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ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

猿も手探りで歩く、視野を狭める実験で確認-二足歩行を促進か=産業技術総合研究所

2008年11月23日 | 心のしくみ
 普段は四足歩行のニホンザルにゴーグルを着用させて視野を狭めたり、非常に濃いサングラスを掛けた状態にしたりすると、壁や障害物にぶつからないよう、後ろ脚で立って手探りをしながら歩くことが分かった。産業技術総合研究所認知行動科学研究グループの間中ゆうこ技術員と杉田陽一グループ長が22日までに実験で確認した。論文は国際科学誌ビヘイビアラル・プロセスズ電子版に掲載される。

 猿回しなどで二足歩行の訓練をしていない猿でも、餌の果実を仲間に奪われないよう両手で持って逃げたり、母が子を抱いて移動したりする際に立って歩くことがあるが、手探りするために二足歩行することが実験で確認されたのは初めて。杉田さんは「猿から人への進化過程で二足歩行するようになった理由はたくさん考えられるが、密林や洞穴など暗い場所で立って手探りすることで移動範囲が拡大したのは確か。二足歩行を定着させた要因の一つではないか」と話している。

[時事ドットコム 2008年11月23日]
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200811/2008112200227

ネズミが季節感じる謎解明=名古屋大学

2008年11月19日 | 心のしくみ
名大「うつ病治療のヒントに」

 名古屋大大学院の吉村崇教授らのグループが、ネズミが季節を感じる仕組みを解明し、18日付の米科学アカデミー紀要に発表した。ネズミは人間とともに遺伝子レベルで季節を感じることができない動物とされていたが、吉村教授は「哺乳類全般で同じ仕組みが働いていると考えられる」としている。

 吉村教授らは、哺乳類の脳の松果体から分泌されるホルモン「メラトニン」に注目。メラトニンは夜間に分泌されるため、季節によって分泌量が変化する。この差が繁殖活動や体毛の変化などの季節性行動に影響することは知られていたが、脳内でどのように作用しているかは未解明だった。

 吉村教授らは、すでにウズラを用いた実験で「DIO2」という遺伝子や甲状腺刺激ホルモンの分泌が、脳に季節を伝えていることを解明していた。これを応用し、メラトニンを作れるネズミと作れないネズミで実験したところ、DIO2や甲状腺刺激ホルモンとメラトニンの分泌量が反比例していることが分かった。

 吉村教授は「日照時間によってメラトニンの分泌量が変化し、それがDIO2や甲状腺刺激ホルモンに作用して脳に季節情報を伝達している。研究成果を応用することで、人間の季節性うつ病などの治療の手がかりになる」としている。

[読売新聞(中部発) 2008年11月19日]
http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/081119_4.htm?from=nwlb

<人には聞けない>左右反転して見える鏡=(中日新聞・コラム)

2008年11月18日 | 心のしくみ
<Q> 鏡で左右が反転して見えるのはなぜ?(名古屋市・男性)

<A> 物理的には、鏡で反転するのは上下や左右ではなく前後です。写真を見ると、Fの形はそのままで表と裏の色だけが逆転しているのが分かります。鏡で自分の背中が見えないのは前後が逆転しているからです。では、なぜ左右が逆転して見えるのでしょうか。

 その心理的な仕組みは複雑で、プラトンが議論して以来いまだ定説がありません。高野陽太郎・東京大教授が実験すると、鏡の中の自分を見て「左右逆転していない」と答える人が三-四割もいました。こんな事実も長い間知られていませんでした。

 数々の左右逆転実験の末、「すべてを説明できるのは、三つの異なる原理の組み合わせ」と高野教授。人が映れば「無意識に鏡の中の人の視点になる」、文字が映れば「記憶の中の形と比べる」など、場合により別の原理が働いて左右逆転して感じるのです。

 日常生活では鉄棒でもしない限りまず上下逆転は経験しません。だから鏡の像を見たとき、自然に左右を反転させるように視点を切り替えたり、形を比較したりすると考えられます。

