ブリキ星通信

店主のひとりごと

ブリキ星通信/2008年6月号

2008年06月07日 | 2008年

ジトジト季節の到来です。
こんなときには、お点前を一服がいいかもしれません。
最近、楽茶碗に興味があるので、
時間ができたら、黒楽茶碗でゆったりと
お茶をのんでみたいものだと思っています。

それはさておいて、今関心を持っているのは、
経典を書き写した文字、「写経」のこと。
私の字は、人から「読めない」とよく言われます
(時には、自分でも読めなくなる)。
字にたいするコンプレックスは相当なもので、
大人になってから筆を持つ機会をつくりませんでした。
反対に、見るのは大好きです。
写真の写経は、俗にいう“法隆寺の虫食い経”です。
奈良時代のもの。法隆寺夢殿の復興につくした
行信の発願経といわれています。
物の本によると、写経は8世紀に
国家の文化事業として盛んになり、
当時はすべて国家によって作られた
写経所の専門職員によって書かれていたそうです。
それに、その写経所はとても劣悪な職場環境で、
労働条件も悪く、誤字脱字があると賃金カットされるなど、
「成果主義」が貫かれていたといいます
(なんだか今の労働現場と似ていますねー)。

当時の待遇改善を要望する文書の草案が残っています
(正倉院文書)。

「一、人手があまっているので、写経労働者を新たに
   追加するのをやめてほしい。
 一、去年の二月以来使っている仕事着が汚くなったので
   交換して欲しい。
 一、毎月五日の休暇をお願いしたい。
 一、装丁と校正の担当者の食事が悪い。
 一、胸の痛みと足のしびれを取るために三日に一度、
   薬酒の支給をお願いしたい。
 一、以前のように毎日麦を支給して欲しい。」

(<日本の歴史三「律令国家と万葉びと」鐘江宏之 小学館>を参照)。

奈良時代の写経の字は、骨格がしっかりしていて、
美しい字が多いなと思っていたのですが、
その背景に厳しい労働があったとは…。
いつか、「写経」をやってみたい気になってきました。