ロシアン・カフェ&デリで見つけた上質なつまみとは、筆者がキャンベル市のロシア系商店のロシアン・カフェ&デリで見つけた品のいい、そして旨い酒の肴のことである。ロシアン・カフェ&デリは小さい店ではあるが、老舗ロシア商店だけあって、他の店では見ることがないものが売られている。ロシア直輸入商品のため、商品名や製造会社名がロシア文字なので一体何なのか皆目わからず、調べようもないところがスリリングで、30代独身日本式サラリーマンの冒険心をくすぐるのだ。それに当てずっぽうで購入しても案外ハズレが少ない。実はロシア人と日本人の味覚は近いのかも知れない。今回は読者諸氏に、干しザンザー、サバの蕎麦漬け缶、タラ肝のタラ油漬けの三つの商品を紹介しよう。
この商品たちの詳細は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。
①干しザンダー
店の左奥にあるソーセージカウンターの上には真空パックされた干し魚が並んでいる。ほとんどは普通の魚なのだが、そこに何やら“真っ黒いもの”が売られていたのだ。ラベルの写真には魚が写っているし、形状を見るにどうやら小魚を干して燻製にしたものがぎっしり詰まっているように見える。手に取ってよく見ると、そのラベルの背景にはジョッキに入ったビールが写り込んでいたので、“これは良質なつまみに違いない”と勇気を出して買ってみた。貼られたステッカーには最低限の英語の成分表示があり、“干しザンダー”と書いてある。ザンダーとはヨーロッパ中東部から西アジアに住む淡水魚で、パイクパーチとも呼ぶそうだ。画像を見るとかなり大きな魚なので、この商品は稚魚を干したものであろう。輸入元はニューヨークのブルックリンにある会社で、東欧系のスイーツを扱うベーカリーも経営しているようだ。
②干しザンダーの味
開けてみるとこの黒い物体は魚を細く切ってあるもので、稚魚ではなかった。そのままでは固くてとても食べられない。そこで少しだけ水を垂らして湿らせて、それをラップに包んでレンジで10秒熱する。そうしてレンジと扉を開けるとチンチンに湯気が立ち、魚の香りがむわっと出てくる。そして少し柔らかくなる。それをガンジガンジと噛みながら酒を呑むのだ。いかにもシベリアの貧しくひもじい場所の食い物のような雰囲気で、30代独身日本式サラリーマンにはとてもちょうどいい。たいていのこういう食い物はしょっぱくて困るのだが、こいつは塩気が少なく、素朴な魚の味がする。
③サバの蕎麦漬け缶
ポーランドスーパーの記事でも紹介したが、東欧ではソバが主要な穀物として食されている。近年流行の脱・炭水化物志向から、ロシアの蕎麦料理は密かに注目されているようだ。筆者が見つけた缶詰は“OCETP”という商品名で、ラベルには蕎麦の実がぎっしり描かれている。“蕎麦の実を炊いて缶詰にしただけかな”と薄い期待のまま一応購入してみたところ、蓋を開けると中にはサバが入っていた。これはとにかく後味の蕎麦の香りが心地よい。脂の乗った鯖のこってり感が過ぎるとふんわりと蕎麦の風味が口中に広がり、なかなかどうして風情のある味に仕上がっている。白ワインや日本酒などとよく合う逸品で、和食として出されても満足がいく。しかしこいつは当のロシア人客には人気がないのか、それとも大人気だからなのか、初めての入手以来お店で目にしていない。
④タラ肝のタラ油漬け
上記のサバの蕎麦漬けが置かれていた缶詰群の中に、何と“タラのレバー缶詰”を発見したのですぐに購入した。ロシアの人々はこのようないわゆる“珍味”を食すのでとても親近感が湧く。日本でもタラが獲れる東北や北陸などでは、タラ肝を煮たり焼いたりして食べているようだが、非常に足が速いようで市場にはあまり出回らないとのこと。この缶詰は熱を入れたタラ肝がタラ自身の油に漬かっていて、質の悪い開けづらい蓋を力を入れてこじ開けているうちに中の油がタプタプとこぼれてくる。この油はビタミンAが非常に豊富で、“肝油”としてサプリメントに利用されてりもしているそうだ。だがそのまま食べるとさすがに脂っぽいので、肝を取り出しキッチンペーパーで油分を吸い取り、レモンやポン酢をかけて食べるとこれが美味だ。あん肝をさらに濃厚にした豊かな味で、けっこうな幸福感を味わえる。パテ状に近いので、フランスパンに塗って食べたりするのも美味であるはずだ。
さて、日本がまだ豊かだった頃は夜の町には“ロシアン・パブ”というものがたくさんあった(今もあるのかな)。当時の日本と比べると貧しい東欧やロシアの女性が出稼ぎに来ていたのだ。筆者も地元の田舎町へ帰省した折に、高校時代の友人と試しに入ってみたことがある。このときの出来事もなかなか痛快で面白かったのだが、そんなことよりも当時は『なんだって言葉も文化も違う日本なんかに来るんだろう』と不思議に思ったものだ。だが、今はわかる。きっとあんな体ひとつで稼げるキャバレー文化のある国が少ないのだろう。今では差別だとか性的消費とか責められることが多いのだろうが、ロシアン・パブ文化が多くのロシア女性やその子供を救ってきた事実もあるだろう。数十年後にはジャパニーズ・パブがシベリアに沢山できいて、それに救われているニッポン人だってあるかも知れません。そんなことを思いつつ、干しザンダーを齧った。
