海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

琉球新報掲載/〈 季刊 目取真俊 〉22回

2020-08-06 23:54:43 | 米軍・自衛隊・基地問題

 以下の文章は、7月28日付琉球新報に〈新型コロナウイルス拡大/問われる国、県の対策/検査遅れ、米軍感染多発〉という見出しで掲載されたものである。

 米軍関係者が新型コロナウイルスに大規模感染し、県民に衝撃と不安を与えている。キャンプ・ハンセンと普天間基地では集団感染が発生し、感染者の数は7月27日の段階で236人に達している。県民の感染者も日ごとに増えて210人となり、合計すると県内の感染者は446人となっている。

 米軍によれば、感染後に基地の外で行動した兵士も多数いて、多様な形で県民との接触があったと思われる。飲食店をはじめ、商業施設で米軍関係者と隣り合わせになるのは、沖縄ではありふれたことだ。恋人や友人として付き合うのも珍しいことではない。店に来て同席した客や個人的に付き合っている人まで、接触を追跡できるだろうか。

 今年の3月3日付本紙に〈軽症者、感染を拡大か/新型肺炎 専門家、若者に注意喚起〉という見出しの記事が載っている。一部を引用する。

〈新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)が拡大している問題で、政府の専門家会議は2日、「軽症者が気付かないうちに、感染拡大に重要な役割を果たしてしまっている」との見解を公表した。特に重症化リスクの低い若者から広がっている可能性があるとみられており、全国の10~30代に対し、人が集まる風通しが悪い場所に行かないよう呼び掛けた〉。

 新型コロナウイルスの特徴として、症状が出ない人や軽症の人がかなりいること、症状が出ない若者が活発に動いて感染を広げている可能性があることが、この頃から指摘されていた。

 その後、感染拡大とともに研究が進み、新型コロナウイルスに関する知見が伝わるなかで、症状が出ない不顕性感染者の問題も知られるようになった。空港で水際対策をとるといっても、症状が出ず発熱しない人は検温をすり抜けてしまう。本人に自覚がないから、マスクを着けずに動き回る人もいて、感染を広げてしまう。その危険性はかねてから指摘されていた。

 屈強な若者の集団である米海兵隊の中にも、症状が出ないまま沖縄に入り、基地の外で行動している兵士がいるのではないか。そう不安に感じていた沖縄人は多かったはずだ。米軍関係者から感染が多発している、との報道に接したときも、その数の多さに衝撃を受けつつ、ああ、やっぱり、と思った人が多いのではないか。

 世界最大の感染国である米国から、若い兵士が沖縄に大勢移動してくるのだから、その中に不顕性感染者が含まれていることは、容易に予想できるはずだった。入国する米軍関係者全員にPCR検査を行い、陽性者を隔離するのは、当然とるべき措置だったのであり、それを怠った日米両政府と米軍の責任は大きい。

 7月22日付本紙報道によれば、〈米空軍嘉手納基地の第18航空団は14日から、海外から同基地に着いた全員に対し新型コロナウイルスのPCR検査を課している〉という。やろうと思えばできたのだ。

 河野防衛大臣は、米軍関係者の感染が多発してから、PCR検査の実施を打ち出しているが、まだ実現していない。余りにも対応が遅すぎる。いま米軍関係者から県民に感染が広がっているのは人災である。感染した県民が悪いのではない。米軍にあるべき感染症対策を求めなかった安倍政権にこそ問題と責任がある。

 日本本土の安全のために沖縄に米軍基地を集中させ、沖縄に犠牲を強要する構図が、今回の新型コロナウイルスの感染において、最悪の形で現出しようとしている。感染予防を怠って集団でパーティーを開き、結果として沖縄のお年寄りや子どもたちにまで感染を広げようとしている米軍のために、辺野古に新しい基地を造ってやろうというのか。それこそ愚の骨頂ではないか。

 2月から5月にかけての第1波といわれる感染拡大が、一時的に収まりかけたのは、「緊急事態宣言」が発せられて市民が自粛生活に入り、公共施設や商業施設の多くが閉鎖されて、市民の移動と接触が大幅に縮小したからだ。

 しかし、それは経済的に大きな打撃をもたらした。その手法を再びとることはできず、経済活動と感染防止を同時に進めなければいけない、と言われる。だが、具体的にそれをどのようにやるのか。

 マスクの着用や手洗い、うがい、消毒、三密を避けるなど、市民の大半は自分ができる努力をやっていると思う。問われているのは、個人の努力を超えた国や県の政策であり、感染症対策である。それが見えない、というより、安倍政権のやっていることが、逆に感染を広げているように見えるから、市民は不安にかられるのだ。

 全国的には夏場に新型コロナウイルスの感染が沈静化する。その間に医療態勢を整え、秋冬の本格的な第二波に備える必要がある、という専門家の意見を目にしてきた。

 だが、今起こっているのは、第一波が収束しないまま再燃し、本格的な第二波の前に深刻な事態となりつつある、ということではないか。沖縄島北部や離島で集団感染が発生すれば、その地域は医療崩壊に陥るのではないか。その不安に国や県はどう対処するのか。

 


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