ブリキ星通信

店主のひとりごと

ブリキ星通信/2002年12月号

2002年12月01日 | 2002年
近所の西洋骨董の店、アーバン・アンティークスの井上さんに誘われて、
10月から、業者の市(古物商の免許がある人が参加できるセリ市)に
行くようになりました。
10月には、大きな土管のようなもの、11月には、昔の小学校の机が
買えて大満足。
すでに用の役割を終えて、ただそこにあるモノ。
それが、何に使われたのか分からないモノであったら、楽しさは倍増。
より、抽象的な存在になり、夢をみることができます。
まだまだ世の中には、楽しいガラクタが沢山あります。
またいつか、今年5月開催した「がらくた展」のようなものができたら
いいのですが……

11月20日~12月9日まで、連続して、絵の企画展です。
丸野由希子展と上田のり子展。
吉祥寺の「ギャラリーJin」一杉さんから紹介していただいた作家で、
ブリキ星に、新しい風が吹いています。
12月13日から19日までは、ブリキ星常設の商品に、炭にしたどんぐり、
木の実をのせるKINOMITAN(木の実炭)展。
年末まで、走りつづけます。

ブリキ星通信/2002年11月号

2002年11月01日 | 2002年

最近、オススメの本が出版されました。
別冊太陽の「白磁」の特集です。
ブリキ星が紹介されているから宣伝をするわけではありませんが、
なかなか、オモシロイ。
ウンと高いものから、安いものまで。
白磁をめざすものなら、何でも。
古いものだけでなく現代作家の器も。
ブリキ星常設の作家は、安藤雅信さんと井山三希子さんが取上げ
られています。
この本を監修した、勝見充男さんの気合いのほどが伝わってくる
内容でした。

ブリキ星では、おおむね月一回の企画展をやっていますが、
当分は絵が中心の路線。
10月、岡本真紀子展の会期中に、絵の企画展とは知らないで、
器を買いに来た方がいました。
展示してあった絵を、しばらく眺め「頭を冷やしてから」と帰り
翌日、またみえて、2点買われました。
器は日常使うものだから、気軽に買えるけれど、絵は、その人を
自宅に招くようなものだから、そう簡単にはいかない
そう言われる方がいました。……
だからこそ、心が通いあえる絵に出会えることは、めったにない
幸せな出来事だと思います。

ブリキ星通信/2002年10月号

2002年10月01日 | 2002年

「これはブリキ星さんに置いてもらうといいかもしれない‥‥…」
軍隊時代の革の鞄(ポシェット)を、顔なじみの郵便配達のおじさんが、
店にもってきてくれました。
「養父の弟のもの」だそうで、フタの裏には墨で、昭和12年8月22日
土肥原部隊の何某と書かれてあります。
鞄の中には、7通の手紙が黄色くなって当時のままに入っていました。
幼なじみと思われる女性からの手紙です。

「元ちゃん…… 北支の方は随分寒いでせうね。
東京の方も今が一番寒い時季です。
でも北支にくらべれば私達ぜいたくなんか言って居られませんわ…」
(昭和14年1月30日)

女学生の制服姿の写真が一緒に入っています。
最後の手紙の日付は、昭和15年2月。
敗戦を迎えるまでには、さらに5年もの歳月がある……
その後、二人の運命は、どうなったのだろう。
鞄を手に、しばらく目をとじました。……
磨けば十分使えるポシェットです。
でも、このままにしておきたい気がします。

9月の企画展「元染付陶片・瓦・いろいろ」は、
好評のうちに終了しました。
ブリキ星の近所(歩いて1分)にいる美術商で、
インドネシア冒険家(?)が集めたものでした。
彼はインドネシアの業者も行かない島々を巡って、
美しいものを発見してきます。
今度「インドネシアからやって来た美しいモノたち」展
をやろうかと、相談中です。

10月の企画展は岡本真紀子さんの絵とエッチングです。
どうぞご期待ください。

ブリキ星通信/2002年9月号

2002年09月01日 | 2002年
いつまでつづくのか、この暑さ……
東京がこれだけ暑いのだから、きっと沖縄はもっと暑いのだろう。
と思っていたら、
「沖縄は海洋性の気候のため、最高温度は33度。
 それ以上になることはほとんどない」
とのこと。
(9月企画展に出品予定の「沖縄の赤瓦」を集めて、送ってくれた
Tさんからのメールにそうありました)
「沖縄はいいなあ」と羨みながら、秋風が待ちどおしいこの頃です。

残暑きびしい8月下旬のこと。
一人の青年が、
「実家に帰って、やきものを始めることにしました」
と、挨拶に見えました。
彼がブリキ星に初めて来たのは、今年の4月。
三谷龍二さんの「カケラとうつわ展」のときのこと。
赤ちゃんを抱いた奥さんといっしょでした。
「天然酵母のパン職人として働いていたが、自分としては納得できる
 ところまでやったので退職し、これからは兼ねてからの夢であった、
 自分の手でよい器をつくることに挑戦したい」
と、真剣な面もちで語リ、三谷さんのうつわにもずいぶん触発された
様子でした。
この不景気な時代に、しかも生まれたばかりの赤ちゃんがいるのに、
退職までして創作活動に入りたいという。
なんと気概のある青年だろう。と感心もし、心配もしていたのですが、
青年の意欲は本物でした。
その後、何人かの作り手と直に会い、特訓を得て「やきもの」の道を
めざすことにしたようです。
パンづくりの腕と、感覚のよさを持つ彼がつくる器を見る日も、
そう遠いことではないかもしれません。
(それにしても、彼がつくった天然酵母のパンも食べてみたかった…)

9月の企画展「元染付陶片・瓦・いろいろ」は、元染の陶片がメイン
ですが、イギリスのスレート瓦、沖縄の赤瓦、白磁のタイルなどの他
「いろいろ」揃えています。
連休を挟んで4日間の開催です。
ぜひご覧ください。



ブリキ星通信/2002年8月号

2002年08月01日 | 2002年
暑中お見舞い申し上げます。
猛暑がつづきますが、皆様お元気にお過ごしでしょうか。
こんな季節は、さすがにお客さんの足も途絶えがち。
お店でウトウトしていると、外国人の女性が入って来られ、
がらくた類を見てしきりに感心。
昔の古びたゴーグルを手に取り、
「自分の幼いころが、よみがえってくる」と言います。
彼女はロシア人で、ゴーグルとイヤホーンの付いた帽子が
家にあったといいますから、お父さんがパイロットだった
のかもしれません。
なつかしい記憶をよびおこすモノとの出会いは、いっとき、
人を幸福な気持ちにしてくれるのでしょうか…。
また彼女は、ブリキ星常連の作家、内海満昌さんの作品
「存在のあたたかさ」にも深く感銘していました。
そして又、7月中旬から天窓のスペースに展示してある、
大浦こころさん(福岡在住)の大作
「見えない形 friend 9」を、畳の部屋に上がって、
ゆっくりと眺めておられました。
「まだ、全体が見えてこない、また見に来ます」とのこと。

なんだか、うれしい一日でした。