MONOGATARI  by CAZZ

世紀末までの漫画、アニメ、音楽で育った女性向け
オリジナル小説です。 大人少女妄想童話

GBゼロ-18

2007-10-17 | オリジナル小説
スパイラルゼロ-18   最終章



       わが愛しきアース

これが彼等の基地内において、私が見聞きしたことのすべてである。
彼等は彼等の言う、原始星人のマスコミである私を大歓迎して迎え入れてくれた。
勿論、このインタビューをそのまま私の働く雑誌社の編集長に見せたってページを割いてくれるかは心もとない。ただでさえ、奇人変人呼ばわりされている私のことだ。
せめて、フィクションとしておもしろおかしく書くしかないだろう。

私だって彼等がオリオン座から来たなどと、最初から本気で思っていたわけではない。
今だって正直、半信半疑である。
ただ、なんか普通でないものを感じていたのは事実だ。
それがワームであったわけで。それがたまたま、私に見えた為に私は彼等と深く知りあうこととなっただけにすぎない。
確かに言えることは、彼等は私達とは違う文明から来た。
ワームが見えてもたったそれだけを受け入れるだけで、随分と時間がかかったものだ。
まして、私の弟から聞いていた臨界進化体にいたっては。
今日この目で彼を見れたことは、思い掛けない暁光だったとしか言葉のいいようがない。
ただこの目で見ても、私にも完全にその存在を理解する事はできなかった。
私は、それを事実として受け止めるだけだ。

以下はあくまでフィクションとして記すとしよう。

彼等の言う人類の源のアースは双子惑星であったと言う。
片方の星にはオリオン人。もう片方にはカバナ・リオン人。
何年も平和に交流を続けていたと言う。
ところが宇宙に出るようになって、陣取り合戦と惑星資源の取り合いが大きな火種に変った。
最終的にはお互いの星をふっとばしてしまったというわけだ。
(ガンダルファの言い方をそのまま借りる)
人々は難民となり、宇宙に散った。
そして植民星を中心に連邦が作られ、連邦に入ることを拒んだ遊民が産まれた。

その当時、難民船の中で行方が知れなくなった船がいくつもあったと言う。そして、彼等に言わせるとつい、最近、そんな船のいくつかの行方が判明したと言う。
偶然にも軍隊の一部がある辺境地帯で、自分たちと同じ遺伝子を持つ生命体に出会ったのだ。彼等はその星の住民が間違いなく、始祖の人類にもっとも近い血を保ち続けていること、そして高い文明も文化もなくし、オリオン人たる歴史も記憶も失っていることことを報告してきた。連邦で言われる原始人類よりも更に、連邦が加入の条件とする知的生命の基準に満たない、そんな古代人類と化してるのだと。
彼等はそれからずっとその星を観察し続けて来たのだと言う。
我々の意識が成熟し、彼等が連邦に加入するにたる独立した人類となることを願って。

そう、その星とは我々の星。
太陽系第3惑星、地球である。
神城ユウリの故郷だ。

我々はオリオン人達と同じ人類なのだ。
一進一退を繰り返す我々に業を煮やした連邦は、連邦規約に反しない範囲ギリギリの手助けを始めたのだと言う。ほんの少しづつ、我々に干渉し始めたのだ。

彼等は2500年前からこの星を改革しようと秘かに数十人の人を派遣していると言う。
神城ゆうりの父親もそんな一人であったらしい。
我々の言葉や習慣が彼等と共通するものが多々あるのは、そのタメだと言うのだ。
勿論、オリジナルは向こうの方。我々はそれとは知らずに輸入させられたのだ。

