MONOGATARI  by CAZZ

世紀末までの漫画、アニメ、音楽で育った女性向け
オリジナル小説です。 大人少女妄想童話

スパイラル・フォー-1

2017-01-15 | オリジナル小説

プロローグ  スキンカッター

 

「しっかり作れよ。」
言わずもがなだ。「データ通りにな。」
DNAの配置なら既に頭に入っている。それにしても。
「オメガ星系とはな。」俺のつぶやきには奴は反応しやしない。全く勝手な奴だ。
「果ての地球でなくていいのか。」
「スキンカッター。」ニコは俺の横でようやく声を出した。
奴の背が低いので同一面に存在していてもやや下から聞こえる。
「・・・お前はあのさい果ての星にも行ったことがあるとかうそぶいているらしいな。」
はなから法螺だと決めつけている。尊大な奴だ。大した身分でもないくせに。
「まあな。」そっけなく言う。身分なら似たようなもんだ。ただ奴は公、俺は民間それだけか。

フンと奴の短い鼻が笑う。鼻というより穴に近い。誇り高く尖った俺の鼻とは雲泥の差。
「だから、ペルセウスの犬とか疑われるんだ。口に気をつけな。」
「俺が?」大げさに言い、作業の手を休めた。おい!とニコが口を挟もうとするがさせるか。
「スパイだって、俺が?だいたいペルセウスがなんだってスパイなんて雇うんだ?それじゃまるでこのリオンボイドにすごく価値のあるものがあるみたいじゃないか。」

俺は手に軽い痛みを覚えた。ニコが手のひらにすっぽり収まる針のような武器でついたからだ。
「黙って続けろ。」胴体から出たコブのような小さな顔は不機嫌そのもの。

チンケな丸い肉体のニコは俺の体が空中に浮くように何倍も大きく展開しているのが気にくわないんだ。奴は擬似重力装置にへばりつくようにして辛うじて俺の高さに合わせ俺の作業を見守るしかない。

「減らず口を叩くとその腕、一本なくすことになるぞ。」
「そしたらまたつけるだけさ。」それは本当のことだ。俺はそのカバナのステーションシップに着く前から、触手に凝っていた。若気のいたり。そういうこともある。
涙ぐましい訓練の賜物でその時点では10本それぞれ、先端の指(5〜10)を含めて自在に動かせるまでなっていた。
興味がなかった足の方はそうはいかなかったが、浮遊空間では一つで充分だろう。

「それにしてもよく、そんなヘドロからDNA再生ができるもんだな。」
お言いつけ通り、黙ってしばらく作業をしていると今度はニコがひとりごちた。
結局は俺の作業を監視しているだけだから内心、退屈でしょうがないんだろう。
素直にお話を乞えばいいものを。俺は大概は拒まない。宇宙をさすらったスキンカッッターの土産話、冒険談はこういった巨大な閉鎖都市では限りなく身を助く。しかも場合によっては意外にも高く売れる。そういったことを経験上、俺はよく知っていた。
そんなわけだから、可愛げない偉そうな軍属なんかにタダで分けてやる義理はない。
特にニコなんかに誰がだ。
「だいたい、なんでオメェなんだ?オメェにやらせなくてもゾルカにやらせればもっと簡単だろうによぉ。」
ゾルカというのはゾルカなんたらという長い名前の人工知能。
カバナリオンボイドの全体秩序を何万年も維持し続けている超進化したマザーコンピューターだとでも思ってくれ。噂では魂すら持ってるらしいからな。すでに妖怪の類だ。
違法空賊の母船じゃあるまいし確かに、人間が再生にここまで関わるのは珍しいからニコの疑問も俺にはよくわかる。ましてしち面倒臭い粉々に破壊され尽くしたDNAなんか、普通だったら機械に丸投げで任せるものだ。ゾルカだったらたちまち再生可能な塩基を次々と想定し、連結し整形しうる可能性の完成形をおよそ何万通りでも提案しちまうことだろう。
目の前の細胞維持装置だって大元は、はるか彼方のゾルカの管理下、ゾルカ自身によって保たれているといえばその通り。
ただしだ。
ゾルカが『果ての地球』の情報をどこまで持っているか。
そこが要なんだが。

