チョイさんの沖縄日記

辺野古や高江の問題等に関する日々の備忘録
 

北部訓練場着陸帯移設事業事後報告書に対する意見書。23日の審査会の傍聴を!

2013年08月21日 | 沖縄日記 高江

                          (輝くやんばるの森  7月31日撮影)

 北部訓練場でのヘリパッド工事に関して、防衛局は、県条例ではアセスの対象事業ではないとしながらも、「自主アセス」と称する環境影響評価を行った。

 先日、その「事後調査報告書」が公表されたが、知事が県の環境影響評価審査会に審査を依頼し、審査会は、8月15日、16日と現地への立入調査を行うなどの作業を開始している。そして、23日には、審査会を開催して審査することとなったが、それに向けて住民から事後報告書への意見を受け付けるという。

 「事後調査報告書」は防衛局のHPで23日まで公表されている。

・北部訓練場着陸帯移設事業に関わる事後調査報告書

 また、県の審査会の内容については、以下の沖縄県のHPを参照されたい。

・沖縄県環境影響評価審査会の開催について

・事後報告書への意見の受付について

 

 意見書の提出期間は22日までだからあまり時間がないが、23日の審査会には是非、傍聴においでください。

 8月23日(金) 午後1時半~ 沖縄県自治会館

 

 (8月20日早朝の大山ゲートでの抗議行動。21日は台風のため休ませてもらった。)

 

*********

以下、21日に作成した私の意見書を掲載する。 

 

沖縄県環境影響評価審査会 様                                                2013年8月22日 

北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)に係る事後調査報告書に対する意見 

                                                那覇市  ●● ●●

 

 私は、ある自治体の土木技術職職員として30年以上、勤務してきたものですが、「北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)に係る事後調査報告書」(以下、「事後調査報告書」)は、土木工学的にみても非常に問題が多いものです。次のとおり意見を述べますのでご検討ください。 

                          記 

 

第1 本年1月に発生した造成中のN-4.1地区ヘリパッド内での土砂崩落事故の原因究明の必要性について

 本年1月、造成中のN-4.1地区のヘリパッド内で土砂崩落事故が発生し、大量の赤土が40mほど下の谷まで流出しました(添付写真参照)。この崩落事故については、その後、沖縄県当局、東村村長、野党国会議員団、県議会土木委員会等が現場視察を行うなど大きな問題となりました。ところが、防衛局は、これらの現地調査に際して写真の撮影を禁止するなどの非協力な態度を続け、事故の原因や今後の対策等について十分な情報も出していません。

 このような崩落事故の発生は、環境影響評価書でも全く想定されていなかったものであり、今後の6ケ所のヘリパッドの安全性、自然環境に与える影響等について、根本的な見直しが必要となっています。

「事後調査報告書」(8-1頁)のこの崩落事故についての記述は全く不十分な内容で、このままでは今後も同様の崩落事故の再発が危惧されます。

  

 この事故に関し、審査会が、以下の点について十分な検証を行われるよう要請します。 

 

1 「事後調査報告書」は、この土砂崩落事故の原因、今後の対策等に全く触れていない

 「事後調査報告書」では、「第8章 事後調査の結果により必要となった環境の保全のための措置」(8-1頁)でのこの崩落事故について触れていますが、わずか10行ほどの簡単なもので、この土砂崩落事故が発生した原因についての検討が全くされていません。

 また、「第4章 事業の実施の状況」(4-1頁)では、昨年度のN-4.1地区のヘリパッド工事について10頁にわたって説明していますが、そこではこの土砂崩落事故について全く触れていません。

 審査会として、独自に、この崩落事故の原因等を調査されるよう要請します。

 

2 土砂崩落事故の修復措置が不十分であること

(1) 「板柵とシート」だけの修復措置では不十分

 「事後調査報告書」(8-1頁)では、この土砂崩落事故の修復措置について、「土砂の崩落を防止するための板柵を設置するとともに崩落箇所を復旧し、復旧した斜面及び崩落した土砂の表面には、崩落の防止のため、植物の生育を阻害しないシートの敷設や在来種の播種を行った」と説明しています。

 しかし、板柵とシートだけの修復では、全く不十分なものであり、今後も同様の崩落事故の再発が危惧されます。

 たとえば、一昨年の秋、県道70号線の高江の北・安波の集落手前で、同様の崩落事故が発生しました。崩落箇所の法面の勾配や高さ等はN4-1地区の崩落事故とよく似たケースでしたが、この崩落事故で沖縄県は、下の写真のように、斜面の下部に深さ10mほどのコンクリート杭を密な間隔で打ち込み、上部をコンクリートで抱いて法面の土留めとする復旧工法を採っています。この事例から見ても、今回のN-4.1地区の崩落現場の復旧方法に問題があることは明らかです。

 このような不十分な復旧方法のままでは、今後、豪雨等の際に再度の崩落事故が起こることが危惧されます。  

(2) 他の斜面でも土砂崩落の恐れ

 N4.1地区ヘリパッドの平面図を見ても分かるように、今回、土砂崩落事故が発生した左右にも、全く同様の勾配、地形の斜面が続いています。そこでも同様の土砂崩落事故が発生する可能性は否定できません。

  土砂崩落事故が発生した斜面の修復だけではなく、これらの左右の斜面でも、崩落事故の発生を防止する措置が必要です。 

(3) 流出した赤土の撤去がされていない

 添付の事故現場写真でも分かるように、この事故によって、大量の赤土が40mほど下の谷まで流出しました。防衛局の資料でも、谷底に土のう等を並べているようですが、これらの流出した大量の赤土はそのまま放置され、環境に影響を与え続けています。審査会として、防衛局に、谷に流出した赤土の撤去を求めてください。

