日本や韓国などチップの習慣を持たない国の人間にとっては、海外に出たときタクシーやレストランでのチップの支払いはどうも面倒で慣れません。ホテルの枕元に置く枕銭(Pillow Tip)は小銭さえ準備していれば問題はないのですが、何らかのサービスを受けたとき、幾らくらい、どのタイミングで渡すべきか時に迷うところです。欧米では、感謝の気持ちという意味合いが強いのに対して、アメリカ、カナダなどでは、チップは従業員の給与の一つとされることも多く、忘れたり額が少なすぎると文句を言われそうです。以前 カンボジアを訪れたとき、入国審査官が何かブツブツ話しながら中々手続きが進みません。あらためて耳を澄ますとチップ、チップと囁いているようです。呆れて「どういう意味か?何故払う必要があるか?」と聞くと苦笑いしてパスポートを戻してくれました!チップならぬ賄賂?旅行者の中には入国できないかと払ってしまう人もいるかも知れません。家内に話すとよっぽどお人好しにみえたのではと笑われましたが・・・
チップの始まりに関しては、幾つかの説があります。よく言われるのはロンドンのパブで ドリンクを早めに持ってきて貰いたい客が、小さな入れ物に小銭を入れたり、バーテンダーに小銭を渡し 早くドリンクを作ってもらったのがチップの始まりと言われています。それ故 チップ=TIPSはTo Insure Prompt Service(迅速なサービスを補償する為)からきたと。他にはこちらも西欧ですが、昔の床屋は簡単な外科も兼ねており、体内の悪い血を抜く所謂「瀉血」を行った場合の料金は決まってなく、客は自分が払える額を箱にいれて帰ったのがチップの始まりとするものです。どちらにしても、上流階級の中でサービスや労働に対し、決められた金額ではなく受けた側が‘気持ち’として考えた額を支払う習慣が広まったのがチップのようです。私のような庶民には慣れないのも納得です。
持つものが使用人や労働者に支払ったのがチップならば、権力者や有力者に見返りを期待して渡すのは賄賂でしょうか。Every man has his price.(だれにも値段がある=誰にも賄賂は効くものだ)という言葉を使ったのは17世紀の英国の首相 サー・ロバート・ウォルポールです。22年間にわたる長期政権の秘訣がここにあったなら、残念なことです。