僕の大好きな巨匠漫画家、横山光輝の作品の中で、異色のSF作品がある。1965年から1967年にかけて、少年ブックで連載された『宇宙船レッドシャーク』だ。小学館クリエイティブから限定BOXが発売されていたが、BOXシリーズの中で何故かこの『宇宙船レッドシャーク』だけまだ購入していなかったので、ついに購入した。
化粧BOXの中は全3巻にまとめられており、また別冊付録の表紙絵集が付録として付いている豪華仕様。
『宇宙船レッドシャーク』は、土星の衛星タイタンを調査に行くミッションを与えられたメンバーが、宇宙船レッドシャーク号に乗って土星を目指す、少年宇宙飛行士の冒険を描いた作品だが、物語は下記の通り。
- 宇宙学校を出たばかりの若者、一色健二は、宇宙軍101基地で、パイロットになるためのテストに合格した。初飛行は疫病神ジャックことジャック・ローレイ大尉率いるレッドシャーク号で、調査隊を土星の衛星タイタンに送り届けるという任務だった。
- 無事タイタンに到着し調査隊をおろしたのだが、タイタンに着陸した面々は、手伝いのために同行したジャック船長も含め全員が伝染病にかかってしまう。誰かがこの事実を地球に伝えなければならない。唯一船内に残って罹患を免れた健二は、今度は自らが疫病神の汚名を着ることを覚悟してただ一人、地球へと旅立つ・・・
ガガーリンが人類初の宇宙飛行士としてヴォストークで地球の周りを回ったのが1961年、そしてアポロ11号が初めて人類を月に送り込んだのが、1969年。そんな米ソの宇宙開発競争の時代に描かれたのが『宇宙船レッドシャーク』という作品であり、まさに時代を敏感に取り入れたテーマを、横山光輝が彼ならではの見事なストーリーテリングで描いた作品だ。
この作品に先駆けて、同じ宇宙を舞台にした1961年の作品『宇宙警備隊』や、1960年の『少年ロケット部隊』、更には舞台が宇宙ではなく、海ではあるが、潜水艇で海の調査に乗り出す『シードラゴン』など、比較的似た作品を多く手掛けており、こういったSFジャンルは、横山光輝の好きなジャンルでもあったと思うが、時代のトレンドにも乗ったテーマであったのだ。
『宇宙船レッドシャーク』には、「疫病神ジャックの巻」という疫病をテーマにした物語が収録されていたり、パルタゴ星から帰還した宇宙船が持ち込んだ、アメーバ状生物による伝染病を治すために、薬となる植物を、パルタゴ星に採取に向かう「宇宙からの帰還者の巻」など、当時から感染病を取り入れているのも凄い。他には行方不明になった宇宙船の秘密を探るために、癖のある部下たちを率いて調査に向かう健二の活躍を描く「ガニメデの巻」や、マロー星に燃料ロケットを打ち込むために、マグマ衛星に向かったレッドシャークの乗組員が死刑囚と入れ替わってしまっていた「マロー星探検隊」。ハイモス星で起こったサイボーグの反乱を調査に向かう「反乱の巻」など、宇宙冒険をテーマに壮大なスケールで描いている。
この限定BOXに加え、先日『宇宙船レッドシャーク』のソノシートをゲットした。これもかなり年季の入ったものだが、かなりきれいで状態の良いものを入手することが出来た。当時のソノシートはちょっとした絵本のようになっており、集めるのが結構楽しい。とても貴重なものをゲットできたのはラッキーである。
今月はすっかり『レッドシャーク』で盛り上がってしまったが、やっぱり横山光輝の漫画作品には、特別な魅力が詰まっているのである。