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日本の半導体産業の弱体化止まらず 半導体「国産」こだわり凋落、海外勢は開発特化

2012-06-10 | 半導体業界



 日本の半導体産業の弱体化が止まらない。

 2月に会社更生法の適用を申請したエルピーダメモリに続き、赤字続きのルネサスエレクトロニクスが経営再建策作りを急ぐ。設計開発から生産まで一貫して手がける自前主義にこだわり、世界の分業体制から取り残された。

 事業モデルを転換し、コスト競争力を取り戻すことが急務だ。


●鶴岡工場の売却交渉

 山形県の米どころ、庄内平野にルネサスの鶴岡工場(山形県鶴岡市)がある。

 任天堂のゲーム機などに搭載するシステムLSIの生産拠点だ。ルネサスはこの工場を台湾積体電路製造(TSMC)に売却する交渉を進めている。

 半導体の工場には高額な装置が必要だ。その投資に見合うだけの生産量を確保できないと赤字になる。

 TSMCは半導体メーカーから設計図をもらい、生産だけを引き受けるファウンドリー(受託生産会社)の世界最大手。工場を持たず設計に特化した世界の半導体企業から多くの受注を獲得し、業績を伸ばしてきた。

 TSMCなら鶴岡工場の生産能力を十分使いこなせるとの期待がある。

 ルネサスは2010年4月にルネサステクノロジとNECエレクトロニクスが経営統合してできた。その前身をたどると日立製作所と三菱電機、NECのそれぞれシステムLSI部門になる。

 ルネサスの12年3月期連結決算は626億円の最終赤字。前身企業から数えると、赤字は7期連続。

 主力製品のマイコンは自動車向けで約4割の世界シェアがあり、利益率も高い。赤字の原因は、顧客の求めに応じて仕様を変えた特注のシステムLSI。


●世界市場で傍流に

 日本の半導体メーカーは1980年代に、世界のDRAM市場で計約8割のシェアを握った。その後、韓国メーカーがパソコン向けに低コストのDRAMを開発し、生産能力を拡張するとじりじりシェアを落とした。

 90年代後半にはNECや日立製作所、三菱電機、富士通、松下電器産業(現パナソニック)が、半導体事業の軸足をDRAMからシステムLSIへ移した。

 薄型テレビ、デジタルカメラ、DVDレコーダー。「新・3種の神器」と呼ばれたデジタル家電のほか、ゲーム機や携帯電話などのヒットでシステムLSIの需要は拡大。

 半導体メーカーは大量受注を見込んで大規模な工場を建設した。

 例えば、旧ルネサステクノロジの那珂工場(茨城県ひたちなか市)はNTTドコモの携帯電話、東芝の大分工場(大分市)は薄型テレビやDVDプレーヤーなどに使うシステムLSIの拠点だった。

 デジタル景気が減速すると工場の稼働率は低迷。少量多品種の半導体をかき集めたが、生産効率が悪化した。

 2000年代に入ると海外では数千億円の設備投資が必要な半導体工場を持たず、設計開発に特化する企業が続々登場した。スマートフォン向けでは米クアルコム、薄型テレビ向けでは台湾のメディアテックなどが代表例。

 共通仕様の半導体をファウンドリーに大量に発注してコストを下げた。日本の半導体大手が手がける特注仕様で割高なシステムLSIは世界市場では傍流になった。


●合理化先送りのツケ

 挽回のチャンスはなかったか。06年、半導体各社は「日の丸ファウンドリー構想」の実現へ動いた。

 経済産業省が音頭を取り、日立、東芝、ルネサステクノロジが半導体を共同生産するというシナリオだったが、主導権争いが原因で交渉は破談した。

 東芝幹部は、「巨額の投資がかかる生産部門を切り離す最後の機会だった。日本の半導体産業の凋落を決定づけた」と振り返る。

 ルネサスは従業員の約3割にあたる最大1万4000人の削減を柱とする再建計画を策定中だ。経営危機になれば株主の電機3社が支援してくれるはず、という甘えもあった。

 これまで約10カ所の工場を閉鎖・売却してきたが、大規模工場の集約は手つかずだった。抜本的な合理化を先送りしてきたツケが回ってきた。





【記事引用】 「日経産業新聞/2012年6月10日(日)/11面」


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