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MONOGATARI  by CAZZ

世紀末までの漫画、アニメ、音楽で育った女性向け
オリジナル小説です。 大人少女妄想童話

GBゼロ-11

2007-10-01 | オリジナル小説
スパイラルゼロ-11  オリオン連邦-2



あんただけじゃないよ。僕だってユウリが好きとかいいながら・・なんてお気楽だったんだろう。我ながら涙が出るね。(にょ~???) 心で泣いてんの!

ユウリの父親はユウリに自分の才能をひけらかしてはいけないと、常に言い置いていたらしい。その父親と再会する為にユウリは約束を破ったのだ。・・強い意思がないと操れぬ楽器だから仕方がない・・。お互い、ため息しか出ないな、フ。
ユウリに楽器を仕込んだのは知ってる通り、その父親だ。彼は特赦されて自分の故郷に帰った。妻のクローンも望まなかった男だ。娘のクローンも申請はしていない。軍隊も辞めて民間人となって、以後の消息は不明だ。
彼はゾゾ星系で唯一生き残ったアースの出身なのだ。
かつて、ソリュートは兵器として使われたことがある。
その証拠に、化石が出土するゾソの星系は荒れている。魔法生物の骨が転がっているばかりだ。人類発祥の地・・カウント・ゼロにも匹敵する荒廃ぶりだ。
ソリュートは振動によって物質を分子に分解できる。あれはそれぞれの構成分子固有の共鳴振動を使い分けているからだ。最もすぐれた者は分子まで分裂させたという。それぞれの原子を光速に近いスピードで空中でぶつけ合う。極端に言うと核融合だ。
伝説だ。そこまでできた者はそんなにはいない。たった一人いただけでもあのザマだからな。ユウリも見込まれたもんだ。
なんとなく察しはついていたか?。ケフェウスの野望。アギュやユウリを己の手札にして、少しでも中枢に食い込みたいと言う野望だ。


あの当時、所長とケフェウスは対立していた。しかし後に他所から赴任した所長に較べ、23番惑星で培ったとも言えるケフェウスの勢力は以外に侮れなかったのだ。
あやつはベラス・スクールの出身だ。300年前はあそこの生徒だった。前所長に徴用されて副所長までのし上がったやつだ。
当時は色々あってスクールの総監督に左遷されていたが、惑星の方にはまだかなりのシンパがいた。イリト・ヴェガはやつを副所長から降格しなんとか惑星から追放することには成功した。しかしその引き換えに、アギュとスクールを押えられてしまっていたわけだ。さぞ、頭が痛かったことだろう。
なんとかあやつのシッポを掴もうと悪戦苦闘していたというのが、当時の状況だ。
ケフェウスは中央から疎まれている。
イリト・ヴェガは正統なオリオン人。やつの被害者意識はそこから始まっている。
それが後にやつに思い切った行動に踏み出させることになるわけなのだ。

「ユウリは我がそこまでイリトにかかわっているとは思っていなかっただろう。もともとユウリは臨界進化体のことを常に上に報告する義務があった。ユウリがイリトに会ったことはないと言ったが、それは常にケフェウスが間に立っていたからだ。
(あいつはユウリのマネージャーかなんかか?)
アギュに肩入れし過ぎた頃から、ユウリは報告を望まなくなった。それを幸いと所長の直轄から切り離したのだ。代わりに、我がイリトからアギュの監視を頼まれた・・正直に話すと、ユウリはケフェウスには秘密にはすることに賛同してくれていた。」
「じゃあ、ピクニックのことは?」
「我はある程度、イリトに話していた。ケフェウスがどうやって知ったのかは知らん。」
「あいつを、科学者としてのケフェウスをなめすぎていたのかもな、僕ら。」
「ばらしたのはカプートではないぞ。」
「・・そうなのか?」
「それが、ずっと心配だったのだろう?。」僕はうなづく。
「カプートは確かにユウリの味方だった。」シドラもうなずく。
「さっきユウリがケフェウスに取りつかれていたと言っただろ。かばっていたのはカプートだ。」
「・・カプートとあんたか。」
「そうだ。」

そんな話はまったく慰めにはならない。自分だけカヤの外に置かれていたなんて。納得できないよね。超、スーパー、ウルトラむかつくと思わねー?
それに何?ずっと、そこにいるわけ?あんた。僕が何言うかわかんないからって、又監視するのかよ?

