辺野古の埋立土砂は、本部町から名護市に広がる琉球セメント安和鉱山から出されている。下は同鉱山周辺の上空からの写真だが、その広大さには驚く。美ら海水族館に続く国道を走っていても、ひっきりなしに続くダンプトラックや粉じんに悩まされる。県内で最大の観光地の近くにこんなとんでもない景観が続いているのだ。
今後、辺野古の埋立土砂のほとんどが県内調達となった場合、この周辺一帯の山はさらに見るも無残に破壊されてしまう。
安和鉱山は石灰岩を産出しているので、知事が認可する採石法ではなく、国が認可する鉱業法が適用される。
下の図は、沖縄総合事務局で入手した安和鉱山の鉱区図謄本(一部)。朱線が本部町と名護市の境界線である。ちょうど中央部に採石事業によりできた広い平坦地があり、その北側にベンチカット方式で採掘した後の段状の地形が続いている(この一帯は、上の写真でもはっきりと分かる)。
森林での開発行為については、森林法でその手続きが定められている。地域森林計画の対象となっている民有林は、保安林以外の普通林であっても、水源の涵養・災害の防止・環境の保全などの公益的機能を有していることから、1ha以上の土地の形質変更を行うためには林地開発の手続きを行い知事の許可を受けなければならない。これは、鉱山や採石場での採掘行為にももちろん適用される。
下の図2は、沖縄県森林管理課で入手した安和鉱山付近の森林計画図である。名護市と本部町の境界線から北側の本部町一帯が地域森林計画の対象として指定されている(緑色部分)。中央部の平坦地とその北側の段状の土地の辺りも地域森林計画の対象地である。
中央部の平坦地と段状の土地は、地域森林計画の対象地であるが、地形図を見てもすでに開発されてしまっている。当然、このような土地の形質変更にあたっては林地開発の手続きが行われているはずだが森林管理課で確認したところ安和鉱山で林地開発手続きが行われたことはないという。
林地開発制度は昭和49年に始まった。それ以前に開発されていた場所は林地開発手続きの必要はない。しかし、国土地理院で琉球政府時代から現在までの名護市周辺の地形図の抄本を調べたが、中央部の平坦地とその北側の段状の土地で採掘が始まったのは平成に入ってからであることが確認された。
これはいったいどういうことだろうか? 森林法に違反して開発行為が行われたとしか考えられない。
知事の許可がない地域森林計画対象地の開発行為は、懲役・罰金刑の罰則規定まである重大な違法行為である(森林法第10条の2、第206条)。違反行為があった場合、知事は、開発行為の中止と原状回復を命じることができる(10条の3)。
沖縄平和市民連絡会は、昨日(3月30日)、知事に対してこの問題について早急に調査するよう下記のような要請書を提出した。来週にでも意見交換の場を持つこととなっている。
( 参考までに昨年5月に訪問した奄美大島の採石場の写真を添付する。入口部分には、林地開発許可の標識が出されている。この標識設置は、林地開発行為実施要領でも設置が義務づけられているものだ。しかし琉球セメント安和鉱山にはこの標識は設置されていない。)
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沖縄県知事 玉城デニー様 2020年3月30日
沖縄平和市民連絡会
琉球セメント安和鉱山の林地開発問題についての要請
日々の県政運営に心からの敬意を表します。
さて森林法では、保安林以外の普通林であっても地域森林計画の対象となっている民有林は、水源の涵養・災害の防止・環境の保全などの公益的機能を有していることから、1ha以上の土地の形質変更を行うためには知事の許可を受けなければならないと定められています。
図1は、名護市から本部町にかけてひろがる琉球セメント安和鉱山の鉱区図(謄本)、図2はその部分の森林計画図です。名護市と本部町の境界付近に、採石事業によりできた広い平坦地と段状の土地がありますが、本部町側のほとんどが地域森林計画の対象地になっています。
ところが、沖縄県農林水産部森林管理課に問い合わせると、琉球セメント安和鉱山に対する林地開発許可は出ていないとのことでした。知事の許可がない地域森林計画対象地の開発行為は、罰則規定まである重大な違法行為であることから(森林法第10条の2、第206条)、この問題を放置するわけにはいきません。
この問題について、以下のとおり要請をします。
記
1.国土地理院の昭和47年以降の地図の抄本(6図)を調べたところ、この平坦地と段状の土地が開発されたのは平成に入って以降であり、林地開発許可手続きが必要な時期であった。
琉球セメント安和鉱山への聞き取り等、この地域の開発の経過と、林地開発の手続きがない理由について調査を行うこと。
2.調査の結果、森林法違反の事実が確認された場合、知事は森林法第10条の3に基づき、琉球セメント安和鉱山の地域森林計画指定区域での採石行為の全面中止と、違法に開発された部分の原状回復を命じること。
以上