「オメェは腕がいい。だからスパイでも重用されているわけだ。」
「おいおい、ステーション総督は俺の脳細胞の隅々まで調べ上げたんだぜ。」
物思いにふけっていた俺だが、つい口を開いてしまう。
あんなきつい検査を涙ながらで通り抜けた問いうのにひどいったらない。あんまりってものだ。
俺は俺なりの心情で生きている。
誰かの支配下になったこともなる気もないという誇りもある。
「俺の体のどこにも量子次元なんて仕掛けられてないことは証明済みだ。」
あの検査の辛さは宇宙広しとはいえど格別と断言できる。信用度は俺の体を持って保証できる。
「だけどオメェは色んなところに行き過ぎていると、お偉方は思っているな。」
「それのどこが悪い?遊民の誉れだ。」

それは先祖たちの誇りでもある。
俺の生まれ星はヒューマノイドよりもカバナリオンの血の方がいくらか勝った系統ゆえにありがたくもオリオン連邦天下の悪政『祖の人類保存政策』からはずれた。
航行の自由を手に入れた俺たちの先祖は連邦を股にかけて輸送と運輸、そして密輸で大いに栄えた。今だって連邦の公海内に多くの遊民を提供し、人は出たり入ったり、2度と帰らないもの再び戻ってくるもの、まさに自由自在。
加えて自由星同士だ。
混血も肉体改造もある程度まで合法的に仕放題だ。
ところで。
ヒューマノイド達の大半は連邦はカバナリオン人の系統には無頓着だと考えている。
しかし実はあまり知られてないが、カバナリオンの祖の保存もどこかで抜かりなくされているはずだ。広い連邦のどこかで封鎖された星がまた一つか1000か、果たして。
二つの星系の祖先への憧憬はオリオンの中枢をセンチメンタルに犯し続けている。
リオンボイドの統括者が何の思入れもなく汚してしまったのとは両極端。
何はともあれ、俺は『混血バンザイ』と『改造バンザイ』の産物だってわけだ。

「だいたい怪しいのは・・・何でオメェ1人がペルセウスに行って戻って来れたんだ?」
「またその話か。」全くしつこいカバナニュートロン。
「もうあちこちで100万べんも話した。」
「俺は聞いちゃいねぇ。」そうきたか。又聞きだって耳に入っているのは変わるまいに。
「わかるか、俺に。」

それは本当のことだ・・・と思う。
俺の脳に検査の後、カバナから逆に何か仕込まれたかもしれないからそれ以上は俺は深く考えない。仕込まれてない自信はあるのだが用心に越したことはなかった。
ニコは検査台を針でコツコツ叩き始めている。全く行儀が悪い。
「そもそも、ペルセウスはきたねぇ。」
俺は薄い眉をしかめる。
かすかな震動だが精度が下がったらどうするんだ。
まぁでももう、だいたいのところ俺の作業は終わっていた。
拡大された巨大なスクリーンの特殊な培養液の中、俺が再構築したDNA達は復元された細胞膜の中に無事納まっている。
ニコの愚痴は続く。

「奴ら最初から俺たちに星を与えるつもりはなかったんだ。」
「だろうね。」
先祖代々、未だにそれを根に持つニコみたいな執念深い輩は実際多い。
「もう大昔の話だ。リオンボイドの建設に力を貸してくれたじゃないか。」

銀河のオリオン腕とペルセウス腕の中心に浮かんでいる人工の星系といえば聞こえがいい。
巨大な惑星上の都市が数万も連結している。今俺がいるのはそことオリオンの辺境をつなぐ特大の要塞船(というよりもう既に惑星)の一つ。つまり一番、オリオン寄りの要塞。
そこの港の実験ドックの一番高級な空間に俺とニコはいる。
ニコは直属の上司からの命令で。
俺はこの要塞都市というか惑星シップの最高権力者の総督から直接、押し付けられた特殊任務のため。
肝いりで使用を許可された特別な実験空間。
今まで俺が使ったどの部屋より広く、どの装置よりも高級で優れているのは一目瞭然。
作業する実験施設を中心に重力が設定されており、必要な装置、機械や道具はそこにほぼ固定される。上も下もないスペース、だから俺とニコは空間に浮いている。
均等に距離を置いた周囲をぐるぐると防護壁が幾重にも高速で回転していた。