[中日新聞 2008年11月18日]
http://www.chunichi.co.jp/article/technology/science/CK2008111802000167.html

フラワーアレンジメント:笑顔の花、咲かすリハビリ 脳障害に効果、特許を申請=花き研究所

2008年11月15日 | 心のしくみ
 生花を飾り付けるフラワーアレンジメントが、アルツハイマー病など脳の病気のリハビリ効果を高める--。独立行政法人・花き研究所(茨城県つくば市)の望月寛子研究員(33)らのグループがこんな可能性を突き止め、このほど特許を申請した。脳障害を持つ人の心を癒やすことも確認され、望月さんは「バランスに気を配りながら花を挿すことが、脳を活性化させるのでは。さらに新しい活用法や効果を実証したい」と意気込む。【石塚孝志】

 望月さんは神経科学と心理学が専門で、別の施設で記憶障害のリハビリを研究していたが、花き研の研究内容に興味があったため移り、花を使ったリハビリを考案した。

 障害者は指導者の説明を受けて、スポンジに付けられた丸や三角などの印に従って順番に切り花を挿したり、工程図を頼りに独力で作品を完成させる。精神科デイケアに通う10~50代の統合失調症患者約10人を対象に2週間で4回、この手法を実施したところ、聴覚と視覚の短期記憶の成績が大きく向上した。

 茨城県美浦(みほ)村のケアステーション・コナンでは、10月から高次脳機能障害のある通所者18人にこのリハビリを始めた。望月さんの指導で、赤いカーネーションとピンクの菊の切り花、濃い緑と薄い緑の葉を順番に挿すと、普段は表情を示さない患者が笑顔を見せた。望月さんは「通常のリハビリでは、無気力感や絶望感を抱くこともあるが、この手法では楽しい、うれしいといった気持ちを呼び起こすようだ」と話している。

[毎日新聞 2008年11月15日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20081115dde041040036000c.html

鼻詰まり:片方が脳の働きでカバー=東京大学

2008年11月13日 | 心のしくみ
 右の鼻が詰まっても、左の鼻だけでにおいをとらえられるように脳の感度が高まることを、東京大の研究チームがラット実験で突き止めた。鼻詰まりを起こしても、危険なにおいをキャッチするなど、身の回りの環境変化を絶えず察知するのに役立っていると考えられる。12日付の米専門誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に掲載された。

 ヒトもラットも、においの情報は鼻腔(びくう)にある嗅(きゅう)細胞から、大脳の嗅皮質と呼ばれる場所に伝わって認識される。通常は、右の鼻から入ったにおいは右側の嗅皮質、左の鼻からのにおいは左側の嗅皮質で処理される。

 研究チームは、ラットの右の鼻の穴に膜を張り付けて空気の出入りをなくし、鼻詰まりと同じ状態にした。続いて嗅皮質に電極をつけ、神経細胞の反応を調べた。においの情報が入らない右の嗅皮質はほとんど反応を示さなかったが、2~3分たつと、右の嗅皮質にある神経細胞の約30%がにおいの刺激に反応し始めた。

 森憲作教授(神経科学)は「鼻の通気状態に対応して、どちらから信号を受け取るかが素早く切り替わるようだ。切り替わらないと脳の嗅皮質の半分が休んでしまう。においを十分に認識するには、両方働くことが重要と考えられる」と話している。【下桐実雅子】

[毎日新聞 2008年11月12日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20081113k0000m040118000c.html

だいたい正しい 世界最低速の計算機(コラム)&イグ・ノーベル賞を受賞=理化学研究所

2008年11月04日 | 心のしくみ
 世界がスパコンの速さを競う中、理化学研究所で「世界最低速の計算機」が開発された。そのうえ、単細胞でときどき間違えるのが特長という。まるで私のようだ-と思ったら大正解。人間の脳のように情報を処理する未来の計算機のヒントがその中にあるのだという。 (永井理)

 地下の一室。ガラス扉のついた箱の中に、防犯カメラのようなものが下向きに付けられた装置がある。「これが世界最低速の計算機です」と原正彦さん。物質の“揺らぎ”を利用した研究を進める国際連携研究グループのディレクターだ。

