
世界一有名なウサギと言えば、ベアトリクス・ポターの絵本の主人公「ピーターラビット」だろう。それでは世界一有名なクマはと言えば、やはり「クマのプーさん」だろう。どちらもイギリス生まれの物語の主人公であるが、「クマのプーさん」はディズニーによるアニメ化のおかげで、アメリカ生まれの物語と思われているのではないだろうか。
「クマのプーさん」は原作者のA・A・ミルンが、息子のクリストファー・ロビンが母親と一緒に遊んでいたテディ・ベアの話をまとめたもの。プーさんの以外の登場人物(?)たちも、息子の部屋にあったぬいぐるみ(ウサギとフクロウはミルンの創造)がモデルである。ミルンは息子がプーたちとの遊びを卒業する年齢になったとき、プーの話を終わりにしている。
どんなに楽しい時間を過ごしていても、プーたちと一緒にファンタジーの世界にとどまることは出来ない。悲しい別れの時、クリストファー・ロビンはプーに「100歳になっても、きみのことは絶対に忘れない」と約束したのだが…。
時がたち、大人になったクリストファー・ロビンは優しい女性イヴリンと結婚し、臨月の彼女を残して戦場に、その間に娘のマデリンが生まれ、戦争が終わって帰ってきてからは、ウィンズロウ商会の旅行カバン販売の責任者として忙しい日々を送っていた。
週末に家族と一緒にコッテージで過ごすという予定も、仕事で同行出来なくなり妻や娘をがっかりさせる。ロンドンにひとり残って仕事に没頭するクリストファー・ロビンの前に、「森からみんながいなくなってしまった。クリストファー・ロビンならきっと見つけてくれるはず。」とプーが現れる。再会を喜びながらも、仕事の邪魔をされたくない彼は仕方なくプーを連れてコッテージのある村に向かう。
昔と変わらないおっとりとしたプーと、家族の幸せを願いながらもゆとりを無くしてしまったクリストファー・ロビン。魔法やファンタジー好きのイギリスが舞台だから、おしゃべりをする動物の登場もいつの間にか違和感がなくなってくる。
子どもの頃のクリストファー・ロビンの「何もしないことがいいのだよ」という言葉は、大人になった彼だけでなく、せわしなく現代を生きる私たちにも、「目を閉じてちょっと小休止してごらん、そしたら心のモヤモヤが晴れて大切なものが見つかるよ」と言ってくれているようだ。
ミルンがサセックスのハートフィールドに購入した別荘周辺の森は、物語にでてくる「100エーカーの森」のモデルとなり、「プー・カントリー」を訪れる観光客を喜ばせている。行きた~い!(久)
原題:Christopher Robin
監督:マーク・フォスター
原作:A・A・ミルン 「Winnie The Pooh」
脚本:アレックス・ロス・ペリー、トム・マッカーシー、アリソン・シュローダー
撮影:マティアス・クーニスバイゼル
出演:ユアン・マクレガー、ヘイリー・アトウェル、ブロンテ・カーマイケル、マーク・ゲイティス
(声)ジム・カミングス、ブラッド・ギャレッド、トビー・ジョーンズ、ニック・モハメッド