猛暑が終わって、台風が過ぎて、一挙に秋の到来かと思ったのに、
まだまだ暑い日がつづいています。
秋風が心地よい頃になると、展覧会のDMが沢山届くようになりますね。
写真の絵は、ドイツのマンフリート・ツォーラルという人が描いた
「風景」(テンペラ、61×81センチ、1994年作)。
私にとっては記憶に残る絵です。
ギャラリーをオープンする前年(2000年)の秋に購入しました。
展覧会のタイトルは、「ベルリンの壁 崩壊前と後の5人の画家たち」。
当時、新聞か雑誌の紹介文の中にあった、
「松本俊介が生きていたら、このような絵を描いていたかもしれない」
という言葉に触発されて、東麻布のギャラリーMMGへ出かけました。
今思い返してみても、よい展覧会でした。
今は、人が「生きている」と実感できることが希薄な時代ですが、
5人の画家の絵を見ていると、
<自分も背筋をちゃんと伸ばして生きていこう>という
気持ちにさせられるようでした。
たまたま生を受けてこの世に存在している自分、
その自分と同時代に、ひたむきに生きている人の何と多いことか…
生きていることの不安、迷い、こだわり、楽しみ…
それらが伝わってくる絵に出会えたときの喜びは
まったくもって格別です。
ところが、会場を見回しても、お客さんは居ないし、
絵にはひとつも赤マルがついていないのですから、
不思議でなりませんでした(ギャラリー経営をやっている今となっては、
不思議でも何でもありませんが)。
<ここで絵を買うことで、自分はしっかりできる>
会社を辞めて、新しい道に出発しようとしている自分に、
そう言いきかせて、「風景」を買いました。
はじめて夫婦で近場の海外旅行にでも行こうか、
と用意してあったウン十万円が、これに消えました
(その後海外には行かないままになっています)。
あれから7年、相変わらず自分の感覚でしか動けませんが、
作家さんたちのエネルギーをもらいながら、
ナントカカントカ、ギャラリー運営に勤しんでいます。