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MONOGATARI  by CAZZ

世紀末までの漫画、アニメ、音楽で育った女性向け
オリジナル小説です。 大人少女妄想童話

GBゼロ-14

2007-10-09 | オリジナル小説
スパイラルゼロ-14




     アギュレギオン

「その続きは私が話そう」
抑制のきいた声が響き渡った。
「私だけが語れることである。」
蒼い光が部屋に満ちる。
アギュレギオンが入って来る。
光がまといつく、しなやかな足取り。
肉を持たず性を持たず、長き時間を生きる者。
「想い出話に混ぜてもらおうかと思って、やって来た。迷惑なら言ってくれ。」
二人のジュラ星人は、ハッとかしこまって脇へと退いた。この二人は互いに良く似ている。その二人がまるで左右対称に片膝を突く。
「いえ、けして。」
「私は真相を知りたい。」
シドラ・シデンは頑なにつぶやく。そんな二人をアギュレギオンの視線がなでる。
不可思議な生物のようにうごめく光の中で、アギュの顔は陽炎のように揺らめく。
陽光がちりばめられた玉虫色の中心部ははっきりとは見えない。
目をそらすわけには行かない強い光なのに、なぜかまぶしくは感じない。
そこにいるのに、はるか遠くにいるように。
伝わってくるのはほのかな暖かみだ。
最高進化体はこちらに顔を向けた。おぼろな優しい顔がかすかに微笑んだ。


そういうわけで。
ここからしばらくの間。
アギュレギオンの話を元に語るとしよう。



カプートと話をした直後、ガンダルファは体に戻り眠ってしまった。
「話はすんだかよ。」
アギュは慎重にガンダルファとドラコを肉体に戻した。
かすかな振動が伝わった。空に黒い影が渦巻いたがやがて見えなくなった。
「まさか、シドラもですか?。」
「大丈夫だ。今のバラキはオレらに何もできない。」
「そうか!ワームの力が三次元で実体化するには人の力がいるのですね・・」
カプートは感動に耐えていた。
「ワームがこちらの世界で試行する力は契約者の持てる力を利用しているわけだ・・だからか!契約者が意識を保てなくなった今、この世界と切り離されたわけですね!それが・・それが、きっとワームが契約する、その理由の一端なんだ!」
アギュはまったく、聞いてないようだった。
「いつもより深く眠ってもらった・・オレがここを離れるまでオレが押えて置く。」
「あなたは能力をずっと隠していた。その為に外界から遮断することが、あなたには必要だった。そうなんでしょ?」
「オマエにはできまい?」馬鹿にするようにアギュは息を鳴らした。
「オレの実力はオマエ達が知るよりも、もっと色々できるんだ。驚いたか。」
「はい。驚きました。」
年上に見える男は、子供のように見える男に丁寧な口を聞いた。
「くやしがるな?。」
「はい。そうでしょうね。」ケフェウスにイリト。カプートも笑った。
「いつから、知ってたんですか?」
「・・」
アギュはカプートの真剣なまざしから、寝ているガンダルファに目を移した。
「まぬけ顔だ。」
「いい奴ですよ。」カプートはそっと言い添えた。「彼は公平で平等です。」
「ジュラの人間はな!」アギュはヘッと鼻で笑う。
「オレに逆らうなんてな。変な奴ら。」
その言い方はずっと優しかった。
「ぼくのことは、いつから・・?」カプートはもう一度、問い直した。
「そうだな・・」
「アギュ」蒼白な顔をした、ユウリが現れた。
「そんな哀しそうな顔すんなよ。」アギュはユウリに向けて笑いかけた。
「あなたもお別れが言いたかったですか?」カプートも倣う。
「いえ・・」ユウリは俯いた。
「シドラにはとても言えなかった・・今から、出て行く・・なんて」
「ガンダルファはバカだから、絶対に隠せない。シドラはイリトに報告するしかない。」
アギュはもう終わり!とばかりに手を振る。
「オレはアイツと話した・・飛び付いて来たぞ。」笑いを押し殺す。
「では・・ケフェウスはモニターで確認してるのですね。僕達の脳波の同調を。」
「アイツも、目からウロコが取れたかな?」クスクス笑う。
ユウリが不安そうに囁いた。
「彼は裏切らないかしら・・?」
「裏切れないさ。」
「うまくいくかしら?」
「まあな。」すがるような視線からアギュは目をそらした。
カプートが静かに話しかける。

「何を考えてるのですか?」
「何も。」
「あなたは、又・・」
「うるさい!」即座にアギュがさえぎった。
「オマエにはわからない!わかるわけない!」
「ええ。わかりませんよ。」カプートの顔に赤味が差した。
そんな二人を目を見開いて、ユウリは見守る。
「僕は出来損ないですからね。」
「そうだ!」アギュは吠えた。
「オレになれなかったオマエがグダグダ言うな!」
「なんで、そんな目で見る?」
「わかりませんか・・?あなたは私でもあったのに。」
「違う!」悲鳴。
「ええ。違います。いまわかりました。」
「オレに対等な口きくな!。」
「あなたはいつもちゃんと答えない。誤魔化している。」カプートは迷わない。
「結果としてあなたは500年、現実と向かい合わずに逃げ続けた。違いますか?」
「オマエにはわからない。」アギュは強く輝いた。
「オレは臨界進化体だ。」

「そうですね・・僕にはわからない。臨界進化しなかった僕には・・」
少しの間があった。
「そうならなかったことを、今初めて後悔しません。」
カプートは頭を上げた。
「そして、2度と後悔しないでしょう。」
アギュはギリッと奥歯を噛んだが何も言わなかった。
二人の話に入ることはできなかったユウリは、息を詰めて成り行きを見守っていた。
「アギュ・・」
「それじゃ行くか、ユウリ。」アギュは何事もなかったように振り返る。
「アギュ、あたし・・あなたに・・」
「いいか、説明や懇願はもう無しだ!」
「約束したわ・・あなたと・・本当にいいの?」
真剣な眼差しをあざけるようにかわす。
「あんな約束、オレが真に受けてると思ってたのか?おめでたいな!」
ユウリは殴られたようにたじろいだ。
「あたしはもう、いらないの?必要ないってこと・・?」
「オレは最高に進化した人類だぞ。その気になればなんだって思いのままだ!オマエのチンケな人生を捧げられたところでオレになんの得がある?」
アギュは笑いを爆発させる。
「あの時はオレも子供だったから、長いことすねて見せたがこうやって現実に戻って見ればみんなオレにヘイコラしておかしいったらありゃしない。偉そうなニュートロン共がオレの顔色に一喜一憂だ!。まったく、いい気分じゃないか?そうだろ?」
現実世界ではユウリとアギュの身長はほとんど変らなかったはずだった。しかし、この世界でのアギュの頭はユウリを見下ろしていた。もはや正体を隠すことのない、大人のカプートに彼は負けたくなかったのだろう。
アギュはユウリの震える顎に手を当てた。
「あたしは、アギュ・・」
「そのうち、ここからおさらばするまでの退屈しのぎだ。オマエもそのひとつ!」
「アギュ!」カプートが聞いてられず口を出す。アギュは激しい一瞥をくれる。
カプートはそこに何かを読み取り黙った。
「オマエはカプートと行くのが一番、いいんだ!」
唇にそっと指が触れた。しかしアギュはユウリと目は合わせなかった。
「オレといたって先がないんだ。わかってるだろ?」
カプートが初めて聞く、彼のためらいがちな言葉。
「オレがこの間、オマエに言ったことずっと考えてたんだろ?オマエだって悪くないと思ったんだろ?オレは知ってるぞ・・」
アギュはユウリの顎をカプートの方に向けた。
「アイツを見ろ。アイツはオレだぜ?できそこないだが、オマエにピッタリだと思わん?アイツとシアワセになってみろよ。」アギュは振り払うようにユウリから手を放した。
「アギュ、聞いて・・それは、違うの!」しかし、ユウリの声は届かなかった。
「どうよ?クローンくん。」今度はカプートに薄笑いを向ける。
「コイツを進呈してやるぜ?シアワセにしてみせる?」
「・・人は進呈できるものではありませんよ。」
「そんなことわかってる!オマエにできるのかって聞いてんだ!」
落ち着き払った答えにいらだつ。
「・・してみせます。必ず。」視線を捉える。「あなたにはできない方法で。」
アギュは再び奥歯を噛みしめる。しかし、平静を装う。
「やってみろ!このできそこない!そしたら、認めてやる!」
意識体だけのアギュの体も激しい感情に、一瞬かき乱されたようにまたたいだ。
でも、すぐに持ち直す。
「オレの言う通りにしてろ、わかったな!」
噛み付くようにユウリに言い聞かせると乱暴に手を引いて引き立てた。
言葉も無いユウリはかろうじて、ガンダルファの寝顔を見下ろし、一粒二粒の涙をこぼした。
カプートは現実に戻りゆく、アギュの後ろ姿にじっと目をやった。
「あなたは又、逃げようとしている。僕から、ユウリから。それを阻む力は僕にはない。」
足下を見下ろす。「でも、大丈夫。ユウリは僕が守るから。」
「さよなら、親友。」
そっとつぶやいたがもう振り向く事はなかった。
カプートは二人の後に従った。

GBゼロ-13

2007-10-04 | オリジナル小説
スパイラルゼロ-13  アギュ・ルーム-3



そういきなり僕を起こすと、カプートは試合をやろうと言ったんだ。
僕たちはドラコボールを何試合も打ち合った。
僕よりも大きくて年上の彼と試合をするのは最初は少しなじめなかった。
でも、夢中で戦っているとそんな事、いつの間にか忘れてしまった。何もかもが、取るに足らないことのような気がしたんだ。
その為に彼は僕を試合に誘ったんだと思う。そういうところでやはり彼は大人だ。
僕には感じ取れた。見かけは変っても、彼は彼だった。
カプートは僕よりも背が高くて歳が上だけど前と変らない。
僕の友達のカプートだったんだ。
「すみませんでした。」
ドラコが疲れてへばり、やっと休憩に入った時、彼は僕を見ずにつぶやいた。
「いいよ、もう。なんか色々、あるみたいだし。」
僕は幾分大人ぶった訳知り顔で答えたと思う。

だけどそれよりも何よりも、僕にはちょっと気になることがあった。
「本当にユウリと行くの?」
「はい。ユウリのお父さんのいる所までは。」カプートはうなづいた。
「心配しなくて大丈夫です。そこまでですから。ユウリは父親と一緒に自分のアースに帰って暮らすことになるでしょう。ぼくはそこで別れます。」
カプートもユウリが好きなんじゃなかったの?
「彼女にとって僕はアギュの代用品だから。」
僕の無言の問い掛けに、寂しそうに笑う。
彼の言葉に込められた深い意味をまだ僕は知らなかった。
だからここはあえて、明るくいかなきゃと思った。なんたって、新たな同志発見。
「そうかー。」思いきり、伸びをする。「ユウリのアースってどこなの?」
その場所をカプートは手短に説明した。ジュラとは真反対の辺境地帯だった。
「その辺はペテルギウス側に近いね。僕が軍隊に入ったらその辺に配置されるんじゃないかな。シドラ・シデンもきっとそっちを希望するから、みんなで又会えるね!」
僕は明るい展望を描いた。そう悪い未来じゃないんじゃない?。ライバルは多いけど。
その明るい妄想を破るように暗い思い詰めた声がする。
「君に話しとくことがあります。」
カプートは僕の目をハッキリと見た。その目は真剣だった。
「ぼくのことを。ぼくが誰で。何をしてきたか。」
「いいよ、もう。」僕はやや、ぶっきら棒に言った。
「僕のクローンに何をしたかなんて、言わなくても。」
「その事じゃないんですよ。」悲しそうに彼は言った。




