犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

突然の頭痛

2015-02-08 23:09:49 | 日々の暮らし(帰任以後、~2015.4)

 ある晩、急に頭が痛くなりました。

 インフルエンザかと思って熱を測りましたが、平熱。別に酒を飲みすぎたわけでもなく、原因がわからない。早めに寝床に入っても、頭痛はつのるばかり。痛みのために寝つけません。2時過ぎに布団から這い出して、スマホで「ひどい頭痛」などと検索すると、クモ膜下出血がヒット。説明を読んだら恐くなってきました。

(救急車を呼ぼうか)

 でもそうすると近所の人は、同居している伯母(91歳)に何かあったと思うでしょう。

(とりあえず薬を飲んでみよう)

 配置薬の箱をひっかきまわして頭痛薬をさがし当てました。

 普段、薬を飲む習慣がないので、効きがいいのでしょう、3時過ぎに知らないうちに寝入ったようです。

 翌朝6時に起きたときも、まだ痛みが続いています。

(病院に行ったほうがいいな)

 とりあえず会社にメールを入れ、有休をとることにしました。

 近くのクリニックにしようか、大きな病院にしようか迷いましたが、X線CTの設備のあるところのほうがいいだろうと思い、タクシーで都立病院に行きました。

 神経内科に回され、問診表に症状を書き込み、体温と血圧を測るも正常。

「予約の患者さんが優先なので、かなり待つと思います」

と看護婦さん。

「あの…、クモ膜下出血とかじゃないでしょうね」

「鎮痛薬が効いたんですよね? それなら大丈夫です」

「はあ、そうですか」

 その日、神経内科の先生は一人。朝から5~6人の予約が入っていて、それぞれのの診療時間がかなり長い。その間も頭痛が続きます。

(救急車で来たほうがよかったかな)

 待つこと3時間…。

 あまりにも待たされたので、頭痛も少し和らいだ気がします。

 やっと順番が回ってきて、診療室に入りました。

「頭のどの辺が痛いですか」

「えーと、頭の中心あたりです」

「目の奥ですか、首のほうですか」

「脳だと思います」

「脳には痛覚がないので、外側のはずですが」

「はあ」

 それから、手や指先の運動機能、平衡感覚、短期記憶などの簡単なテストをたくさんさせられましたが、どれもあまり問題がない様子。

「念のため、X線CTを撮ってもらいますけれど、脳の血管には問題ないと思います」

「クモ膜下出血とかじゃ…」

「昨日の夜に痛くなって、今外来に来ているんなら大丈夫です。クモ膜下出血だったらすでに死んでいるか、意識不明です。脳梗塞は2~3時間の勝負ですけど、クモ膜下出血は数分が勝負。動脈の破裂ですからね、最初の一撃で救急車を呼ばないと助かりません」

 少し安心したところで、CTを撮りに別のフロアに行きます。初めての経験ですが、CTというのはずいぶんあっけないですね。5分もかかりませんでした。

 再び診療室に戻り、自分の脳の輪切りの画像を見ながら説明を受けます。この前食べた豚の脳を思い出しました(→リンク)。

「まったく問題ないですね。肩や首のこりから来る頭痛でしょう。一週間分の薬を出しておきます。人間ドックではどこか悪いところありましたか」

「コレステロールと中性脂肪がちょっと…」

「コレステロールというのはね、…」

 ここから先生の長い講釈が始まりました。日本人のコレステロールが増え始めたのは、戦後、食生活が欧米化してからであること。日本では、魚と炭水化物中心の食生活が続いたので、淘汰でそのような食生活に適した体質の人が残っているのに、牛乳だの肉だのを食べるようになったからいろんな問題が出てきた。昭和30年代の食生活から少し塩分を控えるくらいが、日本人の健康を維持するのにいちばんいいんだとか。

「ブルガリアかどこかで、ヨーグルトをたくさん食べて長寿の村があるからって、日本人がヨーグルトをたくさん食べるなんてバカげてますよ。あそこは農業に不向きで、かつ貴重な家畜をおいそれとつぶすわけにはいかないので、長い年月をかけて乳製品に依存した食生活の体系を作ってきたんです。大量の乳製品はあそこの人たちにはよくても、日本人にいいはずがないでしょう」

(ほかの患者さんにもこんな調子で話していたんだな。長くかかるはずだ)

「去年、亡くなった母がアルツハイマーと診断されたんですが、アルツハイマーって遺伝するんですか」

「遺伝は証明されていません。アルツハイマーの原因はよくわかっていませんが、高血圧とたばこがそれぞれ独立因子であることははっきりしています。たばこはぜひやめてください」

「お酒のほうは?」

「日本人は、体質からして…」

 ここからお酒についての講釈が始まり、これまた過度の飲酒を戒められました。

 結局、40分以上にわたって、先生のありがたい話を聞き、たいへん面白かったし参考になりました。病院を出る頃には、頭痛はかなり収まり、処方された薬を飲んで、翌日には普通に会社に行くことができました。


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