まずは1963年の映画、『美しい暦』。これは若き吉永小百合、浜田光夫の主演作だが、信州松本を舞台に、芦川いづみが美しい高校教師役で、吉永小百合が生徒役。男性教師には若き日の長門裕之が扮しているのも興味深い。

正直かなり退屈な青春学園ものストーリーだが、溜息が出るほどの芦川いづみの美しさだけがひと際目立っており、その為だけに観賞する価値のある作品だ。もちろん、若い吉永小百合を楽しむにも良い作品かもしれない。


次に観賞したのが、1965年に主演した『結婚相談』。カラー作品が主流となっていた時期だが、この作品は何故かモノクロ作品。これが、またシュールな空気感をもたらしている。


芦川いづみは30歳OLの設定。今じゃ30歳独身女性などたくさんいるし、三十路で未婚の女性は普通に多いが、当時は30歳だとかなり"行き遅れ"だったらしく、この映画の芦川いづみは"年増女"な設定というわけだ。しかし、映画に登場する芦川いづみはとても美しく、行き遅れなんてありえない感じなのだが、時代の違いを思い知らされる。

友人の結婚式の帰りに、自分が行き遅れていることに改めて気落ちした芦川いづみ演じる女性主人公は、結婚相談所に立ち寄る。しかし、その結婚相談所の女将はかなりのワルで、結婚相談所は売春斡旋屋と化していた。芦川いづみは次々に紹介されて行く男性と関係を結び、次第にコールガールに転落して行くと言う、何とも悲惨な物語。酷いストーリーもさる事ながら、全体的な展開も正直イマイチで、決して良い映画とは思えなかった。

それまで清純派路線で売っていた芦川いづみが、いきなりこんな汚れ役とはかなりショッキングだったが、唯一この映画の見所としては、三十路の芦川いづみの美しさ、そしてあの清純な芦川いづみが転落して苦悩する姿が、サディスティックな妄想を掻き立てる所だろう。他の作品には無い芦川いづみの新たな一面を見たような気になるのだ。その意味では、ファンに取っては、見たいような、見たく無いような。。。でも、かなり貴重な芦川いづみ作品と言えるだろう。この作品には、芦川いづみの貴重な入浴シーンもあるが、さほどエロティックな設定では無いし、ヤバイストーリーに比べ、性的に過激なシーンはそう多く無いのがせめての救いだ。

芦川いづみは、この3年後となる1968年に藤竜也と結婚し、完全に女優業を引退してしまうが、結果的に『結婚相談』は芦川いづみのキャリア晩年の作品になってしまった。やはり、全盛期の元気な芦川いづみ作品がもっと見たいものだ。