「お前はその時、知ったのか。」
ああ、当人からね。
「おぬしはきっと知ってるのではないかと思っていたのだ。」
「シドラがもったい付けてたのもこのことだったの?」
「我は後から推察した・・それ以外、ないと。」



カプートはアギュのクローンなんだよ。
処分されなかった、ただ一人のクローンだよ。成長したアギュだ。成長した、オメガスパイロ出身の原始星人。臨界進化しなかったら、そうなったはずの姿なんだろ?きっと。
なんせ、初期に捕られた99.875%同一の遺伝子だもんね。
「それなのに、臨界進化はしなかったのか・・。」
ああ、やはりアギュは神に選ばれし者なんだよね。
(ガンちん嫌みにょ・・)
だって。カプートはそうならなかったから、殺される運命だったんだもの。ケフェウスがちょろまかさなかったらね。アギュは神の気まぐれな指がたまたま触れただけだったんだ。
アギュが臨界進化した後で、スパイロ出身の子供は今にいたるまでことごとく集められている。その実験のせいか、今ではあの星では子供は自然分娩では産まれなくなってしまった。その初期に集められた子供の一人とすり替えたんだ。処分されたのは・・その子なんだろうな。まだ、イリト・ヴェガが来る前の話だからね。

(可愛そうな子供にゃ~)

「それをずっとケフェウスは隠していたのだな。」
そう、だからカプートを手放すわけには行かなかったんだ。自分の思いままの研究をし、その成果を独り占めしたいという野心と保身の為にね。連邦高等議会はさすがに承諾なしに特定のクローンを作り続けることの是非を問いていた。
「臨界進化と言えども、どこまで人権を認めるべきかで当時は紛糾したらしいな。」
肩をすくめ、吐き捨てる。
「しかし、だからと言って処分すればいいものではないのだ!。」
シドラ・シデンはみんな、この臨界進化に対してクレイジー過ぎるとブツブツつぶやいた。僕もまったく、その通りだと思う。
「ケフェウスは進化しなかった場合のアギュも欲しかったわけだな。」
そう、研究を完全にする為のコレクションにね。そうだ、いつぞや言っていた正に奥の手。
「カプートは彼の悪事の証拠であり、交渉の切り札ったのか。」
だから彼を手放すわけには行かなかったわけだ。そして、カプートは自分の正体が知れたら、連邦法上存在できない事を知っていたから・・。
「そこまで無慈悲でなかっただろうに。」
「そうだよね、イリトはカプートを見ない振りをしてケフェウスから離すことにしたんだろ?。いったんスクールから外に出すことを認めたわけだから。なんだかんだ言っても、研究者は誰もが本当はアギュの進化しない場合の見本も欲しいのさ。カプートが既成事実として認められる可能性はあったんだ・・」
「でもケフェウスは成果を人と分け合うつもりはなかった。」
まして自分だけ違法行為で処分されるなんてね。
「功を焦った前の所長の管理には穴があったと聞いている。所長もグルだったかもしれない。連邦は研究費の不正使用の疑いで前所長を更迭した。イリトを送り込むことにした直後に彼は死んでいる。」意味深にシドラ・シデンは言葉を切った。
そうさ。自殺かもしれない。あるいはケフェウスが?。アギュは彼を人殺しと呼んでいたっけ。

(アギュはどこまで知っていたんにょ?)さあな。すべてを見ていたのかも知れない。
(確かに見るだけならタダにょ!)
彼は、当時はまだ無力だったはずだ。
「アギュは自分の能力を隠し通していた。奴を進化の速度は今までで一番、早い。」
アギュは当局からも予測不能だったんだ。
(ボオッと寝ていたわけではなかったってことにょ?)そういうこと。
「利用されていたのは、ユウリの方だったのかもな。」
「この事をシドラと今までちゃんと話し合ったことってなかったよね。」
「あれから色々とあったからな。」
そうバタバタと立て続けに事は進んでしまったんだっけ。

僕はカプートから彼の生い立ちを聞いた。




ぼくの最初の記憶は5歳ぐらいですか。
このスクールで初めて目覚めた時からです。
そこから、ぼくの時間が始まりまったのです。
最初はケフェウスの存在すらぼくは知らなかったのです。
ケフェウスはぼくに近づくことにかなり用心していたのでしょう。
その姿を、当時のぼくは見たこともなかったんです。彼は惑星にいましたから。
自分の認識はスパイロから来た、ただのカプート。目立たない生徒だったと思います。
それでも、それなりに友達もできました。
あの頃が一番、楽しかった・・ぼくもみんなと一緒にここを卒業して故郷(その頃は、そんな記憶があるような気がしていたんですよ・・かわいいものだ)に帰ることを待ち望んでいたんですよ。戸籍上の親でもスパイロの子供は、臨界しないとわかって親元に返されることをみんな、楽しみにしていたんです。そこが星ではなくて、例え居住収容所だとは知っていてもね。
でも、みんながいなくなってもぼくには帰る許可がいつまでも下りませんでした。
その頃、前の所長が亡くなって実権がケフェウスに移ったのです・・正式な任命じゃありません。イリト・ヴェガが来るまでの暫定的なものでした。
それでも、ケフェウスの権力には充分でした。
ぼくは自分の正体を知りました・・。
そして、ぼくはケフェウスの所有物だったことを彼から教えられたのです。臨界進化しそこねた役立たず。コレクション的価値しかない。生きていたかったら、ケフェウスを受け入れるしかなかった。
ぼくは彼のパートナーとなりました。互いの命を握り合う運命共同体です。
でも、ぼくは望みを捨てられなかった。優れた者にさえなれば、ケフェウスが中央に取り立てられれば、ぼくにもチャンスがあると思っていたのです。ぼくは彼の実験も手伝いました。彼に気に入られるために、なんでもしました。そして、ひたすら勉強しました。それだけがぼくの命綱だった。でも・・
ぼくが彼のパートナーになってから、ぼくは回りの誰からも敬遠されるようになりました・・。ぼくに近づく人も、親しくなろうとする人もいなくなったのです・・。
ニュートロン達は原始星人であるぼくをいつも軽蔑し、侮辱しました。
そんな時にユウリが現れて、臨界進化体を目覚めさせることに成功したんです。
ぼくは同じ原始星人としてとても誇らしかった。
ケフェウスが失脚して、ユウリのソリュートに目を付けて、ぼくは彼女と直接出会うことが叶いました。望む形とはかなり、違っていましたけど。
ぼくは彼女に実験を強いる側の一員でしたから。でも、ぼくは自分にできる限りの範囲で彼女を庇ってあげたかった。それは、多分ユウリにも伝わったんでしょう。
彼女にピクニックに誘われて、ぼくは本当に嬉しかった。
ガンダルファやみんなと遊んでほんとに楽しかった   。



カプートはため息を付いた。僕は彼の物語を黙って聞いていた。
「つらかったんだな。」つぶやく。
大人のカプートは晴れ晴れと言う。
「もう、みんな過去の話です。」
彼は大きい手のひらを落ち尽きなく組み合わせた。
「ただ、アギュに会うことだけが怖かったんです。会いたかったんですけどね。彼にはきっと、人目でぼくが誰かわかってしまうんじゃないか・・なんてね。」
ため息を付く。
「杞憂でしたけど。」その声の調子で、ほんとはカプートはアギュに気付いて欲しかったんじゃないかと僕は思った。だからあの時、厄災の星の名を出して自分に注意を向けるようにしたんじゃないかと。言わなかったけど。
「イリト・ヴェガは僕を生かしてくれる気らしい。僕は多分、その辺りのどこかに身を隠すことになります。政治的取引の材料だとしても、僕は嬉しい。生きていけることが嬉しいんですよ、ガルファ。」
カプートは僕を愛称で呼んだ。それは偶然、母だけが使ったものと一緒だった。
「良かった、カプート。ほんとに」
研究所を僕は密かにずっと許せなかった。でも、一番許せないのは僕自身だったんだ。
僕は無力だったから。でも、今は僕にできることがあった。
「このことは僕の胸にしまっておくよ。誰にも言わない。何があっても。」
「ありがとう。」
「君はどっちにしろ、特別な存在なんだ。」僕は胸をはった。
「いつか必ず、中央にでれるはずだ。連邦にショックを与えられる存在なのはまちがいないんだよ!だから、今は我慢だよ!」
「その通りですね。いつか。」
「僕達、ずっと友達だよね」僕は歳の差を思い出した。大人にタメ口きいてるじゃんか。
「ずっと友達です。」カプートは手を差し出した。
「親友です。」
僕らは固い握手をかわした。ニューニューと耳元で泣く奴がいる。カプートはそっちを見て笑った。
「そう、ドラコもです。」

その話をカプートとした直後から、僕は記憶がない。
不可思議な深い眠りに落ちていたんだ。



「我もだ。夢でユウリと話してるうちにな。」
シデンは首をかしげ、苦い笑いをもらした。
「どうやらアギュに一服もられたのかな。」
(ドラコもなのにゃ~。起きてたのはバラキだけにゃ)
バラキの赤い目が瞬く。
(アギュの計画もドラコは気付かなかったんにょ~不覚にゃ~)
「気にするな。バラキも起きてはいたが無力化されてしまった。」
(ワームはガンちん達を通じてしか、単独ではこの世界には干渉できないのにょ)
「へーそれ、初耳。くわしく、教えて!」
「その話はまた後だ。」(ガンちんは脱線好きなのによ~)

そして、事は起こる。スクールでのその夜の朝方、ダークサイトの一部が銀河中央部ペルセウス腕方向から連邦に進行。上層部の混乱に乗じて、ケフェウスはカプートとユウリを連れて逃亡した。ユウリとカプートを送る予定だった船を強奪してね。
そしてアギュも消えたんだ。

「すべての首謀者はアギュだとバラキは言ってる。」彼女の後ろの闇が渦巻く。
でもどうやって、ユウリとカプートが命を落としたのかは誰にもわからないんだ。
「ケフェウスと共にな。」
そうケフェウスも死んだ。たぶん奴のせいで二人も死んだんだと僕は思う。


その時、ふいにそこに光が差した。

GBゼロ-13

2007-10-04 | オリジナル小説
スパイラルゼロ-13  アギュ・ルーム-2



その時、オクターブの高いキンキン声が響き渡った。入り口に青い影が差す。
「キサマら!オレの部屋がめちゃくちゃだろうが!どうしてくれるんだよ!」
アギュがブスッとして入って来る。
移動機械は虚を付かれた僕の手をすかさず、くぐり抜ける。
「これはこれは、臨界進化様!」ケフェウスはとろけるような微笑を浮かべる。
「まことにご機嫌うるわしく・・」
「でてけ。」
アギュは彼を見もしなかった。
「オレの留守中に毎度、勝手に人の部屋を使いやがって。それにしても、もう、」
チラリとユウリに目を走らせる。
「実験室の匂いが臭いな。クサイ、クサイ、人殺しの科学者の匂いだ。」フンフンと空中の匂いをかぐ。「まだオレの鼻だってわかるぞ。こびりついたDNAの香りだな。」
驚いたことにケフェウスは微笑を張り付かせたまま、一言も発せず移動機械を操ると部屋を出て行った。