「我はおぬしの補足をしようと思う。」
(大きい声じゃ言えないけどにょ・・ガンちんバラキも一緒にいるにょ)
ドラコ、声ちっちぇ~!

気を取り直して続きの話をしよう。
僕はカプートを捜していた。その話はしたっけ?。カプートが来なくなっちまったんだ。ピクニックに。僕はへこんだ。そして、何がなんでも捜し出してやろうと思ったわけだ。
そんな悲痛なエピソードなんだけど。
じゃあ、カプートが最後にピクニックに来たところから始めるとするか・・
まあ、第三者的にはおもしろいかもね。人事ひとごとだもんな。

「他所の人間に当たるのは感心しない。」
(ガンちん、スマイルにょ~)
「軍のイメージダウンだ。」
イメージなんてどうでもいいと思ってるくせに。よく言うよ。
「まあな、その通りだ。」

カプートがしばらく休んでた間、僕は暇を持て余した。アギュと遊んでもいまいちだったし。なんか、彼に遊びを指導しているような気分。対等な関係ではないような。
そしてやっと次にカプートが来た時、アギュは又来なかった。
アギュはカプートを避けてるんだろうか?自分を厄災と呼ぶ同じ故郷から来た、彼を。
僕らはこの日はスクールの回りでかけっこをした。シドラとユウリは外側のリングに腰掛けてだべったりしていた。シドラの告白を聞いた後でも、彼女を恋敵として認定するのは、僕の中でなんとなく抵抗があった。あえて言うなら、志を同じくする同志と言うべきか。女のシドラに負けるとは思えないんだけど・・そんなことないのかなー?。
気にならないと言えば、嘘になるけど。
そんなことより、久々の感覚。僕はドラコとカプートとドーナツを何周も駆け回り、風になる気分を存分に楽しんだ。むかつくケフェウスのいる中心部だって、見えないのをこれ幸いと、ひたすら研究者達を避けて駆け抜ければ立派な高難易度のゲームとなる。
途中の巨大なモニターの前でカプートが立ち止まる。
モニターには寝ているアギュが映っている。ほんとうに寝てるんだか、なんだか。
どこかから、アギュが見ているかもしれないと思うと嫌な感じ。
カプートはアギュを見ていた。ふいに僕に話しかける。
「この間、アギュとキャッチボールしたんですか?」
「なんで、知ってるの?」少し、焦る。不純な動悸からだし。
「ユウリから聞きました。」
確かに少し前に、ユウリはソリュートの練習とかで惑星に行ったはずだった。
「カプートさ・・カプートってひょっとして、惑星で働いてんの?」
「ええ。惑星で働いたり、スクールで働いたりです。」
「ひょっとして・・すごい年上?」
「かも知れない。アギュほどじゃないけど。」
カプートはちょっとためらってから口にする。
「じゃあ、忙しいんだね。」
僕が落胆を見せるとカプートは
「ぼくはもう、ここに来ない方がいいと思うんです。」
「ええっ!」僕は思わず叫んだ。ドラコも肩で抗議の声をにょ~にょ~。
「困るよ!。」
「・・ユウリがぼくらを呼んだ理由がわかりますか?」
「へ・・?」
「アギュに友達を作る為、ですよ。」
えーっ!嘘。
「それも・・君の勘っていうか、推察?」
「はい。それと・・僕の場合は・・あと、同情ですかね。」
「そ、そうなのかな?」でも、そんな気もする。
でも僕もそれで落ち込むほど、昨日の今日の自分ではない。ま、負けるもんか、変化球。
「あなたはワーム授かった。シドラ・シデンと一緒です。」
「じゃあ、シドラも?」
「友達候補なんじゃないですか?」
「でも、でもさ、そうならばカプートだって・・なんか能力があるから選ばれたんだろ?」
カプートは寂しそうに、アギュから目を反らした。
「ぼくと彼は似ています。同じ星の出身と言うだけでなく・・」
僕ら二人の影の中を何人もの大人達が気付きもせず通り過ぎて行く。
「スパイロの子供は孤児みたいなものだし・・ぼくは現実では友達もいないしね。孤独という状況が・・ユウリの琴線に触れたんでしょうね。」