この商品たちの詳細は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。
①干しザンダー
店の左奥にあるソーセージカウンターの上には真空パックされた干し魚が並んでいる。ほとんどは普通の魚なのだが、そこに何やら“真っ黒いもの”が売られていたのだ。ラベルの写真には魚が写っているし、形状を見るにどうやら小魚を干して燻製にしたものがぎっしり詰まっているように見える。手に取ってよく見ると、そのラベルの背景にはジョッキに入ったビールが写り込んでいたので、“これは良質なつまみに違いない”と勇気を出して買ってみた。貼られたステッカーには最低限の英語の成分表示があり、“干しザンダー”と書いてある。ザンダーとはヨーロッパ中東部から西アジアに住む淡水魚で、パイクパーチとも呼ぶそうだ。画像を見るとかなり大きな魚なので、この商品は稚魚を干したものであろう。輸入元はニューヨークのブルックリンにある会社で、東欧系のスイーツを扱うベーカリーも経営しているようだ。
②干しザンダーの味
開けてみるとこの黒い物体は魚を細く切ってあるもので、稚魚ではなかった。そのままでは固くてとても食べられない。そこで少しだけ水を垂らして湿らせて、それをラップに包んでレンジで10秒熱する。そうしてレンジと扉を開けるとチンチンに湯気が立ち、魚の香りがむわっと出てくる。そして少し柔らかくなる。それをガンジガンジと噛みながら酒を呑むのだ。いかにもシベリアの貧しくひもじい場所の食い物のような雰囲気で、30代独身日本式サラリーマンにはとてもちょうどいい。たいていのこういう食い物はしょっぱくて困るのだが、こいつは塩気が少なく、素朴な魚の味がする。
③サバの蕎麦漬け缶
ポーランドスーパーの記事でも紹介したが、東欧ではソバが主要な穀物として食されている。近年流行の脱・炭水化物志向から、ロシアの蕎麦料理は密かに注目されているようだ。筆者が見つけた缶詰は“OCETP”という商品名で、ラベルには蕎麦の実がぎっしり描かれている。“蕎麦の実を炊いて缶詰にしただけかな”と薄い期待のまま一応購入してみたところ、蓋を開けると中にはサバが入っていた。これはとにかく後味の蕎麦の香りが心地よい。脂の乗った鯖のこってり感が過ぎるとふんわりと蕎麦の風味が口中に広がり、なかなかどうして風情のある味に仕上がっている。白ワインや日本酒などとよく合う逸品で、和食として出されても満足がいく。しかしこいつは当のロシア人客には人気がないのか、それとも大人気だからなのか、初めての入手以来お店で目にしていない。
④タラ肝のタラ油漬け
上記のサバの蕎麦漬けが置かれていた缶詰群の中に、何と“タラのレバー缶詰”を発見したのですぐに購入した。ロシアの人々はこのようないわゆる“珍味”を食すのでとても親近感が湧く。日本でもタラが獲れる東北や北陸などでは、タラ肝を煮たり焼いたりして食べているようだが、非常に足が速いようで市場にはあまり出回らないとのこと。この缶詰は熱を入れたタラ肝がタラ自身の油に漬かっていて、質の悪い開けづらい蓋を力を入れてこじ開けているうちに中の油がタプタプとこぼれてくる。この油はビタミンAが非常に豊富で、“肝油”としてサプリメントに利用されてりもしているそうだ。だがそのまま食べるとさすがに脂っぽいので、肝を取り出しキッチンペーパーで油分を吸い取り、レモンやポン酢をかけて食べるとこれが美味だ。あん肝をさらに濃厚にした豊かな味で、けっこうな幸福感を味わえる。パテ状に近いので、フランスパンに塗って食べたりするのも美味であるはずだ。
さて、日本がまだ豊かだった頃は夜の町には“ロシアン・パブ”というものがたくさんあった(今もあるのかな)。当時の日本と比べると貧しい東欧やロシアの女性が出稼ぎに来ていたのだ。筆者も地元の田舎町へ帰省した折に、高校時代の友人と試しに入ってみたことがある。このときの出来事もなかなか痛快で面白かったのだが、そんなことよりも当時は『なんだって言葉も文化も違う日本なんかに来るんだろう』と不思議に思ったものだ。だが、今はわかる。きっとあんな体ひとつで稼げるキャバレー文化のある国が少ないのだろう。今では差別だとか性的消費とか責められることが多いのだろうが、ロシアン・パブ文化が多くのロシア女性やその子供を救ってきた事実もあるだろう。数十年後にはジャパニーズ・パブがシベリアに沢山できいて、それに救われているニッポン人だってあるかも知れません。そんなことを思いつつ、干しザンダーを齧った。
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