「次元バリアーも少し壊れちゃったな。いい感じだ。」アギュはほくそ笑む。
「すぐに直しに来ないといいな。これ、シドラがやってくれたんだろ?」それと僕ね。
「おぬしの為ではない。」シドラは冷たく言い放った。腕の中のユウリに目をやる。
「ユウリ、大丈夫か?」
「ええ・・ありがとうシドラ」ユウリは眠いのに無理に目を開けていようとしている人みたいだった。
「アギュ、早かったのね」それでも笑顔を向ける。
「ああ、気分が乗らなくてさ。バックレた。ざまあみろさ。」
アギュに彼女の状況に気付いた節はない。「所長がこっちに来てるって話もあったし。」その間にユウリは全体重を人に預けていた状態から、なんとか体を建て直そうとしていた。つま先立ちで振り返る。
「カプート・・いるの・・ね?」
ユウリは彼を目で確認して、とてもほっとしたように思えた。
僕は、この事は要注意チェックのうちに入るんだろうか?と考えていた。
緊張が解けたユウリは遠慮なく大きなあくびをした。
「あたしはにはできないって」熱っぽい瞳を宙に彷徨わせる。
「何度言っても・・納得しないのよ、あたしが手を抜いてるからだけじゃないの!」
いくらか視点が合ってきた。彼女は目をさまそうと、顔をこすって叩いた。
「あたしにはそこまでの腕なんかありませんって!なのに、しつこいの。深層意識が破壊されないように防御しながらやってるから・・必要以上に疲れるの・・。」
「何をさせたんだ?」僕はカプートに尋ねた。彼を見上げるのは変な感じだった。
「あたしは兵器になんかなりたくない。」
「シドラが言ったようなことです。船の金属同士を結合する構成粒子を破壊する。何度もやらせるから精神が持たない。」
彼は唇を噛みしめた。「疲労なんです。命には別状ない。」
「人格が破壊されれば、あたしが殺戮マシーンになると思ってるみたい。」
僕はその一言で驚愕する。「あいつ、んなこと企んでんだ!」
ユウリを黙って行かせたことが悔やまれた。
「おぬしが付いていながら。」シドラがつぶやく。
「教官は最近焦っているんです。イリト・ヴェガは彼を良く思っていません。今日、こっそりと所長が来たはずです。アギュの部屋を使ったのはその為です。」
カプートは僕らに向けて姿勢を正す。
「あなた達が来てくれて良かった。」
「な~にを焦っているのかね~」部屋を点検していた、アギュが急に能天気に唄い出す。
「な~にか悪事がバレたかな~?」カプートとアギュの視線が初めて合った。
「何が言いたいんですか?」固い声。
「い~ろいろと~知ってるんじゃないのかな?」アギュは甲高い声で唄い続ける。
「うるさいよ、お前。」たまらず僕。「こめかみが痛くなるって。」
「やめろ!ユウリにも良くない!」
「あたしなら・・大丈夫よシドラ・・」
「やれやれ。相変わらず、オレ大人気。アンコールってね。」
クスクス笑う。相変わらず、神経に触る奴。

「色々と知っているのは、あなたの方でしょう。」
カプートはアギュをじっと見つめ返した。
笑いながらも目をそらしたのはアギュの方だった。
シドラもユウリを支えながら、うさん臭そうにジッと見つめる。
するとアギュは驚くべき事を口にした。
「明日、船が出るぞ、ユウリ!」ユウリがハッと息を飲んだ。
「オレが話をつけた。」
みんな唖然とした。アギュ一人がしゃべり続ける。
「オマエはここを出ていけるぞ。」
アギュはニコニコとユウリに笑いかけた。
「そんな不細工な顔すんなよ。」尚もあっさり過ぎる口調で続ける。
「オマエのアースの近くまで送ってもらえるんだぞ。オレのおかげだな。」
ユウリは硬直していた。喜びの色ではなかった。

「なんだよ、せっかくのオレの計らいだぞ?みんな、笑えよ。笑えってば!」
「・・それは何よりだ。」シドラは口の端で笑いながら不信そうに付け加える。
「唐突すぎる。どういうことだ?」
「善は急げって言うだろが?言わないか?オレは言うぞ!」
「・・ありがとう、アギュ。」もがきながら、ユウリがかすれた声で言った。シドラを離れ、なんとか一人で立つことに成功。「でも、なぜ?今なの?」
「何回も言わせんなよ!オレがイリトに今そこで、直談判して来たんだよ!」
「おかしな話だ。」
「なんならバラキで監視してろ!」
アギュがいらいらすると部屋の空気に静電気が起きた。近いと超強力。
「オレだってずっと考えてたんだよ!」ドラコが僕の中にあわてて引っ込む。
「ちょうどそこで、イリトに会えたからだよ。いい機会だと思ってさ。そしたら、さすがの所長も臨界進化のオレに逆らえなかったってわけだ!」
どうしようもなくって、僕は首の後ろを掻いた。「痛てえー」まだ心の整理がついていなかったし。そんな突然に、ねえ?。だってそれって、学校からユウリがいなくなることだもんね。そうだよね?どうしよう。えーと、僕の卒業っていつだっけ?軍隊は?
続けてアギュはカプートを、さも面倒臭そうに指さした。
「なんならオマエも行ったらどうだ?」
カプートは目を見張った。
「イリトは別にいいってよ。」
「不可能です。」力なく首をふる。
「いいんだよ。いいっていったろ?」アギュは又、静電気。うー僕の髪が逆立つ。
「あいつなんか、もうすぐ失脚さ!イリトがオレに請け合ったんだ!」
アギュ、にやつく。「むかつくパートナー契約なんて自動消滅!」
「マジ?でも、そんなこと言って、盗聴とか大丈夫なの?」
とりあえずみんなの髪より、僕はそっちを心配する。
「ケフェウスが切っていたはずです。」カプートが安心させるように答える。
「ここの動力は切り離してあるのです。」
「念の為だ。」シドラ・シデンはバンバン素手で壁を叩きだした。みんな耳を塞ぐ。どっかでビシッという音と火花が散る音。
「精密機械だ。あちらからの接続に支障が出れば御の字だな。」
と、ウルトラパワーのシドラさん。


ほらね?今回は馬鹿力とは言ってませんよ?気が付いてくれた?
「おぬしにしては上出来だ。」(今度は確実にほめられたのにょ)感涙だね。


「・・いいんですか?」やっと、カプートは言った。髪が逆立っても毅然としている。
「イリトの気が変らないうちに、さっさと出て行け!さあ、話は終わりだ!」
アギュはパンパンと手を打ち鳴らした。
「さあ、出てけ!みんな出てけ!オレの部屋からな!オレは寝る!」
「勝手に話して、終わりかよー」
「さあ、ユウリ行こう。」まだモノ問いた気な視線をアギュに送り続ける、ユウリをシドラが促す。
「待てよ!ダメだ!」アギュがベッドの端から呼ぶ。
「オレは寝るんだから、ソリュートだよ!ユウリに弾いてもらわないとな!なんせ、もうすぐ聞けなくなるんだから。今のうちに聞いとかないとな。」
「おぬし!」「お前ー!」僕とシデンが声を合わせる。
「いいのよ。」ユウリがあわてて僕らを押えた。
「あたし、大丈夫だから。やるわ。」ユウリは素早く言葉を並べると向かう。その足下は少しふらついていたが迷いはない。
僕とシデンは思わず、顔を見合わせてしまった。ユウリ、嬉しいのか?そんなにも疲れていたのに。まだソリュートを弾くと言うのか、アギュの為に?。
「そうだ。オマエ!行くとこないだろ。あいつのとこにはもう、帰れないだろ?。」
アギュが意味深にカプートに又、指を向ける。
「オマエもここにいろ。床にでも転がってろ。オレの好意に甘えて正解。」
アギュは体を伸ばす。「疲れちまったよ、まったくオレ。」
「カプートにはマットレスを借りればいいわね?あたし、特別の子守歌を弾くわ。」
体に鞭打ちかいがいしく働く、ユウリの姿。
カプートは黙って僕らの方を向くと無言で深く頭を下げた。



あの時ほど腹が立ったことはなかったね。
「同感だな。」
おまけに無力感に打ちのめされてペシャンコだったよ。
「フン、まったくだ。」
(シドラとガンちんが激しく意見があったのはあの時からにょ?)
「不本意だがな。」こっちも一緒だって!
「ところであの夜、カプートと会ったんだろ?」
「シドラはユウリと話したんだろ?」
「アギュのとこから戻って来た後でな。」
「なんか変ったそぶりはなかったんだよね。」
「妙にはしゃいでる気はした。我が常にアギュから離れることを主張していたせいかもしれないが。合わせていたんだろ。」
「カプートも特に普通だった。お別れを言いに来た以外は。」
「お別れか。」ああ。彼は夢で会いに来たんだ。
(あの日は久々楽しかったにょ~)

GBゼロ-13

2007-10-04 | オリジナル小説
スパイラルゼロ-13



            アギュ・ルーム

そこには背の高い若者がケフェウスと向かい合って立っていた。だだっ広い、個性のない殺風景な部屋だった。カプセルのような大きな寝床が三分の一を占めている。
窓一つない閉鎖的な銀色の部屋。そこにも壁にも床や天井にも、あらゆる計測装置がこれでもかと隠されているのだろう。
「今日はこれ以上は無理です。」
丁度、その若者がそう口をきいている瞬間だった。
彼は僕らが飛び込んで来ても表情も変えず、一瞥もしなかった。移動機械に乗った自称教師は体をこちらに振り向けると、あからさまな舌打ち一つ。
今日のケフェウスはシンプルないつものチェアーでなく、変な大きな機械に乗っていた。
緑がかった配色で、勿論コスチュームとコーディネイトしてることは言うまでもない。
移動機械は高価だが、セレブなおしゃれさんはいくつも持ってるんだろう。
「説明してもらおうか。」シドラ・シデンが威圧的な物言いと物腰で進み出た。
見知らぬ青年とケフェウスの間に立ちふさがる。
シドラはケフェウスの移動機械を軽蔑したように睨め付けた。
「なるほど?小さな実験室だな。ぬしもあきらめが悪いな。」
シドラの声が凄みを増すほど、背後が渦巻いているのがわかる。
用心棒の先生のようにバラキが控えているのだ。
「その様子じゃ合金にヒビは入らなかったようだな。」
「いい気になるなよ、ワーム使い。」
ケフェウスはそれでもせせら笑った。敵ながら勇気あるー。
「このカンブリアンの女と組んで最高進化体に媚を売ってるってな。有名だぞ、ワーム野郎め。何を企んでるんだかしらないが、必ずシッポを掴んでやる。」
ケフェウスが青年に顎をしゃくった方向で、僕はユウリの存在に気が付いた。ユウリは彼の広い背中に張り付いていた。彼女の伏せた黒い髪と男の腕に深く食い込んだ白い指の先だけが、僕にも見えた。
それはまるで彼がユウリの盾となって、ケフェウスから守っているようだった。
こいつ、誰?。
ドラコがしきりに僕に騒ぎ立てる。何かを伝えたがっている。
シドラも彼には背中を向けている!と、言うことはシドラはこいつを知っている。
僕は彼を見た。彼は年上だ。もう成人と言ってもいい。シドラ・シデンと並んでも遜色のない、一人前の逞しい原始星人。青白い端正な顔と青黒い髪。
そのあでやかな色が縁取る瞳は、確かに誰かの面影があった。
僕ははっとして思わず叫んでいた!
「おまえ・・カプートか!」
「やはり、ワームには隠せませんね。」
聞きなれた声が答え、正体のばれたカプートは哀しそうに僕を見た。

(ドラコはすぐわかったにょ!合図してたのにゃ。
 まったく、ガンちんはニブチンにょ~!)
普通、いばるかよ?バラキは絶対、もっと前に知ってたって。そうだろ?
「そうだ。」そうだろ。「私も知っていた。ユウリから聞いていた。」
ふう。はい、そうだと思ったよ。
「前ちらっと言ってたライバルって彼のことだったんでしょ?」
「まあな。」彼もユウリが好きだった?
「我はあやつを信用できなかった。」肩をすくめて「できるわけない。しかし、アギュを交えて彼と親しくしていることをイリトに報告する事をユウリは望まなかった。我は困った立場になったわけだ。報告する、しないを我に委ねられたって、なあ?」
シドラ・シデンの板挟み状態。結局、ユウリを取って報告しなかったなんていいとこあるじゃん!
「ユウリがなんで無条件で信じていたのか。我に納得いくわけがないだろう?。」
「それは嫉妬とも言ったりしてね、ドラコ」
「なんだと?」
(ドラコに振るにゃ~!)