 

3 審査会委員の現地立入調査の際の会長のコメントの疑問

 審査会は、8月15日、16日の2回にわたって、現地立入調査を行いました。新聞報道では、宮城会長は、この崩落事故の復旧措置について、次のようなコメントを出されています。

  「今年1月に土砂崩れが確認されていたN-4.1地区付近について、宮城会長は『板の角度がきついが、土留めで流れを止めているので問題ない』と話した。」(2013.8.16 琉球新報)

 宮城会長は、本当にこのような「問題ない」というコメントを出されたのか? 出されたとすれば、「問題ない。」と判断された根拠は何か? これらの点について十分に説明してください。

 

4 N-4.1地区のヘリパッドを供用開始しないよう求めること

 武田防衛局長は本年7月4日の定例記者会見で、このN-4.1地区のヘリパッドを米軍に提供し、先行運用させることを表明しました。「ヘリパッドいらない住民の会」や県選出野党国会議員団は、8月16日に武田防衛局長に抗議の申し入れを行いましたが、その際も、防衛局長は先行運用の可能性を否定しませんでした。

 しかし、前述のように、このように、N-4.1地区のヘリパッドは再度の土砂崩落事故が発生する恐れが強い危険なものであり、このままの状態でオスプレイの離発着訓練を行うことは認められません。審査会として、知事が、防衛局にこのヘリパッドを供用開始しないよう申し入れるよう答申してください。 

 

第2 今年度造成予定のN-4.2地区ヘリパッド工事の危険性について

1 急峻な崖の上での大規模森林伐採---崖の崩壊の恐れ

(1)  平面図でも分かるように、今年度に造成が予定されているN-4.2地区ヘリパッドは、東側の高さ約20mの切り立った崖の上に位置しています。

 今年度造成予定のN-4.2地区ヘリパッドの平面図(開示された今年度工事の設計書に加筆着色したもの) 黒い太線部分が直径75mのヘリパッド。崖の上部の緑色部分の森林が全面伐採される。

 この崖は、等高線から傾斜を測定すると45度から60度近い急峻なもので、しかも土質は岩盤ではなく、赤土からなっています[1]

 N4.2地区ヘリパッドは、この崖の上の森林を伐採して造成されます。しかも、森林伐採面積は、昨年度のN4-1地区よりも5割以上も多い大規模なものです。

 森林伐採面積

 N-4.1地区

  1,171㎡(「密度:密」)

 N-4.2地区

  1,871㎡(「密度:密」)

 

  

 

 

   

 このように急峻な崖の上の森林を大規模に伐採して直径75mものヘリパッドを造成すれば、崖が崩壊する恐れがあります。N4-2地区ヘリパッドの造成はきわめて危険であり、審査会として、工事中止を求めてください。 

(2)   私たちは、8月20日、県の環境政策課と話し合いました。県の担当者によると、審査会が現地立入調査をした際、審査会の委員さんたちは、上の方からざっと見降ろしただけで、谷に下りて崖の状況を確認されていないということでした。また、審査会には、土木関係の委員さんが2名、地質関係の委員さんが1名おられるとのことですが、現地立入調査にはそのうち1名の委員さんが来られただけということも聞きました[2]

  8月16日、武田防衛局長は、私たちに対して、「この崖の状況についての資料や設計の際の資料などを提供し、説明の場を持つ」と約束しました。審査会としても、防衛局に、この崖の状況についての資料の提出を求め、土木、地質関係の委員さんを中心に、再度の現地立入調査を行って、この崖の安定性について調査されるよう要請します。

 

2 掘り起こした赤土を路体、路床部の盛土に使用することの問題

 今年度のN-4.2地区のヘリパッド造成工事では、大量の盛土が予定されていますが、その盛土材として、今回の工事で掘削する赤土や、昨年度の工事で掘削して仮置きしていた赤土を流用するとしています。しかし、いったん掘り起こした軟弱な国頭マージは、十分な締め固め密度を得ることができず、オスプレイの離発着のための路体、路床部の盛土材とすることは強度的に問題です[3]

 本年度工事の特記仕様書等によれば、「盛土の締め固めは、路床については一層仕上がり厚20cm毎、その他は30cm毎に十分に転圧すること。」、「路床部の設計CBR 3%」、「路床盛土は、最大乾燥密度の90%以上」などと定められていますが、軟弱な赤土では、これらの条件をクリアすることは難かしいでしょう。

 審査会として、この点を検証し、知事が防衛局に対して、盛土材に掘削した赤土の流用を中止するよう求めるよう答申してください。

                                                       (以上)



[1] 本年8月16日に「ヘリパッドいらない住民の会」と「うりずんの会」(県選出野党国会議員団)が行った武田防衛局長への申入れの際、防衛局は、「この崖の土質は赤土であること、推定岩盤線はかなり下であること」などを認めました。 

[2] 今年度の工事に関する赤土等流出防止条例にもとづく防衛局から事業行為通知書が提出され、県の環境保全課が7月18日に現地立入調査を行っていますが、その際も、環境保全課は、私たちの要望にもかかわらず、この崖の調査は行っていません。 

[3] たとえば、琉球大学農学部等でも、国頭マージの物理性性質や盛土材料への適用性等に関する研究が続けられています。それらの研究成果でも、「細粒分の多い国頭マージをそのまま盛土材として使用することは問題が多く、礫材料の混合による土性の改良が望ましい。」とされています(宮城調勝等「沖縄地方の残積土の締め固め特性と盛土材料への適用性について」(農業土木学会論文集 153号))。

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