読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

リクルート創業者が提言する、「不動産は値下がりする!」(江副浩正著/中公新書ラクレ刊)

2007-09-16 03:52:42 | 本;ノンフィクション一般
~「見極める目」が求められる時代~
第1章 変貌する大都市
第2章 埋め立てや規制緩和で土地は「生産」されている
第3章 都心一極集中まだ床が増産され続ける
第4章 都心周辺や郊外部でも土地の生産が続く
第5章 インフラ整備に伴う供給の増加
第6章 金利の上昇は地価の下落に直結する
第7章 近く金利は上昇し、不動産価格は下落する
第8章 不動産バブル問題

江副さんがなんでまた不動産の本を上梓したんだろう?と最初首を傾げましたが、よく考えればリクルート事件の発端となったマンション・デベロッパーであるリクルートコスモス(現コスモスイニシア、2005年6月30日、MBOによりリクルートグループから独立)の会長であり、辞任後も不動産事業を手がけておられたと訊いたことがあります。

昨年末、しばらくぶりに東京へ行ったとき、その再開発の規模には驚きました。ヘッドハンティングFC説明会を受けた企業は丸の内のパスフィックセンチュリープレイスに入っていました。古巣・新橋や赤坂、渋谷、そして横浜と回りましたが、隔世の感がありました。本書を読むと、それはまだ首都圏再開発の一部に過ぎないことがわかります。

本書の主旨は、人口減少日本の状況下にあって増床し続けるビジネス向けビルと住居用マンション群の供給量は既にパイを越えているものの、首都圏、大都市圏では人口が集中することにより、良い物件は更に値上がり傾向にあるが、一方で条件が悪い地域では大きく値が下がっていくだろうということ。

「オリックス証券HPより」
基本的には今後の金利上昇がその格差を一段と広げることになるといいます。特にRIETについて江副さんは懸念を示しています。「REIT(Real Estate Investment Trust =不動産投資信託)とは、投資家から集めた資金を使ってマンションやオフィスビル、商業施設などを取得し、そこから得られる賃貸収入配当として投資家に支払う不動産投資信託のこと」。このREITの私募ファンドビジネスを立ち上げようという知人がいました。早速、本書をプレゼントせねばと思います。

安倍首相の突然の辞任による自民党総裁選は、福田さんで決まりのような様相ですが、江副さんは日本の財政赤字にも触れ、次ぎのように懸念を示しています。

「私が櫻井さんから伺った話では、『特別会計も含めた歳入と特殊法人に出て行く歳出との差、つまり目に見えない赤字が少なくとも3000兆円は超えていて、それが増え続けている』とのこと。公表されていない債務残高827兆円と合計して、1100兆円ほどの赤字があることになる」。

「国の歳出歳費を家計にたとえれば、『400万円しか年収がないのに一年に800万円も使っていて、それが長年続いていて借金の利子が毎年積み上がってきている。このままだと破産する』という話なのに、その深刻な事態について、政府が国民によく説明し理解を得てこなかったことが、大きな問題である、と思う」。

個人的には不動産には全く興味がありません。本書では江副さんの今の文化事業のベースになっている記述が随所に出てきますが、私にはこちらの方が興味がありました。


「『南米のパリ』と称されるアルゼンチンの首都ブエノスアイレスは、私が見た範囲では世界的につくられた都市のなかで最も美しい街である。私は、還暦を迎えた頃から長年にわたるスキー仲間のノエビア社長の大倉昊と夏休みには氷河スキーを楽しむためにヨーロッパに出かけていた。いまから九年前のことだが、たまには南半球に滑りに行こうと、チリのバジェネバドスキー場へ行った」。

「そこで四日間滑った後、アンデス山脈を越えてアルゼンチンのブエノスアイレスへ行った。私は学生時代からタンゴファンで長年の夢だったタンゴ発祥の地であるブエノスアイレス市内の港町ボッカと、ラ・プラタ川を挟んだ対岸の街ウルグアイのモンテビデオを訪ね、本場のタンゴを聴き、官能的な踊りを楽しんだ」。

そういえば、20数年前、社内のパーティや安比高原のパーティで江副さんが社交ダンスを披露していたことが思い出されます。リクルート事件から来年で20年。あっという間でした。今思えばこの事件は国策裁判であったという感慨があります。事件後に江副さんは社内報で「自分では止められない状況の陥っていた」とコメントしていました。アントレプレナーによるその反省は生かされス、残念ながらライブドア事件で繰り返されてしまいました。起業家は以って瞑すべしですね。


江副浩正(1936年6月12日-)は、「大阪府出身の日本の実業家。リクルート創業者。甲南中学校・高等学校、東京大学教育学部心理学科卒。東大在学中に財団法人東京大学新聞社で企業向けの営業を覚え、森ビル屋上の物置小屋で株式会社大学広告(リクルートの前身)を設立。大学新卒者向けの「企業への招待」(リクルートブックの前身)を発行し、求人広告という業界の地位を大きく向上させた」。

「その後、不動産、旅行、転職情報などに進出した。1988年、リクルート事件が発覚し、証人喚問をされる。翌年に贈賄罪で起訴され、2003年に東京地裁にて執行猶予付有罪判決を受け、被告人・検察とも控訴せず同判決は確定。2006年現在は、江副育英会事務局長。株式会社ラ ヴォーチェ代表。また、オペラ愛好家として第二国立劇場東京オペラシティの支援に尽力している」。(ウィキペディア)


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