「おまえなぜ、ここに?」
なんでユウリがおまえの背中に張り付いてるんだよ。
「僕はケフェウスの助手なのです。」カプートは目をそらした。その目はたじろぐことなく、ニヤニヤ笑うケフェウスを見た。
「彼はぼくの書類上のパートナーでもある。」
僕は衝撃を受けた!。
「あくまで共同体契約ってことだ。」意地悪く彼のパートナーが言う。
「ニュートロンの優れた血統に汚れた遺伝子など、混ぜるほど私も酔狂じゃないからな。」
「きさまっ!」
「ガンダルファ、抑えろ。」シドラが静かに制した。「言わせとけ。」
カプートは目をそらさなかった。。ユウリの指が更に深く食い込む。
「薄汚い原始星の孤児が・・優秀だと思ったから取り立ててやったのに。こいつらとつるんでるそうじゃないか?私はとっくに知ってたさ。お前を泳がせてたのさ。」
床から浮かんだ、移動機械が不気味な音を立てる。
「この恩知らずの原始人が!保護者のいないお前の後ろ盾となり、服も食い物も与えてやった。お前の身分じゃ望めない教育を受けさせ、コネを与え出世させてやった。自分の慈悲深さに涙がでるね!」
「それは・・感謝してます。」初めて、ケフェウスのパートナーは目を伏せた。しかし、彼の腕はさらに硬く握りしめられた。背中のユウリを庇うように。
「でも、それはお互い様ではないですか?」カプートは再び、目を上げた。
「ぼくはあなたの言いなりに研究しました。ぼくの成果はすべてあなたのモノになった。」
「そんなの当たり前だろが!この私がお前を飼っててやったんだ!当然だ!」
ケフェウスは僕に向き直った。
「知ってるか?私とこいつがどんな実験をしたか?お前のクローンもいたかな?」
「カプートは確か、アギュと同じ星の出身だったな。」突然、シドラが割って入った。
ケフェウスはちょっと舌なめずりした。
「ああ、そうさ。あの星の人間は根こそぎ実験体だからな。」
「ひどい話だ。おのれ達が孤児を作ったんじゃないか!」シドラは怒りを表わした。
「500年たっても人口は元に戻ってない!みんなおのれら、ニュートロンがやったんだ!」
「当たり前だ!連邦政府のご意向だ!何の為だ?人類の為だ!」唾を飛ばして吠える。「最高の進化だ!人類の素晴らしい臨界進化の謎を解く為だよ!」
「嘘だ!」たまらず僕も拳を機械に打ち付けた。驚いた、ケフェウスが体勢を建て直す。
「進化体とニュートロンの為だろが!原始星の意見なんて通らないくせに!人類の為なんて大嘘をつくなよな!」
「人類に原始人なんて入っていたかな?」引きつった笑い。
「お忘れですか?」カプートの暗い瞳も怒りに燃えていた。
「ぼくはとアギュは同じ原始星人です。臨界進化人類は原始星の者です。」
「私が臨界進化の秘密を解いたら、ニュートロンのモノになるだろうよ。」
ケフェウスは威厳を取り戻そうとした。睨みつける僕とシドラ・シデンを無視するかのように、カプートに顎を向けた。
「お前にはお仕置きが必要だな。ご主人様の手を噛んだんだからな。」
「カプートに何かしてみろ!」思わず叫ぶ。
「ジュラのミミズ飼いが!その手を離せ!」僕は尚も機械を押さえつけた。奴には見えないだろうが、ドラコもシューシュー怒った。
しかし、ケフェウスに犬呼ばわりされた青年は歯を食いしばって前に進み出ようとしていた。ユウリを付けたまま。シドラがすかさずユウリを引き受ける。ユウリの顔は蒼白でぐったりとして、意識が朦朧としてるように見えた。手を引きはがされた彼女の体はシドラ・シデンの腕の中で彼女にもたれかかり、ユラユラと泳いだ。
「ダメよ・・カプート・・ダメ。」ユウリの手だけが無意識にカプートを留めようと空を切った。
カプートは進み出た。
「では、ぼくをクビにして下さい。」
「お願いです。パートナー契約を解消して下さい。」
すると、驚くことにケフェウスは笑い出した。
「まあ、いい。」おかしくてたまらないと、涙を拭う。目を拭った大きな指輪を爬虫類のようにチロリとなめる。そのままねちこい視線を彼のパートナーに注ぐ。
「そんなつもりは、まったくないことはお前も知っているだろうに!」
どれだけの嘲りをケフェウスは言葉に込めたことか。
「かわいいお前を誰が手放すもんか!」
カプートの顔にありありと嫌悪が浮かんだ。

GBゼロ-12

2007-10-03 | オリジナル小説
スパイラルゼロ-12  イリト・ヴェガ-2



情報ソースとして有望なのは、若い見習い達がいる領域だと僕は考えた。生徒に匹敵するぐらい特待生やその他有資格者がいたからね。
僕は授業をさぼり堂々とそこへ乗り込んだ。
聞き込み開始から2時間、怪訝な教師と目が合う度にケフェウス先生の部屋はどこかと尋ねるしかなかったのが唯一の不安材料だったけど。でもなぜか、僕は特別クラスの生徒だからなのか、別に不信感はもたれなかったように思う。
(だって担任教師はさっき、ユウリと反対方向に消えて行ったばかりだもの。この領域には絶対、いるはずがないことは承知の上だし。)
年若い教師はケフェウスの名を出すと、はっと緊張し、かかわり合いになるのを嫌がるかのように慌てて奥のフロアを指さしてそっちに僕を押しやるのだ。これで奴の人望のなさがわかろうと言うものだろ?彼はあきらかに、教師仲間とはまったく違う立場、彼等に恐れられる存在なのだと実感できたね。
僕はそんなやつと渡り合ってるだろう、ユウリの無事を心から祈った。
そしてもしも、後日僕が捜していたとか気を利かしたモニターの前の誰かがちくった場合に備えて僕は適当なテキストデータを持っていった。実際、具体的な質問には僕はことかかなかったしね。

「くだらない質問をして逆切れされたらどうしたのだ?」
「僕、アッホで~す!」と押し通したさ。
(目に浮かぶようだにゃ)
「うむ。リアリティがあるな。」

とにかく。
なかなか、カプートを知る人には出会えなかった。気が付いたら僕は教官達がいるエリア近くまで入り込んでしまっていた。そこで僕はケフェウスの部屋らしき辺りで金色の瞳のあの人を目撃したんだ。

「イリト・ヴェガだな。」
「その時点では、イリトらしき人だよ。」

その人は夢で見たよりも、少しだけ?、いやもう少しというか、ふっくらして、えーい!つまり、太ってたんで僕は混乱してしまったんだ。しかも、今度のスーツときたら全身金色で、しかも同色の帽子をちょこんと頭に乗せていた。歩く金剛仏のような強烈な視覚刺激に目が点になる。どうやら、僕は彼女を長いことマジマジと凝視してしまったらしかった。彼女はすぐに、僕に近づいて来た。
「あらあなた、私を知ってるのかしら?」かわいらしく小首をかしげる。金色の瞳は泉のよう。艶然と微笑む様は、夢で見た姿の威厳のある面影が感じられた。しかしこんなところで、供も連れずに一人でフラフラしてる所長に会うとは思ってなかった。本物だよね?、と僕は確信が持てなくなっていた。
「いえ、似ていたもんで。あの、知ってる人に。」さらに問い掛けるようなまなざし。
「知ってるというか・・夢で見たんだけど。」慌てて、余計なことまで言ってしまう。
彼女は僕より背が低いので視線をそらすのは難しかった。
「ふ~ん?」イリト似の夫人は僕をジロジロと眺め回した。居心地が悪いったらない。
「なかなか、いかすわね。あなた、セクシーじゃない?。」
うわ!そんなこと言う、ニュートロンはとても珍しいのだ。
「あなたの髪とその肌。ほら、あの子に似てるわね、誰だっけ?なんて言ったかしら?」
「・・シドラ・シデン?」
「そう!そのシドラよ。あの子もステキよね~」うっとりとつぶやく。お前はただのおばちゃんかよ!その顔も今はあまり仮面ぽくない。気持ちの良い笑いじわが寄り、そこはかとなく年齢を感じさせた。
そして怒濤の攻撃が始まったんだ。
「あなた、シドラを知ってるのね!あの子も強面で不器用だけど、良い子よね~かわいい子はみんな好きよー!って、そういうことはさ、あなたもひょっとしてジュラの出身なのね?」
僕、うなづく。
「そう~いい所よね!ジュラって!空気も濃いしおいしいし。私、昔行ったことあるのよ?パウチとかいう民族料理食べたわよ。あれ塩水で捏ねるのね?やってみたけど、なかなか思うようにできないものね。でも筋がいいって言われたのよ、本当よ。なんとかって動物の肉と草とかを挟むの。おいしかったわー、なんて言うの?あの独特の香草。くせがあるけど、私はやみつきだわ。みんなダメだとか言う奴らが多かったけどね。みんな、胃腸が弱いのよ。人工フードばかり食べてるからよね。最初、ここに赴任した時はうれしかったわ。ここじゃ栽培してるじゃないの!でも風味はなんでも落ちてしまうのは仕方ないんだわ。自分で一手間かけると全然、違うんだけどねー。でも、宇宙ぐらしが長いとだめね。料理なんてこの10年この方、やってないわよ。」
「はあ」
「ジュラには3つアースがあるじゃないの?あなたはどこ?シドラは確か、オサのアースよね。一番、都会っていうのかしら?宇宙港もあるし、軍隊のベースもあるでしょ?
広々してて、それでいてごみごみしててほど良くて快適だったわ。あなたは、ラド?あらあら、そうなの?あそこはなんと言っても、そうね、どうしたって、ねえ?やっぱし一番の観光の目玉よね?初代の王様がワームと最初に契約した祭壇があるじゃない?私、そこも行ったのよ。お墓も案内してもらったし。あの地下のね。すごいわねー迫力。地下の世界が表面積並みに広がっているのよね?水脈は全部、下を走ってるんでしょ?洞窟の壁の絵も拝見したわよ。石を泉に投げるってのはどうなのかしらね。ほんとに願いが叶うのかしらね。迷信だっていうけど、興味深いわ。迷信はなんらかの意味があるのよ、きっと。そうよ、あの壁画だって!あれは宇宙の創世を表わすんでしょ?結構、科学的に馬鹿にできない意味があるかもねー。神を陽子とか中性子に置き換えてみたりしてさ。ほんと時間があったら、ああいう考古学的研究とかにもっと時間を割きたかったわ。でも、ほら、連邦のお仕事で行ったから、一応ね、時間がなかったのよ。残念だわ。観光はしたけどたいしたことできなかったし、それが心残りね。でも、ラドは星は小さいけど良い所だわよね。草原と岩山と森と平原と、あと水もあったかしら?海はなかったわよね?一日で宇宙船でグルッと回れるし。村の人もみんないい人で親切でやさしいし。いらないっていうのに山のようにご馳走は集まるし、お土産もくれるし。もう、どうやって持って帰ろうとか思っちゃったわよ。持ち出し禁止品とか入ってるじゃない?結局、オサの運輸局の人にゆずるしかなかったわ。なんて気前のいい御方だ、なんて言われたって、ねえ?けして気前がいい訳じゃないわけだから、心苦しかったこと!でもーラドはねえーほんと、機械音がなくて自然の音だけでとても静かだし癒されたわ。人が少ないから考え事や研究にピッタリ。新鮮だったわよ、印象的で得難い体験だったわ。素朴っていうの?なんていうかしら?」
「田舎」僕はやっと口を挟んだ。
「あら、田舎を馬鹿にするもんじやないわ!」馬鹿にしてませんって。
「田舎だからって恥じ入ることはないのよ。」だから別に恥じてないって!。
金色のおばちゃんはなおもまくしたてる。
「ラドは古代から、あまり変ってないし、その分、それだけキレイなんだから!私、ああいう世界が今も本当に保存されててほんと良かったなーって思うのよって、あなた!」
突然、おばちゃんが突拍子もない声をあげるもんだから、僕も僕の後ろで高見の見物をしていたドラコも飛び上がった。
「あ、あなたも、ドラゴン・ボーイなんじゃないの?あらあら、そうだ!そうだわ!私としたことが、うっかりしてたわ!」
金色の瞳は僕の背後をつかの間、じっと見つめていた。まさか、この人?
「だって、私ジュラにドラゴン・ボーイの研究に行ったんだもの!その成果で今、ここにいるって所もあるのにねえ?まあ、それはいいとして、あなたもワーム持ちなんでしょ?まちがいないわ!噂になってたばかりよね?卵男よ!あなたがその噂の当人なんだわ!きっと、そうよ!それなのに、まったくねえ、うっかりも程があるわね!シドラ・シデンとお友達なんだもの、ねえ?」
卵男って・・それなんですか?僕のキャッチフレーズなの?いつ、誰が付けたの?あんたじゃないの?、おいおい。思考が追いつかないですよ、もう。
その時、当のシドラが遠くの角を曲がって一直線に歩いて来るのがイリト似のおばちゃんの背景に見えた。
すると、何故か、後ろに目があるわけはないのだが、おばちゃんは心持ち慌てたように見えた。
「私、そろそろ帰らなきゃ!いけない、忘れてたわ!秘書に怒られちゃう!」
おばちゃんは顔の表情をきっと引き締めた。再び仮面のようになる。
「私、イリト・ヴェガよ。あなたは?」
「ガンダルファ・・」
「そう、ガンダルファ、又ね!」イリトはせわしなく手を振るとカタカタと足音を急がせて離れて行った。僕、呆然。本物かよー。

