海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

書評/石井暁著『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)

2020-05-04 23:59:21 | 読書/書評
 以下の書評は2020年3月10日発行「監視社会ならん!通信」29号に掲載されたものです。  2013年11月27日、共同通信社会部から1本の記事が配信された。翌日、同社加盟31紙がその記事を1面トップで掲載した。記事の内容は、陸上自衛隊内に総理大臣や防衛大臣も知らない秘密の情報部隊があり、海外で情報収集活動を行っている、というものだった。  自衛隊という軍事組織が、文民統制を否定し、海外 . . . 本文を読む

紹介:岡本有佳・金富子責任編集『〈平和の少女像〉はなぜ座り続けるのか』(世織書房)

2019-08-13 12:23:20 | 読書/書評
 岡本有佳・金富子責任編集『〈平和の少女像〉はなぜ座り続けるのか』(世織書房)定価800円+税  以前、世織書房から送っていただいた本なのだが、今こそ多くの人に読まれてほしい1冊だ。 http://fightforjustice.info/?services=shojo_naze http://fightforjustice.info/?page_id=4114&fbclid=IwAR3 . . . 本文を読む

高度約550メートル

2019-08-10 13:23:30 | 読書/書評
 アニー・ジェイコブセン著/加藤万里子訳『ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA』(太田出版)に次の記述がある。 〈第二次世界大戦中、ひとり娘がまだ幼かったころ、フォン・ノイマンは日本の原爆投下地域の決定に関わった。しかし、それよりももっと驚くべきことは、民間人の殺傷率を最大限に高めるために、彼が広島と長崎上空で原爆を爆発させる位置を正確に計算したことだろう。高度約五五〇メート . . . 本文を読む

『沖縄と国家』」

2017-08-05 22:36:01 | 読書/書評
   辺見庸氏との対談が1冊にまとめられた。8月10日に発売される。ご一読を。   . . . 本文を読む

与並岳生著『沖縄記者物語2 キセンバル』(新星出版)

2013-10-30 23:04:13 | 読書/書評
 1970年代半ば、県道104号線を封鎖して行われる米軍の実弾演習を、沖縄の労働者・学生は着弾地の山中に潜入し、体を張って演習を中止に追い込んだ。喜瀬武原(キセンバル)闘争と呼ばれるその闘いは、日米安保体制に風穴を開けたものとして、戦後沖縄の反戦運動の歴史においても特筆すべきものだ。しかし、その事実が今ほとんど語られず、伝えられていない。  著者の与並氏は当時、琉球新報の記者として、また沖縄 . . . 本文を読む

大田昌秀・大江健三郎編集『沖縄経験』1~5号

2012-05-24 16:02:35 | 読書/書評
 5・15を前後して、だいぶ前に古本屋で買ったまま実家の本棚で寝ていた『沖縄経験』1~5号を読んだ。大田昌秀・大江健三郎両氏の編集によるもので、1971年夏から1973年秋にかけて発行された季刊誌である(5号は発行がかなり遅れている)。沖縄の施政権返還直前から直後にかけて、政治、経済、米軍、自衛隊、沖縄戦、文化、移民、民俗、教育、福祉など、多岐にわたって論じられている。1970年代初頭の沖縄の状況 . . . 本文を読む

書評:比嘉康文著『我が身は炎となりて』(新星出版)

2011-12-13 16:48:20 | 読書/書評
 1967年11月11日午後5時45分頃、首相官邸正門前で一人の男性がガソリンをかぶり、焼身自殺をはかった。火だるまとなった男性は、虎ノ門病院に急患移送されたが、翌日の午後3時55分、息を引き取った。男性の名は由比忠之進、73歳の弁理士でエスペランチストであった。死の直前にエスペラント仲間に送った手紙には、次のように記されていた。  今晩の会合で古切手集めの件の外の原稿を総て拒否したのを不思 . . . 本文を読む

大石又七著『ビキニ事件の真実』(みすず書房)

2011-07-06 23:34:15 | 読書/書評
 7月3日午後10時からETV特集「大江健三郎 大石又七 核をめぐる対話」が放送された。東京・夢の島に展示されている第五福竜丸の船上で、広島・長崎・ビキニ環礁における被爆※体験や福島の原発事故、戦後日本の原子力への対応などについて、両氏が自らの体験に即しつつ語り合うという内容だった。 大石氏は1954年3月1日に第五福竜丸に乗船中、マーシャル諸島・ビキニ環礁において、米国が行った水爆実験による . . . 本文を読む

