ブリキ星通信

店主のひとりごと

ブリキ星通信/2008年10月号

2008年10月05日 | 2008年

暑さが去って秋風が吹き始めたころ、
やっと収納庫の整理をしました。
そこで見つけたのが懐かしい絵。
大島静江さんの油絵です(写真)。
もう十数年前に亡くなられた方ですが、
静江さんは若い頃からお花が大好きで、
「花屋さん」をやっていました。
彼女と出会ったのは、
私が地方公務員でケースワーカーをやっていたときです。
その頃の彼女は、病気で手足が不自由になっていました。
でもいつも花の絵を描いていました。
病気が進行して、手で筆を持つのがままならない状態に
なってからも必死で描いていました。
絵を見ながら、その頃の静江さんの姿が思い出されます。
この絵は彼女の元気な頃のものです。
何でもない花の絵ですが、気持ちのよい絵だと思います。
ただただ花が好きでたまらないという気持ちから、
こんなにもいい絵が生まれるのかと、新鮮に感じました。

静江さんは、詩人の大島博光さん
(ネルーダ、アラゴン、エリュアールなどの訳詩でも有名。
 2006年に95歳で逝去)の夫人でもあります。
静江さんが亡くなられたとき、訪れた私に、
「記念に好きな絵を選んでください」と言って、
大島博光さんがくださった絵でした。
後に、詩人は静江さんに捧げる鎮魂歌『老いたるオルフェの歌』
という詩集を著しました。
あまりにも哀切に満ちていて、私には読めなかったのですが…
先日、大島博光さんの故郷信州の松代に、
「記念館」ができたことを新聞で知り、
長野に行く楽しみが増えました。

もうひとつ、最近見て心に残った作品があります 。
六本木の森美術館で展示されている(11月3日まで)、
荒木珠奈さんのインスタレーションです。
同じ会場で紹介されているフランスの作家の作品は
足早に通りすぎ、最後の部屋にたどり着いて、
荒木さんの作品世界に入ったときは衝撃的でした。
生きとし生けるものすべてが、産まれて、栄えて、死んでいく…
この生命のありようが、竹と蜜蝋で表現されている壮大な作品です。
もしかしたら、人は生まれかわることができるかもしれない、
という気持ちにさせられて、人一倍「無」に対する不安感が強い私は、
じわ~っときてしまいました。