その時、丁度よくシドラが到着した。
「ユウリはどこだ?」
「ええっ?」開口一番の問いに戸惑う。今の金色おばはんが目に入らなかったのだろうか?

「あの時、本当はイリトに気が付いていたんだろ?」
「ああ。イリトはそもそも我に会いに来ていたのだ。」
ちぇ、やっぱり。おかしいと思った。
「イリト・ヴェガは意外に食えない女だぞ。」
それはもう、今は肝に命じてわかってますって。
「ああ見えても次元感知能力に優れた進化体なのだ、イリトは。」
しかも、ワームが見える。
「そうだ。特殊な人間だ。所長に抜擢されるだけのことはある。」
いつかピクニックで僕らが見たイリトの姿は彼女が僕らに見せていた姿なんだろう?
「そうだ。カプートと一緒だな。」ちぇ、そうだと思ったよ。
「おそらく、一番、若くて容姿に自信のある頃のな。」
「イリトは我々の夢に干渉できることを示してアギュを牽制しようとした。実物に会ったことがあるのは我とアギュぐらいだったからな。」
でも、アギュには利かなかったってわけか・・。
(ドラコはあのおばちゃん好きにゃ。いつもなんかくれるにゃ。)
面と向かっておばちゃんって呼べるの、言っとくけどお前だけだからな。
「おぬしが教えてると思われてるぞ。」うひゃ~まいった。

「ユウリがいない!」シドラは繰り返した。
「ソリュートの練習じゃないの?」僕はとぼけた。
「アホンダラ!」いきなりの罵倒。あんまりじゃないの?
「どこに行ったというんだ!惑星にはアギュしか渡ってない!」
「確かに・・クラスで別れた時、ユウリはソリュートの実験があるって言ってたよ。」
僕は用心深く答えた。カプートに会いにいったのかもなんて言えるわけない。
「うさんくさい実験なんぞ、関わらせるべきではないのだ!おかしいと思わなかったのか?」
「知らないよ!」
「我がいない時は、おぬしが見てないとダメじゃないか!」
あのーそんな取り決めしましたっけ?。僕は少しカチンときた。
「仕方ないだろ!僕はソリュートは門外漢だし、ケフェウス教官がジキジキに迎えにきたんだもん。止められないよ!」
「なんだって!」シドラは吠える。
「それが、どんな危険なことかわかってるのか?バカタレ!」
僕は急激に不安になる。
「ソリュートの実験って・・危険なの?」
「ギリギリまで消耗させられる!毎回、瀕死だ!」
全身から汗が出た。僕はとんでもないことをさせてしまったのか?。
「でも、惑星じゃないなら、スクールのどこかにいるはずじゃないの?」
シドラ・シデンは背後を探るようにした。「バラキ!」
考え込んだ。「・・わからないのか?おぬしにも気配を消すなんて・・」
ブツブツつぶやく。
「所長の掴めない方法で惑星に渡ったのか?あそこにはワームが入れない部屋がいくつもあるが・・所長の許可なく使用はできないはず!そこまでする実験なのか?」
僕も不安になる。ケフェウスがユウリにさせてる実験って?まじ、核融合?そりゃ、最高機密研究所の所長がよく思うわけない。シドラが大声を出す。
「そうか!あそこだ!」彼女は文字通り飛び上がった、そして駆け出す。
僕も慌てて、後を追いかける。

ドラコにはああいうスパイ機能は付いてないの?
(うにゃ~それを言われるとつらいにょ)
「バラキをスパイとは穏やかではないな。」
はい、シドラさん、バラキさん、すみません。口が滑りました。ごめんなさい。
でも、さあー、ほんと便利じゃん?
(ドラコはまだ、ガンちんから離れ過ぎるとお腹が減っちゃうのにょ)
げっ!やっぱり、なんか吸ってたんかい?
「大したエネルギーではあるまいに。」
(ママミルクにょ)うわぁ!(おっぱいくれにょ~!)げげっ!

シドラの目指した方向、そしてワームの入れない場所と言ったらもう、決まっている。二重三重の目に見えない仕掛けが取り巻いているアギュ・ルームだ。
「アギュはまだ帰らないの?」後ろを走りながら僕は叫んだ。
「アギュはまだ惑星にいる!」シドラが肩越しに叫び返す。
「今日、一日は帰れないはずだ!」
シドラの腕一振りで教師一人が吹っ飛び、誰かが足の下に巻き込まれた。それを踏みつけて進む。こりゃ、死人が出ないのが不思議。特別クラスでなかったら、大叱責必然だ。

「あの頃、アギュは定期的に研究所に連れて行かれていた。点検ってわけだ。」

そんなことはちっとも知らなかった。アギュのスケジュールなんて興味ないし。
そんなこと行ってる間に、シドラ・シデンは再加速。早い、早い。付いて行くのがやっとだ。スクールの廊下は逃げ惑う生徒達で溢れたが、知ったこっちゃない。僕にとっては小さいニュートロン達を踏まないように、突き飛ばさないように走るのは至難の技だった。
シドラはまっすぐにアギュ・ルームの扉に飛びかかった。キック一発、二発。最初の扉が砕け散った!安普請だと聞いてはいたが、さすが馬鹿力の勝利。
僕も追いついて遅れじと、猛アタック!次の扉に二人で代わり番こに体当たり!。ここは特殊なんでワームの力は借りられない。(勿論、学校と戦争をするつもりなら借りれるが。)シドラの馬鹿力だけが頼りだ。

「馬鹿というのは適切な表現ではないと思うが。悪意を感じる。」
ほんの便宜的な表現だって。やり憎いなー、まったく!。
(ウルトラ・パワーってのはどうにょ?)
「それがいい。今度からそう呼べ。」
はいはい。髪が全部抜け落ちゃわないのが自分でも不思議だよね。

何枚、扉を壊したかわからなくなる頃、やっと鍵のかかってない扉に行き着いた。バリアーに不具合が生じたのか、ドラコも平気で付いてくる。ってことは、見えないがバラキもいるってことか?と思う間もなく、シドラは中に飛び込む。僕も勢い余って室内に転がりこんだ。だっせー。んにょー、にょー!ドラコがすかさず、警告を送る。その時は、まだその真意が僕には解ってなかった。

GBゼロ-12

2007-10-03 | オリジナル小説
スパイラルゼロ-12



           イリト・ヴェガ

ユウリに聞いてもきっと教えてくれないだろうと思った。最近、ちょっとぼんやりしているユウリは、こんなことを言い出す。
「カプートが来たくないのなら、彼は来ない方がいいのかもしれないわね。」
「なんで?アギュの所為?」教室だったのでシドラ・シデンがビクンとする。
「表に出ろ。」
「無重力リングだろ。やなこった。」僕は捨て身の反抗。
表向きは誰も注意を払っていない。
ユウリのオレンジ色の端末器には赤い星が縫い付けてある。燃える太陽。ユウリの象徴。なのに、今日はその星に青い涙が付け加えられている。心境の変化だろうか?ユウリは悲しそうに僕を見た。
「彼が知られたくない正体を知って、どうするの?」
「どうするって?友達だもの。」僕は憮然とする。「会いたいよ。」
ユウリはただ黙って僕を見つめる。シドラは監視を意識してか、しきりにユウリに余計なことは言うなと合図を送っている。
「そうね。あたしも会いたいわ。」物憂げな瞳が繰り返す。「そう。会いたいわね。」
「無理に来させるものじゃない。」シドラ・シデンが切り込む。僕を睨みつける。
「不満ならおぬしも来るな。」
ライヴァルは減らせってことですか。シドラさん。僕はカプートをライバルと思ったことはないけどさ。ユウリとの繋がりだって、もっとはっきりと知りたいじゃない。
「わかったわ。」ユウリは心なしかちょっとしっかりした。
「あたしもちょっと話したいことあるから、そう。そうね、彼に会わなきゃ。」
シドラの仏頂面を物ともせず続ける。
「会ったら話してみるわね。今度、ソリュートの実験があるから。その時・・」
「その授業はなくなったんじゃないなのか?」キツイ声でシドラが口を挟む。
「授業はなくなったけど、実験はあるのよ。私自身の鍛練というか、訓練というか。」
「試練か!」シドラが吐き捨てる。
僕は抱いてた疑問をぶつける。
「以前、ユウリが言ってた授業とは違うの?」
「能天気な手習いなら良かったのだろうがな、ユウリ。」シドラの毒のある含み。
「ユウリは先生もやってたんだろ?」
「あら、それ誰に聞いたの?」
「いや・・それは、企業機密。」シドラがさらに更にごっつう睨んでるし。
「素質のある子はいたことはいたんだけど・・思ったより成果があがらないって、所長が廃止させたのよ。すごかったわよ、教官のおかんむり。」
ユウリは顔を寄せた。「いい気味だわ。」
「じゃあさ、カプートもそれに来るの?それって、やっぱり惑星の方?」
「ええ・・多分そうかな。」ユウリの目が泳ぐ。
「あたしもう、実験は全部断ろうと思ってるの・・教官にも言ったけど。本気にしてないみたい・・でも、今度が最後。」
「もう、やめろ。」シドラが僕の肩を掴む。いてて、万力だよ、これ。
「その実験はいつあるのだ?」ユウリに問い掛ける。
「惑星でやるなら、許可は取ってあるのか?」
「さあ。くわしいことはまだ決まってないわ。」
ユウリは目の前の電子ノートの方を向いた。
「カプート、来るかしら。来るといいわね。」淡々とつぶやいた。
画面には古代の書籍の一ページが映っていた。星間図と星々の歴史。
見てるわけではない。まだ少し、ぼーっとしている。寝不足かな?
「大丈夫よ、言っとくから・・」
こんなユウリは初めてだ。お日様が曇ってら。ユウリが寝不足だとしたら、その理由はなんなんだろ?
気になったが、あえて僕はそこを離れた。

