MONOGATARI  by CAZZ

世紀末までの漫画、アニメ、音楽で育った女性向け
オリジナル小説です。 大人少女妄想童話

和物

2017-05-21 | オリジナルイラスト

 

久しぶりにイラストを

(小説のはできないのに)

松井冬子さんという日本画家さんに

一目惚れ・・・

触発されて描きました

 

この方

美形なだけでなく

絵もなかなか

好み

 

腐敗する美女

幽霊画

グロテスク耽美

 

いろいろ

言われてるみたいだけど

 

これはこれで

 

 

 

 


蛸と金魚

2017-05-16 | 絵葉書

© YUKI KATAOKA

 

蛸と金魚が

一緒にいるわけないのだが

一緒にいると過程してみよう

 

蛸はすごく利口だから

自分がはいりたい蛸壺の中で

金魚に餌をやったりしているわけだ

 

健気な蛸さん・・・

 

などと言う行き詰まったメルヘンは

置いといて

 

小説の前回のイラスト

全く関係ありません(汗)

毎回、毎回

イラスト描くのちょっと限界?

 

小説も少しづつ

少しづつ一進一退しております

 

その間は

またこのように

お葉書紹介でお茶を濁す所存です(平身低頭ッす)

 

宜しくお願い致しますぅぅ!

 

 

 

CAZZ

×××愛を込めて


スパイラル・フォー-7

2017-05-14 | オリジナル小説

 

父と母と来客たち

 

 

 

 

家のドアを開けただけで力強い生命エネルギーが玄関まであふれてきた。

だからトヨには目の前に置かれた高級靴を見るまでもなく『社長』が今日も来ていることがわかる。車がないところを見ると比較的、近所にある経営するプロダクションが管轄している劇団事務所から歩いてきたのだろう。秘書も連れず一人で。

「トヨ、おかえり。」笑顔で母が廊下を走ってくる。走らなくてもいいのに。

外国製の靴の横にはくたびれた父親の国産革靴。元は良いものだが山や屋外ではき崩されていた。その方が足に馴染んでて心地いいんだとはトヨの父の弁だ。

「父さん、今日、大学に行かなかったの?」

「竜巻さんがいらしたからね、研究室から早く帰られたのよ。」ズックを脱ぐ側からランドセルが背中から外された。ゆったりとした服、母のお腹はもう隠せないほど大きくなってきている。

「トヨも部屋に行く前にご挨拶してね。」

「うん。」そういう側から「トヨ、トヨ、帰ったのか。」父親が応接間から呼んでいる。

「竜巻さんが来てるよ。」

竜巻さんは父さんの大学時代の先輩で芸能プロダクションを経営している。有名人だ。

あたりは柔らかいが断固として人をねじ伏せるようなパワーを発散する大人の男だ。学者肌でいつまでも浮世離れしていると母に評される父親とは全く懸け離れたタイプ。

だからか、トヨは『社長』が少し苦手だ。

「トヨくん、おかえり。」竜巻龍二という出来過ぎの名前を持つ、『社長さん』は地声がでかく発声といい滑舌がとてもいい。大学時代をフットボールで鳴らした体育会系だ。役者も目指していたとも聞いている。一体トヨの父とはどういう付き合いなのか。接点のなさそうな二人だった。共通点は二人とも飛び抜けて顔がいいぐらい?それにしても大学時代はともかく卒業後まで付き合いが続いている点がよくわからない。最近、頻繁に家に来るようになった。その目的なら、すごくよくわかっている・・・

「トヨくん、どう?考えてくれたかな?うちの児童劇団、今度、見学に来てくれよ。」

「まぁ、その話は」母親の真由美が側からやんわりという「なんで?いい話じゃないか。」父親の誠治が遮った。「別に必ず芸能人になるわけじゃないし。トヨは僕に似て、おとなしいというか、ちょっと人見知りなとこがあるから、人前に出ることに慣れておいた方が後々のためになるんじゃないかな。」

「でも、あんまし目立つことは・・・最近、事件も多いし。」

「あれは女の子を狙ったものだろう。」「でも。」

「確かにトヨくんは一見、女の子に見まごうほど可愛いからね。気をつけた方がいい。」

すかさず社長の営業トークが始まる。「もしもうちのプロダクションに入るようなことになればだ、セキュリティは万全だよ。保障してもいい。」

「それはいい。」自分の好きな発掘や研究以外は何事も深く考えない父親は即座に感心し、圧倒された母親は一瞬、言葉に詰まった。

「お母さん何か、心配事でも?」この『社長』は人の表情を見逃さない。

「よかったら相談に乗りますよ。次のお子さんも生まれることだし、我が社には専属霊能者も付いてますからね。」「ああ、あのテレビに出てる・・・?」

「いえ・・・何か確信があるわけではないんです。」母に言えたのはこれだけだ。

「ただ、何か夢見が悪くて。漠然と不案といいうか。つわりは軽かったんですけど・・・」やはり体が・・ホルモンとか色々、変わったせいかしらねと少し笑う。

「真由美の勘はよく当たるからな。」誠治も真面目にうなづく。

「その遺伝か、トヨも勘が鋭いんだ。『神経衰弱』なんかやってごらん、まぁ勝てないから。まず、この子の総勝ちだ。」たかがトランプの遊びでもすごく誇らしそうに言う。

「一度、その霊能師に見てもらうのもいいな。」「お安い御用ですよ。」

トヨは大人たちの会話に退屈してテーブルの上に目を落としてハッとする。直前にまで見ていたのか、テーブルには写真が広げてあった。

この春のものだ。

あの時の。

あの人が来た時の。

トヨを見ていた社長の視線も写真に落ちた。

「そういえば。」と、一枚の写真を手にする。

 

