読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

「会社は誰のために」(丹羽宇一郎、御手洗冨士夫著/文芸春秋社刊)

2006-08-23 12:11:46 | 本;ビジネス
第一章 改革力を身につける
第二章 組織はどうあるべきか
第三章 要は「人づくり」にある
第四章 トップのあるべき姿とは
第五章 日本の行く末を考える

伊藤忠G約4万人を6年間率いた丹羽氏、キャノンG約11万人を10年間率いた御手洗氏による対談集。丹羽氏は「掃除人」を自負し、御手洗氏は売上至上主義から利益至上主義への転換を図った。ともに引き継いだ「負の遺産」を大胆に一掃し、今の好業績を築いた。その二人の対談には含蓄のあることばが随所に発せられる。

丹羽氏は次のようの述べる。「最近はよく『会社は誰のものか』なんて質問がありますが、会社は株主のものに決まっています。しかし、それは商法上のことであって、本質ではありません。会社の本質を語るとするならば、会社は『誰のものか』ではなく、『誰のためのものか』という視点がなければいけないということです。そのためには、会社は社会の公器であるという原点に立ち返って考える必要があります。すると、会社は株主のため、従業員のため、お客様のため、社会のため、国家のためと、様々な角度からみてゆかなければならないということがわかってくるはずです」。

以下、参考にしたい発言を抜粋する。

「改革というのは、ただ変えればいいというものではありません。何をどう改革するのか。企業でいえば組織なのか制度なのか、あるいは資産なのか、それとも人の改革なのか。そしてそれは何のためなのか。まずは目的をはっきりさせる必要があります」。(丹羽)

「ちなみに私は、百年以上続いている会社の研究をしているんです。たとえば、GEは百十年P&Gは百六十九年、デュポンは二百四年。こうしたメーカーを見ていると、成功の方程式がじつによくわかります。つまり、独自の技術を開発して、それを商品化して市場を創出し、発展していく。それによってまた新しいサイエンスを呼び込んでくる。こういう循環になっているんです。私はキャノンをそうしたサイクルを持った企業にしていきたかった」。(御手洗)

「(V9時代の)ジャイアンツでは、試合が終わった後、必ず全員でミーティング開いていたそうです。このミーティングの特徴は、自分の受けもつ範囲を超えたところで議論すること。つまり、打撃のコーチ陣は、打撃についてだけでなく、投手についても言及する。投手のコーチ陣は打撃についても言及する。『あの場面ではこっちの投手の方が良かったのではないか』『あのバッティングはどうだったのか』等々、自分の担当以外のことにまで口を出すというわけです。まさに、『全員野球』の名にふさわしい。だからこそ、V9を成し遂げることができたわけです」。(丹羽)

「名刺サイズのこのカードには、表に『自発・自治・自覚』の『三自の精神』が記してあり、『私たちは『三自の精神』を発揮し、以下の通り行動します』『法律やルールを理解し、これらを遵守します』『公正かつ誠実で、倫理的な行動をとります』と宣言しています。カードの裏には、『コンプライアンス・テスト』という、社員の行動に対する六項目の問いかけを記載しています、『法律・ルールに触れませんか?』『うしろめたさを感じませんか?』『家族や大切な人を悲しませることになりませんか?』『報道されても胸をはっていられますか?』『社会に迷惑をかけませんか?』『キャノンブランドを傷つけませんか?』倫理基準をはっきりさせることで、社員は安心して働けるようになります」。(御手洗)

「日本は、ほとんどのものを海外に依存しているんです。『水ならある』と言うかもしれません。だけど、小麦を一キロ作るのに二トンの水が必要なんです。牛肉は一キロあたり二十トンの水がいります。つまり、肉の重さの二万倍の水が必要になってくるのです。これをバーチャル・ウォーターといいますが、小麦や牛肉を輸入するということは、同時にこのバーチャル・ウォーターも輸入しているわけです」。(丹羽)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