チョイさんの沖縄日記

辺野古や高江の問題等に関する日々の備忘録
 

政府の言う「辺野古本体工事着工」はウソ!---旧米軍兵舎解体工事の片づけ作業が始まっただけ

2015年11月03日 | 沖縄日記・辺野古

 10月29日以後、各報道機関は、辺野古ではとうとう「埋立本体工事」が始まったと大きく報道している。しかし、現在、始まっている作業は「埋立本体工事」ではなく、昨年から続いていた旧米軍兵舎の解体工事の後片付け作業にすぎない。防衛局は、それを意図的に「埋立本体工事」だと発表しているのだ。以下、この点について説明する。

◎「埋立本体工事」着工という政府のデマ宣伝

 沖縄防衛局は、10月28日、県環境影響評価条例に基づき、「普天間飛行場代替施設建設事業(事業の種類:公有水面の埋立て)」の工事着手届を県に提出した(着手予定年月日:「平成27年10月29日」、完了予定年月日:「平成32年10月31日」)。

 そして防衛局は、翌29日午前8時、辺野古近くの陸上作業ヤード予定地で重機を動かし、それを各報道機関に「埋立本体工事に着手」と発表するFAXを送りつけた。その日の夕刻からのテレビや翌朝の新聞報道は、「辺野古本体着工」のニュースで溢れた。そこでは、「日本政府は1996年の合意以来、初めて辺野古で埋立の本体工事に着手」「曲折19年 着工押し切る」(朝日新聞)というように、まるで辺野古・大浦湾ではとうとう埋立工事が始まったかのような報道となっている。沖縄県民はともかく、本土の人たちはほとんどが「勘違い」をしているのではないだろうか。

 シュワブ基地の辺野古近くの一帯には、当初、15棟の旧米軍兵舎が建っていた。この場所は飛行場の滑走路部分となるため、昨年から解体工事が続いている。その跡地を整備し、埋立工事に使用するコンクリートブロックの製作・保管場所とするのが陸上作業ヤード整備工事だ。防衛局は、29日に陸上作業ヤード予定地で重機を動かしたことを、「陸上作業ヤード整備工事は環境影響評価書では『公有水面の埋立』に含まれているので、『埋立本体工事』が始まったこととなる。」という理屈で、「本体工事着工」と発表したのだ。

◎始まったのは旧米軍兵舎解体工事の後片付け作業にすぎない---現場写真からも明らか

 陸上作業ヤード整備工事を「埋立工事」と称するのは問題だが、実は、今回始まっている工事は、陸上作業ヤード整備工事でもない。旧米軍兵舎解体工事がまだ完了しておらず、その後片付け作業をしているにすぎないのだ。 

 私は、11月2日(月)、3日(火)と大浦湾に船を出し、フロートの引き出し作業の阻止行動を続けるカヌー隊をサポートしながら、陸上作業ヤード予定地で始まった防衛局の作業の様子を観察した。下の写真は、11月3日(火)の現場写真である。 1枚目の写真では、まだ解体工事で発生した廃棄物が散乱し、コンクリートの殻が山になっている。バックホーの向こうに見えるオレンジ色の機械は、移送式のコンクリート破砕機であろう。3枚目の写真は鉄筋コンクリートを解体して発生した鉄筋屑だ。

 これらの写真を見ると、現在始まっているのは、旧米軍兵舎解体工事で発生したコンクリート殻や廃棄物の片づけや、コンクリート殻の破砕作業であることが分かる。

◎監理業務の入札が始まったばかり。陸上作業ヤードの工事は早くても12月から

 陸上作業ヤード整備工事は、1工区、2工区に分かれており、昨年末に業者との契約は終わっている。しかし、まだ工事には入ることができない。これらの工事の特記仕様書では、工事監理業務を別途委託契約すると明記されている。防衛局は現在、「シュワブ(H27)陸上仮設ヤード整備監理業務」の入札公告を行っている(沖縄防衛局のHPより入札公告情報参照)。これが、陸上作業ヤードの工事監理を業者委託しようとするものだが、開札は11月20日であるから、実際の契約は早くても12月初めとなる。防衛局自らが、陸上作業ヤードの工事開始は12月以降というスケジュールを立てているのだ。

 このことからも、現在始まった作業が陸上作業ヤード整備工事でないことは明らかである。

◎文化財調査が終わるまで陸上作業ヤード整備工事には着手できない

 この陸上作業ヤード予定地では、名護市教委が7月7日から文化財確認の試掘調査を行っている(来年2月末までの予定)。しかし、旧米軍兵舎解体工事のコンクリート殻等があちこちに積まれているため、68ケ所の予定地のうち半分ほどしか試掘できず、他の調査地に移らざるを得なかったという。従って、旧米軍兵舎解体工事の殻等の片付けが終って一帯が更地になれば、まず、名護市教委が残された箇所の試掘調査に入ることとなる。それが終わるまで防衛局は工事に入ることはできない。さらに名護市教委の試掘調査で重要な文化財等が発見されれば、現状保存が無理な場合でも、記録保存のための本格的な調査が必要となる。

 一方、碇石が発見された陸上作業ヤード予定地のすぐ横の海辺を、名護市教委が10月中旬に踏査した際、数点の土器や石器が見つかった(11.3 沖縄タイムス)。県教委が一帯を遺跡と認定する可能性が高いと報道されているが、その場合は、市教委と県教委による試掘調査や本調査が行われる。陸上作業ヤードの予定地もそのすぐ横であり、ここでも本格的な調査が必要になるだろう。

◎政府・防衛局は、何故、「埋立本体工事着手」というウソの発表をしているのか

 以上、述べてきたように、今、防衛局が行っている作業は、埋立本体工事でないことはもちろん、陸上作業ヤードの工事でもない。旧米軍兵舎解体工事の後始末をしているにすぎない。

 それを、「埋立本体工事着手」と言い続けている理由はもう明らかだ。「埋立本体工事がとうとう始まってしまった」ということを県民だけではなく、国民全体にも、「今さら反対しても遅いのではないか」というような諦めの意識を拡めるためのものであろう。

 また、10月29日、菅官房長官はグァムを訪問し、アメリカ下院の有力議員と会っている。そこで、菅官房長官は、「本体工事に着手した」ことを説明した。また、11月1日には、カーター米国防長官が「埋立工事に着手したことを歓迎し、---日本政府の取り組みにとても感謝している」と述べたという(11.2 タイムス)。一刻も早く、アメリカ政府に埋立工事着手を報告しようとしたのであろう。

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(11月3日(火)は、「平和丸3号」で海に出た。防衛局の作業もなく、波が高くなってきたので午前中で行動を終えた。)

 

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