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米スパンション、NAND型フラッシュメモリーを本格販売 韓国SKハイニックスに生産委託

2012-05-31 | 半導体業界



 米半導体大手のスパンションは韓国SKハイニックスに生産を委託し、今年下期に記憶用半導体のNAND型フラッシュメモリーを本格販売する。

 スパンションはエルピーダメモリとNANDの共同開発を進めてきたが、エルピーダの経営不振で計画が止まっている。スパンションを軸にしたNANDの提携の進捗からも日韓の半導体産業の明暗が浮き彫りになっている。


●生産委託で契約

 「確実に顧客の選択肢が広がる」。5月中旬に来日したスパンションの製品マーケティング担当のロバート・フランスバイスプレジデントは自信を見せた。

 同社は4月、SKハイニックスとNANDの生産委託で契約した。スパンションは主力のNOR型に加え、NAND型もそろえることで自動車や家電メーカーからの受注を増やす。

 スパンションは、2017年までの5年間に回路線幅が40-20nmの3種類のNANDの新製品を販売する。車載機器やゲーム機などに使うと、より複雑な制御が可能になるという。

 低コスト生産に強みを持つSKハイニックスが主要工程を受け持つことで製品の競争力を高める。

 スパンションは小容量で頻繁なデータの出し入れに向いているNOR型フラシシュメモリーに特化してきた。だが、大容量のNOR型の需要が縮小、固定費負担の重さやリーマン・ショックもあって09年3月に米連邦破産法11条の適用を受けた。

 日本法人も会津若松工場(福島県会津若松市)を米半導体大手のテキサス・インスツルメンツ(TI)に売却するなど、リストラを進めた。

 再建にはNAND型への参入が不可欠と判断したスパンションが手を組んだのがエルピーダ。

 10年春、エルピーダは再建中のスパンションから半導体の技術者約50人を引き継ぎ、NAND型を共同開発してきた。スパンションが持つ特殊な大容量化技術を用い、新製品を開発。

 11年からはエルピーダの広島工場で生産を始める予定だった。だが、半導体市況の急速な悪化がエルピーダを直撃。会社更生法の申請に追い込まれ、広島工場での生産開始のメドは立っていない。

 スパンションは「今後も両社の提携関係に変更はない」と強調するが、エルピーダが破綻手続きなどに時間を費やす間に、SKハイニックスと手を組んだ。早々に交渉をまとめ、契約締結からわずか半年で量産に入る。

 フランス氏は「SKハイニックスに生産を委託する製品は、エルピーダとの共同開発品とは製造方法が違う」とエルピーダとの関係を続ける考えを示すが、2つの製品は同じ機能を持つ。


●心もとない業績

 スパンションはリストラの一巡で10年5月にチャプター11の適用から除外されたものの、足元の業績は心もとない。12年1-3月期の最終損益は1300万ドル(約10億円)の赤字だった。

 SKハイニックスとの提携で、NAND型事業の収益化を急ぐのも無理はない。エルピーダの破綻に続き、ルネサスエレクトロニニクスも大幅な赤字にあえいでいる。

 再建に時間を浪費すると、エルピーダにとってのスパンションのように責重な提携の機会もみずみず逃すことになる。事業の再構築を早急に進めなければ、日本の半導体産業の存在感が一段と低下するのは避けられない。





【記事引用】 「日経産業新聞/2012年5月31日(木)/7面」


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