ニコの愚痴はまだペルセウスを許していない。
「奴らは俺たちを自分の領海には絶対に入れない。その為にボイドを作らせたんだな。」
そのことは学校でだって最初に習う初歩の黒歴史。
「噂じゃ、なんでもカバナの貴族たちはそれでいいと思い始めているって聞いたけど?」
「ああ!奴らはな!」ニコの目が妬みと憎しみでいっぱいなった。震動が増す。
これ以上の乱暴狼藉は流石に繊細な作業装置に傷がつくから俺は諌めた。
「カバナ貴族様たちはもう、生きた星の重力じゃ生きられないからな。いいざまだな。」
ニコの切り口のような薄い唇が捲れ上がる。俺のような唇はない。
「ペルセウスがナメクジならあいつらはぶくぶくのきたねぇ肉団子だな。」
どうやら俺には何の仕掛けも埋め込まれてないことがニコの暴言からわかった。
こんなたわいもない悪口だって総督サイドに聞かれたら、出世に関わるだろう。
だけど、どうだろう?こいつは小物だからな。
ニコが何も知らされてないだけかもしれない。俺と同じ捨て駒らしいから。

「考えてみれば、だ。そんな肉団子すら入れてもらえないペルセウスから、オメェは戻った・・・そもそも何でオメェは入れたんだ?」
面倒くさいことに、また振り出しに戻ってしまった。
「自分で入ったわけじゃない。」
それは本当だ。
「好奇心から密航は試みたが、例の防御壁に阻まれて大破した。死んだ仲間はそのままだが、俺は息があったらしい。どうして俺を助ける気になったかは俺にはわからない。」
未だ人類を殲滅しない人道主義によるものかも。

「オメェはペルセウスで何をしてたんだ。」
「治療されて、治ったら返された。それだけだ。それはもう知ってるだろう?」
「何か見たはずだ。」
「光の部屋。そこに何日かいた、と思う。よく覚えてない。」
「ずいぶん、長かったんじゃないのか。」
「銀河時間で2日ほどだ。治療に時間がかかったんだ、仕方がない。」
「ふん、もういい。どうせスパイだからな。俺には何も話さないんだな。」
「しつこいぞ。」
「もしかするとオメェも知らないのかもしれないな。奴らにスパイに仕立てられていてもな。」
これで互いに互いを小物と考えていることがめでたく判明した。

勿論、総督も俺に対してその可能性を考えたから強制的で執拗な検査を受けさせたわけだ。
ペルセウスから解放された俺はたまたまそこにいた連邦とボイドを行き来する不法遊民の船に引き渡された。その直後、船はボイド管轄の軍船に停止させられ徹底的に表面的検査をされ、俺の体は拘束されそのまま、まっすぐこの港に入り、逮捕された。
迷惑な話だが、まともな軍人である総督がそう考えるのは常識の範囲。恨んじゃない。

「何せあいつらは俺たちが考えつかないような途轍もない技術を持っているらしいからな。」
「かもな。」
俺は4本の手元に集中させながら顔を引き締める。ニコから鋭角的と評された顔。
しばらくニコが静かになったので、俺は作り上げた数千の微粒細胞片を連結させ(カバナボイドのようにだ)最終形態に完成させた。あとはそれに対になるなる小さなやつを形成すればいい。
しかし、こうまで苦労して完成させてきたDNA塩基たちすら本当に数が少なかった。
「何でこんなにまで細かく破壊してあるんだ。」無意識に舌打ちが出ている。
「これでは個体はせいぜい一つか、二つ。完全体に再生できたら奇跡と言ってもいい。」
「一つできれば御の字だ。あとは適当に成形しろとよ。」
ニコの返事に思わず奴のコブに張り付いた顔を見る。
「そもそも。」俺はニコの先ほどの物言いを真似た。
「これはどこから手に入れたんだ?オメガのDNAは特別に封印されているはずだ・・・何せ、あの臨海進化体を出した星だからだ。」
ニコは面倒くさそうにふてくされた顔を上げた。
「オメェ、マジそれ以上詮索しない方がいいぞ。」
「連邦の研究所から手に入れたか。」
俺は納得した。どこにでも裏切り者がいる。
本来なら廃棄すらされない資料を誰かが宇宙空間に違法に廃棄する。
それを誰かが回収してカバナに売る。おそらく違法遊民の組織。
しかしそれを仕込むのならば・・・
「できるだけ果ての地球人よりに作りかえた方が良くないのか。」
「知らん、その辺りは何も指示されていない。」
ニコは目の前に誕生した卵子細胞を執拗に見つめている。
なるほど。裁量に任せるということか。
ゾルカは情報を持っていないのだ。
おまけにゾルカに頼りきりのカバナ貴族達が連邦との最前線を仕切る、辺境のカバナ軍部とは分裂し始めているというキナ臭い噂がオリオンの遊民組織にまで流れている。
だからニコのいう上は、上の上の上、リオンボイドではないということ。
この宇宙港と都市を牛耳るあの総督あたりがふさわしい。
すなわち、軍部の最先端。カバナ貴族とペルセウスへの不満の温床だ。

