読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

「都会の孤独たち」の彷徨いを描く、「孤独の声」(天童荒太著/新潮文庫)

2007-11-26 02:47:40 | 本;小説一般
本作は、1994年の作品。おりしも先頃、WOWOW「ドラマW」で映像化され(花堂純次監督、内山理名主演)放映されたようですが、残念ながら、WOWOWに加入していない私は観ることができませんでした。著者の作品は「包帯クラブ」を読んでいますが、こちらは2007年9月15日に映画化されていますね。「永遠の仔」はドラマを見たり見なかったりという程度でした。

さて、登場人物。宮崎出身の八王子署・盗犯係の刑事・朝山風希(ふき、26歳)、香川から上京しミュージシャンを目指してコンビニでバイトする芳川潤平(19歳)、コンピュターのシステム開発会社で働く松田隆司(32歳?)、女子大生木崎京子、風希の同僚、赤松秀樹(29歳)、そして河原崎警部補(45歳)など。

この小説のテーマは文字通り「孤独」。登場人物のそれぞれが違った「孤独」を抱えてどう生きているのか?その象徴として、潤平の心象風景に根強く刻まれている実在の二人の人物、ロバート・ジョンソンと宮沢賢治が登場します。ここで、この二人を取り上げておきます。

「ロバート・ジョンソン。ばりばりのブルース、録音が古く、まずノイズが入り、そのイメージが、聴く人者の空気を、古い時代に染め上げてゆく。節くれた指がつまびくギターの音がふるえて、この部屋を、現在の日本という空間から解き放ち、まったくべつの世界に運んでくれる。ときに太く、ときに高く、彼が孤高の魂を歌う」。

ロバート・リロイ・ジョンソン(Robert Leroy Johnson、1911年5月8日-1938年8月16日)は、「アメリカ合衆国ミシシッピ州出身のミュージシャン。1930年代に活躍した。エリック・クラプトン、キース・リチャーズら、多くのミュージシャンに影響を与えた」。

「ミシシッピ州ヘイズルハースト出身。アコースティック・ギター一本でブルースを弾き語りして、アメリカ大陸中を渡り歩いた。当時の聴衆はそのギター・テクニックが巧みなのに驚き、『十字路で悪魔に魂を売り渡して引き換えにテクニックを身につけた』という伝説が広まった。これが有名な『クロスロード伝説』である(なお、19世紀の名ヴァイオリニスト・パガニーニにも同様の伝説がある)」。

「夫のいる女性に手を出したため、27歳の時にストリキニーネで毒殺されたとされている。上記のクロスロード伝説では、彼を毒殺したのは悪魔ということになっている。亡くなったミシシッピ州グリーンウッドの町役場に提出された彼の死亡届では、彼の死因欄には『No Doctor』とのみ記載されている。彼が遺したものは2枚の写真と29曲42テイクだけである」。(ウィキペディア)

さて、1930年代、このミシシッピー・デルタブルースの創始者「ロバートジョンソンの伝説をモチーフにした映画に「クロスロード」という作品があります。私はまだ観ていませんが、主人公の17才の少年ギタリストとウィリーブラウン(williBrown実在の人物)が、その魂を売り渡した場所、クロスロードを探し求め旅をするというストーリーのようです。

「クロスロード」(アメリカ/1986年)
監督:ウォルター・ヒル
脚本:ジョン・フスコ
音楽:ライ・クーダー
撮影:ジョン・フスコ
出演:ラルフ・マッチオ、ジョー・セネカ、ジャミー・ガーツ、ジョー・モートン


そして、宮沢賢治の「貝の火」が使われます。初版は、1969(昭和44)年7月20日。絵本作品も出版。この作品は、人権啓蒙などの意味をこめて音楽付き朗読公演や人形劇などに用いられて長年演じられているといいます。(青空文庫;http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/1942.html)

この「貝の火」を読んだ潤平は何度読んだってわからないといいながら、次のような思いをこの小説に寄せています。

「この人が聴いている音は、普通の人間が聴いている音とは、全然違うと思った。風が草の原をわたっていく音、風が木の梢をふるわす音、強い音、そよ風、雨が土埃の道を打つ音も、雨が苔むしたでっかい長生きの岩を打つ音も、ズズランが揺れる音も、鐘の音も・・・・。全部、いままでの人間が聴いてきた音とはちがう音を、この人は、聴いていて、それを書きとめているんだ。その音が、すごく、きれいでよ。強くてよ、悲しくてよ、残酷でよ、いいんだよ・・・ひとりぼっちの音なんだけどさ・・・きっとひとりぼっちじゃないんだよ・・・。」


天童荒太(てんどう あらた、1960年5月8日-)は、「小説家。本名栗田教行(くりた のりゆき)。愛媛県出身。男性。愛媛県立松山北高等学校、明治大学文学部演劇学科卒。本名で投稿した『白の家族』が野性時代新人文学賞を受賞。『ZIPANG』『アジアンビート』など映画の脚本などを手がけた後に、天童荒太名義で小説を書く」。

「代表作にベストセラーとなり、よみうりテレビ制作で連続ドラマ化もされた『永遠の仔』など。最新作『包帯クラブ』は2007年9月に映画公開(堤幸彦監督)、また、『孤独の歌声』は、2007年11月にWOWOWドラマW枠にて内山理名主演で映像化が決定」。

「寡作。又、文庫化の際に大幅に改稿する事が多く(『永遠の仔』以降は少々の改稿に留めている)、山本周五郎賞を受賞した『家族狩り』は物語の骨組みや結論はそのままだが、登場人物などの設定や性格、途中発生する事件の描写などが大幅に変更されており、まったく別の作品に仕上がっている(この事については大ベストセラーとなった『永遠の仔』が強く影響しているらしい)」。


舟越 桂(ふなこし かつら、1951年-)は、「日本の彫刻家である。岩手県盛岡市出身。父舟越保武も戦後日本を代表する著名な彫刻家の一人。その作品は多くの美術館に展示されているほか、国際的な現代美術展への出展も多い。また、書籍の装丁などに作品が使用されるなど、その作品は多くの人々の目に触れている。現在、母校である東京造形大学において教鞭をとる」。

「1951年、東京芸術大学教授であった彫刻家・舟越保武の次男として生まれる。1975年、東京造形大学彫刻科卒業。1977年、東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻終了。1986年、文化庁芸術家在外研究員としてロンドンに滞在」。

「1988年、ヴェネツィア・ビエンナーレ出品。1989年、現在 東京造形大学彫刻科で教鞭をとる。1991年、タカシマヤ文化基金第1回新鋭作家奨励賞受賞。1995年、第26回中原悌二郎賞優秀賞受賞、1997年、第18回平櫛田中賞受賞、2003年、第33回中原悌二郎賞受賞。2006年、森に浮かぶスフィンクスにて、両性具有像を発表」。(ウィキペディア)


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