ブリキ星通信

店主のひとりごと

ブリキ星通信/2006年8月号

2006年08月05日 | 2006年

毎年8月の第一週は、夏休みです。
今年は、山陰へ行ってきました。
「仕入れ」の仕事を兼ねてはいるものの、
「日常」から解放されて、自然に身をゆだねる日々は格別です。

三徳山の投入堂や、大山や、日御碕や出雲大社も素晴らしかったけれど、
一番幸せを感じたのは、誰もいない広大な鳥取砂丘に立って、
日本海に沈む真赤な夕日を見たことでした。

松江の田部美術館では、自分にとっての新しい発見がありました。
この美術館は、松平不昧好みの茶道美術館なのですが、
1~2年前の私だったら多分、
「江戸時代の脆弱な茶道具なんてばからしくて…」と、
見向きもしなかったでしょう。
でも、今回見た出雲のやきもの(楽山焼、不志名焼)は、
李朝写しの茶碗から色絵の皿までいろいろありましたが、
どれも、つくり手のひたむきさが伝わってきて、
同時に展示されていた、魯山人の巧みなやきものより、
好ましく思ったほどです。
縄文にも、それとは全く対極にあるといわれる茶陶にも、
共感する自分の感覚が不思議になりました。

旅の最後の日は、岡山の「ギャラリーONO」を訪問。
丁度「動物のかたち」という展覧会をやっていて、そこで求めたのが、
12C~13C頃の小さなペルシャのライオン(写真)。
可愛らしい顔をしたライオンでしょ。銀化が美しいです。
店主の小野善平さんは店を始めて25年になるとのこと。
心意気に敬服しました。
というのも、旅先で回ってきたいくつかの骨董店が、
店を閉めてインターネット販売に切り替えており、
寂れた商店街を見ながら、複雑な思いにかられていたからです。
「続けていくことです」と言われた小野さんの言葉が、
ズシンと胸に残った夏休みでした。