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電子部品大手6社、景気減速が直撃 今期業績予想を相次ぎ下方修正

2012-02-01 | 電子デバイス全般



 京セラ、村田製作所など電子部品大手6社の2011年4-12月期連結決算が31日出そろった。

 6社すべてが12年3月期の業績予想を下方修正し、今期に3期ぶりの最終赤字に転落するTDKは新たに国内3工場の閉鎖を発表した。電子部品の受注が低迷し、タイの洪水被害の影響が長引くことも響く。

 景気の先行指標といわれる電子部品大手の業績見通しが一段と厳しさを増し、世界景気減速の影響が鮮明になってきた。


●下方修正相次ぐ

 TDKは31日、12年3月期の連結最終損益(米国会計基準)が110億円の赤字(前期は452億円の黒字)になると発表。従来予想は200億円の黒字だったが、昨年10月末に続き通期見通しをさらに引き下げた。

 韓国メーカーの低価格攻勢を受けて、携帯電話などで使うセラミックコンデンサーの赤字が続くほか、欧州の大口顧客向けの携帯電話用高周波部品が振るわない。

 ハードディスク駆動装置(HDD)向け磁気ヘッドは、タイの洪水に伴う完成品メーカーの被災などで苦戦する。

 アルプス電気は、12年3月期の連結純利益が前期比73%減の30億円になる見込み。ゲーム機やテレビ、パソコン向けにスイッチなどの電子部品受注が落ち込む。

 日東電工も、液晶表示用材料の出荷が低調で今期3度目の下方修正となった。

 円高の定着も各社の収益悪化に拍車をかける。村田製作所は、12年3月期の連結純利益(米国会計基準)が360億円と前期比で33%減る見通し。1-3月期の想定為替レートを1ユーロ=100円と従来より5円円高方向に見直した。

 為替変動の影響は、通期で320億円の減収要因となる。「ドル建てで資材を調達するほか、生産の海外比率引き上げで対応する」(藤田能孝副社長)という。


●本格回復12年度以降に

 各社ともこれまでスマ-トフォンやタブレット端末関連を支えとしてきたが、全体の落ち込みを補いきれない。

 電子部品の市況は、「11年10-12月期に底打ちするとみていたが、回復には多少時間がかかる」(日東電工の武内徹最高財務責任者)という見方が多い。

 「デジタルカメラなとメーカーの在庫水準が適正に向かい、春には受注が上向く」(村田製の藤田副社長)。電子部品の需要が本格回復するのは12年度以降になりそう。

 電子部品業界は薄型テレビやパソコンなどデジタル製品の不調に直撃され、戦略の見直しを迫られている。急速に悪化する収益を立て直すため、TDKは31日、秋田県にある蓄電部品のコンデンサーなどを手がける新たに3工場の閉鎖を発表した。

 昨秋公表していた全世界の従業員の13%にあたる1万1000人削減を柱としたリストラ策の一環で、創業の地である秋田県周辺の18工場のうち計7工場を閉鎖する。

 ルネサスエレクトロニクスも競争力の落ちた製品からの撤退で、採算の改善を急ぐ。

 31日には、市況が悪化する薄型テレビやパソコンの大型液晶パネルを駆動させるIC事業をやめると発表した。工場は閉鎖しないが、「事業の継続が難しいと判断した」(赤尾泰社長)。


●12年正念場に

 収益の柱として期待されるスマートフォン向け部品も、優勝劣敗が鮮明になりつつある。

 蓄電部品の超小型コンデンサーで世界最大手の村田製作所は、iPhoneが好調な米アップル向けなどが連結売上高の15%を占めるとみられ、業績を下支えしている。

 ただ、意思決定のスピードが速い韓国や台湾企業の追い上げは急で、日本勢の金城湯池とはなりそうにない。スマートフォン向け部品は最先端の技術が要求されるため、開発投資負担も重く、収益悪化に苦しむ部品メーカーも増えてきたため。

 次世代の技術開発につながるスマートグリッド(次世代送電網)、エコカー、医療など新分野向けの電子部品の育成にも乗り出しているが、市場が立ち上がるまでにはまだ時間がかかりそう。

 日本勢が競争優位を挽回できるかどうかは、12年が正念場となる。





【記事引用】 「日本経済新聞/2011年2月1日(水)/9面」


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