「女の子といえば、さっき写真を拝見した時から気になっていたんですが・・・この女の子はどういう子なんですか。」

「先輩は全くぅ・・・」誠治がかつての後輩に戻っている。「いつになっても抜け目がないなぁ。いつだって可愛い子は見逃さない。」トヨには二人の関係が少しだけ見えてくる。「ふん、誠治、君はいつだってボォッとしていたからね。ほんとですよ、奥さん。もててたって全然、気が付かないんだから。」はぁと真由美が相槌を打ちながら。「その子はええと・・トヨのいとこの渡くんがこの春に受験に来た時に一緒に来た子ですよ。」

「竜巻さんも知っている僕の前妻の・・・須美江のお兄さんのとこの渡くんです。それはその友達のゆりちゃん。阿牛ユリちゃんですよ。」

「そうそう、阿牛ユリちゃん。この春さき、こちらで大学を受けるんで須美江さん達も来たの。それなのにトヨったら、ユリちゃんと渡くんに会った時には緊張しちゃって・・・」

 

「竜巻さん。」トヨの口から言葉が飛び出していた。

「劇団、ハヤトくんと一緒だったら遊びに行ってもいいよ。」

喜びに輝く社長の顔、戸惑う両親の顔。早口で投げつけ、トヨはすぐさま背を向ける。「僕、宿題する。」

応接間のドアから飛び出たトヨは心臓がドキドキしていた。

「ハヤトくんって誰ですか。」社長が両親に問うている。

「ああ、トヨの一番の仲良しなんです・・・確か、写真がここに。」

母は手帳に挟んであるトヨとハヤトが保育園で撮った写真を見せているのだろう。

トヨは母親が玄関脇に置いてくれたランドセルを取りにゆっくりと戻る。

「ふむ、なかなか可愛い子じゃないか。」ご機嫌な社長の声が廊下にまで響く。

「この子なら是非、一緒に我が劇団に入ってもらいたいね。」

「全く・・・抜け目がないなぁ。」父の発言にため息が混じる。

「ユリちゃんもスカウトするつもりなんですか。」

「あ、でもあの子はそういうのダメだと思いますよ。すごくキッパリさっぱりした子だし。」母の声が途中から丸みを帯びた。「とにかく渡くんにべったりなんだって須美江さんが言ってましたから。とにかくもう、渡くんと同じ技術大学に入ることしか考えてないみたいだし。これからは同じ大学で学んでいくんです、離れるなんて無理ですよ。」

「すでに彼氏ありってわけか。ふむふむ・・・この渡くんもなかなかハンサムだね。」

「ダメですって!なんですか、もう、手当たりしだいですか。」

「いやいや、なかなかいいとは思ったけど・・・冗談だって。ただ、このユリって子はなんか目力の強さとか只者じゃないよ。こういうさ、ツンデレな感じがね、デビューしたら意外に人気出そうだなって強い確信が私にはあるんだけどなぁ。残念だなぁ。どうにか話だけでも聞いてくれないかな、誠治、会わせてくれない?」

「もう先輩、いい加減にしてください!」

さすがに父の声が強くなった。それを聞きながらそろそろとトヨは階段を上がる。

ランドセルは教科書でなかなか重たいが・・・いつもなら気にならないのに。

「・・・ハヤトはどうしているかな。」勤めて自分にも平静を装った。

「チチ親に怒られてないかしら。」

 

彼は大切な友達だ。

自分と同じ。

周りから浮いていてそれをよくわかっている二人。

初めて会った時からハヤトが気になった。

宇宙から来たということが理屈でなくわかったこともある。

トヨのなかではそれでも何も変わらない。

彼も否定しなかった。

ただ、ハヤトが幸せでないのが心にかかっている。

 

 

自室に入ると勉強机にランドセルを置き、窓を開けた。

ハヤトの家が、彼の部屋が遠くにかろうじて見える。明かりは消えている。

 