「そう言えば僕も似たような境遇だな・・」
僕はモニターのアギュの光を見つめる。忌々しい、人類の希望の光?。
カプートの声が続く。
「それに・・臨界進化体に会って見たかった。会う度にユウリに聞いていたんです。彼はどんななのか。人間なのか、それとも・・」息をつぐ。
「みんなが噂するようなモンスターなのか。現実ではぼくのような一塊の原始星人には近づくなど不可能ですからね。アギュは人と親しく口を聞いたりしないし。生徒だった頃から遠い存在でした。会って良かったです。彼もまだ、普通の人間でした。それだけでも、今後のぼくの人生にとって、無駄でなかったと思います。」
カプートはフッと笑った。
「アギュの言った通り、無理なんですよね。ぼくごときが連邦を変えるなんて・・。」
「そんなことないよ!」確証はないが、そこは認めてはいけないと強く思う。
「いいえ。わかってはいたんです。いくら勉強しようが真面目にがんばろうが、現実の困難さがあるんですよ、歴然と。」
なんと言ってあげたらいいんだろう。僕まで悲しくて惨めになる。
「泣かないで下さい。ガンダルファ。」
「泣いてないよ。」僕は目を拭った。泣いているとしたら、夢を見ている体だろう。
「大丈夫。ぼくは生きてる限りがんばりますから。だって、あきらめが悪いですからね。」
カプートは又アギュに視線を戻す。
「ほんと自分が彼だったら、と思いますよ。」
「あいつはダメだよ。」僕の声のトーンも落ちる。「自分のことしか考えてないもん。」
あと多分、今までの臨界進化体みたいに逃げることだけ。
ふと見ると近くにケフェウスがいた。僕は彼の前で思いきりしかめ面をする。奴は当然見えてない。いつものように移動機械を指輪でコツコツ叩きながら、奴はモニターのアギュを見ている。
「でもさ。」僕はカプートの手を掴んだ。
「ピクニックに来ないなんて言わないでよ。やめないでよ。」
カプートは僕の切実な叫びに目を伏せた。ボサボサの髪が顔を覆い隠す。
「お願いだよ。」僕は畳みかける。
「僕は誰とキャッチすればいいの?ドラコも困るよ。」ドラコがコクコクする。
「アギュじゃ代わりにならないよ。シドラはやる気がないし、ユウリは・・」
「・・なるべく。来れる時は・・来ますから。」
やっと、そう口にする。なんとなく、そんなこと言ってももう来ないような気がする。
「じゃあ、じゃあ、さ、教えてよ。」僕は彼の手を放さなかった。
「お前の正体。現実で会いに行くからさ。それもダメ?」
カプートの手が震えた。彼は目を上げた。青のリングの付いた不思議な目。
「それも・・今度・・必ず、言いますから。」
僕も目を反らさなかった。彼の顔は一瞬とても大人びて見えた。それが彼の現実の顔なんだろうか。ドラコが唸るように鳴く。僕と共に納得してないのだ。
「僕ら、友達だろ?」
カプートは手を放した。
「ええ、いつまでも友達ですよ。友達です、ガンダルファ」
彼の顔は泣き顔のように歪んでいた。
僕は不満顔のドラコを丸めると、思いっきりケフェウス教官にぶつけた。そうせずにいられなかったんだ。カプートにもう会えないなんて、彼が嘘を言ってるなんて、そんな直感を認めたくなかったから。
突き抜けるかと思ったらさすがワーム、ドラコは景気良く跳ね返って見せた。
にょにょ~と機嫌を直す。僕もちょっとだけすっきり。
ケフェウスは顔をクシャクシャにすると思いきり、くしゃみをした。はは!
カプートが目を丸くする。
「どんな仕組みなんでしょう。ドラコがぶつかろうと思ったらぶつかれるってこと?」
相変わらずこんな時でさえ、ワームへの興味は尽きないなんてカプートらしい。
「じゃあ、この中でさ、やろうよ。」僕はやけくそで笑っていた。
「こいつらの誰にも当てないように投げ合うって、どう?。」
カプートもやっと笑った。
「・・それは難易度、高いですね。」

