を持つ幹細胞が1万分の1の割合で含まれているのを発見している。

 今回は患者1人から提供を受けた心筋組織から幹細胞を採取して1カ月かけて培養。血流を妨げて心筋梗塞を引き起こしたブタの患部に幹細胞を注射後、血管や細胞の成長を促す薬剤を含むゼラチンで覆った。4週間後に調べると、患部面積の8%で心筋が再生し、心臓の収縮機能が10~12%回復したという。

 王准教授は「iPS細胞や胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使う手法も考えられるが、現時点では安全性などに課題が多い」と指摘している。
 
[産経ニュース / 2008年03月13日]
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080313/acd0803132329012-n1.htm

ES細胞を使って腎臓と膵臓再生=東京大学

2008年03月13日 | 再生医療
 東京大の中内啓光教授のグループが万能細胞の一種である胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使い、腎臓や膵臓(すい・ぞう)をつくる遺伝子を欠いたマウスの受精卵から、こうした臓器をもつマウスをつくることに成功した。受精卵にES細胞を注入したら臓器がまるごと再生された。将来の人間の臓器づくりの手法開発の足がかりになりそうだ。13日からの日本再生医療学会で発表する。

 中内教授らは遺伝子操作で腎臓がないマウスをつくった。このマウスの受精卵が細胞分裂を始めた初期の段階で、正常なマウスのES細胞を注入し、子宮に戻した。

 すると、生まれたマウスにはちゃんと腎臓ができていた。調べたら、注入したES細胞から腎臓ができたことがわかった。この腎臓が機能して、尿がつくられ、ぼうこうにたまっていくことも確かめた。

 同様の手法で膵臓も再生できた。血糖値の変化から、膵臓もほぼ正常に働いているとみられた。

 この成果を受けて、グループは新年度、サルの膵臓をブタの体内で再生させる研究を始める。

 中内教授は「狙った臓器を、体の中で発生の過程をたどって再生できたことが大きい。臨床応用につながるよう研究を進めていきたい」と話す。

[朝日新聞 / 2008年03月13日]
http://www.asahi.com/science/update/0312/TKY200803120249.html

乳歯幹細胞:親イヌの歯槽骨再生に成功=名古屋大学

2008年03月07日 | 再生医療
 子イヌの乳歯から取り出した幹細胞で親イヌの歯の根元の骨を再生させることに、名古屋大などの研究チームが成功した。乳歯を利用したヒトの近親者間の骨の再生医療に道を開く成果として期待される。13日から名古屋市で開かれる日本再生医療学会で発表する。

 同大の上田実教授らは、生後約2週間の子イヌの乳歯から幹細胞を採取。培養して骨になる一歩手前まで分化させた。一方、この子イヌの親イヌ(生後2~2年半)の歯を抜き、その下の歯槽骨に10ミリの穴をあけ、分化した細胞を移植した。4週間後に骨の再生を確認、8週間後に穴はふさがり、ほぼ完全に元通りになった。中型犬の親子2組で実験していずれも成功した。

 免疫抑制剤は使わなかったが、拒絶反応は起きなかった。移植する際、親イヌの血小板を濃縮してゲル状にしたもので細胞をくるんでおり、研究チームは「親子であるうえ、親イヌ自身の血小板の働きによって免疫反応が抑制されたのではないか」と話している。

 マウスでは同様の成果が出ているが、大型動物での成功は初めて。歯槽膿漏(のうろう)の治療や骨の再生につなげたいという。同大では昨年12月、ヒトの「乳歯幹細胞研究バンク」を設立し、再生医療への応用を目指して研究を重ねている。【須田桃子】

[毎日新聞 / 2008年03月07日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080308k0000m040051000c.html

視力回復:緑藻類が効果 ラット実験に成功=東北大学

2008年03月06日 | 再生医療
 東北大先進医工学研究機構の富田浩史准教授(眼科学)と菅野江里子助教(分子生物学)らの研究グループが、緑藻の遺伝子を失明したラットの網膜に注入し、視力を回復させる実験に成功した。視野が狭まったり、視力が急に落ちる「網膜色素変性症」や「加齢黄斑(かれいおうはん)変性症」の治療に応用できるという。 

 網膜色素変性症は4000人に1人、加齢黄斑変性症は50歳以上の約1%の割合で発症するとされる。原因が分からず、特に網膜色素変性症は根本的な治療法が見つかっていない。研究グループは、ミドリムシのように光合成をし、動く緑藻類が光を認識できることに着目した。水田などにすむ緑藻類の一種「クラミドモナス」から遺伝子「チャネルロドプシン2」を取り出し、網膜色素変性症で失明したラットの網膜に注入した。光によって神経細胞を活動させるたんぱく質を生成する性質がこの遺伝子にあり、6週間後にラットの周囲で物を動かす実験をして首の動きから視力回復が実証された。

