俺もお前も人生の敗北者

とりあえず否定から入るネガティブ思考で常にB級嗜好なATOPのブログ

湯を沸かすほどの熱い愛

2017-02-12 14:44:58 | レビュー
湯を沸かすほどの熱い愛 (文春文庫 な 74-1)湯を沸かすほどの熱い愛 (文春文庫 な 74-1)

(※リンクは文庫)

『湯を沸かすほどの熱い愛』

先日、飛行機の中で『湯を沸かすほどの熱い愛』という映画を見ました。

2016年、邦画界は実に賑わっており『シン・ゴジラ』『君の名は。』『この世界の片隅に』の3作が圧倒的な人気でした。

私も『シン・ゴジラ』『君の名は。』は映画館で観ました。

『君の名は。』は期待していたほどでもなく(周りの評判からの期待というより、新海作品としての期待があって少し裏切られたように感じました)、

『シン・ゴジラ』はとにかくすごかった。

『シン・ゴジラ』は時間をおいてもう一度見たいと思わせる作品だったのは間違いないです。

事実、私は映画館で2回見ました。

では、ほかの邦画はどうだったのか?

「2016年 第90回 キネマ旬報 日本映画ベスト・テン」を見てみると…

1位 この世界の片隅に
2位 シン・ゴジラ
3位 淵に立つ
4位 永い言い訳
5位 リップヴァンウィンクルの花嫁
6位 湯を沸かすほどの熱い愛
7位 クリーピー 偽りの隣人
8位 オーバー・フェンス
10位 怒り

となっており、今回、私が見た『湯を沸かすほどの熱い愛』は第6位にランクインしています。

あらすじは…

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余命2ヶ月。
私には死ぬまでにするべきことがある。

銭湯「 幸の湯」を営む幸野家。
しかし、父が1年前にふらっと 出奔し銭湯は休業状態。母・双葉は、持ち前の明るさと強さで、パートをしながら、娘を育てていた。
そんなある日、突然、「余命わずか」という宣告を受ける。その日から彼女は、「絶対にやっておくべきこと」を決め、実行していく。

○家出した夫を連れ帰り家業の銭湯を再開させる 
○気が優しすぎる娘を独り立ちさせる 
○娘をある人に会わせる

その母の行動は、家族からすべての秘密を取り払うことになり、彼らはぶつかり合いながらもより強い絆で結びついていく。
そして家族は、究極の愛を込めて母を 葬る(おくる)ことを決意する。

(公式ホームページより)
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ストーリーは確かに以上の通りです。

これを読むと単純に「母親が病魔に侵されて死ぬ」話だと思ってしまうのですが、全然違います。

この映画に登場する人物は基本的に主人公・双葉(演:宮沢りえ)の家族です。

そして、この家族と主人公・双葉の間には「重大な秘密」がそれぞれに存在します。

これが主人公・双葉が「自分の死期」を悟ったことによって、双葉の手で、突然に、そして、残酷にも突き付けられます。

さらに、主人公・双葉自身にも「病魔」以外にも「秘密」があり、それを観客の我々が知った時、主人公・双葉の人間的強さと愛に圧倒されます。

個人的な感想を言うと、常に唇をかむような状態が続きます。

双葉の行動で明かされる、家族に隠された「秘密」の重さに、登場人物たちは絶望してしまいそうになります。

「え、うそ」「まじか」「うわっ」って、見ている私にも登場人物たちの絶望が伝わって、打ちのめされてしまいます。

でも、主人公・双葉は絶対に逃げません。

双葉の行動にはひとつひとつ大切な意味が込められており、その意味に気づかされるたびに、双葉の「愛」に気づきます。

絶望の沼にどっぷりつかっていってしまいそうだったのに、いつのまにか光射す「希望」の入口に立っている。

むしろ、見終わった後は、さっぱりとした気持ちになります。

宮沢りえの演技もいいのだけど、なによりこの映画で力を発揮するのは、双葉の娘役です。

この娘たちの演技が双葉の「愛」を際立たせていると思います。

この映画はぜひ一度は見てもいいのではないかと思わせるものがありました。

でも、これが感動映画かっていうとそうじゃないと思うんですよね。

こんな悲惨な家族関係というか、状況って現実じゃあり得ない訳ですが、

その悲惨さに感情移入して、泣いて、感動したーーーーー!って感想にはなりませんでした。

主人公の芯の強さに惚れるというか、、そういう類の話だと思います。

全くの余談ではありますが、同じ飛行機の中で見た橋本愛主演の『バースデーカード』は、同じ母親が死ぬ話でも、2度と見るかと思わせるほどの駄作でした。

旅の良さ3-オルタナティブ

2014-04-30 23:08:55 | レビュー

さて過去2回にわたり「旅の良さ」について触れてきたわけですが、今回もそれについて。今回が最後です。

 
 
