俺もお前も人生の敗北者

とりあえず否定から入るネガティブ思考で常にB級嗜好なATOPのブログ

天声人語

2008-04-29 22:37:55 | 社会問題
天声人語
2008年04月26日(土曜日)付

 48年前、明治大学の山岳部が白馬(はくば)で入部歓迎の合宿をした。数十名の新入りで最初にバテたのは、小柄な農学部生だった。よく転がるのでドングリのあだ名がつく。後に、世界で初めて五大陸の最高峰すべてに登頂する植村直己である▼偉人といえども、宵から輝いた星ばかりではない。卒業後、山登りの資金を作りに渡米した植村は心で叫ぶ。「仕事を見つけるまではキュウリでも食べて金を節約するぞ!」(『青春を山に賭けて』文春文庫)。巻き返しの力は、楽観と負けず嫌いらしい▼社会に出て間もなくひと月、しかられ続きの新人もいよう。落ち込むことはない。東北楽天の野村克也監督が、毎日新聞で「どうでもいいやつはしからない」と語っている。これは主力選手との接し方だが、若手へのぼやきも期待の表れだろう▼駆け出し記者の頃、公衆電話でひとしきり怒鳴られたことがある。理由は忘れた。受話器を離して聞き流していたら、背で「なに怒られとるん」と声がする。下校の小学生が心配そうに見上げていた▼いま思えば、新社会人に「どうでもいいやつ」がいるはずもない。戦力と見込まれて飛び込んだ職場である。失敗が許されるうちに遥(はる)か千里の道を描き、遠慮なく大股の一歩を踏み出せばいい▼さて、みじめな白馬合宿から戻ったドングリ植村。一念発起し、毎朝6時起床で9キロの山道を走り始める。道は世界的な冒険家へと続いていた。黄金週間に休める人ばかりではなかろうが、キュウリなどかじりつつ、五大陸を制する順番でも練ってほしい。

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