俺が命ぜられ、今やっている作業はどうやら基本的にゾルカの感知外にあるらしい。
ニコがその辺りを触れらたくなくて、俺から視線を外したってことはバレバレだ。
可愛げとは口が裂けても言わないぞ。
「オメェだってよ、闇市ですら生粋の祖の原始星人のDNAが全く手に入らないことぐらい知ってるだろが。オメェが思った以上に連邦にがっちりとガードされてるからな。こういったゲロみたいな廃棄物の方が、まだ取引されやすいんだな。」

教える義理はないから言わないがヤバイマーケットの情報に俺は乏しい。
素行の怪しい不良で、オリオン連邦の管理を拒否した放浪者であったとしてもだ。
もともと連邦の合法なカバナ遊民出身者だ。
血も涙もないといわれる非合法遊民組織とは常に距離を置いてきた。
理由は関わったら命に限りがないからだ。
俺はクローンに絶対的な信用なんか置いてない。
俺イコールクローンだなんて冗談じゃない。
俺は俺。それが好きだ。
死んだら終わり、それがいい。

ところで俺にはまだどうしてもニコに確認しなければならないことがある。
「俺とニコが行くというのも上の考えなのか。」
「オメェは案内するだけでいい。あとは俺がやる。」
なるほど。
それでは最大の警戒が必要。
捨て駒は俺だけの可能性。

俺は最後の仕上げを終えた。我ながら短時間で見事な出来栄え。
俺が作った細胞はもう一つの先に完成させていた卵子に組み込まれた。
すぐに分裂がはじまった。
ちょっと動きが遅いが、それは勘弁してやるしかない。
いつ見ても荘厳で見ていて飽きない眺め。
「生命の誕生か。」
ニコが傍から冷やかす。「精神流体はどうなってる?」
「カバナの最高研究所が再生したものがそこにあるとさ。」

作業スペースの裏側の人工次元には既にそれがある。
量子よりも細かい微量子、幽子だの霊子だの呼ばれているものからなる。
これこそゾルカが手がけた、もやもやとした光状の塊だ。
本当にそれが『魂』というものなのか俺には到底、信じがたいんだが。
しかし、依頼を受けた時に総督から直々に賜っている。
見るからに俺の大嫌いなヤバイ匂いがする依頼。
スパイ容疑が晴れたばかりで意気消沈、思考力も落ちた俺に断る気概が残っていたら・・・。
全て検査のせいだが、俺の腕を見込んだとまで言われれば正直、悪い気がしなくなるのは俺の悪い癖。いや、全ては・・・定めなのだろうか。ペルセウスと絡んだ時から。

ニコは光から目が離せなくなったみたいだ。退屈から解放されたようで興味津々。
「いつそれを合成させるんだ?」
「脳細胞がある程度、完成したら電気信号の具合を確認する。それが緩慢だったら試してみる。同じ組織から抽出構築されたものらしいから拒否反応はないはずだ。」
どうやって貴族どもがゾルカを言いくるめたのかは俺の知るところではない。
最高位の貴族が命じればゾルカはただ作るだけだ。ルーティンワークの一つだったろう。
「なんだか笑えるな。まるで原始人どもの神話だ、古の魔術だな。」ニコすらバカにしている。
「言っとくが、科学進化の頂点に達したせいで滅んだ『祖の人類』から伝わった技術だ。オリオン連邦ではヤバすぎて封印されている。」
一応、フォローしてみたがもともと無知なニコはそういうことはどうでもいいらしい。
「それでほんと完成したらスゲェな。人類創世だな。」
「有機エネルギー発生装置で動くホムンクルスではいけないって総督は考えているんだろ。」