■動く粘菌
 カメラの真下の台にはボタンほどの大きさの金色の円盤がある。「中心に小さな粘菌を置いて計算をさせています」。実際に計算機を作った青野真士(まさし)研究員は説明する。この円盤がコンピューターチップだという。カメラで粘菌の動きを検知して全体を制御する。

 粘菌はアメーバ状の単細胞生物。一、二分の周期で伸び縮みを繰り返しながら、体をどろどろと変形させて移動する。目立たないが野山に普通にいるという。しかし計算ができるとは?

 八年前、北海道大の中垣俊之准教授らは粘菌が迷路を解くことを発見した。迷路に粘菌を入れ、入り口と出口に餌を置く。粘菌は迷路全体に広がるが、餌を見つけると、その二点を結ぶ最短経路に沿って縮んで効率よく栄養をとる。この発見で中垣さんは今年のイグノーベル賞に輝いた。

 伸び縮みして答えを探す。この計算機もそこは共通だが、何度も伸縮を繰り返すところがポイントだ。

■問題に挑戦
 計算機は「巡回セールスマン問題」を解いているところだった。四つの都市ABCDを一度ずつ訪ねて元に戻る場合、どう回れば効率的かを決める問題。都市数が増えると計算量が急増する難問だ。

 円盤を詳しく見ると中央に十六本の放射状の溝があり、中心に縮まった粘菌がいる。溝にはA1~A4、B1~B4、C1~C4、D1~D4の番号がついている。例えばB3は「B市を三番目に訪問する」ことを指す。

 やがて粘菌が、いろいろな溝に“手”を伸ばし始める。図中央の答えのように最終的に「A4、B3、C2、D1」の溝に手を伸ばすと、DCBAの順に都市を回るという答えを表す。

 同じ都市は二度訪問できない。Aの溝を二度選ばないよう、いったんAを選ぶと、ほかのAの溝に自動的に強い光が当たる。粘菌は光を嫌うので残りのAには手を出しにくい。こうしてルールを与えると、一時間ほどで四本の溝に手を伸ばして答えに達する。

 普通の計算機はこれで終わるが、この計算機は違う。伸縮を繰り返す性質のため、粘菌は再び手を縮めて答えをご破算にし、別の答えを探し始める。

 この問題は正解の逆回りも正解だ。そんな残りの解も探す。途中たまに間違って少し遠い道順を示したり、ごくたまに最悪の遠回りを選ぶこともある。この計算機は「だいたい正しい答え」を見つける能力を持つのだ。

 原さんは「サッカーで最適なパスを厳密に計算すると時間がかかる。人間はだいたいよさそうなコースにパスを出し、十回に一回ぐらい得点を得る」と、その能力の重要性を説明する。今の計算機の苦手な分野だ。

 粘菌は、体のある部分を縮め、タイミングを合わせて別の部分を膨らませて移動する。「収縮や膨張が伝わる様子は、脳の神経を信号が伝わるパターンそっくり」と青野さん。時間がかかるのが泣きどころだが「粘菌の動きを支配する仕組みが分かれば、もっと速い材料で置き換えられる」と、生物学者や物理学者とも研究を進める。

 本物のセールスマンなら「DとBが近ければうまく回れるのに」とボヤくかも-と思ったら、そんな機能も研究中という。粘菌の動きに応じて都市間の距離設定を変え、それぞれの場合に最短順路を決めさせるのだ。

 自ら問題を設定して考えられれば、応用は大きく広がり、また一つ人間に近づく。

<記者のつぶやき> 粘菌の揺らぎで計算する。間違うし愚痴もこぼす。二度計算しても同じ答えを出すとは限らない。何とも言い難い魅力がある。

[中日新聞 2008年11月04日]
http://www.chunichi.co.jp/article/technology/science/CK2008110402000183.html