 
今回も『BRUTUS5月号』より記事を少し抜粋。
 
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こうしてエチオピアを旅し、地獄のような、ファンタジー世界のような絶景を間近で見て、果たして己の人生観は変わったのだろうかと胸に手を当ててみる。正直に言うと、答えはノーだ。人生観というのは、いい意味でも悪い意味でもそんなに脆弱ではないのだろう。しかし、これだけは言える。今回の旅を経て、心の中に「オルタナティブ」ができたことは間違いないと。自分の価値観や生活感の延長線上にはない、断絶した、別の価値観や空間や時間の流れがあることを、エチオピアの砂漠は教えてくれた。
(ダナキル砂漠/エチオピア 地球が創り出した”神秘の景観”を訪ねて、灼熱の地アフリカへ。より)
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そうなのである。
 
別に旅をしたから人生観が変わるかといったらそんなことはない。もちろん変わることもあるのだろうけど。
 
決定的なのはそもそも我々が旅行なり旅をするうえで、必ず帰るところがあってそれをするからちょっとやそっとじゃ変わらないということでしょう。
 
日常を確保したうえで隔絶した時間を楽しんでいるだけなので、見たこともない景色を目にしておいそれと帰る場所を捨てるようなことはなかなかできない。
 
日常における当たり前の感覚を捨てられるわけもなく、もし旅先の価値観に触れてそれがブレブレになるとしたら、よっぽど今生活をしている日常に対してもブレブレなんじゃないかと僕は思います。
 
 
 
じゃあ人生観は変わらないとしたら、どういう充実感を味わえるのか。
 
それは記事にあるとおり「オルタナティブ」(代替案・選択肢・イフ)です。
 
普段我々のやっていることが世界のどこでもみんな同じことをやっているんじゃないかという感覚になりがちだ(僕はわりとそう思っていた)けども、決してそんなことはありません。
 
 
パソコンに向かって仕事をしている間、名もなき村で観光客を相手に古くから伝わる音楽を奏でたりして生活をしている人間もいれば、生活という言葉すらほど遠くのたれ死んでいる人間だってたくさんいます。
 
そういう人生だってあるんだと気づかせてもらえる…理解するんじゃなくて思わずにはいられなくなるのが旅なんだと思うんですね。
 
朝6時に起きて満員電車乗って出勤して午前様で帰ることもそれで得られる幸せは必ずあるし、でもだからといってそれが絶対ではないんだと教えてくれる。
 
 
僕らが思う当たり前と、海を挟んで向こう側にある当たり前。どっちが上だ!下だ!とかでなく、良い悪いでもなく、それもあるのか、そんな生き方もあるのかと知ることで普段まったく見ようとしなかった心の景色に光が当たる。
 
そして「自分は少し大きくなれたかもしれない」「心の豊かさを持てたかもしれない」と思えるのが旅であり、魅力なんだと僕は思います。
 
だから旅はやめられないんだろうなぁ。
 

旅の良さ2-贅沢な時間

2014-04-23 03:23:05 | レビュー
前回も少し書きましたが…すこしというかかなり書きましたが、今日も「旅の良さ」について書いていきます。
 
前回同様に『BRUTUS5月号』の記事より抜粋します。
 
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夜、2つの川が合流する地点でキャンプを張った。ぼくとマルシオ以外には誰もいない。人工物も機械音も存在せず、川が流れる音と、夜に鳴くというセミの声だけが聞こえた。カップ麺とクラッカーで夕食を済ませ、それ以上はすることがないので、岩場にマットを敷いて月明かりに照らされた峡谷をぼんやり眺めていた。何時間が経ったころ、自分も自然の一部であることを感じさせる、心地よい一体感が訪れた。僕は「贅沢だな」と呟いて、そのまま眠りに落ちた。
(シャパーダ・ジアマンチーナ/ブラジル 魅惑と快楽のノルデスチ。内陸部へ、未知なる風景を求めてより)
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なに、この村上春樹の段落終わりみたいな文章!とか思ったんですけど、まぁ案外海外旅行にいって壮大な景色に出会うとたいしてすることがないのでこうなります。
 
でもなにもすることがないから言葉がないのかと言ったらそうじゃなくて、言葉を必要としないことが多いんじゃないかと思います。
 
言葉が出ないのか、息を飲んでしまうのか。初めはその状態から。
 
でもそこにいつづけると自分がそこに溶け込んでいく気持ちが生まれてきます。

僕もトルコの草原が広がる丘に立ってみて『かつて古代の人たちがここで暮らし、同じ風に吹かれていたんだ』と想像しながら目をつむると徐々に溶け込んでいく気がしましたし、モロッコでは砂漠に上がる朝日、夜浮かび上がる月にも同じようなことを思いました。
 
