

そして今年に入ってから、第三楽章として横山光輝の初期作品の中でも少女漫画編として、『四枚の女王(クイーン)』、『母さんふたり』が発売されたので、即購入した。今後第3集として『金色のキューピッド』という作品も発売される予定だ。この少女漫画3作品も同じく昭和30年代に発表されたもので、どれもマニアが喜ぶ彼の初期傑作である。横山光輝の少女漫画と言えば、やはり『魔法使いサリー』や『コメットさん』があまりにも有名だが、僕が好きな作品に、『おてんば天使』という名作がある。これは本当に横山作品の中でも名作の部類に入る珠玉の作品で、善意とか思いやりとか大切なものが全編にあふれていて、何度読んでも感動の涙でいっぱいになる作品。特に主人公のエミちゃんの生き生きと愛らしい姿が心に響く。そして今回復刻された『母さんふたり』は『おてんば天使』に先駆けて昭和32年から33年にかけて当時の雑誌『少女』に連載された作品であり、戦後の混乱期に生みの母の存在を知ってしまった少女の心の葛藤を描いたストーリーは、健気に明るく生きる少女を主人公にした傑作となっている。


この横山光輝初期作品集は、講談社から各1,700円で発売されているのだが、段ボールケースに入ったパッケージになっており、なかなか味のある企画である。そして初期作品を忠実に再現した復刻盤として、ファンには嬉しい仕様である。今回購入してどれも読んでみたのだが、やはり横山光輝の作品は、どれも共通してテンモフ良いストーリー展開と、明快な物語構成が大変に読みやすく、今読んでもかえって新鮮な印象を受ける。また昭和30年代に描かれた作品とは思えないほど、今読んでもあまり違和感が無いのも驚きである。
またこの講談社からの初期作品集には属さないが、同じく横山光輝の初期傑作である『くれない頭巾』という時代劇作品が復刻されているので、こちらも先日購入した。横山光輝の時代劇漫画としては、『伊賀の影丸』、そして『仮面の忍者赤影』があまりにも有名だが、この『くれない頭巾』はその原点的な作品の一つでも有り、改めて時代劇漫画の先駆者的な横山光輝の華麗なるストーリーテリング能力には脱帽してしまった。

今後も初期作品のリリースが予定されているが、どれも待ち遠しい限りである。