MONOGATARI  by CAZZ

世紀末までの漫画、アニメ、音楽で育った女性向け
オリジナル小説です。 大人少女妄想童話

GBゼロ-11

2007-10-01 | オリジナル小説
スパイラルゼロ-11  オリオン連邦-2



あんただけじゃないよ。僕だってユウリが好きとかいいながら・・なんてお気楽だったんだろう。我ながら涙が出るね。(にょ~???) 心で泣いてんの!

ユウリの父親はユウリに自分の才能をひけらかしてはいけないと、常に言い置いていたらしい。その父親と再会する為にユウリは約束を破ったのだ。・・強い意思がないと操れぬ楽器だから仕方がない・・。お互い、ため息しか出ないな、フ。
ユウリに楽器を仕込んだのは知ってる通り、その父親だ。彼は特赦されて自分の故郷に帰った。妻のクローンも望まなかった男だ。娘のクローンも申請はしていない。軍隊も辞めて民間人となって、以後の消息は不明だ。
彼はゾゾ星系で唯一生き残ったアースの出身なのだ。
かつて、ソリュートは兵器として使われたことがある。
その証拠に、化石が出土するゾソの星系は荒れている。魔法生物の骨が転がっているばかりだ。人類発祥の地・・カウント・ゼロにも匹敵する荒廃ぶりだ。
ソリュートは振動によって物質を分子に分解できる。あれはそれぞれの構成分子固有の共鳴振動を使い分けているからだ。最もすぐれた者は分子まで分裂させたという。それぞれの原子を光速に近いスピードで空中でぶつけ合う。極端に言うと核融合だ。
伝説だ。そこまでできた者はそんなにはいない。たった一人いただけでもあのザマだからな。ユウリも見込まれたもんだ。
なんとなく察しはついていたか?。ケフェウスの野望。アギュやユウリを己の手札にして、少しでも中枢に食い込みたいと言う野望だ。


あの当時、所長とケフェウスは対立していた。しかし後に他所から赴任した所長に較べ、23番惑星で培ったとも言えるケフェウスの勢力は以外に侮れなかったのだ。
あやつはベラス・スクールの出身だ。300年前はあそこの生徒だった。前所長に徴用されて副所長までのし上がったやつだ。
当時は色々あってスクールの総監督に左遷されていたが、惑星の方にはまだかなりのシンパがいた。イリト・ヴェガはやつを副所長から降格しなんとか惑星から追放することには成功した。しかしその引き換えに、アギュとスクールを押えられてしまっていたわけだ。さぞ、頭が痛かったことだろう。
なんとかあやつのシッポを掴もうと悪戦苦闘していたというのが、当時の状況だ。
ケフェウスは中央から疎まれている。
イリト・ヴェガは正統なオリオン人。やつの被害者意識はそこから始まっている。
それが後にやつに思い切った行動に踏み出させることになるわけなのだ。

「ユウリは我がそこまでイリトにかかわっているとは思っていなかっただろう。もともとユウリは臨界進化体のことを常に上に報告する義務があった。ユウリがイリトに会ったことはないと言ったが、それは常にケフェウスが間に立っていたからだ。
(あいつはユウリのマネージャーかなんかか?)
アギュに肩入れし過ぎた頃から、ユウリは報告を望まなくなった。それを幸いと所長の直轄から切り離したのだ。代わりに、我がイリトからアギュの監視を頼まれた・・正直に話すと、ユウリはケフェウスには秘密にはすることに賛同してくれていた。」
「じゃあ、ピクニックのことは?」
「我はある程度、イリトに話していた。ケフェウスがどうやって知ったのかは知らん。」
「あいつを、科学者としてのケフェウスをなめすぎていたのかもな、僕ら。」
「ばらしたのはカプートではないぞ。」
「・・そうなのか?」
「それが、ずっと心配だったのだろう?。」僕はうなづく。
「カプートは確かにユウリの味方だった。」シドラもうなずく。
「さっきユウリがケフェウスに取りつかれていたと言っただろ。かばっていたのはカプートだ。」
「・・カプートとあんたか。」
「そうだ。」

そんな話はまったく慰めにはならない。自分だけカヤの外に置かれていたなんて。納得できないよね。超、スーパー、ウルトラむかつくと思わねー?
それに何?ずっと、そこにいるわけ?あんた。僕が何言うかわかんないからって、又監視するのかよ?

「我はおぬしの補足をしようと思う。」
(大きい声じゃ言えないけどにょ・・ガンちんバラキも一緒にいるにょ)
ドラコ、声ちっちぇ~!

