知事が設計変更申請を不承認とした最大の理由は、大浦湾で海面下90mまで軟弱地盤が続いている最も重要なB27地点で、地盤の強度を調べるボーリング調査が行われていないということだった。防衛局はB27地点で、地盤の強度を調べるボーリング調査を実施せず、コーン貫入試験をしただけで、離れた3地点のボーリング調査のデータから、B27地点の強度を類推したにすぎない。
知事は設計変更申請の審査の過程で、「防衛局はB27地点のせん断強さについて離れた3地点の力学的試験の結果から類推しているが、それでも作用耐力比は0.992と厳しい条件となっている。このことからB27地点での三軸圧縮試験等の土質の再調査が必要ではないか?」と質問したが、防衛局は、「B27地点でのボーリング調査の必要はない」(2021.1.22)と主張し、調査を拒否し続けた。
ところが8月下旬から大浦湾に2隻のボーリング調査船が入ってきている。以前、大浦湾の深場で傾動自在型工法によるボーリング調査を行った際と同タイプの調査船である。「沖縄ドローンプロジェクト」がドローンで位置を測定したところ、まさにB27地点近くで作業を始めていることが判明した。
地元紙が防衛省に照会したところ、防衛省も「護岸予定地付近の一部で土質調査を実施している」と認めたという(2024.9.8 琉球新報)。あれだけ調査を拒否し続けたB27地点近くでボーリング調査を実施せざるを得なくなったのだ。
防衛局は、最も深刻な軟弱地盤の地点でボーリング調査を実施すると不都合なデーターが出ることを恐れて、離れた3地点のデーターで類推できるとして、ボーリング調査を拒否し続けてきた。そして、代執行で国が知事に代わって設計変更申請を承認するという強引な手法を採ったのだが、防衛局も、やはりボーリング調査でB27地点周辺の地盤の強度を確認しないと安定性に確信が持てないのだ。
B26地点やB28地点のボーリング調査結果から見ても、B27地点で標準貫入試験等を実施すれば、地盤があまりに軟弱であることが明かになるだろう。設計の見直しが求められることは必至である。
防衛省は、「今回のボーリング調査結果の公表は予定していない」(2024.9.8 琉球新報)と言っているようだが、大浦湾の護岸の安定性が問われるものであり、調査結果は速やかに沖縄県に報告し、公表しなければならない。
調査結果により設計の見直しが必要となる。しかし、再度の設計変更申請で済むことではなく、辺野古新基地建設事業が頓挫する可能性が高まってきたといる。
少なくとも、今回のボーリング調査結果により護岸の安定性を照査するまで、大浦湾の全ての工事は中止するべきである。