ブリキ星通信

店主のひとりごと

ブリキ星通信/2006年2月号

2006年02月01日 | 2006年

「うちださんと黒色土器」

2月は、寒いし、短いし、何かわびしい月です。
日本橋茅場町の古美術「うちだ」さんが2月で
店を閉めると聞きました。
麻布から日本橋に移転されてからは、
めったに伺えなかったのですが、
思い切って出かけました。
そこで出会ったのが、写真の黒色土器。
古墳時代後期の墳墓から出てくる土器なので、
「御陵碗」ともいわれます。
平安時代には庶民の生活雑器としても使われていました。
黒色土器の碗には、
高台の元祖のようなものがちょこっと付いていて、
ふわっとした全体の形がなんとも好ましく、
私もこの数年探していたのですが、
そう簡単には見つかりませんでした。
ところが、内田さんは10年間で60点も
集めたというのですからさすがです。
新旧の美しいモノを取り上げて、
「新骨董感覚」の旗頭だった内田さんが、
きっぱりモノ集めの世界から抜け出て、
長野県に移住し、農業に打ち込むという潔さにも
驚かされました。
2年前から無農薬の米づくりに挑戦して、
通信販売もされていたので、
思えば自然の成り行きかもしれませんが…。
内田さんのつくったお米は、実においしかった。
一粒一粒がしっかりとした味で、
ごはんさえあればもう何もいらないという程。
これからは野菜づくりもするそうです。
無農薬の米と野菜をいただけるようになるのが楽しみ…
と口にしたら、内田さんは顔を引き締めて、
「無農薬でつくるのは大変なことなんです」と、
日本の農業の危機的状況を語りました。
「高い農機具を買って、広大な土地を汗水たらして耕しても、
手にする利益は考えられないほど僅か。
農薬をつかう農業を責められないのです」と。
頭が下がりました。
そして、これからの内田さんの奮闘に
心から声援をおくりたいと思いました。
そうです、2月の寒さになんか負けてはいられません。