それが。
やっぱり、カプートがピクニックに来た最後になったんだ。

「そしておぬしが大騒ぎをしたわけだ。」
「したわけだって・・シドラはカプートがどこの誰か知ってたんでしょ!教えてくれなかったからじゃないの!」
「知ってたら、おぬし友達でいられたか?」
「・・まあ・・確かに動揺はしたさ・・でもなんとかなったと思うよ。カプートはカプートだもん。」
「おぬしはそうだろうな。」
「なんだよ。」
「しかし、奴は知られたくなかっただろう。おぬしには。」
「そうなの?」
「親しいからこそ。そういうことがある。」
「親しいからなんて、悲しすぎるよ・・」
「それにおそらく。アギュには絶対にだろう。」
「アギュには?どういうことよ?」
「・・おぬしの方が何か知ってたりするんじゃないのか?。」僕はドキリとした。
「そっちだってあるんじゃないの!」
「確信はないから、我からは言えん。」
ちぇ!ケチ!バラキと一緒じゃん。もったいぶって。
(ガンちん~やめるにょ~滅めっせられちゃうにょ~)
ふふんだ。ワームが怖くてワームに乗れるかってんだ!

GBゼロ-11

2007-10-01 | オリジナル小説
スパイラルゼロ-11


         オリオン連邦

やれ、さて、行ったか。あの気取り屋がいない間、しばらく我が話してやろう。
いや、何、我のことをあれこれ言ってるとバラキが教えてくれたのでな。仕事を早めに切り上げてきたのだ。ガンダルファは我わが部隊の広報担当なんて言ってるようだが。この我がそれを了承してるとは思わないことだ。
これが薔薇騎魔維羅ばらきまいら、通称バラキだ。こんな辺境の星の人間がワームが見えるなんてあっぱれだ。バラキはドラコみたいにおしゃべりじゃないから安心しろ。気詰まりなら、許せ。ワームの目を見てると落ち着かない奴は多いからな。何もかも見透かされるようで嫌らしい、ふふ。よっぽど、見透かされてまずいことがあるのかな。
何?バラキの目を見ると10日後にバッタリ倒れて死ぬとか言う話?。気にするな。ただの噂だ。ニュートロンどもが振りまいたんだろう。あやつらも進化体とか言って威張ってる割には、たいしたことないな。
どうした?モジモジして。ああ、今の噂か。信じるな。冗談だ。
バラキが怒るぞ。怒るとどうなるか・・まあ、やめておこう。
ますます落ち着かないって?そりゃあいい、はっはっは。

何が聞きたい?ガンダルファの事か?モテルかって?そりゃそうだ。あそこまで女の気をひこうとしてモテなかったら哀れと言うものだろう?。

おぬしが聞きたいのは本当はユウリのことではないか?
これだから男とは、まったく!可愛い娘には目がない。(我もだろって?フフ、そんな生意気なこと言っていいのか?口にするつもりはなかって?誰かさんと一緒で、口は災いの元だな。言っておくが、我は相手を顔で選んだりしてないからな。)
それより、なんだって?そう、話題を変えるのは利口だ。
ユウリの歳のことか?。確かに宇宙での時間というものは説明しにくいものだ。あるようでないものとでも考えておけ。それじゃ、わからないって?そうだな。時間とは螺線のようなものだ。それぞれ各自の時間螺線軸が重なる時だけ、ほぼ同じ時間が流れている。上方向には自由に動けると思っておけば、まちがいはない。お約束だ。まあ、たまに例外もあるらしいがな。
とにかく、統一された時間などないってことはおぬしもなんとなくは知ってるな?
ガンダルファはおぬしに分かりやすいように、おぬしの星の時間単位で話してるから矛盾がいっぱい感じられるだろう。でも、時間の辻褄合わせなどつまらん。
確かに、銀河時間というものはあるが。それはこの銀河の自転から算出された時間で、一応宇宙での共通の秤になっている。しかし、おぬしら一個の原始星の時間とはまったく異なる。今は問題にしなくていい。
宇宙ではそれでなくても個人の体内時計など光速でワープしたり、ワームホールを使ったりすると無限に変ってしまうものだ。もし、人間がワームと同じようにワームホールに住み続けることができたならば、そこも全然違う時間が流れている。時間などまったく流れていない、次元さえあるのだ。
理論上はそんな次元を自在に使えば、5000光年の彼方とこことをほとんど同時に移動できるはずだ。今のところ、人類の中でそれができそうなのはアギュだけだ。
だから我達が本当は何歳なんだろうとか、考えるのは無駄なことだ。お互いの統一した時間概念がないのだからな。