 脳波検査でも視力回復が確認され、注入後1年以上たっても効果は持続している。

 ヒトの場合は局所麻酔をしたうえで、注射器で網膜に遺伝子を注入する方法が考えられ、富田准教授は「10~15分程度で手術でき、安全性の確認を進めて早期の実用化を目指したい」と話している。研究成果は14日、名古屋国際会議場(名古屋市)で開かれる「第7回日本再生医療学会」で発表する。【青木純】

[毎日新聞 / 2008年03月06日]
http://www.mainichi.jp/select/science/news/20080306k0000m040166000c.html

たんぱく質「ペリオスチン」:研究最前線 心筋を修復し、がん増殖を抑制?~毎日新聞コラム

2008年03月02日 | 再生医療
 ◇新治療法開発に期待

 日本人研究者が発見し、骨の再生に関係すると考えられてきたたんぱく質の「ペリオスチン」。急性心筋梗塞(こうそく)後の心筋の修復に重要な役割を果たしていることが分かった。がんの増殖抑制にもかかわっているとみられ、注目を集めている。ペリオスチン研究の最前線を探った。【河内敏康】

 ペリオスチンは99年、東京工業大の工藤明教授(細胞生物学)が発見した。重力や荷重による刺激を受けると骨を再生する仕組みで、重要な役割を果たすと考えられているたんぱく質だ。

 工藤教授らのチームは研究を続け05年、ヒトのペリオスチン抗体を作成。東京大医学部病理学教室と共同でヒトの病理組織を網羅的に調べたところ、ヒトやマウスの心筋梗塞を起こした組織にもペリオスチンが作られていることを見つけた。

 国内の急性心筋梗塞発症数は年間約15万人、そのうち約3割が死亡していると推定されている。回復している患者もいるが、心筋梗塞を起こした組織が、どのように修復されるかはなぞだった。

 研究チームは、ペリオスチンが体内で作られないように遺伝子操作したマウスで、冠動脈を結び人工的に心筋梗塞を起こさせた。その結果、心破裂を起こして91匹中62匹(約68%)が死んだ。普通のマウスで死んだのは80匹中25匹(約31%)で、30ポイント以上も差が開いた。

 さらに、梗塞を起こした部位を詳細に調べたところ、ペリオスチン欠如マウスは心筋細胞修復に重要なコラーゲンを作る線維芽細胞の数が少ないことを突き止めた。ペリオスチンを作る遺伝子を欠如マウスに入れると、心破裂率が普通のマウスとほぼ同じ割合にまで低下した。

 工藤教授は「急性心筋梗塞後の心筋修復のメカニズムを知ることで、新しい治療法の開発につながる可能性がある」と期待する。

 ◇米国では競争激化

 ペリオスチンをめぐる研究は、米国を中心に競争が激しくなっている。心筋細胞は線維芽細胞が分化してできるが、心臓の再生医療の第一人者、米ハーバード大ボストン小児病院のマーク・キーティング教授のチームは、ラットの心筋細胞にペリオスチンをふりかけると心筋細胞が増えることを確認し、昨年8月に米医学誌「ネイチャー・メディシン」に掲載された。

 米シンシナティ大小児病院のジェフェリー・モルケンティン教授らも、ペリオスチン欠如マウスで心破裂が起きやすくなることを発見。米医学誌「サーキュレーション・リサーチ」が昨年6月、成果を掲載した。ペリオスチンと心臓には深い関係があるようだ。

 ◇骨の再生にも関与か

 ペリオスチンは、がんの増殖抑制にも関与しているとみられる。工藤教授のチームが、ペリオスチン欠如マウスに、がん細胞を移植したところ、普通のマウスと比べ、がん細胞が大量に増殖した。ペリオスチンがあると、がんが正常細胞を圧迫する時の刺激で、線維芽細胞が被膜を作るため、がんの成長を抑制するとみられる。

 ペリオスチンは、筋肉に加わる物理的な力に応じて生じるたんぱく質と考えられていた。歯と骨の間にある歯根膜などで多く発現するからだ。工藤教授らは06年、ペリオスチン欠如マウスを詳細に観察。マウスの切歯は、すれたりして短くなると再生して元の長さまで伸びるが、ペリオスチン欠如によって歯根膜がうまく形成できず、切歯が再生できなくなってしまった。

