もう一つ,やっかいなのが「声調」です。
タイ語には5つの声調があります。中国語の四声よりも一つ多い。
声調は,声調記号によって表されます。これは,中国語のピンインに似ています。ピンインは中国語の音を表すために,アルファベットを利用して人為的に定められたものですから,ハングル以上に規則的で例外が少ない。四声は,4つの声調記号によって表されます。
五声のタイ語もやはり声調記号を使って表します。しかし,記号の種類は中国語と同じく4つ。もっとも,「記号がつかない場合は○声」と決めておけばよいので,4つでも不都合はない。
この4つの記号によって,タイ語の声調が一律に表されていたらどんなに楽なことか!
そうは問屋がおろさないのですね。
実は,タイの子音字は3つのグループがあります。すなわち,高子音,低子音,中子音です。
42個の子音文字はそのどれかに属します。そして,声調記号が指し示す声調は,子音が3つのグループのどこに属するかによって違ってくるのです!
それだけではない。声調は,その音節に含まれる母音が長母音か短母音か,その音節が開音節(母音で終わる)か閉音節(子音で終わる)かによっても違う!
タイ語初学者にとって,タイ語の単語を見てそれを正確に発音するのは,暗号解読に似た作業です。タイの子どもたちが文章をすらすらと音読しているのは驚異ですらあります。
さらに,「黙字」の問題もあります。
黙字とは,書いてあるけれども読まない文字。英語のknight(騎士/ナイト)の中の「k」や「gh」がそれに当たります。
タイ語には,この黙字が豊富に出てくる。大部分は,黙字の上に「黙字記号」というものをついているものの,それがないものもある。これは,特に外来語(サンスクリットやパーリ語由来の言葉や,英語から入った言葉)に多いようです。
このように,タイ文字は表音文字であり,相当に厳密な規則によって綴られています。英語のフォニックスのめちゃくちゃさに比べれば,はるかに体系的,規則的です。したがって,その規則をマスターすれば,与えられたタイ文字の羅列を正確な発音と声調で読むことができる。
問題は,その規則が恐ろしく複雑だということにあります。
質問に立ち戻ると
タイ文字の難しさの理由は何か。
①発音が難しいため複雑なのか。
②漢字や英語のように丸暗記しなければならないからか。
③無駄に難しいだけか。
①も,その理由の一つです。子音や母音の数は日本語や韓国語に比べてはるかに多く,声調もありますから。
②については,漢字や英語の難しさが,綴りと音の関係が恣意的(漢字)だったり,不規則(英語)だったりするためではなく,非常に規則的だがその規則が極めて複雑といえるでしょう。
③この難しさは,おそらくは「無駄に」ということはなく,長い文字文化の伝統の中で,さまざまな借用語を受け入れ,時代の経過による発音の変化も蒙ったうえで,それを「規則」の中に落としこもうとした努力の結果だと思われます。このような複雑な文字体系を維持しているのは,これを合理的なものに整理してしまうと,仏典をはじめとした過去の莫大な文化遺産が読めなくなってしまうからだと思います。
前に書いたことがありますが,ハングルの合理性,優秀性は,発明した学者たちが既存の多様な文字を研究した末,韓国語の音韻にもっとも適した体系を考え出すことができたからですが,もう一つの理由は「歴史の浅さ」です。
500年ほど前に作られたが,長らく使われることがなく,100年ほど前に表記法を再整理した。その際,蓄積された古典が少なかったため,遠慮なく現代語の音声と整合するように整えることができた。文字と音の間の関係が,ほぼ「一対一」を保っているのはそのせいでしょう。
以上が,「タイ文字はハングルに比べ100倍難しい」と書いた理由です。
欧米人にとって漢字は悪魔の文字だそうですが,タイ文字はさしずめ「可愛い悪魔」。ここまで読んできて,タイ文字は面白そうだ,ぜひ挑戦しようと思われた方は,相当なマゾヒストです。
それでも是非という方は,あわててタイ語学習書を買って挫折して投げ出す前に,こちらをごらんください。
タイ語ができタイ
今は更新停止中ですが,タイ文字と声調を少しずつ,無料で学べるようになっています。文字が42回,声調が24回コースです。一日一課ずつ進めば3カ月ちょっとです。
タイ語について勉強になるのでシリーズ全部をマジメに拝読していました
ですが…!
最後にたどり着いてクスッ(笑)
ブログの宣伝を〆に持ってくるのは目新しいアイディア
文字は最初からパス。
今では数字すらあやしいです(笑)。
ところでタイ映画『マッハ!弐』を昨日見て来ました。
アクション映画だけでなく、社会派映画や庶民の生活がわかるコメディ映画とかを
もっと見たいです。
韓国では,DVD再生機を購入時,サービスで,全世界のDVDを見られるように不法改造してくれます。
一つは,「トムヤムクン」というムエタイ映画。もう一つは「手紙」というラブストーリー,もう一つはファミリーもののコメディーでした。
「手紙」は,韓国の同名映画のリメイクだったので,字幕なしでもわかりやすかった。コメディーはさっぱりわかりませんでした。