ブリキ星通信

店主のひとりごと

ブリキ星通信/2007年12月号

2007年12月06日 | 2007年

早や師走。月日の速さが身に染みます。
子どもの頃は、日が暮れるまで外で遊び、
充分過ぎる時間があったし、若い時代には、
もっとゆるやかな時間が流れていました。
今では、一日はほんの一瞬、一年は一時のように感じます。
とは言っても、この一年を振り返ると、さまざまなことがあり、
沢山の人との出会いがあり、モノとの出合いがありました。

モノのなかで一つを挙げるとすれば、写真の金銅仏。
この金銅仏、木彫とは違って、
風化による味わいというものがなく、単調にも見えます。
以前の自分だったら「パス」していたにちがいない仏様です。
ところが出合ったときから、何故かぐいぐい惹かれて、
朝に夕に眺めています。
年を取ると渋いものより華やかなものに惹かれるようになる
とは聞いていましたが、やっぱりそうなのかもしれません。
それにしても、自分の感覚がコロコロと変化していくのが不思議です。

私はいつも、何かに夢中になったり、こだわったり、
いろいろなモノや表現から刺激を受けていないと心が安定しない 、
いってみれば、「依存症」であることを自覚しています。
でも、こういう「こだわり」は、何万年も前からヒトの遺伝子に
プログラムされてきたものだということを、最近知りました。
この秋に出版された全集・日本の歴史第一巻『列島創世記』
(松木武彦・小学館)に書いてあったことです。
生きていること、食べていくことと、
一見ムダに思えるようなことを考えるようにプログラムされたヒト。
抽象的な観念をもとに、架空の存在を頭のなかに生み出すことが、
神や宗教に結びつき、実用外の形や文様への凝りが、
美や芸術の世界になる・・・という著者の仮説、
自分流に解釈して大いに納得しました。
「こだわり」は、旧石器や縄文時代の人々から
ずっと受け継がれているDNAだったなんて、
なんだかうれしくなりますね。

10月の三谷龍二展、11月のオランダ蚤の市と、
今年最大の賑わいが続いた後、一転して静かな店内に座って、
来し方に思いを巡らせている師走のひとときです。