今年の夏休みは予定を大幅縮小して2泊3日の東北駆け足旅行となりました。
まずは、北限の平安仏に会いに、二戸の天台寺へ。
岩手と青森の県境の奥深い山中に佇んでいるお寺です。
瀬戸内寂聴さんの法話がある大祭のときは大層なにぎわいだそうですが、
この日の境内は、青いアジサイの花に囲まれて静まり返っていました。
本堂の菩薩坐像、裏の収納庫に安置されている十数体の平安の仏さまと、
間近でゆっくりとお会いすることができました(写真1,2)。
天台寺は、鉈彫り(なたぼり)の傑作といわれている聖観音立像が有名ですが、
それより、お顔に白土が塗ってある菩薩像の一群に心惹かれました。
縄文の血が濃く流れている人が造った仏さま、というような感じ・・・
あるいは、明治時代の東北のこけしに通じるような感じ・・・
中でも、明治の廃仏毀釈で焼かれて上半身黒こげの菩薩さまは、
人間の非情さを背負われているよう・・・
北の僻地になぜこのようにたくさんの平安仏が集まっているのかは謎だそうです。
今回の東北旅行のもう一つの目的は、いわき市のOさんのお宅におじゃまして、
信楽の壷を見せてもらうことでした。
二戸からいわきに向かう途中、北上の市立博物館へ寄り道です。
かねてから、国見山廃寺・極楽寺の出土品、伝世品を見てみたかったからです。
ところが伝世品が2種5点しかなくて、その数の少なさにびっくりです。
やはり、平安時代後期、この辺りの沢山の寺を取り壊して
平泉の建設のために使ったという説は正解なのかもしれません。
北上市立博物館では、縄文土器の数の多さと質の高さに圧倒され、
しばし見惚れました。
もう間もなくいわきに到着・・・というとき、富岡で常磐線がストップ。
いわき市内の豪雨とその後の線路点検で3時間の遅れです。
今年の荒れた夏を象徴するようなハプニングでした。
いわきでは、Oさんの曽祖父が経営されていたという
旧四倉銀行の大正時代洋風建築を見せてもらいました。
外壁は保存のために白ペンキで塗られていますが、
ほどこされたレリーフが素晴らしく、内部はまさに廃墟の美。
ここで何世代かの人々が暮らしてきた物語の余韻が
まだ残っているかのようです(写真3,4)。
白水阿弥陀堂を回り、Oさんのお宅へ。
ありました、信楽の大きな壷が。
静かな存在感があって、いいですね~
「うちだ」さんから購入したものなので、
「うちださんの信楽」と呼んでいます。
うちださんとは、元麻布の古美術商の「うちだ」さん
(今は長野県で自然農法に取り組んでいる方)で、
信楽の大壷は、そのうちださん自身のような焼きものでした。
Oさんの高校時代からの友人で、
詩人のFさんとお会いできたのもうれしかった。
彼女からいただいた詩集『科学と学習』を読んで、
たしかなものを「言葉」で残している人がいることを知り、
感慨深いものがありました。
今年の夏旅行は、短かったけれど、心に残るものとなりました。
人づき合いの極めて悪い私を、Oさんが引っ張ってくれたお陰ですね・・・・