この春のこと。

ハヤトにも言ったが、それはトヨにとってはものすごく大きなことだったのだ。

トヨが会った人。おそらく、生まれてから初めて会った人だ。

だけどもトヨはその人を昔から知っていたし、向こうも何かを感じたと思った。

挨拶もロクにできなくて大人たちに笑われたけど。

あの人はトヨを笑わなかった。

それまでトヨはごく普通の子供だったのだ。

普通の子供とは4歳5歳の子供が考えるようなことを考えるか、まったく何も考えていないか、そんな毎日だ。そうだったはず。

そして、トヨは変わった。

変わったというか、予感がある。何かを思い出そうとしている。

そして何かを思い出すはずだ。トヨとその人がかつて出会った時のこと。

遠い、遠い大昔のことだ。

それが怖い。怖いけれど・・・トヨはそうしなくてはならない。

待ち遠しいような不思議な気持ちだった。

トヨがそんな葛藤を抱えたことを母も父も気づいてない。

話せたのはハヤトだけだ。トヨの知らないどこか遠くから来たハヤトだからだ。

いつか彼のいた遠い世界の話が聞きたい。

 

母とハヤトはあったことがあるから。それに大人たちの噂でもう知っているだろう。

トヨの母親のお腹には今、赤ん坊がいる。ハヤトにはまだ言ってないのは。

トヨにはそれが弟だとわかっている。

母親が妊娠を医者に聞かされる前に気づいたのもトヨだ。

「赤ちゃんがいるよ。」

トヨにそう言われた母親は半信半疑で産婦人科に行った。

『不思議なことがあるもんね』

母と父はしきりに感心してトヨを愛おしく見る。度々、そのような勘を働かせるトヨをこの両親たちはごく普通に受け入れている。ただ、よその人間に関わる事柄だけは容易に口にしてはいけないと教えられていた。

そのわけもとうにトヨは知っている。

人々から注がれる畏敬のまなざし。

仰ぎ見られていた、そんな記憶。恐れられ排除される予感。

その予感もあの人とどこかで結びつくのだ。

思い出したい・・・

そしてあの人のことを思い出すと『会いたい』『会わなくてはならない』

決まって誰かの声がする。女の声だ。映像が浮かぶ。

黒い髪と瞳を持つ女だとわかっている。

誰なんだろう。

年齢らしからぬ、ため息が漏れた。

 

 

視線を感じた。

またあの男だ。見なくてもわかる。

暗がりから、かなり離れた路地から、外を見るトヨに視線を送っている。

注目されるのはいつものこと。だが、しつこいのは嫌いだった。

トヨは窓を閉める。

 

あいつは不吉。

あの男が背負ってるものにあいつはやがて食い尽くされる。

そう言ってやる気は今の所、全くない。

 

 

 

 

男はトヨが窓を閉めるとハッと我に返った。

こんなところに夢中で立ち尽くして。

後ろに子供を乗せた自転車が通り過ぎた。追い越しながら女と子供が怪訝そうに見ていく。『離れろ。怪しまれる。』

遠ざかるライトから、くるりと後ろを向きようやく駅へと向かう。

『らしくない。慎重に慎重を重ねろ。だから捕まらなかったんだ。』

男は今やこの近辺に日参していた。

仕事は営業。幼児教育教材の売り込みであったから、何の疑惑ももたれない。幼い子供が好きだから仕事も熱心、成績も良いからどうしてもこの地区を重点的に回りたいとわがままを言っても上司には多少の融通もきく。

そのようにして今までもターゲットを見つけ、その家族の動向を探り当てて来た。

家族が彼の教材を拒んでもその周辺からいくらでも情報は集められる。

大学教授の父親、専業主婦の母親。今は第二子妊娠中。予定日はもう直ぐ、来月のゴールデンウイークあたり。その時がチャンスかもしれない。

『どうやって』声は囁き、彼は常に考えている。『あの子をどうやって』

子供ながら目立つ、トヨには常に取り巻きの子供達がいる。学校からの行き帰りも一人ではない。近所の大人もトヨには目を配ってるようだ。

男は目当ての子供と常に一緒にいる、特に仲のいい友達のことを考える。

トヨといない時、あの子供の方は常に一人だ。

あの子供の母親は育児放棄だとか。

虐待していたのではないかと、隣の主婦が言っていた。

聞きもしないのにベラベラとだ。子供の母親は頭がおかしいとか。

最近、新しい男ができて子供の身なりはマシになったが、相変わらずの無関心らしい。

男はほとんど家から出ず、仕事をしているのかもわからない。

別れた旦那からの養育費で暮らしていて、生活はカツカツなんだとか、嬉しそうに。

直接、子供に何かしてやる気などはさらさらない、全き善き隣人。

 

大学教授の両親には隙がないが、こちらは隙だらけ。

攻めるならこちらという手もある。

もちろん、ハヤトなるガキには興味もない。

トヨを手に入れるための道具としてだ。

 

どのようにしてやろうか。

トヨを手に入れたらしたいことが後から後から夢想され、次第に興奮していく。

 

『まだだ、まだ。』

『慎重に。逃げやしない。もうおまえのもの。』

 

騒ぐ心をなだめ駅へと足早に歩く男の背にピッタリと寄り添った影。

 

『手に入れろ』『欲望をぶちまけろ』『殺してしまえ』

 

挑発し続けるそれは男の心と完全に同化していた。