伯母の家を引き払うにあたり、ささやかな宴を設けました。
実は隣家にも、独り暮らしの老人がいて、昨年も一度、家に招いて夕食をともにしたことがあります。今年も正月に年始の挨拶をしたとき「また一緒に食事をしましょう」と言ったまま、果たせないでいたのです。
私がこの家に生まれ育ったときから隣に住んでいて、ちょうど私よりも2つ下の一人息子がいたので、いろいろとお世話になりました。
伯母と私とそのおじさんで、すき焼きの鍋を囲みながら出る話は、やはり昔話。
「富士山にドライブに連れて行ってもらったのは、ぼくが小学校4年のときでした」
「ああ、あのときは何に乗っていたかなあ」
おじさんは、町工場を経営していて、まだマイカーを持つ人が少なかったときから、自動車に乗っていました。
「業界の人とゴルフに行くんだよ。そのときに、だれの車が立派かなんて、自慢し合うんだね」
おじさんの話では、カローラから始めて、トヨペット、コロナ、クラウン、最後はソアラまでトヨタ車をグレードアップしていったんだそうです。
子どものころ、車種には疎かったのですが、富士山のドライブに連れて行ってもらったのは、たぶんコロナだったと思います。
その後、息子さんは、ある料理屋で社長に見込まれ、ハワイで日本食の店を出すという話になり、現在、ハワイ在住。ときどき、大学生の孫が遊びに来るそうです。
「ハワイなんて、いいですね。おじさんもそっちに移り住めばいいのに」
「真っ平だね。一度行ったけど、退屈で死にそうだったよ。昼間、息子たちが働いている間、一人で家にいるだろ。知り合いもいないし、パチンコもないし、何もやることがないんだよ」
奥さんのほうは、10年ほど前に癌で亡くなり、息子はそのときに、一人では寂しかろうと子犬を買ってくれた。毎日、散歩する姿をよく見かけました。そして、その犬が死んだのが昨年の10月。
「今でも夢に出てくるんだよ、なかなか忘れられなくて…」
ひとしきり、愛犬の最期についての話が続きました。
おじさんは、高血圧とか、ほかにもいろいろ持病があって、酒は一日缶ビール一本に制限されている。無理に進めて、具合が悪くなったりしてはたいへんなので、そろそろお開きにすることにしました。
「私は来月から大阪転勤になりますけど、兄夫婦が同居することになったので、これからもよろしくお願いします」
「大阪行っちゃうんだ。寂しいなあ。ときどき遊びに来てくれよ」
このおじさんのお母さんは日本人ですが、お父さんのほうは朝鮮から渡ってきた在日一世だという噂を聞いたことがありますが、これまで確かめたこともないし、この日もそれを話題にすることはありませんでした。
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