こんな与太話は、なかなか信じてもらえまい。
自分で書いてても嘘臭い。
まあ、気長に記録して行くこととする。


臨界進化体、アギュレギオンが飛び去った後。
ガンダルファは私を彼等の基地の外まで送ってくれた。彼は見た限りは30前後、私の常識の範疇においてはとっぽい兄ちゃんにしか見えない。髪を白く染め、カラーコンタクトをした、ロック系の若者。シドラ・シデンとガンダルファは姉弟といいぐらいに似ている。元に弟は最初はそう思っていた。
彼はいつもは、私の長野の実家の旅館に居候をしていたがこの時はGWで帰省中と言うことになっていたはずだ。
彼とシドラやその仲間達のことを私の父と母はなんの疑いも抱いていない。祖父にいたっては、旅館の隣の彼等の会社の社長は人品卑しからぬ押し出しの立派な人、その上将棋も強くて趣味人、しかもなんて金払いの良い人だと心酔している。それが、地球であるミッションを進行している宇宙人類だとは夢にも思ってはいない。
弟の渡や従姉妹の香奈恵達から話を聞いた時、彼等の頭の正気を疑ったものだ。しかも渡の同級生のユリちゃんこそユウリのクローンだとか言い出すし。
すくなくとも、ジャーナリストの端くれであったが為に好奇心から彼等と深くかかわることとなってしまったが、本心このネタはちょっと持て余しぎみだ。
いっそ、聞かなければ良かったと思うくらいだ。
ガンダルファは地球人の基準からしてもしごく、良いヤツであるし。
同年代のただの実家の飲み友達のままでいれたのに。

「社長にあんな秘密があったとは参ったなー。参った、参った。」
彼はぼやいた。
社長と言うのは、先ほどの臨界進化体のことであるらしい。
私は驚く。「アギュレギオンが、あの社長?まさか?」
私はさっき見た、男とも女とも付かぬアギュレギオンの陽炎のようにゆらめく顔を思い返した。
「東海交易の社長だって?社長には何回も会ったことあります。さっきの彼が、彼があの社長だって言うんですか!」
「おっと!」ガンダルファはペロリと舌を出した。「また、余計なこと言ったかな。」
「でも、あの社長さんって・・おっさんじゃないですか?若くても40代なはず!」
「見えるものがすべてじゃないよ。」
それは確かに、渡からも言われたセリフだ。
「あなた達がなんで、私達の実家に来たのかがよくはわからないんですけど・・。」
「そりゃ、あんた達がユウリの子孫だからじゃないの?」ガン君は笑う。どうも背中がチクチクするのは見えないがワームがその辺にいるらしい。
「社長が決めたんだ。ユウリが帰りたかった場所に戻ろうっとね。やっと、全部がはっきりしたよ。ほんと、良かった!」
「・・わだかまりはないんですか?」
「まあ、やったのはアギュの方だってはっきりしたから。もう、過ぎたことさね。」
彼はサバサバと言った。そして、ニヤリと笑った。
「それに、僕が社長を尊敬してるのは本当なんだぜ。」

彼が帰って行った後。
私はしばし物思いにふけった。
東京に向うあずさの最終便の中でも私は夢の続きを思い返すようにぼんやりとしていた。
神城ユウリの母親は私達の祖父の大叔母に当たると言う。彼女は戦前、確かに近隣の有名な霊能者だったと言うのは本当であるらしい。ただし、彼女は戦時中に死んでいる。殺されたのかどうかは、今はもう調べようが無い。彼女が戦争の行方に付いて当時は不適当な予言をしたらしいことは、当時子供だった祖父が大人達の会話から漏れ聞いていたと言うこと以外は。
彼等は遠い昔にオリオン難民達が乗って来たはずの船の行方を探している。
地球人となったオリオンの民は過去に何度か絶滅の危機に瀕している。地殻変動も激しく、おおっぴらにできない捜査は難航しているらしい。
彼等は私達よりもずっと長生きなんで気長にやってると言っていた。
東海交易はアラブやアフリカに盛んに進出している。実際は古代遺跡を調べて回ってるとガンダルファはちょっと漏らしていた。
私達、地球人の知っている古代語のいくつかはオリオンからの言葉であったようだ。
彼等の捜査が完了した時、そして人類が彼等の望むレベルに到達しえた時、何が起こるのか。それは、今後を待つ他にない。


最後に広報担当?のガンダルファから教えてもらった、彼の故郷の有名な神話をここに掲げておこう。




ジュラの神話

始めにただ闇の中に神だけがあった。
神はあまりにも長く一人でいたので寂しくて自分を二つに分けてみた。

こうして新しく産まれ出た神は、もう一人の神に告げた。
「私はあなたでありあなたではない。あなたはあなたであり私でもある。」
一つが二つになって神は初めて「足りる」ことを知った。
二つが一つになると闇だった世界に最初の光が産まれた。
こうして光は産まれ続け星々になった。
星が産まれ、宇宙が産まれ、世界は生き物に満たされた。

宇宙の果てのそのまたどこかに神が交わり続け、宇宙が産まれ続ける根っこがあるとジュラの人々は信じている。
そこは人々に、こう呼ばれている。
「神の揺りかご」と。