樋口健二氏の2冊の写真集

2011-04-10 08:59:06 | 読書/書評
 『隠された被曝労働~日本の原発労働者~』というドキュメンタリー作品を3月25日に紹介した。同作品でレポーターとして被曝労働の実態を追う写真家・樋口健二氏が、1973年から1995年にかけて撮影した写真集である。冒頭部の「崩れゆく風景」という章で樋口氏はこう記している。〈灰色の原発ドームは美しい自然とは裏腹である。それは決って列島の秘境の地である過疎化が激しい海岸線が選ばれて建設される。地元住民に . . . 本文を読む
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書評:知念ウシ著『ウシがゆく』(沖縄タイムス社)

2010-11-08 22:37:28 | 読書/書評
【2010年11月7日付沖縄タイムス掲載】  本書は沖縄タイムスに連載された「ウシがゆく」を中心に、二〇〇二年以降に書かれた評論やエッセーに新たな書き下ろしを加え、まとめられたものである。「植民地主義を探検し、私を探す旅」という副題が示すように本書には、沖縄を内と外から縛りつけている植民地主義の実態を見つめ、気づき、考え、克服しようとする著者の姿勢が貫かれている。  インドで出会った植民地主義研 . . . 本文を読む
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斎藤貴男著『消費税のカラクリ』を読む

2010-08-04 15:47:48 | 読書/書評
 斎藤貴男氏の近刊を紹介したい。  『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)は7月20日に出たばかり。菅直人首相の消費税をめぐる発言が有権者の反発を呼び、参議院選挙での民主党の惨敗につながったのは記憶に新しいが、野党・自民党も消費税増税を狙っていることでは一緒であり、これから具体的な動きが進んでいくのは間違いない。  その消費税が持つ特質や問題点について、逆進性や買い控えによる消費の低迷などの指摘は . . . 本文を読む

書評:田仲康博著『風景の裂け目 沖縄、占領の今』

2010-06-01 15:30:42 | 読書/書評
 2010年5月29日付沖縄タイムスの書評欄に掲載されたものです。  1995年6月、著者は17年の米国生活を終えて沖縄に戻る。そこで著者が目にしたのは、80年代から90年代前半にかけて、バブル経済や西銘保守県政、音楽、芸能、サブカルチャーでの沖縄ブームなどを経て、大きな変容を遂げた沖縄の風景だった。  17年の空白がもたらした沖縄との衝撃的な再会。〈七〇年代の身体が九〇年代という時空間に突然投 . . . 本文を読む

菅家利和/佐藤博史『訊問の罠』を読む

2009-12-30 19:25:26 | 読書/書評
 大学生時代に帝銀事件の死刑囚・平沢貞通氏の無実を訴え、再審請求を続けていた森川哲朗氏の講演を聴いたことがある。重病に冒され余命は限られていると聞いていたが、平沢氏の冤罪を晴らし、獄中から救い出そうとする執念に打たれた。その後、森川氏の『獄中一万日 追跡帝銀事件』(図書出版社)も読み、帝銀事件の背後にある闇の深さを教えられ、冤罪や権力犯罪に関心を持つきっかけの一つとなった。  今年、足利事件が冤罪 . . . 本文を読む
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書評:サイード・アブデルワーヘド『ガザ通信』

2009-12-27 13:48:30 | 読書/書評
〈日時:2008/12/27(土)12:51  件名:攻撃 攻撃! 何十もの高層ビルが爆撃された。死亡者は120人以上、負傷者は何百人にものぼる。標的になったビルのうち、ひとつは我が家から100メートルのところ、別の10階建てのビルは別方向に120メートルのところにある。 子どもたちも妻も私も今のところ無事だ。 恐ろしい光景だ〉(10ページ)。  ちょうど1年前にパレスチナのガザから発せられた . . . 本文を読む

辺見庸『私とマリオ・ジャコメッリ』

2009-12-23 18:27:14 | 読書/書評
 今年読んだ本の中で強く印象に残った一冊。  マリオ・ジャコメッリのことはこの本で初めて知ったのだが、書店で辺見氏の名を目にして本書を手にしたとき、表紙の写真に目が釘付けになった。釘付けという表現は手垢にまみれたものだが、この写真についていえば、視線が中央の少年に一気に引き寄せられ、鋭く打ちつけられるような実感が伴う。その一点から生身の存在とは思えない黒服の女性たちや薄暗くぼんやりとした石畳の町の . . . 本文を読む
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