そこに言葉が必要かといえば必要ありません。
 
だまってそこにいるだけでいいんです。
 
遺跡だろうと大自然であろうと、足を止めてそこにじっとしてみるだけで自分もまた『歴史の一つなんだ』と『自然の一部なんだ』って感じられます。
 
本当はそれ、海外だけじゃなくて日本でもそれを感じられるはずなんですけど、どうしてだか感じにくい。
 
屋久島の縄文杉を見ても、熊野古道を歩いてみても、京都の寺社の庭を見ても。
 
小さいからかなとも思うのですが、たぶん自分の生活から隔絶されていないからじゃないかと思います。
 
どうしてもそこから一歩出てみれば街並みが広がっているわけで、アスファルトの大地と隣り合わせなわけです。
 
東京から新幹線に乗って京都に行く間、窓から外の景色を見て『京都への思いが膨らんでいきます』『ワクワクがつみあがる』なんてことはないわけで、たまたま我々の実社会に取り残されたか共存を図っているというのは否めません。

 
でも海外はそうじゃない。
 
飛行機から眼下にひろがる大海に目を奪われワクワクはとまらないし、舗装されていない道路を走るだけで明らかに違う世界が連続している。
 
残念なことに国内には国内の楽しみ方があるのはわかっていますが、巨大遺跡もそうですが大自然との一体感という点では海外の方に分があるように思います。
 
僕らが普段思っている以上に大自然は圧倒的です。
 
ましてや関東平野に住み続けた僕のような人間にしてみれば、朝起きてそこに山があったり、海があったり、砂漠があったりするだけで『こういう生き方もあるのか』と驚嘆し、そこにいつづけることで『自然と自分は別物ではなく、自分も自然の一部なんだ』と気付くものです。
 
それに気づけたときは本当に『贅沢だな』と僕も思います。

旅の良さ-思っている以上のものが世界にはある

2014-04-21 22:54:25 | レビュー

BRUTUS (ブルータス) 2014年 5/1号 [雑誌]BRUTUS (ブルータス) 2014年 5/1号 [雑誌]

『BRUTUS5月号一世一代の旅、その先の絶景へ。』をたまたまコンビニで見つけて、そのまま購入しました。

根本的に『BRUTUS』とか『PEN』とかその手の雑誌は「すかしたひと」が読むものだという考えがあって(何、自称できるひとたちが読む雑誌だと思って買わないのですが(不覚にも『dancyu』を買ってしまうことがあります)どうしても「旅」特集になると買ってしまう自分がいます。

まぁ読んだわけです。

すんげぇ面白いの。すんげぇ良いこと書いてあるの。読んだら旅に出たくなるの。←ドツボ\(^o^)/

本号のテーマは「一世一代の旅」なわけですが、特集として「南極」「シャパーダ・ジアマンチーナ/ブラジル」「ダナキル砂漠/エチオピア」の旅行記が書かれています。

きっと多くの人は読んでそれらに行ってみたくなるんだと思うんですけど、僕は別にそんなに行きたいと思わなかったです(何。

その3つの場所が悪いわけでも記事が悪いわけでもなく、単純に大自然は写真と文字をどんなに駆使しても最終的に「行って見てみないとわからない」ということを知っているから。

読んで「ふーん」と思った。その程度です。まだそこまでは行きたくはないな…って。

ただ記事の結びが秀逸であったことは間違いないので紹介したい。

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日本往復15日間中、わずか4日半の南極滞在。東京に戻り「南極までいって何があったの?」と聞かれても、答えに窮することが多い。素朴に水とペンギンと答えたところで、それは正しくないからだ。南極には”無”があった。南極には”果て”があった。南極には私たちが敵わないもの全てがあったし、憧れるもの全てがあった。それを目の当たりできるなら、費やす時間なんて惜しくない。
(南極 荒波を乗り越えまだ見ぬ世界へ。静寂が支配する地球の果てへの旅より)
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僕も周囲の人間があまり行かない国へ行った経験があるので、しばしば同様の質問を受けます。

「そこにはなにがあるの?」「それはどうすごいの?」

そしてやはり答えに窮します(笑。

言葉じゃ伝えられないんだよね。写真でどうにか伝わる。でも僕としては写真で納まってしまうようなスケールのものじゃなかったという確信がある。



でも僕の口からは「砂漠がある」「白い岩(石灰岩)の崖がある」「不思議な岩がたくさん連なってる」「汚い川が流れていて不思議なメロディと匂いが漂ってる」とかしか言えず、僕が見てきたものとは程遠い形容に終わります…。

たぶん、それを聞いた人は『わざわざそんなお金をかけて、くそ遠いところまでいってそれだけ?』みたいなことをお思いのひともいたかもしれません。

もちろん、僕もそこへ行く前までは”聞いた話(どこそこはいいぞ!という情報)”に疑いの目を向けて『なんでこんなとこ行くのだろう』という気持ちはありますよ。

でもね、実際にそこに行って、直面してみるとそんな気持ちはどこかへいってしまうものなんです。

そこに滞在したのがわずかな時間であっても、そう思えるものがこの世界にはあります。

そういった旅行…ニュアンスとしては旅。そういった旅をして、それに巡り合えた人間でしか感じられない景色や出会いがこの世界にはあるんです。

でもそれは出会ったことがあるひとにしかわからない、そしてなにより「そこへ行って見ないとわからない」ことなんです。

だから、世界に行って見ると僕らが今生活している世界の尺度とかが通用しないものが確かにあって、加えて僕らがテレビや雑誌で目にする情報からふくらませるイメージよりもさらに強大で壮大なものがこの世界に存在しているんです。