【「単細胞が迷路解く」受賞 イグ・ノーベルで中垣氏ら】
 【ケンブリッジ2日共同】ユーモアにあふれた科学研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」の授賞式が2日、米マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大で開かれ、アメーバのような動きをする単細胞生物「真正粘菌」が迷路の最短距離を導き出すことを発見した研究で、北海道大の中垣俊之准教授ら6人が認識科学賞を共同受賞した。

 人間にとっても難しい迷路の探索を、脳も神経もない粘菌ができることを発見した点が評価された。受賞あいさつで、中垣氏が「日本の辞書で単細胞は頭が悪いと書かれているが、単細胞はわれわれが考えてきたよりずっと賢い」と話すと、数百人の観客から拍手と歓声を浴びた。

 中垣氏らの研究では、3センチ四方の迷路に粘菌を置くと、最初はすべての道に体を伸ばす形でふさいでしまうが、迷路の入り口と出口に食べ物を置くと、最短距離だけを結ぶようになった。

[共同通信47NEWS 2008年10月03日]
http://www.47news.jp/CN/200810/CN2008100301000200.html

理化学研究所/北海道大学 プレスリリース
■理化学研究所プレスリリース
粘菌が迷路を最短ルートで解く能力があることを世界で初めて発見
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2000/000926/index.html



世の研究室では、ほんとうにさまざまなことが研究されているんですね。
粘菌‥脳も神経も無いとはいえ、生命の持つ能力の不思議と、この現象を発見した研究グループの探究心に感動しました。
二年連続受賞、っていうのもなんだか嬉しいですね。

美しい思い出 浸りすぎ注意 記憶障害の原因に=理化学研究所

2008年11月04日 | 心のしくみ
 過去の記憶を思い出す頻度が増えると、記憶障害を引き起こすタンパク質が脳にたまりやすくなることを、理化学研究所の研究チームが明らかにした。振り返ってばかりではいけないようだ。

 年を取ると「タウ」というタンパク質が脳の嗅(きゅう)内野と呼ばれる部分に蓄積し、記憶障害を引き起こすとされる。だが、タウタンパク質が蓄積する仕組みは分からなかった。

 研究チームは、長時間呼び起こした過去の記憶が再び脳にしまわれるとき、タウタンパク質を蓄積しやすくする「GSK-3β」という酵素の働きが活発になることを、マウスの実験で突き止めた。

 この結果から、じっくりと過去の記憶を思い出す回数が多いほど、タウタンパクが蓄積しやすいといえる。一般的に年を取ると経験が豊かになるため、記憶を呼び起こす機会も増える。これが加齢による記憶障害の仕組みではないかという。

 研究チームの木村哲也さんは「過去の思い出に浸っているよりは、前向きに新しいことを考えたほうが脳にはいいようだ」としている。

[中日新聞 2008年11月04日]
http://www.chunichi.co.jp/article/technology/science/CK2008110402000179.html

理化学研究所 プレスリリース
記憶の再固定化のプロセスが加齢に伴う記憶障害に関与
- 記憶の再固定でタウタンパク質リン酸化酵素「GSK-3β」を活性化 -
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/081028/index.html
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/081028/detail.html



ちょっと新聞のタイトルは実験の内容とイメージが違うような気がして(笑)。
迷路学習、恐怖条件付け課題の後、長期記憶、恒久記憶へ固定されても、その記憶が呼び出されるときに不安定化するのだそうです。なぜこのような仕組みになっているのかは不明だそうですが、脳はいつでも新しい情報を柔軟に取り込めるようにできているのでしょう。
加齢に対応したライフスタイルは、古い記憶の取り出しではなくて、新しい経験を脳が受け入れる方が効果的かもしれません、ということですね。例えば、お姑さんが昔の話を持ち出してお説教するのは脳の機能にちょっと良くない、ということでしょうか。

タラソに精神安定効果=琉球大学

2008年11月01日 | 心のしくみ
投薬に頼らない治療を実証
 タラソテラピー(海水などを利用した自然療法)で、心の状態を安定させるとされる脳内物質「セロトニン」が顕著に増加するとの結果を31日、荒川雅志琉球大准教授(健康保養科学)らの研究グループが明らかにした。

