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ブリキ星通信

店主のひとりごと

ブリキ星通信/2010年3月最終号

2010年03月20日 | 2010年


うららかな春の日に、もう最後になってしまうので…と、
アオちゃんがお母さんと一緒にブリキ星にやってきました。
アオちゃんは3歳のシャイな男の子。
お母さんのおなかの中にいた時からの「知り合い」で、
ブリキ星の一番小さなお客さんです。
彼の大好きなものは、歌舞伎。
2歳の頃に歌舞伎座で勧進帳を観て、それ以来、
歌舞伎にハマッてしまったそうです。
デイ保育に行って、他の子がアンパンマンの踊りをやっていても、
つまんなあ~い、と座って見ているだけ。
絵本より歌舞伎の写真集のほうがワクワクして、
ひとりで何時間でも見ているんだとか。
うーん、歌舞伎か~
アオちゃんを虜にしている歌舞伎の魅力は何…

銀座の歌舞伎座は、建て替えのため4月いっぱいで休館になってしまうので、
それまでに、数十年ぶりになるけれど観に行きたいなあ、
とアオちゃんから刺激をもらいました。

写真の絵は、苅谷重子さんのスケッチブックからの一枚です。
文楽公演を観てのデッサンですが、
人形の動きが目に見えるようです。
苅谷さんは、ブリキ星企画展の作家さんの中で、一番の年輩者。
店を始める前からの、一番長い付き合いのあった方です。
「お祖父さんが江戸っ子で、池波正太郎の本にも出てくるような、
 天ぷらを揚げる名人だった」
「ちいさかったとき、お祖父さんと救世軍の建物があった神保町を歩いていて、
 狐の鳴く声を聞いた」
などなど、記憶に残る話をいっぱい聞かせてくれました。
粋で、茶目っ気があって、能や文楽や歌舞伎をこよなく愛し、
江戸文化の中を生きているような方でした。

その彼女が昨年末に亡くなられたのを知ったのは
今年に入ってからのことです。
享年84歳でした。

ブリキ星閉店まで、あとわずかですが、最後の週、
苅谷さんの絵を数枚展示したいと思っています。

「ブリキ星通信 」は今回で終了です。
9年間、月一回、拙い文にお付き合いいただきましたことを、心からお礼申し上げます。

ブリキ星通信/2010年2月

2010年02月07日 | 2010年

先日、学生時代の友人が、「ブリキ星」にやってきました。
彼は店に置いてあるものを見ながら、
「ヘエー、加川にこんな趣味があったとはなあ~」
と意外そうな顔をしていました。
たしかに、モノの美しさに関心を持つようになったのは、
40歳近くになってからのこと。
それまでは、思想やそのための行為こそが
すばらしいものだと思い込んでいました。

現代作家の表現に向き合うようになったのは、
もっと遅くて50歳半ば 、
ギャラリーを始める少し前からのことでした。
写真は、まだ、自分がどんな絵が好きなのか、
どんな絵の展覧会をやりたいのかも分からなかったときに見て、
<この人の展覧会をやりたい>という気持ちにさせられた思い出の一枚。
内海満昌さんの絵です。
彼が絵を描き始めたばかりの20歳を過ぎた頃の作品です。
あれから、「ブリキ星」を始めて以来、
毎年一回、全部で9回、内海さんの展覧会をすることができました。
絵を見ながら、しみじみ懐かしく、
内海さんを初めとする沢山の作家さんたちへの
感謝の気持ちでいっぱいになります。

先月のブリキ星通信で、3月閉店のお知らせをしたので、
みなさんから「これからどうするの?」
と質問をされることが多くなりました。
「まだ、何も考えていない」
と答えると、
「決まっているけど言わないだけでしょ」
と言われる方もいますが、
本当にまだどうするか決めていないのが正直なところです。
とりあえず、いいなと感じた「こと」「もの」を
ブログで紹介していくことは続けていこうかな、と思っています。

また、ギャラリーを貸してほしいとの要望もあり、
4月(16~18日)には、
京都の骨董店「幾一里」さんの展示会が開催されることになっています。

ブリキ星通信/2010年1月

2010年01月06日 | 2010年


お正月明け、ギャラリーの天窓下の空間には、
毎年、川嶋徳人さんの書を展示します(写真)。
今年は大塊の二文字。
川嶋さんが、車椅子に座ったまま、
自由になる左足で描いた書です。
全身全霊で生きていることが伝わってきて、
ジーンときます。
船橋市の身体障害者福祉作業所の夏祭りで、
「おばけ屋敷」の企画をしたときにお経の一部を書いて、
怖い感じがでていると褒められたのが、
書をはじめるようになったきっかけだとか。
今から12年前のことです。
自分の生きざまを表現し、形で残していくことができるのは素晴らしいですね。

ところで、突然のお知らせですが、
今年の3月31日をもって、
ギャラリーブリキ星を閉店することにしました。
2001年3月にオープンしてから9年間、
作家さんやお客様から沢山の刺激をいただいて、
夢の中を走りつづけてきました。
みなさまには、感謝の気持ちでいっぱいです。

この9年間は、自分で経験を積み重ねてきたというより、
「誰かがやっていることに、立ち会ってきた」という感覚です。
自分の中では、最初も今も同じなのです。
そういえば、以前働いていた職場でも、
「何年たっても、いつも新入職員みたい」と言われたものです。
この感覚は、きっと、自己肯定感が希薄なところから
きているのだと思うのですが、
ずっとそうなので、よくわかりません。
1、2、3月と、あと3ヶ月間、3回の企画展を開催します。
貴重な、名残惜しい時間、精一杯楽しみたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。