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バットマンを超越した「ダークナイト」

バットマンシリーズの最新作、「ダークナイト」を見た。上映時間が2時間半もあり、正直少し長いと感じたが、でもその内容は予想以上に素晴らしかった。元々バットマンが好きな僕は今回も楽しみにしていたが、何とこの最新作、アメリカでは興行収入が現時点で$480Mとなっており、このまま$500Mを超えることは確実と言われており、ついにはあの米国映画興行収入史上最高の「タイタニック」の$600Mも射程距離内にある状況で、タイタニックを抜くことが出来るかどうかに注目が集まっている。

僕もバットマンファンであり、特に前作「バットマンビギンズ」から新たな展開が始まり、クリストファー・ノーラン監督を新たに迎えて内容も一段と濃くなったバットマンの新作とあって、今回も楽しみにしていたのだが、正直、ここまでの大ヒットになるとは全く予想していなかったし、なんでここまで全米でヒットしているのか、その理由を知りたかった。また、僕の最も好きな映画である「スターウォーズ」の持つ歴代2位の記録$460Mを超えられてしまったこともあって、実に複雑な心境でもある。

「ダークナイト」を見た感想としてまず圧唐ウれたのが、これはもはや”アメコミヒーローもの”を完全に超越した映画だ、ということ。バットマンはスーパーマンやスパイダーマンと異なり、基本的に超能力は持っておらず、マスクの下はブルース・ウェインという普通の人間だ。しかし、大富豪である為、バットマン専用の戦闘服やバットモービルなどの装甲車等、ハイテクを駆使して敵をやっつけるわけだ。その背景の中で、ゴッサムシティーを悪者から守るには、やはり市民の手で守るべきであるという思いと、ヒーローとして祭られているバットマンも、所詮悪役と同じ”フリーク”と紙一重であるという思いの狭間で苦悩する。ここでのバットマンは、世界を武力で守ろうとする”アメリカ”にも通じるテーマで、イラクにしてもアメリカが武力で守るのでは無く、市民/国民の手で自ら国を守り、市民の中から武力無しで悪と戦える”真のヒーロー”の登場することが必要であるという強いメッセージが感じ取れるのだ。その意味で、単にこの映画はバットマンが主役のアクション映画では無く、アメリカ国民が問題認識として根底に持っているテーマに訴えかける作品でも有り、大統領選挙とも合間って、実にある意味”タイムリー”な映画である。

今回はバットマンシリーズでもお馴染みで、悪役の中で最も人気のある”ジョーカー”が登場している点で、ティム・バートンによる最初のバットマン映画のいわばリメイク版だが、今回のジョーカーは一味違う。

ティム・バートンの「バットマン」もダークで独特な魅力を放っていたが、コミカルなシーンなどもあってかなり”遊び”の部分もあった。しかし、今回のジョーカーはかなり狂気に満ちた変人ぶりが前面に出ており、ちょうど「羊たちの沈黙」や「セブン」にも通じる異常者として登場する点で、今回は暗いだけで無く、かなりシリアスだ。

ジョーカー役に抜擢されたのは、「ブロークバックマウンテン」でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ一躍注目されたヒース・レジャーだ。残念なことに、彼はこの映画を撮り終えた後に、睡眠薬中毒によりこの世を去った。ダークナイトは彼の遺作になってしまったのだ。だからという分けでは無いが、その死を悟ったかのような殺気だった怪演は凄いインパクトで、映画関係者でも高い評価となっている(来年のアカデミー賞にノミネートされる可能性大)。あの初代ジョーカーを演じた名優、ジャック・ニコルソンを超えるとも言われる演技を見せた。松田優作の遺作、「ブラックレイン」もそうであったように、俳優は死を迎える前に、その命の全てをつぎ込んだかのような魂の演技力を見せるものである。ヒースの遺作となったことも、この映画の大ヒットに貢献しているものと思われる。

「ダークナイト」は万人うけする作品では無いが、内容の濃い作品であり、ヒーローものの枠を超えた作品としてバットマン映画の新たな金字塔を打ち立てたと言っても過言では無いと思う。ぜひ一度ご覧頂きたい。
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