 沖縄の海が心の健康にも効果を発揮する可能性を示したものとして注目されそうだ。7日、福岡市内である日本公衆衛生学会で発表される。

 セロトニンは、同じ脳内物質で快楽の情報を伝えるドーパミンや、不安などの感情に関係するノルアドレナリンの分泌をコントロールして精神状態を安定させる働きがある。現代病として知られるうつ病の人の多くにセロトニンが低下する傾向が認められることから、うつ病の投薬治療に利用されることもある。

 研究グループは、県内に住む30―50歳の男女計45人を(1)少なくとも週3回、海水中のエアロビクスなど計60分間のタラソを行うグループ(2)陸上で同様のリズム運動を行うグループ(3)何もしないグループの3群に分け、今年1―3月の10週間実験を行い、実験開始前と後に血中セロトニンの量を比較した。

 その結果、タラソを行った(1)グループはセロトニンが開始前より11%増えたのに対し、(2)と(3)のグループはほとんど変化がなかった。

 改善が水中での運動によるものか、海水中の何らかの成分によるものかなどは今後研究が必要だが、荒川准教授は「投薬に頼らない治療プログラムの可能性があることを実証できた」と指摘。沖縄の海を利用したメンタル・ヘルスツーリズムへの応用に期待を示した。

[沖縄タイムス 2008年11月01日]
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-11-01-M_1-009-1_004.html


タラソ、タラソセラピー、海洋療法、初めて聞く単語でした。wikipediaにも載ってなかったし。リラックス効果はあるかなと連想できましたが。
?‥はてさて、血液中のセロトニンの量、セロトニンの働きは、脳内のセロトニン神経の働きに影響を与えているのでしょうか‥。
確かに沖縄の海水中でぼ~っとしているのがうつには良いのかも知れませんが、そこに行くまでが大変なんですよね。え?運動もしなきゃいけないの(!)

赤い服を着た女性は「より魅力的に見える」=ロチェスター大学

2008年10月29日 | 心のしくみ
【10月29日 ワシントンD.C./米国発 AFP】
 かつて『レディー・イン・レッド(赤いドレスの女)』というバラード曲が大ヒットしたが、このタイトルに全く新たな意味が付与されることになった。男性にとって、赤いドレスを着た女性は「ホット」である、科学的に言えば「魅力的に見える」という研究結果が、28日発表されたのだ。

 米ロチェスター大学(University of Rochester)の研究チームは、若い男性を対象に、「女性を見る目」に赤色がどのような影響を与えるかについて5種類の心理実験を行った。

 実験では、そこそこ魅力的な女性の写真を、背景色だけ赤色、白色、灰色、緑色に変えたものを、被験者に短時間見てもらい、どれがいちばん魅力的かを答えてもらった。すると、赤い背景の女性で最も肉体的・性的魅力を感じるとの回答が多かった。

 次に、赤いシャツを着た女性と、青いシャツを着た同じ女性を見比べてもらった。すると、被験者たちは「赤いシャツを着た女性の方をデートに誘いたい」と回答した。

■赤色と性的魅力の関係性

 研究者らは、こうした「赤色と性的魅力との密接な関係」には生物学的な根拠があるとみている。 

 たとえば霊長類のメスは、排卵期が近づくと、尻などの身体の一部の赤みが増す。これは、オスの気を引くためと考えられ、実際にオスがこうしたメスに発情する傾向が強いことが、研究で確認されているという。

 研究を主導したアンドリュー・エリオット(Andrew Elliot)教授(心理学)らは、今回の研究で、女性が男性に対して抱いてきた印象、つまり「男は性の領域ではケモノになる」との考えが裏付けられたとしている。

 研究はまた、男性たち自身は「女性には思慮深さと洗練さをもって接している」と考えたがるけれども、彼らの女性の好みは少なくともある程度までは「原始的」であるようだ、と結論付けている。(c)AFP

[AFP BB News 2008年10月29日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2533200/3477599