それに出会えたときの感動を知っているひとは幸せだと思う。そういう点では僕も幸せ者です。

だからそこへの道程にある程度費やすことなんて、あまり問題ではありません。



パスポート持って一歩踏み出せば、それにすぐに出会える時代に感謝したいですね。

それがまず一つ海外へわざわざ赴くことの魅力なんじゃないかと僕は思うんです。


漫画『応天の門』(灰原薬)

2014-04-20 20:30:42 | レビュー
応天の門 1 (BUNCH COMICS)応天の門 1 (BUNCH COMICS)

最近はできるだけ本を買わないぞ!と思って過ごしていいるのですが、たまたまツイッターでこの本のことを知る機会があり、買うか買わまいか悩んだ挙句、ポチってしまいました。



ウェブの画像で見ていた時から、帯で紹介されている人物設定に「うーん、これはいかにも今風…」という気がして、僕が勝手に思っている在原業平と菅原道真の印象とのギャップのせいであまり期待していなかったんですよね…(何。

で、読んでみたわけです。



あれですね、平安版シャーロックホームズだと思ってください。ホームズとワトソンが怪奇事件解決するがごとく、ナイスミドルだけが取り柄の在原業平(38)と見た目はクソガキ中身はクールな菅原道真(18)が京都でおきる怪異事件に挑む話です。

この漫画で評価できるのは平安の怪異事件とかだと安倍晴明のごとく(義経の天狗もしかり)魑魅魍魎の世界みたいな話に陥りがちですが、そうではないところ。

帯にもこそっと書いてるクライムサスペンス。犯罪はひとがおこすもので、妖怪が起こすものではありません。

かといって当時信じられた妖怪の存在を無視せず、そういった迷信とひとが犯す犯罪の組み合わせが巧みであるところ。

ただ如何せん解せないのが、在原業平がただの無能なおっさんにしか思えない(汗。

菅原道真がほとんど事件の解決をしてしまい、在原業平はただの事後処理担当と物語の途中でのかませ犬的扱いに徹します…。

いうなればですが『名探偵コナン』でコナン君(どっちかというと高校生の工藤新一)が菅原道真で、毛利のおっさんまでひどくないがアガサ博士かメグレ警部的なポジションに在原業平がいるという感じ。

おかげさまで在原業平の良さはほとんどでてこないです(苦笑。

これが「バディ」なのか…という疑問はなくもない。

あーあと、意外に感心したのが在原業平が美形過ぎないところ。

38歳でいて自身の生まれの不遇さやまつりごとの醜さを知っている大人と考えればちょうどいい表情をしているかもしれない。

でもそんないぶし銀ポジションに落ち着きそうなおっさんが時々見せるプレイボーイさに少し引きます(何。

あとなー、藤原高子…あんまり綺麗じゃないような(何。まだわからないですけど。

そういう点でまた次巻も楽しみだなぁ!と思って、予告を見たら「2014年秋!」とあって絶望したのでした。

映画『LIFE!』

2014-03-20 14:33:58 | レビュー


ひさしぶりに映画館で映画を見てきました。
えーあんまりCMもやっていない(僕が見ていないだけかもしれないが)映画『LIFE!』(原題:The Secret Life of Walter Mitty)を見てきました。
小さい男で独身コメディアンという要素でナイナイの岡村が吹き替えを担当しているそうですが、下手くそすぎると噂であったことと、この手の映画は字幕に限るので字幕版を。映画見た感想としてはっきりいうと、この役を岡村さんにやらせるのは無理です(汗。

=あらすじ============

雑誌「LIFE」の写真管理部で働くウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は、思いを寄せる女性と会話もできない臆病者。唯一の特技は妄想することだった。ある日、「LIFE」表紙に使用する写真のネガが見当たらない気付いたウォルターはカメラマンを捜す旅へ出る。ニューヨークからグリーンランド、アイスランド、ヒマラヤへと奇想天外な旅がウォルターの人生を変えていく。

=========ヤフー映画より=

映画としての評価はきっと低いかもなぁと思いました。
というのも、この手のアメリカンコメディ・フィクション映画に関しては圧倒的な感動を呼ぶものではないし、「できすぎ」「ご都合主義」とか言ってしまえば片付いてしまう映画だから。
映画館で1500円前後使ってみるような映画かといえば、それは大変怪しいところ。TSUTAYAの新作でも借りてみるべきか悩むレベルの作品かもしれない。
正直、1週間レンタル100円だから借りてみようか。そんな気持ちで見るにふさわしい映画かもしれない…。