通路を歩き出したとたん、案の定追い駆けてきたシドラに捕まる。
「わ!何をすんだよ!」
叫ぶ間も無く、僕は無重力準備室へと引きずり込まれた。
「助けてー!」
「ユウリを困らせるな、アホ。」
3つの部屋を破壊的に駆け抜け、無重力に僕を放り出すと彼女は低い声で恫喝した。
「カプートのことは迂闊に口にするな。」
「だからーなんでー?」粘る僕。
シドラに蹴り飛ばされないように、自分から離れてみた。「教えてよー。」
「いいから、黙れ!」
シドラ・シデンは、う~と口の中で唸る。
「今度、あやつが来たら当人から聞け。」
「来ないかも知れないじゃん。」
「ユウリが頼めば・・」シドラのうなりが激しくなる。僕にも聞き捨てならない。
「なんで?まさか、やっぱりあいつも?」
突然、うおーっとシドラ、吠える。びびった!
「まったく、あいつこそ厄災だ!」
面倒臭い奴ばかり、引きずり込んで!と、これはユウリへの不満らしい。ブツブツ言いながら、彼女は帰ってしまった。
僕はチューブを蹴りながら、考えた。
これは、ぜひともカプートを捜し出さなくてはってね。

「まったく、アギュ並みのしつこさだったな。」
ほめすぎだっての。(もしもし、ガンちゃん?褒められたわけじゃないのにょ。)
あのね、ドラちん、わかってるっての。


二人が口が堅いことはわかったんで、僕は絶対足で、捜し出してやろうと思った。次の日、僕はスクールを上から下まで捜し回った。でも、見つからなかった。念のため閲覧できる生徒と卒業後も残っている特待生のデータリストも除いて見たがそれらしい奴はいなかった。
後は口コミ?。
僕はユウリにソリュートを習ったことのあるニュートロンの女の子にそれとなく聞いてみた。その子も以前は定期的に惑星に通っていたと言う。
例のシドラに怒られた原因となった子だよ。
「そうね。大人の男の人は何人かいたわね。でも原始星の人はいなかったわよ。」
白い肌に白い髪。背はせいぜい僕の胸ぐらいしかない。可愛い子だ。
「みんなユウリに教わってたの?」
その子はニュートロン特有の切れ長の細い目を煌めかせた。
頭が小さく異様に首が長く感じる。
「ユウリ・カミシロのことが気になる?」
「まあね。」軽くかわす。
「みんな彼女に夢中になるのね。」ちょっと不満そうな唇もかわいい。
「あれだけ臨界進化体に思われてなければ、彼女、ケフェウス教官のパートナーになるんじゃないかって噂もあったのよ。」
僕は驚愕した。「まさか!それは、ないない!絶対、ない!。」
彼女は婀娜っぽく僕を見る。からかわれてる?
「大丈夫。教官にはちゃんといるらしいから。」
「そんなことより。それらしい男、こころあたりない?」
「そうね。」もったいぶった流し目、色っぽい。
「もっと上のクラスがあったわ。でも、訓練というよりケフェウス先生の実験クラスと言った方がいいわね。最近、あまり開かれないみたいだけど。」
彼女はユウリが近づいてくるのを見ると口を閉じた。
「あんな楽器で核融合なんて、教官って狂ってるわ。」ささやくと離れる。
「今度、一緒にご飯でも食べない?」
「シドラ・シデンも一緒なら。」彼女は頬を染めた。

「我をダシにして、何やってんだか!」
まあ、いいじゃないの。彼女、ほんと君のファンだったんだぜ。
「まったく、くだらん!」
(実際、ガンちゃんはユウリが好きとか言いながら他に手を出しすぎにょ!
 だからいつもシドラに怒られるのにょ!)
おやおや。もう一人、お堅いのがいたぞ。だって、何も付き合うわけじゃないしさ。
お友達がたくさんいるのは、いいことじゃないの?こうやって情報も集まるし。
「ふん。」
それに可愛い子には一声かけるのは礼儀じゃない?
「どこの礼儀だか!」
(ものは言いようにょ~!やっぱり言葉はおもしろいにょ~)

「デートの約束?」ユウリが笑って離れて行く女の子を見た。僕はニヤリとした。
「シドラのことが知りたいんだってさ。」
「あら。」ユウリは目を丸くする。「シドラって人気者ね。」
「それより、珍しいね。シドラ・シデンと一緒でないなんて。」
「彼女は上に報告に行ってるはずだわ。」
「上って惑星?アギュのこととか、なんちゃって?」
彼女は手首に巻き付けたソリュートに触った。細い指がしきりに石をなでる。
「あたしが行かせたの。この間、ソリュートの実験の話をしたでしょ。今日、あるって行ったらすっとんで行ったわ。きっと、報告しに行ったんじゃないかしら?」
「報告?」
「無許可の実験になるから。」ユウリは今日はすごく元気だ。迷いが吹っ切れた?
「ああでも言わなきゃ、シドラはここを離れないでしょ?」
「え?どうして・・」ユウリは顔を寄せた。目が光る。
「カプートに会うなら、どうしても実験をしなきゃならないのよ。」
僕はびっくりして言葉に詰まる。
「カプート、来るの?」
「それはわからない・・でも、必要なプロセスなのよ。」
プロセス?意味がわからなかった。
「だから、絶対。内緒よ。いい?」

その時。声がかかる。機械の移動音。
「ユウリ・カミシロ。」
ケフェウスが見下ろす。「準備はできたか。」僕は無視された。
「はい。教官。」ユウリは口をきっと結んだ。
「お前から申し出るとはどういう風の吹き回しだ?。」
「気持ちが変りました。」硬い表情で頭を下げる。
「やめたいなどど、2度と言わないことだな。」尊大な態度。
「お前の星に帰りたいならな。」
「そんな権限、もうないじゃん。」思わず口を出る。
「なんだ?お前は?」もったいをつけるように顔だけ向けた。
「ああ。ジュラのワーム使いか。なんだって?もう1回、言ってみろ。」
ユウリが目で何も言うなと言ってる。
「なんでもありません。」僕はこれでもかとさわやかな笑顔で応じる。
ケフェウスは僕を睨みつけた。蛇みたいで気色悪い。
「確か、ガンダルファだったな・・ワームには乗れないワーム使いなど、役立たず以外の何でもない。」ユウリに目を走らせる。「女にかまける暇があれば、臨界進化体と仲よくなる努力でもしたらどうだ?。」
役立たずは余計でしょ。ドラコもにょ~! と怒る。
「行くぞ。」移動機械が上昇する。
彼女は移動機械の後に続く。ちょっと僕に手を上げる。まるで、戦場に行くみたいに。
がんばれよー。僕はそっと、つぶやいた。
しかし、教官自らが迎えにくるなんて。確かに特別扱いだよな。
それにカプートっていったい?
ちょっと検討もつかない、不安がよぎったが僕にはどうしようもなかった。
いつもやってることなんだったら心配ないだろう。
僕はどんな実験なのか想像も付かなかったんだ。

2人を見送った後も僕のスケジュールに変更はなかった。
僕には僕の意地がある。
ユウリはカプートに会えるのかも知れないが、どこの誰かぐらいは自分で見つけてみたいじゃない?。
僕はカプート捜しに戻ることにした。

GBゼロ-11

2007-10-01 | オリジナル小説
スパイラルゼロ-11  オリオン連邦-2



あんただけじゃないよ。僕だってユウリが好きとかいいながら・・なんてお気楽だったんだろう。我ながら涙が出るね。(にょ~???) 心で泣いてんの!

ユウリの父親はユウリに自分の才能をひけらかしてはいけないと、常に言い置いていたらしい。その父親と再会する為にユウリは約束を破ったのだ。・・強い意思がないと操れぬ楽器だから仕方がない・・。お互い、ため息しか出ないな、フ。
ユウリに楽器を仕込んだのは知ってる通り、その父親だ。彼は特赦されて自分の故郷に帰った。妻のクローンも望まなかった男だ。娘のクローンも申請はしていない。軍隊も辞めて民間人となって、以後の消息は不明だ。
彼はゾゾ星系で唯一生き残ったアースの出身なのだ。
かつて、ソリュートは兵器として使われたことがある。
その証拠に、化石が出土するゾソの星系は荒れている。魔法生物の骨が転がっているばかりだ。人類発祥の地・・カウント・ゼロにも匹敵する荒廃ぶりだ。
ソリュートは振動によって物質を分子に分解できる。あれはそれぞれの構成分子固有の共鳴振動を使い分けているからだ。最もすぐれた者は分子まで分裂させたという。それぞれの原子を光速に近いスピードで空中でぶつけ合う。極端に言うと核融合だ。
伝説だ。そこまでできた者はそんなにはいない。たった一人いただけでもあのザマだからな。ユウリも見込まれたもんだ。
なんとなく察しはついていたか?。ケフェウスの野望。アギュやユウリを己の手札にして、少しでも中枢に食い込みたいと言う野望だ。


あの当時、所長とケフェウスは対立していた。しかし後に他所から赴任した所長に較べ、23番惑星で培ったとも言えるケフェウスの勢力は以外に侮れなかったのだ。
あやつはベラス・スクールの出身だ。300年前はあそこの生徒だった。前所長に徴用されて副所長までのし上がったやつだ。
当時は色々あってスクールの総監督に左遷されていたが、惑星の方にはまだかなりのシンパがいた。イリト・ヴェガはやつを副所長から降格しなんとか惑星から追放することには成功した。しかしその引き換えに、アギュとスクールを押えられてしまっていたわけだ。さぞ、頭が痛かったことだろう。
なんとかあやつのシッポを掴もうと悪戦苦闘していたというのが、当時の状況だ。
ケフェウスは中央から疎まれている。
イリト・ヴェガは正統なオリオン人。やつの被害者意識はそこから始まっている。
それが後にやつに思い切った行動に踏み出させることになるわけなのだ。

「ユウリは我がそこまでイリトにかかわっているとは思っていなかっただろう。もともとユウリは臨界進化体のことを常に上に報告する義務があった。ユウリがイリトに会ったことはないと言ったが、それは常にケフェウスが間に立っていたからだ。
(あいつはユウリのマネージャーかなんかか?)
アギュに肩入れし過ぎた頃から、ユウリは報告を望まなくなった。それを幸いと所長の直轄から切り離したのだ。代わりに、我がイリトからアギュの監視を頼まれた・・正直に話すと、ユウリはケフェウスには秘密にはすることに賛同してくれていた。」
「じゃあ、ピクニックのことは?」
「我はある程度、イリトに話していた。ケフェウスがどうやって知ったのかは知らん。」
「あいつを、科学者としてのケフェウスをなめすぎていたのかもな、僕ら。」
「ばらしたのはカプートではないぞ。」
「・・そうなのか?」
「それが、ずっと心配だったのだろう?。」僕はうなづく。
「カプートは確かにユウリの味方だった。」シドラもうなずく。
「さっきユウリがケフェウスに取りつかれていたと言っただろ。かばっていたのはカプートだ。」
「・・カプートとあんたか。」
「そうだ。」

そんな話はまったく慰めにはならない。自分だけカヤの外に置かれていたなんて。納得できないよね。超、スーパー、ウルトラむかつくと思わねー?
それに何?ずっと、そこにいるわけ?あんた。僕が何言うかわかんないからって、又監視するのかよ?

「我はおぬしの補足をしようと思う。」
(大きい声じゃ言えないけどにょ・・ガンちんバラキも一緒にいるにょ)
ドラコ、声ちっちぇ~!