俺はオリオンの遊民船で得意の肉体合成だけじゃない、何度も受精卵も合成した。
基本、宇宙空間では通常の受精の成功率は低くなるばかりだからだ。
本来ならほっといても育った胎児だったら常識として・・・たとえクローンだとしてもだ、ちゃんと魂と言われる精神流体が宿ったものだ。
(どこから?というとよくわかってないが先ほどの微量子は我々の船や体、惑星すらを透過して常に宇宙を飛び回っている。とりわけ星のないボイドには濃く深く満ちているらしい。)
まれにどういうわけか宿らなかった時、初めて人工の魂が必要とされた。
(宇宙空間ではよく起こる。なんでかはそれも謎。)
それは連邦じゃ禁忌の技術な上に、合法なカバナでも法外に高い。
(よってその子供は遊民の親により廃棄され、また新たに作り直されることが普通)
つまり、今回の仕事は最初からそれすら懐疑的に考えられているということだ。
破壊し尽くされたDNAから再生された細胞はただでさえもろく壊れやすい。
ちゃんと健康な精神が宿るかどうかもわからないと上は考えていたわけ。用意周到だ。

「つまりニコ、あんたには普通の原始星人が必要ってわけなんだ。」
「なぁ、スキンカッター。やはり負荷はかけられないのかな。」
人の話は聞いていないニコ、気長に成長を見守る気はあまりないらしかった。
「負荷なんてとんでもない。これは10倍も時間がかかるぞ。」
壊れ物を扱うように慎重に成長させないと再生構築した細胞はいつバラバラになってもおかしくない。
「ちっ、全く面倒臭い任務だな。後どれだけ付き合うんだか、くそだな。」
ニコは魂と命の不思議を鑑賞する趣味を完全に失う。
「どっちにしろ安定したら次元を一つ、仕込んでくれな。」
継ぎ接ぎだらけのかわいそうな細胞に量子次元を仕込めだと?
そりゃ確かに面倒どころか、全く嫌な任務だということをますます痛感。

俺は特殊な液体のゆりかごの中で今のところ順調に分裂を続けている卵子細胞を見つめた。
いいだろう、毒を喰らわば皿までだ。
俺は既に情け深くもこれに少し細工をしてやっている。
ニコにも上にもわかることはない。
俺の受けた検査なんかしたらこの献体は一発で死んでしまうんだから。

ニコにわからなくても俺にはようくわかっていることがある。
なんで俺がこの仕事を任されたのかという二つの理由だ。
一つはニコが再三指摘した、俺がペルセウスから受け入れられ、なおかつ無傷で帰ったという事実だろう。
そしてもう一つは俺が過去、『果ての地球』に行ったことがあるという事実。
ゾルカに任せられない仕事を請け負うべく、現れたとしか思えない俺という存在。
カバナボイドの誰よりも『果ての地球人』を見知っていて、偶然にもDNA再生の技術を持っているだなんてまさに運命的。そう、あのゾルカにはできないことが俺にはできるのだ。

勿論、俺が勝手にしたことの半分はDNAパズルの段階からなら無理なくできることだけだ。
『果ての地球』に行っても目立たない色素とか。
オメガの血では青みを帯びた肌、髪と目になりなかなか目立つことは請け合いだから。

作った命をむざむざと死なせたくはないのは自然なる心情。
DNAから作り上げたということはある意味、俺は親以上に親なんだ。
あとは果たして親の助けになってくれるのか、ならないのか。

どう思う?
俺は意識の片隅に問いかける。
誰かが笑ったと思ったのは気のせいか?

それを俺は肯定と取ることにした。


それは奇妙なる踊り

2017-01-10 | Weblog

© Leigh Bowery

 

 

洋服

それは引き立てるもの

それは生きるということ

 

 

奇妙なる歌

を奏で

奇妙なる踊り

を踊る

 

役者たち

 

それが

私たち

 

だから

希望を

捨てることは

ない

 

 

 

 

もう直ぐ

小説アップできます

とりあえず

まだ次はできてないけど・・・^^