そしてなにより今人生に悩んでない人が見てもなんとも思わないはず。ここに尽きると思います。
なんか人生つんでるなぁ…というときに見ると、少し笑えて元気が出るような映画です。
たぶん岡村さんの声で見ると、イメージ壊れるので字幕でお楽しみただいた方がいいと思います。

要はこの映画、LIFE誌に勤めるぱっとしない中年のおっさんが、長年顔をあわせたことはないけど互いに信頼を寄せてるカメラマン(ショーンペン)からLIFEの最終刊の表紙に使うネガを郵送で受け取るんだけど、肝心の表紙に使うネガがなくて、このカメラマンを探しに世界を飛び回るのがメインストーリーです。その中で思いを寄せる女性との関係が次第に変わっていくことに楽しさがあります。
加えてですが、映像がきれいですね。グリーンランド、アイスランド、ヒマラヤの映像を存分に楽しめる演出がされています。



ただ一つ言っておきたいのは、この映画のふれこみで書かれている「同じような毎日繰り返すだけの人生ですか?」「空想をしますか?」「大きな失敗をしたことがありますか?」「変えたいと思ったことはありますか?」みたいなテーマなんて、実にどうでもいいです。
そんなこと考えてみたらたぶんこの映画で本来言わんとしていることの方向を間違ってとらえることになると思います。
正直、このさえないおっさんが空想壁があることなんてどうでもいいですし、この主人公は自分が変わりたいと思って色々なことをやっていくわけでもないです。

この主人公のおっさんがしたいと思ってることは「ネガ」を手に入れることと、思いを寄せてる女性といい関係になれたらなぁ…という程度の気持ちです。
でも不思議なことにネガを探すことを考えていたら思いつきで飛行機に乗ってしまって出先で色々なひとに偶然出会い、カメラマンが偶然残した軌跡を奇跡的に手に入れたりして、途中諦めたりもするのだけど、気付くとカメラマンのもとへ導かれるだけの話です。
つまり、ですよ。その人生における「偶然」を感じて、ハッピーな気持ちになれればいいんです。その程度のことしかメッセージはないです。
でもその偶然が面白いんですよ。物語のどこかに捨て置かれたような設定が、必ずどこかに関係していることに嬉しくなれればいいんです。
そういう偶然や奇跡に(たとえご都合主義的な設定であっても)自分自身を乗っけてみれば、ああ生きるって楽しいんだなって思える映画だと思います。

最初はただネガを探すだけのはなしだったのが、一歩踏み出したら色々なところで色々なものがかみ合ってとんとん拍子に行く。それもまた人生であると。

TO SEE THE WORLD, THINGS DANGEROUS TO COME TO,
TO SEE BEHIND WALLS, TO DRAW CLOSER,
TO FIND EACH OTHER AND TO FEEL.
THAT IS THE PURPOSE OF LIFE.

眼がしらは熱くなるような映画ではありませんが、なんとなく幸せな気分になれます。
まぁちょいちょい出てくる社会風刺的なジョークについていけないと面白くない部分もありますが、気楽にみられる映画だなと思いました。
あと所々さりげなくヒントがちりばめられているんですが英語が読めない人は…諦めましょう。

※僕は開始20分でこの話のオチはわかりました。でもまぁ楽しめます。

全くダメな英語が1年で話せた! アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』

2014-01-16 03:28:23 | レビュー
全くダメな英語が1年で話せた! アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』全くダメな英語が1年で話せた! アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』



昨今どうしてもアマゾンにお世話になりっぱなしで本屋に行くこと自体が少なくなっているわけですが、先日たまたま本屋に行く機会があり中国語の参考書を買うついでに語学の棚を見ていたらこの本が。

『全くダメな英語が1年で話せた! アラフォーOL Kayoの『秘密のノート』』 重盛佳世


アラフォーOLの秘密のノート…なんて卑猥な響きでしょうか(違。
そんな冗談はともかくとして図書カードが踏んだに余っていたのでちょっと買ってみました。
(ちなみに帯には「TVで話題に!5万部突破」とあって突発的な語学書としては売れていいる方なんじゃないかと思います)

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内容紹介
英語が超苦手なくせに、海外会議も出なきゃいけないアラフォー広報、Kayo。
彼女が意を決して留学した英国コンコルドスクールの授業は、目からうろこのことばかり。
わずか1年でペラペラになれた秘密がびっしりと詰まった、Kayo のまとめノートを全公開!