気を取り直して続きの話をしよう。
僕はカプートを捜していた。その話はしたっけ?。カプートが来なくなっちまったんだ。ピクニックに。僕はへこんだ。そして、何がなんでも捜し出してやろうと思ったわけだ。
そんな悲痛なエピソードなんだけど。
じゃあ、カプートが最後にピクニックに来たところから始めるとするか・・
まあ、第三者的にはおもしろいかもね。人事ひとごとだもんな。

「他所の人間に当たるのは感心しない。」
(ガンちん、スマイルにょ~)
「軍のイメージダウンだ。」
イメージなんてどうでもいいと思ってるくせに。よく言うよ。
「まあな、その通りだ。」

カプートがしばらく休んでた間、僕は暇を持て余した。アギュと遊んでもいまいちだったし。なんか、彼に遊びを指導しているような気分。対等な関係ではないような。
そしてやっと次にカプートが来た時、アギュは又来なかった。
アギュはカプートを避けてるんだろうか?自分を厄災と呼ぶ同じ故郷から来た、彼を。
僕らはこの日はスクールの回りでかけっこをした。シドラとユウリは外側のリングに腰掛けてだべったりしていた。シドラの告白を聞いた後でも、彼女を恋敵として認定するのは、僕の中でなんとなく抵抗があった。あえて言うなら、志を同じくする同志と言うべきか。女のシドラに負けるとは思えないんだけど・・そんなことないのかなー?。
気にならないと言えば、嘘になるけど。
そんなことより、久々の感覚。僕はドラコとカプートとドーナツを何周も駆け回り、風になる気分を存分に楽しんだ。むかつくケフェウスのいる中心部だって、見えないのをこれ幸いと、ひたすら研究者達を避けて駆け抜ければ立派な高難易度のゲームとなる。
途中の巨大なモニターの前でカプートが立ち止まる。
モニターには寝ているアギュが映っている。ほんとうに寝てるんだか、なんだか。
どこかから、アギュが見ているかもしれないと思うと嫌な感じ。
カプートはアギュを見ていた。ふいに僕に話しかける。
「この間、アギュとキャッチボールしたんですか?」
「なんで、知ってるの?」少し、焦る。不純な動悸からだし。
「ユウリから聞きました。」
確かに少し前に、ユウリはソリュートの練習とかで惑星に行ったはずだった。
「カプートさ・・カプートってひょっとして、惑星で働いてんの?」
「ええ。惑星で働いたり、スクールで働いたりです。」
「ひょっとして・・すごい年上?」
「かも知れない。アギュほどじゃないけど。」
カプートはちょっとためらってから口にする。
「じゃあ、忙しいんだね。」
僕が落胆を見せるとカプートは
「ぼくはもう、ここに来ない方がいいと思うんです。」
「ええっ!」僕は思わず叫んだ。ドラコも肩で抗議の声をにょ~にょ~。
「困るよ!。」
「・・ユウリがぼくらを呼んだ理由がわかりますか?」
「へ・・?」
「アギュに友達を作る為、ですよ。」
えーっ!嘘。
「それも・・君の勘っていうか、推察?」
「はい。それと・・僕の場合は・・あと、同情ですかね。」
「そ、そうなのかな?」でも、そんな気もする。
でも僕もそれで落ち込むほど、昨日の今日の自分ではない。ま、負けるもんか、変化球。
「あなたはワーム授かった。シドラ・シデンと一緒です。」
「じゃあ、シドラも?」
「友達候補なんじゃないですか?」
「でも、でもさ、そうならばカプートだって・・なんか能力があるから選ばれたんだろ?」
カプートは寂しそうに、アギュから目を反らした。
「ぼくと彼は似ています。同じ星の出身と言うだけでなく・・」
僕ら二人の影の中を何人もの大人達が気付きもせず通り過ぎて行く。
「スパイロの子供は孤児みたいなものだし・・ぼくは現実では友達もいないしね。孤独という状況が・・ユウリの琴線に触れたんでしょうね。」
「そう言えば僕も似たような境遇だな・・」
僕はモニターのアギュの光を見つめる。忌々しい、人類の希望の光?。
カプートの声が続く。
「それに・・臨界進化体に会って見たかった。会う度にユウリに聞いていたんです。彼はどんななのか。人間なのか、それとも・・」息をつぐ。
「みんなが噂するようなモンスターなのか。現実ではぼくのような一塊の原始星人には近づくなど不可能ですからね。アギュは人と親しく口を聞いたりしないし。生徒だった頃から遠い存在でした。会って良かったです。彼もまだ、普通の人間でした。それだけでも、今後のぼくの人生にとって、無駄でなかったと思います。」
カプートはフッと笑った。
「アギュの言った通り、無理なんですよね。ぼくごときが連邦を変えるなんて・・。」
「そんなことないよ!」確証はないが、そこは認めてはいけないと強く思う。
「いいえ。わかってはいたんです。いくら勉強しようが真面目にがんばろうが、現実の困難さがあるんですよ、歴然と。」
なんと言ってあげたらいいんだろう。僕まで悲しくて惨めになる。
「泣かないで下さい。ガンダルファ。」
「泣いてないよ。」僕は目を拭った。泣いているとしたら、夢を見ている体だろう。
「大丈夫。ぼくは生きてる限りがんばりますから。だって、あきらめが悪いですからね。」
カプートは又アギュに視線を戻す。
「ほんと自分が彼だったら、と思いますよ。」
「あいつはダメだよ。」僕の声のトーンも落ちる。「自分のことしか考えてないもん。」
あと多分、今までの臨界進化体みたいに逃げることだけ。
ふと見ると近くにケフェウスがいた。僕は彼の前で思いきりしかめ面をする。奴は当然見えてない。いつものように移動機械を指輪でコツコツ叩きながら、奴はモニターのアギュを見ている。
「でもさ。」僕はカプートの手を掴んだ。
「ピクニックに来ないなんて言わないでよ。やめないでよ。」
カプートは僕の切実な叫びに目を伏せた。ボサボサの髪が顔を覆い隠す。
「お願いだよ。」僕は畳みかける。
「僕は誰とキャッチすればいいの?ドラコも困るよ。」ドラコがコクコクする。
「アギュじゃ代わりにならないよ。シドラはやる気がないし、ユウリは・・」
「・・なるべく。来れる時は・・来ますから。」
やっと、そう口にする。なんとなく、そんなこと言ってももう来ないような気がする。
「じゃあ、じゃあ、さ、教えてよ。」僕は彼の手を放さなかった。
「お前の正体。現実で会いに行くからさ。それもダメ?」
カプートの手が震えた。彼は目を上げた。青のリングの付いた不思議な目。
「それも・・今度・・必ず、言いますから。」
僕も目を反らさなかった。彼の顔は一瞬とても大人びて見えた。それが彼の現実の顔なんだろうか。ドラコが唸るように鳴く。僕と共に納得してないのだ。
「僕ら、友達だろ?」
カプートは手を放した。
「ええ、いつまでも友達ですよ。友達です、ガンダルファ」
彼の顔は泣き顔のように歪んでいた。
僕は不満顔のドラコを丸めると、思いっきりケフェウス教官にぶつけた。そうせずにいられなかったんだ。カプートにもう会えないなんて、彼が嘘を言ってるなんて、そんな直感を認めたくなかったから。
突き抜けるかと思ったらさすがワーム、ドラコは景気良く跳ね返って見せた。
にょにょ~と機嫌を直す。僕もちょっとだけすっきり。
ケフェウスは顔をクシャクシャにすると思いきり、くしゃみをした。はは!
カプートが目を丸くする。
「どんな仕組みなんでしょう。ドラコがぶつかろうと思ったらぶつかれるってこと?」
相変わらずこんな時でさえ、ワームへの興味は尽きないなんてカプートらしい。
「じゃあ、この中でさ、やろうよ。」僕はやけくそで笑っていた。
「こいつらの誰にも当てないように投げ合うって、どう?。」
カプートもやっと笑った。
「・・それは難易度、高いですね。」

それが。
やっぱり、カプートがピクニックに来た最後になったんだ。

「そしておぬしが大騒ぎをしたわけだ。」
「したわけだって・・シドラはカプートがどこの誰か知ってたんでしょ!教えてくれなかったからじゃないの!」
「知ってたら、おぬし友達でいられたか?」
「・・まあ・・確かに動揺はしたさ・・でもなんとかなったと思うよ。カプートはカプートだもん。」
「おぬしはそうだろうな。」
「なんだよ。」
「しかし、奴は知られたくなかっただろう。おぬしには。」
「そうなの?」
「親しいからこそ。そういうことがある。」
「親しいからなんて、悲しすぎるよ・・」
「それにおそらく。アギュには絶対にだろう。」
「アギュには?どういうことよ?」
「・・おぬしの方が何か知ってたりするんじゃないのか?。」僕はドキリとした。
「そっちだってあるんじゃないの!」
「確信はないから、我からは言えん。」
ちぇ!ケチ!バラキと一緒じゃん。もったいぶって。
(ガンちん~やめるにょ~滅めっせられちゃうにょ~)
ふふんだ。ワームが怖くてワームに乗れるかってんだ!

GBゼロ-11

2007-10-01 | オリジナル小説
スパイラルゼロ-11


         オリオン連邦

やれ、さて、行ったか。あの気取り屋がいない間、しばらく我が話してやろう。
いや、何、我のことをあれこれ言ってるとバラキが教えてくれたのでな。仕事を早めに切り上げてきたのだ。ガンダルファは我わが部隊の広報担当なんて言ってるようだが。この我がそれを了承してるとは思わないことだ。
これが薔薇騎魔維羅ばらきまいら、通称バラキだ。こんな辺境の星の人間がワームが見えるなんてあっぱれだ。バラキはドラコみたいにおしゃべりじゃないから安心しろ。気詰まりなら、許せ。ワームの目を見てると落ち着かない奴は多いからな。何もかも見透かされるようで嫌らしい、ふふ。よっぽど、見透かされてまずいことがあるのかな。
何?バラキの目を見ると10日後にバッタリ倒れて死ぬとか言う話?。気にするな。ただの噂だ。ニュートロンどもが振りまいたんだろう。あやつらも進化体とか言って威張ってる割には、たいしたことないな。
どうした?モジモジして。ああ、今の噂か。信じるな。冗談だ。
バラキが怒るぞ。怒るとどうなるか・・まあ、やめておこう。
ますます落ち着かないって?そりゃあいい、はっはっは。

何が聞きたい?ガンダルファの事か?モテルかって?そりゃそうだ。あそこまで女の気をひこうとしてモテなかったら哀れと言うものだろう?。

おぬしが聞きたいのは本当はユウリのことではないか?
これだから男とは、まったく!可愛い娘には目がない。(我もだろって?フフ、そんな生意気なこと言っていいのか?口にするつもりはなかって?誰かさんと一緒で、口は災いの元だな。言っておくが、我は相手を顔で選んだりしてないからな。)
それより、なんだって?そう、話題を変えるのは利口だ。
ユウリの歳のことか?。確かに宇宙での時間というものは説明しにくいものだ。あるようでないものとでも考えておけ。それじゃ、わからないって?そうだな。時間とは螺線のようなものだ。それぞれ各自の時間螺線軸が重なる時だけ、ほぼ同じ時間が流れている。上方向には自由に動けると思っておけば、まちがいはない。お約束だ。まあ、たまに例外もあるらしいがな。
とにかく、統一された時間などないってことはおぬしもなんとなくは知ってるな?
ガンダルファはおぬしに分かりやすいように、おぬしの星の時間単位で話してるから矛盾がいっぱい感じられるだろう。でも、時間の辻褄合わせなどつまらん。
確かに、銀河時間というものはあるが。それはこの銀河の自転から算出された時間で、一応宇宙での共通の秤になっている。しかし、おぬしら一個の原始星の時間とはまったく異なる。今は問題にしなくていい。
宇宙ではそれでなくても個人の体内時計など光速でワープしたり、ワームホールを使ったりすると無限に変ってしまうものだ。もし、人間がワームと同じようにワームホールに住み続けることができたならば、そこも全然違う時間が流れている。時間などまったく流れていない、次元さえあるのだ。
理論上はそんな次元を自在に使えば、5000光年の彼方とこことをほとんど同時に移動できるはずだ。今のところ、人類の中でそれができそうなのはアギュだけだ。
だから我達が本当は何歳なんだろうとか、考えるのは無駄なことだ。お互いの統一した時間概念がないのだからな。