長期体罰の子、脳が萎縮=熊本大学、ハーバード大学

2008年10月24日 | 心のしくみ
 子どものころ長期にわたり強い体罰を受けた人は、受けていない人より脳の前頭葉の一部が最大で約19%縮んでいるという研究結果を、熊本大大学院医学薬学研究部の友田明美准教授(小児発達社会学)が米ハーバード大医学部との共同研究でまとめた。体罰と脳の萎縮(いしゅく)の因果関係を実証した研究として、体罰のあり方に一石を投じることになりそうだ。

 友田准教授は筑波大(茨城県つくば市)で開かれている「都市化社会と脳の健全育成」を主題としたシンポジウムで25日、研究結果を発表する。11月に米ワシントンでも学会発表の予定。

 研究は米国で、4~15歳のころに平手打ちされたり、むちで尻をたたかれたりするなどの体罰を年12回以上、3年以上にわたって受けた米国人の男女23人を対象に実施。磁気共鳴断層撮影装置(MRI)で脳の断面図を解析したところ、体罰を受けず育った同年代の22人に比べ、感情や意欲の動きにかかわる前頭前野内側部が平均19.1%、集中力や注意力にかかわる前帯状回が16.9%、認知機能にかかわる前頭前野背外側部が14.5%小さかった。

 小児期に過度の体罰を受けると行為障害や抑うつなどの精神症状を引き起こすことは知られているが、脳への影響は解明されていなかった。今回の研究で脳の萎縮がみられた人については、体罰でストレス下に置かれた脳が、前頭葉の発達を止めたと考えられるという。

 友田准教授は「研究結果は虐待の早期発見に生かせるのではないか」と話している。

■虐待発見に役立つ

 子どもの虐待に詳しい才村純・関西学院大学人間福祉学部教授(児童福祉・母子保健)の話 虐待が子どもに与える影響を客観的な証拠で示した画期的な研究だ。子どもが虐待の事実を言い出せず、親も隠したり認識がなかったりして見落とされる事例は多い。脳との因果関係を裏付けることができるなら、隠れた虐待の発見に役立つだろう。研究成果が今後、教育や福祉の分野で普遍化されていくことを期待する。

[朝日新聞 2008年10月24日]
http://www.asahi.com/science/update/1024/SEB200810230015.html

マウスの記憶の選択消去に成功、PTSDの治療に有効か=ジョージア医科大学

2008年10月23日 | 心のしくみ
【10月23日 ワシントンD.C./米国発 AFP】
米ジョージア医科大学(Medical College of Georgia)はマウスを使った研究で、マウスの記憶を選択的に消去することに成功したと、23日発行の医学誌「セル・プレス(Cell Press)」に発表した。PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、記憶に起因する障害の治療に応用されることが期待される。

 記憶は通常、獲得・連結・保持・想起(再生)の4段階に分けられる。各段階で一定の役割を果たすとみられる「記憶分子」は、これまでの研究ですでに特定されている。

 今回、研究チームは、この記憶分子と呼ばれるタンパク質の一種、「CaMKII(カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII)」の活動を短時間で操る化学的な技術を開発した。CaMKIIは脳細胞間の伝達において重要な役割を果たし、学習・記憶におけるあらゆる局面に作用する。

 チームは、CaMKIIを大量生産するように遺伝子を組み換えたマウスで、短期的・長期的な恐怖の記憶や、新たな物体認識の記憶の再生を操作できるかどうか試験した。この結果、記憶が刺激されたときに、マウス脳内のCaMKIIを操作できることを確認した。さらに脳が刺激に関連する記憶を再生する能力を観察した。

 CaMKIIの操作によってチームは、刺激に関連する記憶の再生を遮断するだけではなく、その他の記憶再生能力にはまったく影響を与えずに、該当する記憶だけを消去する技術を発見した。

 研究を主導した同大のジョー・チェン(Joe Tsien)氏は、「記憶の選択消去はもはやサイエンスフィクションの世界だけのものではない」と語る。チェン氏は1999年に学習・記憶能力を強化した遺伝子操作マウス「ドギー(Doggie)」を開発したことでも知られる。