内容(「BOOK」データベースより)
海外ブランドのPRなのに英語がダメダメなKayo。38歳で入学した英国スクールの授業は魔法のように彼女をペラペラに!その秘密がつまった復習ノートが1冊に。

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実際、単語帳でもなければ文法書でもないんです、この本。
筆者がイギリスの語学スクールに通ったときにまとめたノートをさらに厳選して本にしたと。海外の語学スクールではいったいどんな内容の授業をしているのかが気になったので読んでみました。

語学スクールはそもそも言葉をかけることよりも話すことに重点を置いていいるわけで(そもそも最近思うのはネイティブと同等に文章を書くことなんて不可能に近いと思う)、ましてや日本からわざわざイギリスにいって英語を勉強するということは書く力はそこそこに、話す力を身につけたくて赴くわけです。だからこの本には文法的な話がほとんど出てこないです。ええ、そんなことは『FOREST』とか読んで勉強しとけっていうわけです。

じゃあ、何が書いてあるかというと話すときのコツがまとめられています。

そもそも英語嫌いの私が実際に「英語話せないことはないな」と感じることからして、日本の英語教育はバカにできない…と思います。おそらく誰だって(普段英語を使っていなくたって発音が悪くても)単純な英会話はできます。

「これは何ですか?」「どうしたらいいですか?」「何歳ですか?」
「今日はいい天気ですね」「昨日は仕事でした」「私は学生です」

というシンプルな文章で話ができると思います。でも実際にそう話していみると、話せないわけじゃないんですけど何かが足りないと思うわけです。
なんて膨らみようのない言葉ばっかり話しているんだろうかって。もっと「どういう感じ」なのか伝えることができたらなということを思うはず。私はいつも思います。


それを解決してくれるのがこの一冊。普段机に座って英語を眺めていても額面通りの意味しか受け取らないことが多いですが、実際話をする時のニュアンスを細かくまとめてくれていたり(写真参照)、会話をするときこの言い方をすると応用がきいてラクショーです、みたいなことがごっそり載っています。「"It is"構文で表現しておけ」とか、「困ったときはgetで切り抜けろ」とか普段私が信条にしている話し方も載ってます。まぁすべてイギリス英語なんですけど。



これがなんと1200円なわけ。最初「たかっ!」と思ったんですけど、これで英会話のコツとか表現を太鼓判押してくれるなら安いのかもなぁと。
問題はイギリスに1年留学してもまぁこんなもんなのかなぁと若干不安になったものの(何、やはりですよ、話すことと書くことは違うのだなぁとしみじみ思いました。
ちなみに英語表現以外にもイギリスの日常についてもコラムが書かれていてそれもかなり面白いので、まぁテレビで話題になるのはなるだろうなぁと思いました。

八甲田山

2014-01-07 20:02:25 | レビュー
八甲田山 特別愛蔵版 [DVD]
八甲田山 特別愛蔵版 [DVD]

正月早々なにを思ったかBSでやっていたので見てました。

うちの母親(60過ぎ)に言わせると「日本人なら死ぬまでに一度は見ておくべき映画」だそう。僕は母親からこの台詞を『どですかでん』(黒澤明)でも聞いた記憶が…なんていうか、時代というか。ちなみに両親は『八甲田山』を見るために何度も映画館へ足を運んだそうだ。

というのもこの映画、上映期間のわりに動員数が異常に多く、間違いなく大ヒット映画だそうな。

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1902年(明治35年)に青森の連隊が雪中行軍の演習中に遭難し、210名中199名が死亡した事件(八甲田雪中行軍遭難事件)を題材に、一部創作を加えた作品である。
映画では弘前の連隊と青森の連隊との競争意識の中で、編成などが後手に回った青森側が無理をしたことが原因の一つと設定されたが、実際には二つの連隊間で競争を行ったわけではない。極限状態での組織と人間のあり方を問いかけ、短い上映期間にもかかわらず日本映画として配給収入の新記録(当時)をマークした。高倉健(弘前第31連隊・徳島大尉(モデルは福島泰蔵大尉))、北大路欣也(青森歩兵第5連隊・神田大尉(モデルは神成文吉大尉))、三國連太郎(同・山田少佐(モデルは山口少佐))主演。北大路欣也の台詞「天は我々を見放した」は当時の流行語になった[1]。
(ウィキペディアより)
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映画の見所はどこか。
これは非常に難しい…と個人的に思う。
そもそも戦争が馬鹿なのか、軍隊が馬鹿なのか、日本人が馬鹿なのか、上官が馬鹿なのか、みんな馬鹿なのか。
馬鹿っていうのも雑な言い方なんですが、旧時代と現代の対比、それぞれの部隊の対比、それらを通して組織のなかで個人がおのおのの立場でどうあるべきかがよくこの映画で指摘れますが、僕はそうじゃないと思うんですよ。
きっとこれが明治時代だからどうだって話ではなくて、軍隊だからどうだって話じゃなくて、きっと現代においても民間組織においても同じことが起こりうるんだと思うんですよ。
別に誰が偉くて誰が馬鹿なのかとか「ああすればよかった」「こうすればよかった」みたいな感想はあたりまえにあるのだろうけど、そうじゃなくて「あー馬鹿な計画にに付き合わされることも人生だな」と諦め半分で見ないといけないと思うんです(何。だから高倉健なんて諦めきっていてほとんどしゃべんないから!