少し、次元の話もしておくか?。おぬしもガンダルファと同じ、勉強は今一つのタイプぽいからな。知ってるって?。嘘をつくな。そうだろが?。やっぱりな。ほら、遠慮すんな。
まあ、次元はメモリー量の違うディスクが乱立してるようなもんだ。
情報量の違う次元が無数に続く、これが大きい次元だ。
例えばこの3次元のデータである我々を、他の許容量の少ない次元で再生しようとしてみろ。再生できないだろ?我達はそこでは重たいのだ。無理に存在しようとすれば次第に圧縮されて最後にはペシャンコにされる。又、メモリーが多い次元ならいいかというと解析度の関係で肉体が希薄になって結局、分散してしまったりする。
それとは別に小さい次元もそれぞれにある。と考えられている。この宇宙にあるのだから他の宇宙にもあるだろうってことだがな。
それが縦横無尽に駆け巡るワームホールだ。これはできたり消えたりする宇宙の穴だ。おおまかな地図もあるが・・毛細なホールに関してはワーム以外は手に負えない。他の大きい次元に繋がっていたりするから、メモリー量もその都度、微妙に変ってしまう。宇宙旅行や軍隊の悩みの種だ。
このように我達の物理的肉体がそのまま、スライドできる次元は限られてしまう。電波の波長の受信範囲のようなもんだな。そこはこことそんなに大きく変らないので自己呼吸だってできる。精神エネルギーだけになるともう少し範囲が広がる。それがいわゆる、例のピクニックだ。物理的肉体に慣れた我達には、確かにそこに存在する  という実感がわかないのが欠点だな。
我達は次元バリアーがなければ、大きい次元も小さい次元も長時間滞在することができないのが実情だ。ワームは情報量を自己調整できるらしい。そこに住んでるんだからな。ワームに守られたドラゴン・ボーイも存在できる。我達はワームを駆って軍隊をいち早く、何万光年と離れた目的基地にへと送り届ける航路を  時間の螺線をショートカットする航路を見つけなくてはならない。

今、銀河は戦国時代だ。最近は大きな戦いも一段落して、ペルセウス連邦とは均衡を保っている。ここは少し、ペルセウス寄りだから風向きが変ればあぶないかもな。オリオン連邦もよせばいいのにあれこれと干渉して、画策しているらしい。ただでさえ、ダークサイトと言う人類の面汚しどもがいるのにな。ダークサイトはペルセウス側に加担しているのだが、無視できない勢力なのだ。特定の住み処を持たない遊民ゲリラだから、手に負えやしない。まったく!フン!まあ、そのおかげで軍隊は大忙しだ。

