美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

政治家の資質

2015-06-09 18:17:10 | Weblog

「大阪都構想」の賛否と問う住民投票は、僅かな差で否決されました。その結果を受けて直後の会見で橋下徹大阪市長は任期終了時点での政界引退を明言しました。テレビ出演をきっかけに知名度を上げた弁護士から政治家の世界に転身し、地方行政の矛盾や無駄を目のあたりにした橋本徹氏が政治目標として掲げ続けたのが「府と大阪市の二重行政による非効率を解消するため、大阪市を解体して府と特別区に仕事を分ける『大阪都構想』」でした。大阪維新の会を立ち上げ、大阪府知事と大阪市長のダブル選挙を仕掛けたのも最終的にはこの為であり、今回の投票で民意として否定されたことは橋本氏にとっては政治家としての存在意義を否定されるに等しかったのでしょうか。

本当の心情、真意は本人にしかわからないものですが、橋本市長の会見を見た多くの人は、彼のすっきりした表情と発言を聞いてどのように感じたでしょうか?敗北の責任をとり潔しとみるか、負けたとは言え、あれだけ多くの指示者を得、且つ彼を信じてきた多くの協力者に対して途中で投げ出してしまうことを無責任とみるか、様々です。ただ、この一連の出来事で思い出されたのが2011年当時の呉 世勲(オ・セフン)ソウル市長です。与野で争っていた給食無償化問題を住民投票に委ねた結果、投票率が投票成立要件の3分の1に届かず、その責任をとる形で市長職を辞任しました。小中学生に対する給食無償化は確かに論争の一つではありましたが、若手のホープ、将来の大統領候補とまで期待されていた呉 世勲氏には、韓国の中枢である首都ソウルの首長としてまだまだ多くの仕事がのこされていたのではないかと思っていた市民も少なくなかったでしょう。勿論、呉 世勲氏のばあいは政界引退ではなく、休養という形で暫く政界から距離を置いた後復帰、最近は、現在不在の首相候補にも挙げられています。しかしながら、呉 世勲、橋下徹氏ともに、裕福とは言えない家庭の出身で努力し弁護士となり知名度を利用して政界入りしました。比較的若くして自治体の長となった点、そしてカリスマ的な人気から一時は国政のトップにという期待をかけられた点、若干周囲が気抜けしてしまうほど地位、権力にはしがみつかず去ってしまう点等、似てると言えば似ているかも知れません。縁故や背景に頼らず、自分の人気と努力で政治の世界で奮闘した人間だけが成し遂げるものと、限界がそこにはあるようです。

橋下市長の会見で「みんなから好かれる、敵のいない政治家が本来、政治をやらなければいけない。」と話したことは、妥協を許さず、改革を目指した自分のやり方が最後に挫折した現実を論じたものでしょう。しかし、心の中では「みなに好かれること」が最も重要な政治家としての資質でないと考えているのは誰よりも橋本氏自身だと思います。

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