 同チームは、今回開発した新技術はまだごく初期の段階にあると強調するが、将来的には戦争帰還兵などのトラウマ的記憶や深層心理に根付いた恐怖を消去するなど、PTSDなどの治療に役立てられることが期待されている。(c)AFP

[AFP BB News 2008年10月23日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2531231/3457955

「頭の良くなる」たんぱく=マウス実験で確認=国立循環器病センター

2008年10月20日 | 心のしくみ
 脳内で分泌され、神経細胞同士のつながり(シナプス)の形成などを推進するとされるたんぱく質が、学習能力や記憶力の向上にも関与していることを、国立循環器病センター研究所の柳本広二脳血管障害研究室長らのグループがマウスを使った実験で突き止め、20日までにオランダの医学誌「ブレインリサーチ」で発表した。
 柳本室長らは、胎児期に神経細胞の分化や成長を促し、脳の成長後にはシナプス形成を推進するたんぱく質「BDNF」に着目。遺伝子操作で作ったBDNFの多いマウスと正常なマウスを使い、学習や記憶の能力を比較した。
 縦60センチ、横90センチ、深さ20センチの実験用プールを使い、マウスが泳ぎながらプール対岸の水中に置いた10センチ四方の足場を見つける所要時間を5日間で比較した。
 その結果、最も差が大きかったのは、正常なマウスが2日目で平均111秒だったのに対し、操作マウスは43秒だった。取り除いた足場の元の場所を記憶だけで探すテストでも、操作マウスの方が多い回数たどり着き、「頭の良さ」を発揮した。
 柳本室長は「BDNFはアルツハイマー症や血管性認知症の予防にも効果がある。適正な食事や運動でBDNFが増加するとの報告もあるので、今後、安全で効果的な予防法の発見ができるかもしれない」と話している。(2008/10/20-19:59)

[時事ドットコム 2008年10月20日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008102000816

肥満の原因はドーパミン受容体=テキサス大学

2008年10月19日 | 心のしくみ
【10月19日 ワシントンD.C./発 AFP】肥満の人は食べる喜びを感じる機能が欠乏しているため、満足感を得るために食べ過ぎている可能性があるとする研究結果が、16日発行の米科学誌「サイエンス(Science)」で発表された。

 論文の主執筆者でテキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)の心理学研究者、エリック・スタイス(Eric Stice)博士によると、肥満の人々は喜びを感じさせる脳内物質であるドーパミン受容体が非肥満の人よりも少なく、非肥満の人と同等の喜びを感じるためには、食べ物や薬物など満足感を得られるものをより多く摂取する必要がある可能性があることが、研究で明らかになったという。(c)AFP

[AFP BB news 2008年10月19日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2529730/3439864

ウェブ検索は中高年の脳を活性化する=カリフォルニア大学ロスアンゼルス校

2008年10月16日 | 心のしくみ
【10月16日 ワシントンD.C./米国発 AFP】パソコンでのインターネット検索が中高年の脳を活性化するとの研究結果が、老年精神医学誌『American Journal of Geriatric Psychiatry』の最新号に掲載された。

 研究を行ったのは米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California in Los Angeles、UCLA)のチーム。研究の結果、ウェブ検索行為で脳中枢が活性化し、脳機能が刺激されるためとみられ、脳機能が向上する可能性があることも分かったという。

 実験は、神経学的に正常な55歳から76歳までの被験者24人を対象に行われた。被験者の半数はインターネット検索の経験があるグループ、残りの半数はネット検索の未経験者のグループだ。

 被験者は脳回路の変化を記録する機能的磁気共鳴画像(fMRI)診断装置を装着した状態で、ネット検索と読書を行った。その結果、ネット検索と読書の両方の行為で、全員に脳血流の変化がみられたが、ネット検索においては、検索経験者の脳血流変化は未経験者の2倍を記録した。さらに経験者グループでは、意思決定や論理思考をつかさどる脳の部位においても血流の活発化がみられた。

