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日本のホンモンジゴケ発祥の地へ(「お寺 de コケさんぽ in 池上」その1)

2012-06-07 14:30:33 | 東京コケスポット

▲本妙院の門前(東京都大田区池上)


先週の6月2日(土)、先日から告知していた
「お寺 de コケさんぽ in 池上」が無事に開催された。

お天気が心配だったものの、
当日はコケ見にぴったりな曇り時々晴れ。

しかも前日に夕立が降ってくれたおかげで、
コケ好きとしては理想的なコケ見日和となった。


今回のコケさんぽの参加人数は
予想を大きく上回る40人近く。

過去の経験からしてコケの観察会といえば
10~15人くらいで行うのが通常である。

なので、こんなに大勢の方がコケに興味を持ち、
集まってくれることがとても嬉しかった半面、
40人という大人数をどう案内すれば・・・と、
正直、最初はかなりとまどった。


しかし、今回ご協力いただいた池上にある日蓮宗のお寺「本妙院」の住職・早水さんが、
かなりのコケ好きということで(そもそもこのイベント企画も、だからこそ実現したわけだ)、
「二人で手分けして案内しましょう」ということになり、打ち合わせ&下見を何回も行い、
できる限りの準備をして、当日を迎えることになった。



▲早水住職のはからいで、こんな粋な看板が当日は皆さんをお出迎え。



今回の観察場所は、「池上本門寺」の敷地内にある庭園と
早水さんが住職をつとめる「本妙院」の庭の2か所。


▲池上本門寺


池上本門寺といえば、そう、コケ好きの方ならご存じ、
「ホンモンジゴケ」が日本で最初に見つかった場所である。

およそ100年前にこのお寺の境内に生えていたところを発見され、
銅ぶき屋根の下など銅を含む水が滴る場所に生えることから「銅ゴケ」と呼ばれている。

のちの研究で欧米に生える銅ゴケと同じ種であることがわかり、
図鑑『日本の野生植物 コケ』(平凡社刊)によると、
ホンモンジゴケの分布は日本や北・南米はもちろん、
東南アジア、インド、ヒマラヤと広範囲にわたるという。


そんなわけで、まず最初にコケ好きとしては絶対見逃せない、
日本のホンモンジゴケ発祥の地へ向かうことに。

手持ちのコケの本によると、

「(ホンモンジゴケは)今でも五重塔の基部などにたくさん生えている」

とあったので、五重塔を訪れることにする。



▲本堂をお参りした後、五重塔に向かいます。大人数でなんだか大人の遠足のよう。




▲歩くこと数分、目の前に立派な五重塔が現れた!


たしかに本にある通り、五重塔の基部を見ると、
石段の壁面を広範囲にホンモンジゴケが生えている。


・・・が、しかし!!!


そのメモリアルなホンモンジゴケの多くが・・・枯れかけている。

茶色くなっていたり、黒っぽくなっていたりと
もはや命からがら生きていると言わんばかりの風前のともしび。

中には壁面にくっつく力もなくなってか
剥がれ落ちて、無残に転がっている群落もある。



▲五重塔の足元にある石段に生えていたホンモンジゴケ。

↑これ↑は、私が同情のあまり(もしくはこの厳しい現実が受け入れられず!?)、
壁面に生えていた中で最も元気な群落を撮影したもの。
実はこの周りには〝風前のともしびゴケ〟たちがたくさん生えていた。

いま思えばそんなザンネンな彼らも記録のために
しっかり撮っておくべきだったと、ちょっと後悔。

現状をお知りになりたい方は、ぜひ現地へ行ってみてほしい。



▲メモリアル・ホンモンジゴケの変わり果てた姿を前に、参加者の皆さんもため息をつく人、言葉を失う人多数。
 たしかに今日のコケとのファースコンタクトがこれでは仕方あるまい。


早水さんいわく、この五重塔はなんでも
十数年前に一度改修工事を行ったとのこと。

コケは微妙な環境の変化も生育に影響する
大変ナイーブな生き物である。

いまでも五重塔の上層部分には銅ぶき屋根が使われているそうなのだが、
おそらくその改修工事が彼らにとっては致命傷だったのだろう。


10分ほどの短い観察ののち、次は同寺の本堂の裏手にある庭園「松濤園」へ向かう。