気を取り直して続きの話をしよう。
僕はカプートを捜していた。その話はしたっけ?。カプートが来なくなっちまったんだ。ピクニックに。僕はへこんだ。そして、何がなんでも捜し出してやろうと思ったわけだ。
そんな悲痛なエピソードなんだけど。
じゃあ、カプートが最後にピクニックに来たところから始めるとするか・・
まあ、第三者的にはおもしろいかもね。人事ひとごとだもんな。

「他所の人間に当たるのは感心しない。」
(ガンちん、スマイルにょ~)
「軍のイメージダウンだ。」
イメージなんてどうでもいいと思ってるくせに。よく言うよ。
「まあな、その通りだ。」

カプートがしばらく休んでた間、僕は暇を持て余した。アギュと遊んでもいまいちだったし。なんか、彼に遊びを指導しているような気分。対等な関係ではないような。
そしてやっと次にカプートが来た時、アギュは又来なかった。
アギュはカプートを避けてるんだろうか?自分を厄災と呼ぶ同じ故郷から来た、彼を。
僕らはこの日はスクールの回りでかけっこをした。シドラとユウリは外側のリングに腰掛けてだべったりしていた。シドラの告白を聞いた後でも、彼女を恋敵として認定するのは、僕の中でなんとなく抵抗があった。あえて言うなら、志を同じくする同志と言うべきか。女のシドラに負けるとは思えないんだけど・・そんなことないのかなー?。
気にならないと言えば、嘘になるけど。
そんなことより、久々の感覚。僕はドラコとカプートとドーナツを何周も駆け回り、風になる気分を存分に楽しんだ。むかつくケフェウスのいる中心部だって、見えないのをこれ幸いと、ひたすら研究者達を避けて駆け抜ければ立派な高難易度のゲームとなる。
途中の巨大なモニターの前でカプートが立ち止まる。
モニターには寝ているアギュが映っている。ほんとうに寝てるんだか、なんだか。
どこかから、アギュが見ているかもしれないと思うと嫌な感じ。
カプートはアギュを見ていた。ふいに僕に話しかける。
「この間、アギュとキャッチボールしたんですか?」
「なんで、知ってるの?」少し、焦る。不純な動悸からだし。
「ユウリから聞きました。」
確かに少し前に、ユウリはソリュートの練習とかで惑星に行ったはずだった。
「カプートさ・・カプートってひょっとして、惑星で働いてんの?」
「ええ。惑星で働いたり、スクールで働いたりです。」
「ひょっとして・・すごい年上?」
「かも知れない。アギュほどじゃないけど。」
カプートはちょっとためらってから口にする。
「じゃあ、忙しいんだね。」
僕が落胆を見せるとカプートは
「ぼくはもう、ここに来ない方がいいと思うんです。」
「ええっ!」僕は思わず叫んだ。ドラコも肩で抗議の声をにょ~にょ~。
「困るよ!。」
「・・ユウリがぼくらを呼んだ理由がわかりますか?」
「へ・・?」
「アギュに友達を作る為、ですよ。」
えーっ!嘘。
「それも・・君の勘っていうか、推察?」
「はい。それと・・僕の場合は・・あと、同情ですかね。」
「そ、そうなのかな?」でも、そんな気もする。
でも僕もそれで落ち込むほど、昨日の今日の自分ではない。ま、負けるもんか、変化球。
「あなたはワーム授かった。シドラ・シデンと一緒です。」
「じゃあ、シドラも?」
「友達候補なんじゃないですか?」
「でも、でもさ、そうならばカプートだって・・なんか能力があるから選ばれたんだろ?」
カプートは寂しそうに、アギュから目を反らした。
「ぼくと彼は似ています。同じ星の出身と言うだけでなく・・」
僕ら二人の影の中を何人もの大人達が気付きもせず通り過ぎて行く。
「スパイロの子供は孤児みたいなものだし・・ぼくは現実では友達もいないしね。孤独という状況が・・ユウリの琴線に触れたんでしょうね。」
「そう言えば僕も似たような境遇だな・・」
僕はモニターのアギュの光を見つめる。忌々しい、人類の希望の光?。
カプートの声が続く。
「それに・・臨界進化体に会って見たかった。会う度にユウリに聞いていたんです。彼はどんななのか。人間なのか、それとも・・」息をつぐ。
「みんなが噂するようなモンスターなのか。現実ではぼくのような一塊の原始星人には近づくなど不可能ですからね。アギュは人と親しく口を聞いたりしないし。生徒だった頃から遠い存在でした。会って良かったです。彼もまだ、普通の人間でした。それだけでも、今後のぼくの人生にとって、無駄でなかったと思います。」