少し、次元の話もしておくか?。おぬしもガンダルファと同じ、勉強は今一つのタイプぽいからな。知ってるって?。嘘をつくな。そうだろが?。やっぱりな。ほら、遠慮すんな。
まあ、次元はメモリー量の違うディスクが乱立してるようなもんだ。
情報量の違う次元が無数に続く、これが大きい次元だ。
例えばこの3次元のデータである我々を、他の許容量の少ない次元で再生しようとしてみろ。再生できないだろ?我達はそこでは重たいのだ。無理に存在しようとすれば次第に圧縮されて最後にはペシャンコにされる。又、メモリーが多い次元ならいいかというと解析度の関係で肉体が希薄になって結局、分散してしまったりする。
それとは別に小さい次元もそれぞれにある。と考えられている。この宇宙にあるのだから他の宇宙にもあるだろうってことだがな。
それが縦横無尽に駆け巡るワームホールだ。これはできたり消えたりする宇宙の穴だ。おおまかな地図もあるが・・毛細なホールに関してはワーム以外は手に負えない。他の大きい次元に繋がっていたりするから、メモリー量もその都度、微妙に変ってしまう。宇宙旅行や軍隊の悩みの種だ。
このように我達の物理的肉体がそのまま、スライドできる次元は限られてしまう。電波の波長の受信範囲のようなもんだな。そこはこことそんなに大きく変らないので自己呼吸だってできる。精神エネルギーだけになるともう少し範囲が広がる。それがいわゆる、例のピクニックだ。物理的肉体に慣れた我達には、確かにそこに存在する  という実感がわかないのが欠点だな。
我達は次元バリアーがなければ、大きい次元も小さい次元も長時間滞在することができないのが実情だ。ワームは情報量を自己調整できるらしい。そこに住んでるんだからな。ワームに守られたドラゴン・ボーイも存在できる。我達はワームを駆って軍隊をいち早く、何万光年と離れた目的基地にへと送り届ける航路を  時間の螺線をショートカットする航路を見つけなくてはならない。

今、銀河は戦国時代だ。最近は大きな戦いも一段落して、ペルセウス連邦とは均衡を保っている。ここは少し、ペルセウス寄りだから風向きが変ればあぶないかもな。オリオン連邦もよせばいいのにあれこれと干渉して、画策しているらしい。ただでさえ、ダークサイトと言う人類の面汚しどもがいるのにな。ダークサイトはペルセウス側に加担しているのだが、無視できない勢力なのだ。特定の住み処を持たない遊民ゲリラだから、手に負えやしない。まったく!フン!まあ、そのおかげで軍隊は大忙しだ。

ちょっと待て。
今、連邦の成り立ちがよくわからないと言ったのか?ダークサイトだの、ニュートロンだの進化体だの、相関関係がよく飲み込めないだと。おぬし?。まさか、それほどとは。
ガンダルファよりもやばい人間がここにいたとはな。驚きだ!
いや、言い訳はいい。わかった。考えて見れば、ほんの数百年前に連邦に見つかったような原始星だものな。いや、悪かった。そこも少し、我が講義してやろう。
オリオン連邦を形作る人類は、もともと2種類に別れていたのだ。原始人類ヒューマノイド(オリオン人)と人類亜種とされるカバナ・リオンだ。この二つの人類の争いが表面化したのは二つの人類が互いに他星へと植民を始めた頃からと言われている。やがて植民星で独自の進化をした者たちも現れ、それぞれの利害を調整する機関として連邦が誕生したのだ。
今でも、連邦に組み込まれたカバナ・リオンと植民したヒューマノイドを便宜上「ライト・サイト」と呼ぶのは連邦設立の頃からの名残であるのだ。
連邦加盟を拒否した少数のヒューマノイドと大多数のカバナ・リオンらは宇宙に生きる道を選択した。それら遊民となった者らを、連邦に集った者たちは軽蔑を込めて「ダーク・サイト」と呼んだのだ。
植民と遊民。これには源のアースを巡る根深い争いが起因している。今も二つの民族にくびきを残す、人類創世のアースが滅び去った程の大きな戦乱がな。
連邦創世の半生はいわば、同族殺し合いの歴史であったのだ。まったく、お恥ずかしい限りだ。
連邦に所属を拒んだ植民星のひとつ、ひとつを武力で帰属させた歴史だ。
「ライト・サイト」の者たちが無重力地帯で進化を繰り返した宇宙人類を「ニュートロン」と呼び始めても、同じく宇宙人類であるはずの遊民は、未だ蔑称の「ダークサイト」でしかなかった・・このことから何がわかる?。人間の精神はいくらも気高くも進化もしないということだと、我は思うぞ。ほんとただの姑息な差別なのだから。
そして「ニュートロン」の中でも更に空間能力が高まった者を祭り上げて「進化体」と宇宙人類らが呼び出した時、その敬称の範囲に遊民系の植民出身者が入ることはほとんどなかった。・・ガンダルファの話にも出てきた、ケフェウスとかだな。
それは中央がみずから目をそらし続けて来た、統一連邦の暗部なのだ。
2種類の植民人類と袂を分かった「ダークサイト」達はおのれたちのことを「カバナ・ボヘミアン(誇り高き遊民)と呼んでいる。
あやつらは基本的に星を持たず、ボイドの空間に都市を建設した。ヒューマノイドとカバナ・リオンの混血した宇宙人類だ。
その首都、カバナシティの人類亜種は他人類とは一切混血をせず創世アースからのカバナ・リオンの血を守り続けているという話だが。
しかしやつら、原始濃き血を誇るカバナ人貴族は、連邦の原始人類とは同じではないと考えられている。
なぜなら、彼等の中から「臨界進化体」が出現した形跡が見られないからだ。

・・まあ、アギュ落ちになってしまったな。それほど・・臨界進化は大事な話だと言うことぐらいは理解できよう。まあ、あやつの存在は我にもよくわからん。
したがって、この件は終わりだ。次に我に聞きたいことはないのか?。

そうだそうだ。そうだった。
おぬしはおのれの星も連邦の中枢も大して変ってないから驚いているのだろう?。我達の武器。我達の船。我達は階段は足で登るし、登れば当然汗もかく。おぬしらとたいして変らぬ、普通のモノ食っとるしな。
(ただし、前線はまったく話が違うぞ。知力の粋を尽くした代理戦争の様相だがな。人工知能と感情のないホムンクルス達のな。それらを無事に送り出し、いかにすばやく撤退させるかが戦争の鍵なのだ。勿論、その役目をになってるのが我達軍隊だ。実際に命をなくす程の肉弾戦はめったにないが。あるとすれば、双方かなり悲惨な戦場になることは常に肝に命じてないといけない。先駆けのワーム部隊と後方の参謀部隊。力を合わせて補給部隊を守らなくてはならない。ニュートロンの中でも特に次元感知能力にすぐれた、進化体と呼ばれてるボードマスター達の腕の見せ所と言えるな。腹が立つが、あやつらが原始体部隊である我達を同列に扱うのはこの時ぐらいだ。)
実は我達とおぬしらと想像もできないような技術の差などあまりないのだ。過去のある頂点を持って、それ以上しないように決めたと言うのが正しい。連邦の中心にいる進化体達はさすがに、馬鹿ではない。
あやつらは不必要な技術、一方向だけの発展など人類に意味がない。むしろ有害であると20000年前に、結論ずけた。背骨や骨がなくなったのが、よっぽどショックだったらしいな。やつらは必要以上な便利性や技術、科学、医学の凍結を決めた。やつらが原始種人類を分類し保護し、保存することとした張本人だ。人類固有のDNAを守り、進化体ニュートロンのこれ以上の肉体的退化を止める為に。これが迷惑な極まりない例の政策だ。
それがきっかけかもしれないが、10000年程前から連邦全体が人類回帰ブームなのだ。1千万年近くかかってこれが結論とはね!もうすぐ、人類が外宇宙に出ておぬしの星の時間で900万年記念だ。少なくともこの傾向は1千万年頃まで続くだろう。一千万年記念日まで人類創世の姿、形を保存して置きたいのだそうだ。アホらしい。それは無意味な執着だと思うがな。
そういう訳でおぬしらの惑星も原始星に認定された。こんな辺鄙な星だから始祖の血も濃い。そんなところに見慣れないニュートロンなんかうろついたらすぐに大騒ぎになる。会いたかったか?たいしておもしろい奴らじゃないけどな。だいたいニュートロンはこんな下っ端仕事は絶対、やりたがらない。原始星に送られてくるのは、同じ原始人類というのが常識だ。
アギュか?勿論、アギュは特別だ。中枢に言わせると、特別にアホだということだ。確かに、変人だがね。あれでも随分、成長したもんだと思う。我が言うんだからまちがいはない。

なんだ、バラキ?
ああ、巻き毛のお兄さんがあわくって戻って来たみたいだな。

おい、こら!人が○ンコしてる間に何勝手に話してるんだよ。まったく油断も隙もない。
「アギュのとこ行って来たか?」
行ったよ、恥ずかしい!。全然、呼んでないじゃないか、シドラ・シデン。
「嘘を付いたんだ。」
付いたんだ!って威張られてもねえー。なんで、嘘なんか付くんかなー?。まったくー!びっくりしたから、ついでにトイレに行っちゃただろ!ったく。
(ガンちんは早グソが得意なのにょ!)
いや、そんな話はいいから、ドラコ。

「我はおぬしが疑問に思ってることの捕捉をしてやろうと思う」
「それってあんたとユウリが出会った頃の話だろ?」
「違う。ケフェウスのことだ。」
「シドラ・シデン、あんたはケフェウスのスパイじゃなかったのか?」
「正確に言うとイリト・ヴェガだ。」
「!」
「イリトの頼みでケフェウスを監視していた。」
「アギュを監視してるのかと思っていた。」
「アギュもだ。ユウリも含まれていたのかも知れないがな。その辺は知らん。」
「それで!色んなことが納得いったぞ。この鉄扉面が。」
「我はユウリの為なら、いくらでも人になる覚悟だった。」

ケフェウスはユウリに付きまとっていた。アギュの件がなかったとしてもだ。ソリュートの優れた使い手であるユウリは最初から、やつに目を付けられていたのだ。
当初の目的として、ユウリはケフェウスの期待に見事に応えた。ソリュートを使ってアギュの気を引くことに成功したのだから。それが皮肉にもユウリがケフェウスに深く絡み取られるきっかけになってしまった。やつはユウリを何が何でも、手放すまいとしていたのだ。やつもユウリのソリュートに魅入られた一人だったのかもしれん。男とはいえ、ニュートロンのやつがユウリに何らかの感情を抱くとは思いたくないが。あれは確かにユウリに執着していたのだ。
我はそれが不安だった。学校総監にソリュートの研究にユウリを使うと言われれば一介の生徒である我にはどうしようもない。表向き、生徒は惑星には行くことができない。逆に所長はケフェウスの許可なくしてスクールの生徒には容易にに手が出せない。だから、我は自分からイリトのスパイになった。ユウリを守る為。情報を欲しがってたイリトはユウリを懐柔しようとしていたがうまくいってなかった。案の定、やつの研究は禁為に触れかねんギリギリのものだった。ソリュートの兵器利用などイリトはナンセンスなことと切り捨て、常に圧力をかけ続けてくれた。やつが研究を縮小せざるをえないようにな。
それで一安心だと思っていたのだから。 当時の我はまだまだ子供だったのだ。
随分と甘かったわけだ・・。