私が韓国と関わり始めた1990年、韓国語の辞書にはろくなものがなかった。韓国民衆書林の韓日辞典、金素雲の辞典などがあった程度。どれも日本語を学習する韓国人向けの辞書でした。
そこに登場したのがコスモス朝和辞典。収録単語数は少ないけれど、必ず例文がついていて、重要語とその例文がカセットテープに収録されているのがうれしかった。この辞書の編纂に協力した韓国人に会ったことがありますが、すべての例文を、この辞書に収録されている語彙の範囲内で作るのに苦労したと言っていました。
その直後に出たのが小学館の「朝鮮語辞典」。小学館の辞書作りのノウハウが惜しみなくつぎこまれた韓国語辞書の決定版です。語彙数も必要十分。例文も豊富。巻末にはみに日韓辞典がついている。漢字の韓国語読みがまとめてあるのもうれしい。ただ、値段が8000円と高いのは、マイナー言語の辞書としてやむをえないでしょう。
その後、この辞書は電子化され、私も今は電子辞書で使っています。
一方、タイ語。
こちらは依然としてマイナー言語の悲哀を噛みしめています。
タイ語辞典には、「タイ語辞典」(松山納、大学書林、1994年)、「タイ日大辞典」(富田竹二郎、日本タイクラブ、1997年)という大辞典があって、とんでもない値段がついています。前者は4万2千円、後者も3万円弱。これではとても手が届かない。
「タイ語辞典」の内容をコンパクトにした「簡約タイ語辞典」(松山納、大学書林、1996年)でさえ、1万円です。私はこれを買いましたが、例文がない! 初学者用の学習辞典としては不向きです。
そのほかには、三省堂から出ている「デイリー日タイ英・タイ日英辞典」(宇戸清治、2004年)というのがあって、こちらは2730円と手頃です。日→タイはとても重宝していますが、タイ→日のほうは、やはり例文がなく、単語集を大きくした程度。
もちろん、電子辞書もありません。一度、タイで台湾製の電子辞書を見つけて買ったのですが、タイ語辞典はオールタイ語なので実力的に使えない。オックスフォードのタイ英辞典はタイ文字があまりに小さくて、書体もちょっと変わっていて、判読不可能。まったく使い物になりませんでした。
語彙数は少なくていいから、初学者向けの例文の豊富な辞典があればなあと思います。
学習用辞書がなぜ出ないかというと、答えは簡単。需要がないからですね。タイと日本は仲がよくて、経済交流も活発、駐在員も多い。たくさんの観光客が毎年タイを訪れます。それなのになぜ辞書がないのか。
考えられるのは、タイ語が難しすぎるから。
タイ語は文字が特殊です。辞書を引くためにはタイ文字を習得する必要がある。この点、ハングルを使う韓国語も事情は似ていますが、タイ文字はハングルの何倍も難しい。タイ文字には子音字が42字、母音記号が約30(正確にはよくわからない)もあるうえに、声調の規則とともに同じ音でも使う文字が異なる。辞書で言葉を探すには、文字の順番も覚えなければならない。「辞書を引く」という段階にいたるまでのハードルが高すぎるのですね。
タイ語を勉強する人がけっして少なくないことは、書店にかなりの数の学習書、会話集、単語集があることをみてもわかります。それらの多くは、カタカナ表記、ローマ字表記に頼って学習するもの。タイ語学習者には、最初から文字はあきらめ、カタカナとCDで基本的な表現を覚え、タイに行ったときに通じたらいいな、と思って学習する人が大部分なのでしょう。
ですから、タイ文字を知らないと引けないような辞書は売れない。出版社も売れない辞書は作らない、ということなのでしょう。
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英語の辞書なら、英辞郎が用例が豊富で秀逸です。
その他諸々は、Google翻訳が便利です。
タイ語は発音も出るので、勉強になるのでは?
昔々は、XXXXX-Englishなどの辞書を使っていましたが、製本が悪くバラバラ事件になりやすかった。
日本人はタイ語の発音の基礎を相当みっちり
やらないとほとんど通じません。
発音の基礎ができると読み書きは案外簡単で
、
英語のスペルや漢字を覚えるよりはるかに楽です。
英語は例外が多すぎるし、漢字は数が多すぎますから。
でもロシア語、ハングルよりずっと難しいと思います。