ともかくとしていろいろ思う映画ではあります。
うちの親がいうように人生で一度は見ておくべき日本映画の一つかもしれません。
緊張感、実際に八甲田山で撮影したリアリティ。渋い俳優陣。最後の最後まで晴れやかな気持ちになることはありません。
こういう映画もたまにはいいのではないでしょうか…なんてな。

第3次スーパーロボット大戦Z 時獄篇

2013-12-25 21:07:28 | レビュー
第3次スーパーロボット大戦Z 時獄篇 ★PV1


まだこのシリーズ続くの…
・PS2→PSP→PS3と来たおかげで引継ぎ要素一切なし。
・参戦作品最多を売り文句にするものだから全キャラを使いきれない。
・PS2時代に完結した作品はお飾り感が半端ない。
・ゴッドマーズがピクリとも動かない。

でも買っちゃうんだろうなぁ。
・逆シャア参戦でついに役立たずだったクワトロが覚醒する
・UC参戦でついに役立たずだったクワトロが覚醒する
・劇場版00参戦でついに刹那がガンダムに覚醒する
・EVOL参戦でついに変態疑惑のあったアポロニウス不動が覚醒する
・トップをねらえ・エヴァ序・破参戦でついにガイナックスが覚醒する

よし、まずはまだ開封もしてない第2次OGをクリアしないとなぁ…

第3次スーパーロボット大戦Z 時獄篇 (初回封入特典 スパロボシリーズ第1作目「スーパーロボット大戦」のHDリメイク版をダウンロード出来るプロダクトコード 同梱)
第3次スーパーロボット大戦Z 時獄篇 (初回封入特典 スパロボシリーズ第1作目「スーパーロボット大戦」のHDリメイク版をダウンロード出来るプロダクトコード 同梱)

予約始まりましたな。

第2次スーパーロボット大戦OG (通常版)第2次スーパーロボット大戦OG (通常版)



トイストーリー2

2013-12-21 01:44:25 | レビュー
トイ・ストーリー2 スペシャル・エディション [DVD]
トイ・ストーリー2 スペシャル・エディション [DVD]

たまたまテレビでやっていた『トイストーリー2』を見ました。
これでいて一作目しか見たことがなかった僕はそれほど期待せず見ていいたんですがこれでいてすごくメッセージ性に富んでいて驚きました。

もともとビデオ作品で制作が始まったけども出来の良さから映画に昇格したという背景がある(ウィキペディアより)…そうで、それは見ていただければお分かりいただける通り、一作目の『トイストーリー』に比べると見る者を考えさせる話になっています。

(※そもそも一作目の単純すぎる話はどういうことなのかを問いただしたいレベル)

2はおもちゃのたどる運命に注視している作品ですが、これが本当におもちゃのことだけを指しているのか、ということです。(その点は一作目でも同じですが)

この作品、人型か動物の形をしているおもちゃしか言葉を話さない。もともと機械型のおもちゃは動いたり意思を示したりできるけど話はしない。ここが非常に味噌で、見ていいる人が共感できるようになっていると思います。

映画を見始めた人ははじめ「おもちゃの世界」を空想した世界観に『どうせ作り物だから』『ファンタジーだから』と思ってみていますが、徐々に引き込まれ、本当にこれが「おもちゃの世界」の話と突き放せなくなり、運命の選択をおもちゃだったらどう考えるではなくて『私だったらどう考える』ということを自然とさせられます。

それがこの映画の魅力なんじゃないかと思います。そういう点では幼稚園児くらいのお子さんから大人まで、年齢を問わずして見られるんではないかと思います。

外国語上達法

2013-11-01 00:13:24 | レビュー
外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)
クリエーター情報なし
岩波書店


内容紹介
外国語コンプレックスに悩む一学生は、どのようにして英・独・仏・チェコ語をはじめとする数々のことばをモノにしていったか。辞書・学習書の選び方、発音・語彙・会話の身につけ方、文法の面白さなど、習得のためのコツを、著者の体験と達人たちの知恵をちりばめて語る。言語学の最新の成果に裏づけられた外国語入門書の決定版。

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この本が書かれたのは1986年。驚いたことに私と同い年である。

タイトル通り外国語の上達法について書かれていますが、これは学習者の立場で読むよりも学習者の立場で読むほうが書かれていることを楽しんで読める。

これを学習者の立場で読むと少し絶望する(笑。

語学学習において最も必要なのは「目的意識」であると本書の最初の項目に書いてある。その言語を習得する動機付けが弱いと身に付かないとしっかり書いてある。
加えて語学の習得に必要なものとして「お金」と「時間」が絶対的に必要と書かれており、ぐぅの音もでない。

だがしかし、それはそうとしても学習する「コツ」はあるよね?と説明してくれてます。これは語学学習者でなくても、読み物としてもすごく興味深いことが書いてあるので一般読者におすすめしたい。

陽だまりの彼女

2013-09-11 00:17:47 | レビュー
陽だまりの彼女 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社


内容紹介
幼馴染みと十年ぶりに再会した僕。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、僕には計り知れない過去を抱えているようで──その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる! 誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさも、すべてつまった完全無欠の恋愛小説。

