

今手に入るのは文庫本。上下巻とあり、講談社漫画文庫から出版されているが、増版があまりされていないせいか、なかなか普段はお目にかからない文庫本である。先日『魔法使いサリー』を取り上げたブログで、『コメットさん』が横山先生最後の少女漫画と書いてしまったことを思い出したが、実はこの『クイーンフェニックス』こそが横山先生最後の少女漫画と言える面もある為、前から読みたいと気になっていたこの作品を、やはり一度読んでおかなくてはと思って今回ついに文庫本を購入した。

ストーリーだが、古代エジプト時代、カクラテスという僧侶と女王が禁断の恋におちてしまったために、神は激怒し、醜いバステトという少女に二人を殺すよう、命令する。バステトはカクラテスに一目惚れするものの、神の命令に従って、彼を女王ともども暗殺し、その代償として、永遠の美と生命を得る。一方、現代の東京に舞台は移り、カメラマンの加蔵春彦がある既婚女性、鳩子と恋に落ちるが、世界各地で発見される、鷲の頭の雲がどうしても気にかかり、妹の真理を一緒に、アフリカの奥地へ旅立つ。命からがら辿り着いたその国は、不思議な女人国であり、それを統治するフェニックスと呼ばれる女王、バステトが待っていた。カクラテスの生まれ変わりと信じる春彦を女王は迎え入れ、ともに永遠に生きることを願うが、鳩子もまた春彦を追いかけてこの国へやってくる。女王へ反乱を起こす男達、莫大な財産をねらう暗黒街の親分と、様々な思惑が入り乱れる中、女王の若さと美貌が失われていき、結末はいかに・・・と言った内容。


600ページ強の中編作品だが、現代日本と異国である女王の国を舞台に物語は繰り広げられ、かなりのスケール感もあって面白い秀作であった。終盤の反乱者たちの攻撃シーンなどはかなり迫力のあるスペクタクルになっているし、一方で、女王、晴彦の妹の真理、恋人の鳩子など、なかなか横山光輝らしいタッチの魅力的な美女も3人登場しており、横山作品の中でもかなり華のある作品となっているのも面白い。鳩子が、実はカクラテスと愛し合って暗殺された女王の生まれ変わりなのだと思うのだが、もう少しこの伏線を強く描いても面白かったのではないかと思う。



横山作品共通となる、流れるような見事なストーリーテリングとグイグイ引き込まれるテンポの良さはさすがの一言である。一気に上下巻を読破し、横山先生の新作でも読んでいるような、とても新鮮な気持ちで楽しむことが出来た。