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半導体メーカー各社、2011年2大災害を教訓 有事でも供給継続、4段階の対策

2012-04-21 | 半導体業界



 各半導体メーカーは、製品を安定的に供給できる体制を一層強化している。

 2011年に発生した東日本大震災、タイの洪水という二つの自然災害によって半導体製品の供給が停滞し、世界のものづくりに影響が波及した。

 これを教訓に各社は、新たな災害対策などを追加的に実施し、常に製品を顧客に提供できる体制を整えている。


●追加的な安定供給対策

 半導体デバイスは、製造に2-3カ月以上の時間を要する。ほかの電子部品などと比較しても製造期間が長い。そのため、急な需要変動への対応力が弱く、適度な供給過多や供給不足を繰り返してきた。

 同時に、自然災害などで工場が停止した場合にも、製造リードタイムが長いことにより、供給再開まで時間を要する。

 11年3月の東日本大震災では、半導体工場の被災、操業停止が原因で「一つのデバイスが手に入らす、完成品が出荷できない」といった影響を世界のものづくり現場に及ぼした。

 半導体メーカー各社は11年以前からも、急な需要変動や自然災害などの有事でも、安定的に製品供給を継続できる体制構築を進めてきた。

 ただ、11年の2大災害では、被害の及ぶ地域や時間が想定を上回る規模となったこともあり、追加的な安定供給対策を実施するなど、安定供給体制強化の動きが広まっている。

 安定供給に向けた対策は、大きく分けて4段階ある。


●リスクに万全な対策

 まず第1段階は、工場を止めないための対策。地震の少ない地域、浸水の心配のない高台など災害リスクが低い場所への工場立地などが最も基本的な対策例。

 震災に対しては、工場全体を免震構造にし、揺れを大きく軽減する対応などが取られている。しかし、これらの対策は、工場移転や大規模な設備投資を必要とし、既存工場への適用は難しい。

 また、すべての災害、リスクに万全な対策を講じることも不可能に近い。

 そこで第2段階として、工場が停止した場合に早期復旧を果たすための対策が講じられている。平時から、様々な被害状況を想定し、状況に合わせた復旧作業の工程をマニュアル化し備える対策が基本となる。

 さらに、災害に弱く復旧に時間を要する装置などに、免震台設置や耐震補強を行うなどの部分的対策を講じ、被害を最小限に抑えて、早期復旧につなげる対策も実施されている。

 これらの対策で工場の生産停止を最小限にとどめる努力を行う一方で、仮に工場が停止しても企業として供給を続ける体制も敷く。一つが、企業として生産を継続させること。

 1工場が停止しても、別の工場で生産を継続することが基本的な考え方で、一つの製品を複数工場で生産できる「マルチファブ化」を講じている。

 同一製造工程を備えた工場を度数用意し、量産規模の大きい製品では複数工場での生産を実施。少量生産の品種は有事の際に、スムーズに別工場で代替生産を行う体制を整えるといった対策を行う。

 また、同一プロセスを持つ第2の工場(ミラーファブ)を、受託専門企業などの外部に委託するケースも多い。これは、工場建設の投資負担や余剰な生産設備所有による固定費増を防ぐといったメリットがあるため。


●有事でも供給継続

 供給を継続するもう一つの対策が「在庫」。

 工場が停止しても、在庫分だけ供給が継続できる単純かつ確実な対策。しかし、余剰在庫を抱えるには、コスート負担が大きく、過大な在庫が不良在庫になれば、経営を圧迫する要因ともなり得る。

 ただ、供給責任を果たすため、有事が発生しても生産再開までの期間を埋める在庫を顧客とシェアして保有する動きが強まっている。

 極力、在庫に伴う費用、リスク負担を軽減する工夫も行われている。例えば、前工程加工を済ませたウエハーの状態で備蓄する「ダイバンク」。

 パッケージングやテストといった後工程の製造コスト比率が高いアナログ半導体などでは、不良在庫リスクも大きく軽減できるメリットもあり、完成品在庫よりも有効な在庫手法として対策に用いるケースが増えている。

 半導体メーカーでは、これら4段階の対策を復合的に実施することで、災害に強い工場、強靭なサプライチェーンを構成、有事でも供給を継続できる体制を整えている。





【記事引用】 「電波新聞/2012年4月20日(金)/4面」


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