美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

人間の新しい友

2014-07-05 16:16:55 | Weblog

先日 ソフトバンクの孫正義社長による感情認識ロボット発表の様子がニュースで伝えられました。映像を見ると、Pepperと名付けられたロボットの大きさは120㎝で上半身の動きはとてもスムースで、会話もかなり自然です。何より人間の表情や声のトーンなどから感情を認識する人工知能が搭載され、さらにインターネットのクラウドシステムを使った学習機能も付いているといいます。つまり、人との会話や応対を通じて、相手の人間が今「喜んでいる」「悲しんでいる」「怒っている」などの感情を読み取り、その情報をインターネットからクラウドに蓄積し学習することでより感情を理解していくと説明しています。「­人間の左脳、計算や記憶など、人間がロジカルにものを考えて整理して伝えることにやくだってきたコンピューターと真反対の­右脳、感情や創造性にも役に立つ第1歩。感情を理解して自ら動くロボット」を目指したと孫社長。まさにアトムやドラえもんのような未来が現実になるのかも知れませんが、夢の未来というより何故か私は不安な気持ちになりました。

ロボットという言葉が最初に登場したのは、1920年チェコスロバキアの作家カレル・チャベックの戯曲「R.U.R(ロッサムの万能ロボット)」からです。チェコ語で 強制労働を意味するrobotaが語源で、機械文明の発達と乱用を皮肉る意味でつくられた造語です。その後ロボットは未来を語る中で様々な形で登場しました。1950年に刊行されたアイザック・アシモフによるSF「私はロボット(I, Roboto)」はロボット小説の古典的名作として特に有名です。この小説の中に出てくるのが「ロボット三原則」で、第一条:ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。第二条:ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。第三条:ロボットは前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない、というものです。昔から人類の夢として想像し語られたロボットですが、命名からして良いイメージばかりではなく、実現されることに対して既に危険性も予想してきたわけです。

今回の感情認識ロボットに関してSFの世界でよく起きるロボットの反乱を心配する人はまずいないでしょう。それよりネットに繋がれていることでの個人情報の確保が現実的な問題かも知れません。しかし私が本当に感じた不安は、人の感情を読み取り、理解して応対してくれる彼らに対して、人間はどこまで依存してしまうかです。己を最もわかってくれる対象が生命のないロボットであることの寂しさと怖さ、そしてその先にある未来の姿を単純に明るいものとは想像できないのです。

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