松本零士が亡くなってしまい、松本零士に影響を与えた『わが青春のマリアンヌ』という映画を観たが、新たに追悼として、松本零士が1968年から1969年に『少年ブック』に連載していた『光速エスパー』という漫画を持っていたことを思い出して、久しぶりに引っ張り出してみた。『光速エスパー』は、松本零士のSF作品の原点とも言われている幻の作品として有名だ。
実はこの『光速エスパー』は、元々東芝のマスコットキャラクターとして1964年に誕生したのだが、その後漫画家あさのりじ氏により漫画として連載され、更には1967年には実写ドラマとして半年間放送され人気を博した。そして、1968年にドラマが再放送されたのを機に、松本零士版の漫画連載が開始された。
その後長い月日が流れ、1983年になってから、雑誌連載されていた松本零士版『光速エスパー』が全3巻の豪華復刻漫画として出版され、この時中学生だった僕はこの漫画を当時リアルタイムで購入していた。あれから40年も経ってしまったが、今でも大切に保管している。帯もキレイな状態で残っており、特に汚れや破れも無い。何とも新品に近い完璧な保存状態。我ながら物持ちがいい(笑)。
表紙用カラーイラストに加え、本編は2色刷りと白黒ページなどで構成されており、後半には『光速エスパーコレクション』と題して当時のイラストなども少し紹介されているので、今観てもなかなか貴重な本である。
今では知っている人も少ないこの『光速エスパー』という作品だが、実は松本零士のSF漫画のルーツとも言われており、後に主人公名である『古代すすむ』がそのまま『宇宙戦艦ヤマト』に流用されたり、主人公の境遇が『銀河鉄道999』の星野鉄郎のキャラクター原型の一つとなるなど、今振り返っても松本零士を語る上でとても重要な作品なのである。
松本零士の漫画は読んではいたものの、手塚治虫や横山光輝作品のようにコレクションしていたわけではない。しかし、何故かこの『光速エスパー』だけはその豪華な装丁にも惹かれて当時購入していたのが今となっては何とも懐かしい思い出である。
そして、もう一つ自分として印象深かったのは、僕が仕事上東芝とは大変縁が深いので、その意味ではこの『光速エスパー』が東芝のマスコットキャラであったということも大変感慨深いし、勝手に不思議なご縁を感じてしまった。松本零士追悼の意味も込めて、また『光速エスパー』をじっくり読み直してみたいと思う。