ちょっと待て。
今、連邦の成り立ちがよくわからないと言ったのか?ダークサイトだの、ニュートロンだの進化体だの、相関関係がよく飲み込めないだと。おぬし?。まさか、それほどとは。
ガンダルファよりもやばい人間がここにいたとはな。驚きだ!
いや、言い訳はいい。わかった。考えて見れば、ほんの数百年前に連邦に見つかったような原始星だものな。いや、悪かった。そこも少し、我が講義してやろう。
オリオン連邦を形作る人類は、もともと2種類に別れていたのだ。原始人類ヒューマノイド(オリオン人)と人類亜種とされるカバナ・リオンだ。この二つの人類の争いが表面化したのは二つの人類が互いに他星へと植民を始めた頃からと言われている。やがて植民星で独自の進化をした者たちも現れ、それぞれの利害を調整する機関として連邦が誕生したのだ。
今でも、連邦に組み込まれたカバナ・リオンと植民したヒューマノイドを便宜上「ライト・サイト」と呼ぶのは連邦設立の頃からの名残であるのだ。
連邦加盟を拒否した少数のヒューマノイドと大多数のカバナ・リオンらは宇宙に生きる道を選択した。それら遊民となった者らを、連邦に集った者たちは軽蔑を込めて「ダーク・サイト」と呼んだのだ。
植民と遊民。これには源のアースを巡る根深い争いが起因している。今も二つの民族にくびきを残す、人類創世のアースが滅び去った程の大きな戦乱がな。
連邦創世の半生はいわば、同族殺し合いの歴史であったのだ。まったく、お恥ずかしい限りだ。
連邦に所属を拒んだ植民星のひとつ、ひとつを武力で帰属させた歴史だ。
「ライト・サイト」の者たちが無重力地帯で進化を繰り返した宇宙人類を「ニュートロン」と呼び始めても、同じく宇宙人類であるはずの遊民は、未だ蔑称の「ダークサイト」でしかなかった・・このことから何がわかる?。人間の精神はいくらも気高くも進化もしないということだと、我は思うぞ。ほんとただの姑息な差別なのだから。
そして「ニュートロン」の中でも更に空間能力が高まった者を祭り上げて「進化体」と宇宙人類らが呼び出した時、その敬称の範囲に遊民系の植民出身者が入ることはほとんどなかった。・・ガンダルファの話にも出てきた、ケフェウスとかだな。
それは中央がみずから目をそらし続けて来た、統一連邦の暗部なのだ。
2種類の植民人類と袂を分かった「ダークサイト」達はおのれたちのことを「カバナ・ボヘミアン(誇り高き遊民)と呼んでいる。
あやつらは基本的に星を持たず、ボイドの空間に都市を建設した。ヒューマノイドとカバナ・リオンの混血した宇宙人類だ。
その首都、カバナシティの人類亜種は他人類とは一切混血をせず創世アースからのカバナ・リオンの血を守り続けているという話だが。
しかしやつら、原始濃き血を誇るカバナ人貴族は、連邦の原始人類とは同じではないと考えられている。
なぜなら、彼等の中から「臨界進化体」が出現した形跡が見られないからだ。

・・まあ、アギュ落ちになってしまったな。それほど・・臨界進化は大事な話だと言うことぐらいは理解できよう。まあ、あやつの存在は我にもよくわからん。
したがって、この件は終わりだ。次に我に聞きたいことはないのか?。

そうだそうだ。そうだった。
おぬしはおのれの星も連邦の中枢も大して変ってないから驚いているのだろう?。我達の武器。我達の船。我達は階段は足で登るし、登れば当然汗もかく。おぬしらとたいして変らぬ、普通のモノ食っとるしな。
(ただし、前線はまったく話が違うぞ。知力の粋を尽くした代理戦争の様相だがな。人工知能と感情のないホムンクルス達のな。それらを無事に送り出し、いかにすばやく撤退させるかが戦争の鍵なのだ。勿論、その役目をになってるのが我達軍隊だ。実際に命をなくす程の肉弾戦はめったにないが。あるとすれば、双方かなり悲惨な戦場になることは常に肝に命じてないといけない。先駆けのワーム部隊と後方の参謀部隊。力を合わせて補給部隊を守らなくてはならない。ニュートロンの中でも特に次元感知能力にすぐれた、進化体と呼ばれてるボードマスター達の腕の見せ所と言えるな。腹が立つが、あやつらが原始体部隊である我達を同列に扱うのはこの時ぐらいだ。)
実は我達とおぬしらと想像もできないような技術の差などあまりないのだ。過去のある頂点を持って、それ以上しないように決めたと言うのが正しい。連邦の中心にいる進化体達はさすがに、馬鹿ではない。
あやつらは不必要な技術、一方向だけの発展など人類に意味がない。むしろ有害であると20000年前に、結論ずけた。背骨や骨がなくなったのが、よっぽどショックだったらしいな。やつらは必要以上な便利性や技術、科学、医学の凍結を決めた。やつらが原始種人類を分類し保護し、保存することとした張本人だ。人類固有のDNAを守り、進化体ニュートロンのこれ以上の肉体的退化を止める為に。これが迷惑な極まりない例の政策だ。
それがきっかけかもしれないが、10000年程前から連邦全体が人類回帰ブームなのだ。1千万年近くかかってこれが結論とはね!もうすぐ、人類が外宇宙に出ておぬしの星の時間で900万年記念だ。少なくともこの傾向は1千万年頃まで続くだろう。一千万年記念日まで人類創世の姿、形を保存して置きたいのだそうだ。アホらしい。それは無意味な執着だと思うがな。
そういう訳でおぬしらの惑星も原始星に認定された。こんな辺鄙な星だから始祖の血も濃い。そんなところに見慣れないニュートロンなんかうろついたらすぐに大騒ぎになる。会いたかったか?たいしておもしろい奴らじゃないけどな。だいたいニュートロンはこんな下っ端仕事は絶対、やりたがらない。原始星に送られてくるのは、同じ原始人類というのが常識だ。
アギュか?勿論、アギュは特別だ。中枢に言わせると、特別にアホだということだ。確かに、変人だがね。あれでも随分、成長したもんだと思う。我が言うんだからまちがいはない。