 骨の再生メカニズムとの関係は、人間の長期宇宙滞在の可能性や寝たきり状態の改善などから注目される。慶応大の須田年生教授(幹細胞生物学)は「重力など機械的な刺激が少ないと、人間は骨量が減り、骨が細くなってしまう。ペリオスチンは骨の再生に関係している可能性が大きく、ペリオスチン研究による骨の再生メカニズムの解明が、こうした課題の克服に役立つと考えられる」と期待する。

[毎日新聞 / 2008年03月02日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080302ddm016040088000c.html

iPS細胞から視細胞、マウスで成功=理化学研究所、京都大学

2008年03月02日 | 再生医療
 マウスの皮膚でつくった人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、網膜にあって光を感じる視細胞をつくることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の高橋政代チームリーダーと京都大の山中伸弥教授らが2日までに成功した。

 人のiPS細胞でも同様の実験を開始。患者本人の細胞を使えば、移植しても拒絶反応が起きないメリットが期待できる。高橋リーダーは「網膜色素変性症などの再生医療実現につながる一歩だ」としている。

 13日から名古屋市で開かれる日本再生医療学会で発表する。

 理研はこれまで、人の胚性幹細胞(ES細胞)から視細胞を効率良くつくるのに成功している。今回は山中教授が作成したマウスのiPS細胞を使い、同様の手法で網膜の前駆細胞をつくり、さらに視細胞に分化させるのに成功した。

 他人の受精卵からつくられるES細胞と違い、iPS細胞には患者と同じ遺伝子を持たせることが可能で、移植時の拒絶反応が避けられる。高橋リーダーは「分化能力の点でiPS細胞とES細胞は似通っている。次は人のiPS細胞から網膜細胞づくりを試したい」としている。

[北海道新聞 / 2008年03月02日]
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/environment/79238.html

ES細胞を使って赤血球を無限に作製 マウスで=理化学研究所

2008年02月06日 | 再生医療
 万能細胞の一種、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使って赤血球を無限に作り出す方法にマウスでめどをつけたと、理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)の中村幸夫室長らが、6日付の米科学誌プロスワンに発表した。すでに人間のES細胞でも同様の研究を始め、別の万能細胞(iPS細胞)を使った研究も計画している。臨床応用できれば輸血用血液の不足を補えそうだ。

 チームはこれまでに、人の骨髄などにある血液(造血)幹細胞から赤血球を効率よく作る手法を確立しているが、血液幹細胞には寿命があり赤血球を無限に作らせることはできなかった。

 今回はマウスの8種類のES細胞株を使い、栄養細胞や増殖因子とともに繰り返し培養した。その結果、1年以上増殖し続ける赤血球の前段階の細胞(赤血球前駆細胞)の株を作ることに成功した。前駆細胞は赤血球のもとで、赤血球を無限に作れることになる。

 薬で急性貧血にしたマウスにこの前駆細胞を移植すると、赤血球の数やヘモグロビンの量などが増え、体内で前駆細胞から赤血球ができたことが裏付けられた。貧血症状も改善。重症のマウスでは前駆細胞を移植した8匹のうち7匹が生き延びたが、移植しなかった8匹では7匹が死んだ。

 万能細胞から作った細胞では異常増殖などによるがん化が最も怖い。一方、完全な赤血球まで分化させれば増殖にかかわる情報を持つ核が抜け、がん化の心配はない。

 今回作った前駆細胞株では、できた赤血球の9割に核が残り、分化は不完全だが、放射線を当てて核が残る赤血球を完全に除くこともできる。

 血液の細胞成分で無限作製への道が見えたのは初めて。人で実用化できれば、輸血用赤血球の不足が解消され、輸血血液を介した感染リスクの低減にも一役買いそうだ。同じ血液型なら他人のES細胞が使える。

 中村さんは「人の血液幹細胞から成熟した赤血球を作る手法がすでにあることを考えると、臨床応用にかなり近づいた」という。

■臨床応用に期待

 〈中内啓光東京大教授(再生医学・幹細胞治療)の話〉 ユニークで実用性が高い成果だ。赤血球は核がなく、移植の安全性も高い。造血系や免疫系は人間とマウスで似ており、人間の万能細胞でもできる可能性が高いだけに、近い将来の臨床応用が期待される。

[朝日新聞 / 2008年02月06日]
http://www.asahi.com/science/update/0206/TKY200802060040.html

理化学研究所 プレスリリース
マウスES細胞から赤血球前駆細胞株を世界で初めて樹立
- ES細胞やiPS細胞から感染症リスクのない血液を大量生産することが可能に -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2008/080206/index.html