カプートはフッと笑った。
「アギュの言った通り、無理なんですよね。ぼくごときが連邦を変えるなんて・・。」
「そんなことないよ!」確証はないが、そこは認めてはいけないと強く思う。
「いいえ。わかってはいたんです。いくら勉強しようが真面目にがんばろうが、現実の困難さがあるんですよ、歴然と。」
なんと言ってあげたらいいんだろう。僕まで悲しくて惨めになる。
「泣かないで下さい。ガンダルファ。」
「泣いてないよ。」僕は目を拭った。泣いているとしたら、夢を見ている体だろう。
「大丈夫。ぼくは生きてる限りがんばりますから。だって、あきらめが悪いですからね。」
カプートは又アギュに視線を戻す。
「ほんと自分が彼だったら、と思いますよ。」
「あいつはダメだよ。」僕の声のトーンも落ちる。「自分のことしか考えてないもん。」
あと多分、今までの臨界進化体みたいに逃げることだけ。
ふと見ると近くにケフェウスがいた。僕は彼の前で思いきりしかめ面をする。奴は当然見えてない。いつものように移動機械を指輪でコツコツ叩きながら、奴はモニターのアギュを見ている。
「でもさ。」僕はカプートの手を掴んだ。
「ピクニックに来ないなんて言わないでよ。やめないでよ。」
カプートは僕の切実な叫びに目を伏せた。ボサボサの髪が顔を覆い隠す。
「お願いだよ。」僕は畳みかける。
「僕は誰とキャッチすればいいの?ドラコも困るよ。」ドラコがコクコクする。
「アギュじゃ代わりにならないよ。シドラはやる気がないし、ユウリは・・」
「・・なるべく。来れる時は・・来ますから。」
やっと、そう口にする。なんとなく、そんなこと言ってももう来ないような気がする。
「じゃあ、じゃあ、さ、教えてよ。」僕は彼の手を放さなかった。
「お前の正体。現実で会いに行くからさ。それもダメ?」
カプートの手が震えた。彼は目を上げた。青のリングの付いた不思議な目。
「それも・・今度・・必ず、言いますから。」
僕も目を反らさなかった。彼の顔は一瞬とても大人びて見えた。それが彼の現実の顔なんだろうか。ドラコが唸るように鳴く。僕と共に納得してないのだ。
「僕ら、友達だろ?」
カプートは手を放した。
「ええ、いつまでも友達ですよ。友達です、ガンダルファ」
彼の顔は泣き顔のように歪んでいた。
僕は不満顔のドラコを丸めると、思いっきりケフェウス教官にぶつけた。そうせずにいられなかったんだ。カプートにもう会えないなんて、彼が嘘を言ってるなんて、そんな直感を認めたくなかったから。
突き抜けるかと思ったらさすがワーム、ドラコは景気良く跳ね返って見せた。
にょにょ~と機嫌を直す。僕もちょっとだけすっきり。
ケフェウスは顔をクシャクシャにすると思いきり、くしゃみをした。はは!
カプートが目を丸くする。
「どんな仕組みなんでしょう。ドラコがぶつかろうと思ったらぶつかれるってこと?」
相変わらずこんな時でさえ、ワームへの興味は尽きないなんてカプートらしい。
「じゃあ、この中でさ、やろうよ。」僕はやけくそで笑っていた。
「こいつらの誰にも当てないように投げ合うって、どう?。」
カプートもやっと笑った。
「・・それは難易度、高いですね。」

それが。
やっぱり、カプートがピクニックに来た最後になったんだ。

「そしておぬしが大騒ぎをしたわけだ。」
「したわけだって・・シドラはカプートがどこの誰か知ってたんでしょ!教えてくれなかったからじゃないの!」
「知ってたら、おぬし友達でいられたか?」
「・・まあ・・確かに動揺はしたさ・・でもなんとかなったと思うよ。カプートはカプートだもん。」
「おぬしはそうだろうな。」
「なんだよ。」
「しかし、奴は知られたくなかっただろう。おぬしには。」
「そうなの?」
「親しいからこそ。そういうことがある。」
「親しいからなんて、悲しすぎるよ・・」
「それにおそらく。アギュには絶対にだろう。」
「アギュには?どういうことよ?」
「・・おぬしの方が何か知ってたりするんじゃないのか?。」僕はドキリとした。
「そっちだってあるんじゃないの!」
「確信はないから、我からは言えん。」
ちぇ!ケチ!バラキと一緒じゃん。もったいぶって。
(ガンちん~やめるにょ~滅めっせられちゃうにょ~)
ふふんだ。ワームが怖くてワームに乗れるかってんだ!

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