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ひさびさに残念なオチだった。

「女子が男子に読んでほしい」恋愛小説などという肩書を背負わされた悲しい作品だなぁ。
唯一の救いは文体は読みやすいさ。ストーリーの結末も作品自体の結末も残念。

モモ

2013-09-10 00:23:47 | レビュー
モモ (岩波少年文庫(127))
クリエーター情報なし
岩波書店


内容(「BOOK」データベースより)
町はずれの円形劇場あとにまよいこんだ不思議な少女モモ。町の人たちはモモに話を聞いてもらうと、幸福な気もちになるのでした。そこへ、「時間どろぼう」の男たちの魔の手が忍び寄ります…。「時間」とは何かを問う、エンデの名作。小学5・6年以上。

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実にいい話(興味深い話)をしていると思う。
ファンタジー具合もちょうどいいと思うが、だらだら長い。
かなりのらりくらりと話をじっくり進めていくから大人が読むと読むのを中断してしまう可能性はある…。
それさえなければもっと評価が高いと思うんだよなァ。

というより児童文学なの? これ。
こどもってこんな分量読めるのかね…

マキャヴェリ『君主論』

2013-09-03 11:59:27 | レビュー
マキャヴェリ『君主論』



「なんだ絶望的に厚い本だなぁ」と思ったのが初めの感想だったけれども、実際のところ半分は解説と脚注でした。
1500年頃を生きたマキャヴェリが君主とはどうあるべきかというよりは、君主であるのに必要な条件はなにかを説いた一冊。
正直今のご時世これを読んでもあまり意味がないというか、役に立たないというか、ちょっと古すぎる。
それはあたりまえなんですけどね、なんせ「君主」論なんですから。


この手の本の良いところは何かというと、その時代その時代においてどこまで考らえる視点を持っていたか、なにを良しとしてなにを悪としたか。そういう感覚を嗅げるということが素晴らしいんではないかと個人的には思います。

そうしたものを僕らはたかだか数百円で(ときとしてタダで)知ることができる。そして「たしかに進歩してきたなぁ」と感じる。
一般庶民の我々がそれを時間できるというのがそれを証明している。これはきっと幸せなことなんだろう。

当時のマキャヴェリが君主についてまとめたこの一冊が、いまでは古い、役に立たない時代になったのである。
しかしながら、また時代が一周して必要とされるときがくるのかもしれないなぁとも思う。進歩はしたけれども本質的に人間というものが変わったわけではないのだろうから。


…でもまぁ読むのは時間の無駄かなぁとは思う。

君主論 (岩波文庫)
クリエーター情報なし
岩波書店

青が散る

2013-09-03 00:29:38 | レビュー
青が散る〈上〉 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋


青が散る〈下〉 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋


おすすめ小説のスレッドで挙げられていただけであまり期待はしていで読み始めたんですが、上巻を読み終えたあたりからため息の連発。
これはすげぇわかりやすい青春小説である。

(あらすじ)
<上巻>
燎平は、新設大学の一期生として、テニス部の創立に参加する。炎天下でのコートづくり、部員同士の友情と敵意、勝利への貪婪な欲望と「王道」、そして夏子との運命的な出会い―。青春の光あふれる鮮やかさ、荒々しいほどの野心、そして戸惑いと切なさを、白球を追う若者たちの群像に描いた宮本輝の代表作。

<下巻>
退部を賭けたポンクと燎平の試合は、三時間四十分の死闘となった。勝ち進む者の誇りと孤独、コートから去って行く者の悲しみ。若さゆえのひたむきで無謀な賭けに運命を翻弄されながらも、自らの道を懸命に切り開いていこうとする男女たち。「青春」という一度だけの時間の崇高さと残酷さを描き切った永遠の名作。

という話です。

1985年の作品ですが、30年前も今も大学生って変わらないなぁと思う。とくに体育会にいた人間にはすごくわかる話。ましてや応援団とつながりがあったひとにとってはすごーくわかる話です。

テニスの話なので試合描写になると、テニスのルールがわからない人はきっとしらけると思います(何。
結構緊張感ある書き方で描写されていると思うのですがこれが伝わらないとちょっとストーリー展開をじれったく感じる側面はどうしてもあり、この作品の章分けが時系列だけで分けられていているので、テニスと関係ない人間ドラマが展開されていたのにここでいきなりテニスかよ!みたいな気持ちに陥ると思います。

ですが、これはよくよく20代の若者の心理を上手に描けています。とくに男性の気持ちをうまくできてると思う。
女性の気持ちは最後までよくわからないというのが僕の感じたところです。

僕がこの作品でいいなぁと思えたのは、僕が良いと思う物語の要素すべてが入っているからだと思います。
まず主人公には仲間がいること。主人公にやたらはまっているものがあること。登場人物が死ぬこと。かぎりなくバッドエンドに近いエンディング。
これが見事にこの小説にはぶっこまれていて、読んでいて震えます。最後の最後まで。
ひさびさに詠んでよかったなぁと思える作品でした。