なんだ、バラキ?
ああ、巻き毛のお兄さんがあわくって戻って来たみたいだな。

おい、こら!人が○ンコしてる間に何勝手に話してるんだよ。まったく油断も隙もない。
「アギュのとこ行って来たか?」
行ったよ、恥ずかしい!。全然、呼んでないじゃないか、シドラ・シデン。
「嘘を付いたんだ。」
付いたんだ!って威張られてもねえー。なんで、嘘なんか付くんかなー?。まったくー!びっくりしたから、ついでにトイレに行っちゃただろ!ったく。
(ガンちんは早グソが得意なのにょ!)
いや、そんな話はいいから、ドラコ。

「我はおぬしが疑問に思ってることの捕捉をしてやろうと思う」
「それってあんたとユウリが出会った頃の話だろ?」
「違う。ケフェウスのことだ。」
「シドラ・シデン、あんたはケフェウスのスパイじゃなかったのか?」
「正確に言うとイリト・ヴェガだ。」
「!」
「イリトの頼みでケフェウスを監視していた。」
「アギュを監視してるのかと思っていた。」
「アギュもだ。ユウリも含まれていたのかも知れないがな。その辺は知らん。」
「それで!色んなことが納得いったぞ。この鉄扉面が。」
「我はユウリの為なら、いくらでも人になる覚悟だった。」

ケフェウスはユウリに付きまとっていた。アギュの件がなかったとしてもだ。ソリュートの優れた使い手であるユウリは最初から、やつに目を付けられていたのだ。
当初の目的として、ユウリはケフェウスの期待に見事に応えた。ソリュートを使ってアギュの気を引くことに成功したのだから。それが皮肉にもユウリがケフェウスに深く絡み取られるきっかけになってしまった。やつはユウリを何が何でも、手放すまいとしていたのだ。やつもユウリのソリュートに魅入られた一人だったのかもしれん。男とはいえ、ニュートロンのやつがユウリに何らかの感情を抱くとは思いたくないが。あれは確かにユウリに執着していたのだ。
我はそれが不安だった。学校総監にソリュートの研究にユウリを使うと言われれば一介の生徒である我にはどうしようもない。表向き、生徒は惑星には行くことができない。逆に所長はケフェウスの許可なくしてスクールの生徒には容易にに手が出せない。だから、我は自分からイリトのスパイになった。ユウリを守る為。情報を欲しがってたイリトはユウリを懐柔しようとしていたがうまくいってなかった。案の定、やつの研究は禁為に触れかねんギリギリのものだった。ソリュートの兵器利用などイリトはナンセンスなことと切り捨て、常に圧力をかけ続けてくれた。やつが研究を縮小せざるをえないようにな。
それで一安心だと思っていたのだから。 当時の我はまだまだ子供だったのだ。
随分と甘かったわけだ・・。