こわれやすいもの



昨日は母の日。小学校3年生の末娘
愛称「ルカ」から手作りのグラスを貰いました。
セラヴィより車で5分の「ガラス工房 聡」
で作らせて貰いました。

とても可愛い色合いに母はたいへん喜びました。
特に下の部分の泡が素敵と褒めると
同行した姉が泡のつくり方や、
色合いもルカが自分で選んだ事を
興奮気味に話してくれました。
それを満足げににこにこしながら、ルカは横で聞いていました。

それから数分後、事件は起こりました。
大きな音と共に「あぁ!!」と言う姉の声が響きました。
私が戻った時は既に散乱したガラスの中にルカが立っていました。

何故かグラスを口にくわえて遊んでいたようです^_^;
嬉しさに照れも入ったのでしょう。
子供は時々、こんな訳の分からない行動をするものです。

「歩いちゃダメよ!今拾うから!」
姉が言い、拾い集めようとしている手を、母が止めました。

「ルカが自分で拾いなさい!」
母は言いました。
いつもと違う厳しい母の言葉に周りが静かになりました。
ルカの目からは我慢していた涙が次から次へ流れ出しました。
母も彼女の思いは痛いほど分かりました。

「これは、ルカの不注意です。
ルカがやったのだから自分で拾いなさい」
泣きながら壊れたガラスの破片を小さな手で拾います。

「あ!血!ルカが手を切った」
姉が大きな声を上げました。
見てれば分かります。
聞こえない振りして話を続けました。
「ルカはママのお誕生日に楽焼の花瓶をくれたわね。
とても素敵でした。でもそれは2つ目の花瓶でしたね。
一つ目は、出来て直ぐに割ってしまい。
もう一度戻り、同じものを作ってくれたのでしたよね!」

そうです。以前にも同じ事をしました。
その時は陶芸店のご配慮で新たにもう一つ作らせて頂いたそうです。
小さな女の子の想いを汲んで、時間外にもかかわらず。
それも2度目は無料です。
楽焼と言えども、数時間にも及ぶ集中力を保つのは、
小さな娘には大変な事だったでしょう。
きっと母の喜ぶ顔見たさに頑張ったのだと思いました。
その時は誰もルカを攻めるものなど、居たはずもありません。
彼女が一番辛い事を皆が分かってましたから。

母は、いろいろな想いを考えながら話しました。
「「こわれやすいもの」は大事に扱わなくてはいけません。
まして大切なものなら直さらです。
ママは大切なものは大事に扱ってもらいたい。
その時の事を覚えてますか?
ルカがママを想う気持ちに皆がお手伝いしてくれましたね。
作って終わりにしないで下さい。
こわれやすい大切なものは、
最後まで「こわれやすい」と言う事を忘れてはいけません。」

コップの破片が赤く染まり
涙が床を濡らします。
ルカは小さな手で拾い続けます。

「今度は大丈夫よ。
ママはきっとルカは、誰よりも
こわれやすい大切な物を、大事に出来ると思うよ!」

最後の破片を拾い終わり、
やっと母も泣いてる娘を抱く事を許されました。
胸に顔を埋め、母の胸が泣き声を吸収します。
母の胸の奥に泣き声が響きます。
「いい子ね」と頭をなぜました。
手の傷は余りに小さく返ってビックリ、良かったです。

最後の仕上げは、姉の役目となりました。
掃除機の音が響きます。

「こわれやすいもの」は数々あります。
でも、これだけは!と言うものだけは、
最後まで大切にして欲しいと思ったのです。
大切にしている内に、壊れたのでしたらそれが
その物の持つ運命
壊れる為に生まれて来るものなど何処にも無いのです。

母の日の割れたグラスも美しいこと
母は十分幸せです。
この後、割れたグラスをこっそり箱にしまって置きました。
母の日のよき思い出の品となりました。

実は母は自分にも言っていたのです。
「こわれやすい大事なものを大切にしなさいって・・・」


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