ブリキ星通信

店主のひとりごと

ブリキ星通信/2004年12月号

2004年12月01日 | 2004年

まずは、写真をご覧ください。(撮影は冨沢恭子さん)
文庫本に、極細の赤ボールペンでぎっしりと
書き込まれたドイツ語。
そのスペルの美しいこと! 
何が「アート」かってことは、よく分からないけれど、
まさしく、「これはアートだ!」と、
言ってみたくなります。
開高健や大庭みな子などの、
日本文学をドイツ語に翻訳する仕事です。
これをしているのは、ブリキ星最年長のお客さんの
Mさん、88歳。
ギャラリー巡りが趣味で、
ブリキ星の企画展には必ず立ち寄ってくださいます。
男性のひとりぐらしとは思えないような、
いつもきちんとした身なりで、
帽子とネクタイがきまっています。
Mさんは歳とともに枯れていくのではなく、
艶があり、目がひときわ澄んでいるのです。
どうして小さな本に書き込むのかと思ったら、
毎日、本を鞄に入れて持ち歩き、
バスの中で読みながら訳文を考えるそうです。
そうして家に帰ってから夜、清書します。
寝るのはいつも3時。起床は6時とか。
そのエネルギッシュな生活スタイルの秘密は、
健啖家にあります。
朝食はトーストを3枚、ハムを5~6枚。
ならば、と真似をしても、そのあとは胃薬を…、
となってしまう我が身の不甲斐なさです。
お店で、翻訳進行の様子を見せていただくのが、
楽しみ。
つぎは桐野夏生の小説を手がけるとのこと、
ますますお元気になられることでしょう。
今年も残り少なくなりました。
Mさんのパワーをもらって、
さあ、もうひと頑張りです。