 このことから、ネット検索行為は神経回路に大きく影響するとの結論が導き出されたと、研究を主導したゲーリー・スモール(Gary Small)博士は話す。ただし、インターネットに慣れていることが前提だという。「ネット検索のように単純で日常的な行為が中高年の脳活動を向上させるということは、われわれの脳は年老いても学習し続ける能力があるということだ」
 
 今回の研究から、最新コンピューター技術がもたらす中高年への生理学的有効性が示唆されたと、スモール博士は期待を示す。またこの研究は、クロスワードパズルなど精神集中を持続させる複雑な活動が、脳の健康に効果的であることを新たに裏付けるものだという。(c)AFP

[AFP BB News 2008年10月16日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2529416/3435525

「求愛」の時、鳥の脳は活性化=理化学研究所

2008年10月01日 | 心のしくみ
10月1日15時17分配信 医療介護CBニュース

 鳥が「恋歌」を歌っている時、脳は幸せを感じている-。理化学研究所(理研)は10月1日、「雄の鳥が雌に求愛の歌(恋歌)を歌っている時、雄の脳内の『報酬系』の神経回路が強く活性化していることを発見した」と発表した。麻薬という人工的な刺激による場合も、求愛の歌を歌うという自然の刺激による場合も、同じように神経回路が活性化していることが分かり、理研では、「ゲームなどの習慣性や麻薬の依存性に関する脳の機能や行動の影響を知るヒントになる」としている。成果は、同日付の米国の科学雑誌「PLosONE」に掲載された。

 人間をはじめとする動物の脳は、食物や性行動など「報酬刺激」に対し、快感を得る神経回路を持っている。この回路の中で、脳内の報酬信号は、ドーパミンという神経伝達物質を含む細胞(ドーパミン作動性神経細胞)の活動が増強してもたらされると考えられている。こうした仕組みは、麻薬など人工的な「報酬刺激」によるものと同じで、ドーパミン作動性神経細胞へのシナプス伝達の増強が確認されているが、自然の「報酬刺激」でシナプスの増強が起き、ドーパミン作動性神経細胞が活性化しているかどうかは不明だった。

 理研脳科学総合研究センターの発声行動機構研究チームは、雌に求愛する時には「恋歌(direct song)」を、雌がいない時には「さえずり(undirect song)」を歌い続けるキンカチョウという鳥に着目した。同チームは、雄のキンカチョウ32羽を数日間、ほかのキンカチョウから隔離し、▽雄1羽だけでundirect songを歌わせる▽雄1羽に雌2羽を見せ、direct songを歌わせる▽雄1羽に雌を見せながらも、歌おうとすると邪魔をして歌わせない-の3つの状況について実験した。
 その結果、雄が雌にdirect songを歌ったグループと、雌を見ながらも歌わなかったグループでは、ドーパミン作動性神経細胞へのシナプス伝達が著しく増加したが、雌が不在でundirect songを歌ったグループでは、シナプスは変化しなかった。

 同チームでは、「雄が雌にdirect songを歌ったグループと、雌を見ながら歌わなかったグループで起きたシナプス伝達の増強は、1羽で数日隔離された後に雌を見たことによる雄の興奮に由来すると考えられる」としており、実験を通じて、雄が雌に「求愛」している時、報酬にかかわる脳の部位の活動が増強することが明らかになった。
 同チームでは、「研究で、麻薬で活性化される神経回路が、求愛など自然なかかわりでも、同様に活性化されることを示した。『報酬系』の神経回路がどのように増強されるか、逆にどうすると妨げられるかのメカニズムを解明できれば、ゲームなどの習慣性や麻薬の依存性によって引き起こされる行動を抑制・停止する方法を見いだすことにつながる」などとしている。

[Yahoo!Japanニュース 2008年10月01日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081001-00000000-cbn-soci

理化学研究所 プレスリリース
トリが恋歌を歌っている時、脳は幸せを感じる
- 恋を報酬と認識、ただ単なるさえずりは報酬に値しない -
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/081001/index.html
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/081001/detail.html